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1657冊目 イェルサレム (世界の都市の物語)
イェルサレム (世界の都市の物語) -
イェルサレム (世界の都市の物語) -

評価:☆☆☆☆


 ユダヤ教が多神教から一神教へ変わり、キリスト教が生まれ、イスラム教の聖地をも抱えるエルサレム。その歴史はなんと4,000年前にまで遡ることができる。

 エルサレム周辺の地域は、ヨーロッパとアフリカとアジアを結ぶ回廊として、古くから大国同士が角逐を繰り返す場所だった。エジプト、アッシリア、新バビロニア、ペルシア帝国、アレクサンドロスの帝国、ローマ、ムスリム諸国と、様々な民族や王朝がこの地を支配している。おまけに、各宗教が聖地を抱えるものだから、更に争いは増し、平和な時代でも巡礼者への対応には悩まされる。

 そんなエルサレムに視点を当て、建設から現代に至るまでの歴史を追いかけているのが本書。

 少なくとも近現代以前の日本の歴史には全く絡んでこない地域なのに、世界史の授業等で名前くらいは知っていることが少なくない。バビロン捕囚、アレクサンドロスはともかくとして、その後のプトレマイオス朝エジプトとセレウコス朝シリアの争い、そしてナザレのイエスが煽動罪で十字架刑に処されたところであり、ムスリムに支配されてからは数次にわたって十字軍が送り込まれた。

 個人的には中世よりも古代史に興味があることもあって、バビロン捕囚あたりの詳細な流れが押さえられているのは嬉しいところ。また、知識の欠けていたプトレマイオス朝VSセレウコス朝の角逐や、イエス処刑後の66年に勃発したユダヤ大反乱あたりも細かく書かれている。

 私のように信仰心が無い人間にはどうしてこんなに熱心になれるのかと思わなくもないこともあるが、読み物としては得るものが多く面白かった。イスラム教支配のエルサレムについてももっと読まないと。

 今の世の中から眺めて皮肉に思うのは、十字軍の頃はキリスト教の方が文化的に劣っていて、そこに原因があるのか無いのかは知らないが、キリスト教の方が遥かに不寛容だった。近現代になって逆転後、イスラムは寛容さを失ったように見えてしまう。実際は、一部の過激派が目立っているだけなのではあるだろうけど。

 3つの宗教に関係があるエルサレムについての本だけに、宗教間の関係についても考えさせられる一冊。
その他歴史 | 2015/06/14(日) 01:22 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1654冊目 イエス・キリストは実在したのか?
イエス・キリストは実在したのか? -
イエス・キリストは実在したのか? -

評価:☆☆☆☆☆


 センセーショナルなタイトルだ。

 実は、イエスの実在を疑う人は存在する。確かに、同時代の記録にイエスは書かれていない。イエスの教えを受けたとする者達がいて、歴史家は彼らの主張からイエスが磔刑になったことを書き記しただけだ。というのも、彼はナザレという小さな村から出てきた貧しく学のない肉体労働者で、当時にあってはそう珍しくもない奇跡行者の1人だったから、誰も取り上げる必要を感じなかったのだ。

 著者はテヘラン生まれで、革命のためにアメリカへ亡命、高校生の頃にはキリスト教の洗礼を受け、カトリック系の学校で宗教学を先行したという異色の人物である。彼は研究を続ける中で、聖書の語るイエスと、歴史学の語るイエスの姿があまりにも異なっていることに驚く。こうして彼はイエスの生涯を調べることをライフワークとし、20年に渡る研究がここに結実した。

 本書の語るイエスの姿は、おそらく多くの人の抱くイエス像を木っ端微塵に打ち砕くものだろう。

 私は不勉強なので、まずどうしてナザレ生まれのイエスがベツレヘムで生まれたことになっていたのかすら知らなかったのだが、著者は丁寧に、なぜこうしたことが語られているのかを解き明かしてくれる。

 人間イエスについて最初にはっきり分かっているのは、洗礼者ヨハネから洗礼を受け、彼の弟子として歩み始めたことという。それ以前の記録は、彼の死後60年ほど経って書かれたものが中心で、ベツレヘムで生まれて聖人が云々だとか処女懐胎が云々だとかといったことはそれ以前の記録には存在しないという。彼はユダヤ教の信者で、ユダヤ人の運命にしか興味がなかった。

 そうしたイエスにとって関心があったのは、民衆から搾取する腐敗した神殿権力を糺すこと、そしてパレスチナを支配するローマを打ち破ることだ。これが失敗に終われば、反逆罪に問われるのはわかりきったこと。ローマは、反逆者には十字架刑という苦しい死刑方法で臨んでいた。だから、イエスは磔刑に処されることを覚悟していたフシもある。そして、ある意味で彼の予想通りにイエスは捕まり、ピラトの裁判を受け、処刑される。

 本書の描くピラト裁判の模様は常識をくつがえすものだ。曰く、裁判など無かった。全ては創作である、という。ピラトは軽々しく十字架刑を課すので、ローマへ公式の苦情が届けられたほどであるという。大勢のユダヤ人を平然と十字架刑にしてきた彼が、ローマの権威に逆らったイエスだけを特別扱いするわけがない、と著者は主張する。その言には説得力がある。

 我々の知るキリストの物語は、作られたものなのである。では、なぜ、物語が創作されなければならなかったのか。また、誰が、何のために創作を行ったのか?

 そうした答えについても、初期のイエス教団を追うことで得られる。イエスの弟で教団のリーダーを継いだ義人ヤコブと、反イエスの立場から転向しキリスト教を世界宗教に羽ばたかせることに成功したパウロの対比から、世界宗教とは教祖の言葉や思想を、時代や地域に合わせて変えていくことで成功しているのだと感じさせる。

 全編、意外な事実に満ちているので、興奮しながら読んだ。そうでありながら、過去に他のところで得てきた断片的な知識と矛盾しないことも素晴らしい。イエスがどのような人だったのか、興味がある方は是非読んでみてほしい。また、歴史好きの方も、きっと楽しめることだろうと思う。
その他歴史 | 2015/06/08(月) 19:41 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1653冊目 考古学でたどる旧約聖書の世界
考古学でたどる旧約聖書の世界 (丸善ブックス) -
考古学でたどる旧約聖書の世界 (丸善ブックス) -

評価:☆☆☆


 ユダヤ人について、最も早く見ることのできる史料は、エジプト新王国時代にファラオメルエンプタハが中東に遠征した際に戦勝を記念して刻んだ石碑に見えるとされる。褒められた形ではない。何しろ、メルエンプタハはイスラエルを滅ぼしたと誇っているのだ。だが、彼らはただの弱小民族ではなかった。紀元前のパレスチナにあって、一時は強国として存在した。

 彼らはどこからきて、どのように支配域を広げたのか。幸いにして、彼ら自身の記録がある。旧約聖書がそれだ。

 もちろん、旧約聖書に書かれていることを文字通りに受け止めてはいけない。あれは、彼らの神話だ。モーゼが200万人もの民を率いて、海が開いてできた隘路を通って逃げ出した、などということを信じるのはナンセンス以外の何物でもない。

 一方で、ユダヤ人の祖で、兄弟によってエジプトに奴隷として売り飛ばされ、後にエジプトで宰相にまで上り詰めた(残念ながらエジプト側にはそのような記録は存在しない)人物の売値は、前18世紀頃の奴隷の値段と一致するという。もっとも、彼はラクダの隊商に売られたのだが、その時代にラクダは荷役としては使われていなかったのであるが。

 このように、旧約聖書にはある程度、歴史的な背景があることが分かる。

 では、実際の歴史はどうだったのか?本書は旧約聖書の他に、考古学が明らかにした知見に基づいて、当時の模様を再現しようと試みる。扱っているのは、族長時代と言われる、始祖アブラハムから、アケメネス朝ペルシアのキュロス2世がバビロン捕囚を終わらせたところまで。キュロス2世はこの功績によって、外国人ながら最高級に扱われている。

 ファンダメンタリストのように、聖書に書かれていることは絶対だとする立場からは受け入れられないだろうが、私のような部外者から見ると、聖書の記述にもしっかり当たりながら、歴史学が拓いてきた知の世界も織り交ぜていると感じられる。当時の中東情勢に興味がある方はきっと楽しめるだろう。
その他歴史 | 2015/06/05(金) 23:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1652冊目 ソドムとゴモラの滅んだ日―旧約聖書の謎
ソドムとゴモラの滅んだ日―旧約聖書の謎 (中公文庫) -
ソドムとゴモラの滅んだ日―旧約聖書の謎 (中公文庫) -

評価:☆☆☆☆


 ユダヤ教徒あるいはキリスト教徒ならずとも、神の怒りによって滅んだとされる、堕落した街ソドムとゴモラの名は聞いたことがある方は多いだろう。ソドムを訪れたロトを男色相手にしようとする街の男たち、娘を差し出して逃げようとするロト(おいおい^^;)、天使の力を借りて逃げ出したロト一家と、街を滅ぼす神の怒り。決して振り返ってはいけないと言われたのに、街が滅びるさまを見てしまったロトの妻は塩の柱になってしまう。

 当時の大都市エブラの遺跡から、このソドムやゴモラといった街の名前に加えて、旧約聖書に出てくる名前が多数刻まれた石版が発見された。これによって、ソドムやゴモラは実在の街であったことが確認されたのである。

 これらの、所謂低地の街は交易で栄えていたようだ。発掘調査を続ける内に、これらの街に大掛かりな破壊の跡が見られることが明らかになっていく。

 一体、ソドムとゴモラに何が起こったのだろうか?その謎に真っ向から取り組んでいるのが本書であり、そのたどり着いた結論は地震である。中東は地震が非常に多い。紅海が分かれていく途中であることに示されるように。実際、死海周辺にも断層が大量にあるそうだ。

 結論に辿り着くまで、著者は実に様々なことを述べていく。エブラがなぜ栄えたのか、ソドムやゴモラはどのような街だったのかといった歴史的な話題に加え、瀝青(アスファルト)や、硫黄といった物質について触れることで、地震とともにやってきた破壊の凄まじさを感じ取れるようにしてくれている。

 個人的にはイスラエルの原子力発電所が心配になってしまった。

 伝説をきちんと歴史学に引き寄せている労作だと思う。聖書考古学に興味が無くとも、歴史好きであれば神話や伝説と歴史を結ぶ点をどのようにして調べるのかを知ることができる、貴重な本といえるだろう。
その他歴史 | 2015/06/02(火) 22:01 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1650冊目 世界文明一万年の歴史
世界文明一万年の歴史 -
世界文明一万年の歴史 -

評価:☆☆☆☆


 文明はいつ始まったのだろうか。異論はあるだろうが、分かりやすいのは農耕が開始されたことではなかろうか。農耕から生まれた余剰の生産物は都市を生み、ある文化では文字を生み出した。文字の力は大きい。だからこそ我々は何千年も前の物語や、商取引の記録や、法律や、事件等を知ることができる。文字を遂に生み出さなかったインカでは、伝承はたった100年ほどしか遡れなかったそうだ。

 本書は農耕の開始を文明の始まりとし、その上で、どのようにして文明が生まれ、広まったのかを概括している。

 世界文明の1万年を一冊で追いかけるのは不可能なので、本書では大掛かりな戦争のように、決して少なからぬ影響を与えたであろう出来事ですらばっさり切り捨てられる。その代わりに、文明の誕生や伝播の背景には何があったのかを考察している。

 世界的なベストセラーとなった、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原体・鉄』を読んだのが執筆のきっかけというだけのことはあり、地理的な影響や環境が文明に与えた影響を丁寧に掘り下げている。人やモノに焦点を当てた歴史とは大きく異なる点だ。しかも、文明の揺籃の地である中東とその周辺は当然のこととして、日本やオーストラリア、南北アメリカまで取り上げている。

 過去を知ることで、どうして現在の世界はこのような姿をしているのか、考えるヒントになるかもしれない。文明史や歴史に興味がある方ならきっと楽しめると思う。
その他歴史 | 2015/05/27(水) 20:44 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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