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![]() | エジプト王国三千年―興亡とその精神 (講談社選書メチエ) (2000/08) 吉成 薫 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
エジプトと言えば、ミイラ。と、小学生並みの関連付けになってしまったが、それでもエジプトといって想像するのはミイラなのだ。
古代のエジプトにおいて、死後の魂が帰るところとして遺体は重要な意味を持っていた。だから、遺体を保存する手段として乾燥保存の技法が研究された。が、彼らは脳を不要な器官と考えていたらしく、脳は除去されていたので、魂は帰ってきても考えることすらできず苦労することであろう。もっとも、苦労している自覚も得られないだろうが。
それは兎も角、ミイラとピラミッドとスフィンクスしか知られていないというのはエジプトにとっても不幸なことではないだろうか。そう思って、エジプト三千年の歴史を一冊で概観してしまおう、という大胆な本書を手に取った次第。
しかし、著者の願いとは裏腹に、入門書としては向いていないように思った。
まず、原義に忠実にしようとする余りだろう、一般的ではない言葉が選択されているのが残念。例えば、最も有名なエジプト人であるツタンカーメン王は、トゥトアンクアメンと表記される。彼の名は、アメン神と深く結びついている。というのも、先代の王がアテンという別の神への信仰を強制する宗教改革を起こし、その死後に反動が起こったために再びアメン神への信仰に戻ったため、アメン神への信仰へ回帰させた功績を含めた名としてツタンカーメンが用いられたのだ。
このアメン神についてのことは本書で詳述されているのではあるが、どうにも回りくどくて全体像が掴みにくい。
一方、歴史を彩る英雄たちに割かれているページは面白い。ラムセス2世。アブ・シンベル神殿建築でも知られるこの王が、ヒッタイトと戦ったカデシュの戦いについては戦史として興味深いので、多くの方が興味を持って読めると思う。
神話の時代から始まる本書は、最終的にエジプト王国は、クレオパトラを最後の王としてローマに滅ぼされて終わることになる。一冊でこれだけの時間と、文化を取り上げているのはものすごく労力を必要としたことだろう。
ただ、やはり手を広げすぎているためか、流れが速すぎて頭に入りにくいのは残念。また、文化史になると時代を遡るなど、飲み込みにくいところがある。時代に沿った構成が為されていたらもっと分かりやすかったのではないか。
ともあれ、エジプト史という馴染みの無い分野を、こうして覗かせてくれるのは嬉しい。機会があればまたエジプト史の本を手にとって見たいと思った。
ラムセス2世に興味を持たれた方へはこちらもどうぞ。
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