![]() | アメリカの不正義―レバノンから見たアラブの苦悩 (2003/12) 天木 直人 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
日本にいると、中東の情報はせいぜいイスラエルがパレスチナを大弾圧しているくらいで、その他のニュースは中々耳にしない。著者が外交官として赴任したレバノンもまた、日本に居てはその名を耳にしない国である。
そのレバノンは、内戦に続いてシリアの支配を受け、シリアとイスラエルとの冷たい代理戦争をさせられる羽目になる。イスラエルの示威行為は、最早主権国家の枠組みを無視したレベルで、室内でも戦闘機が音速を超えたときに発生する衝撃波(ソニックブーム)を感じるという。戦争になってもおかしくないほどの行為だが、イスラエルの力が圧倒的であるためにレバノンは反対すらろくにできない。国連決議を無視し、大量破壊兵器を持ち続けるイスラエルこそ”悪の枢軸”に思われる瞬間だ。
一方でシリアの支配は随所に現れているようで、反シリア派の政治家は次々に暗殺されるという。本書に出てくるハリーリ首相も2005年に暗殺された。背後にシリアの関与があると指摘されている。
強国同士の力が露骨にぶつかり合うこの地に赴任して、やがて愛するようになった著者はイスラエル一辺倒のアメリカのあり方に疑問を感じるようになる。やがてアメリカは難癖を付けてイラクへ侵攻。中東に渦巻くアラブ人の不満を知った著者は、アメリカの主張する正義に疑問を抱き、官邸にアメリカ追従は問題があると意見具申する。しかし、帰ってきたのは解雇通知だった。
本書は激動の時期にレバノンに駐在した期間のメモからなっているので、当時の中東情勢が伝わってくるのが利点。ただ、直前に読んだ『自壊する帝国』と比べると、情報の読み方、外交官としてのあり方等について書かれている深さが全然違うのがやや残念。もうちょっとボリュームが欲しかった。
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