![]() | 世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史 (2007/05) トム・スタンデージ 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
生物にとって何よりも欠かせないもの。それは水分である。人間では、食事ならば一週間や二週間取らずとも生きていけるが水は三日なければ死んでしまうと言われる。
だが、いくら必要なものであっても水をそのまま飲むのはあまりに味気がないからだろうか。人類は多くの飲み物を発明してきた。それらの飲み物の中でも、とりわけ ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラという6種の飲み物は歴史において大きな役割を果たしてきた、と著者は説く。
農耕社会の開始と共に人類の前に姿を現したのがビール。ある意味で、文明の開始を告げる飲み物となった。収穫された穀物は教会が一度集め、公共事業などを通じて再分配されていったという。その際の褒賞がパンとビールだった。それはエジプトのピラミッド造りでも同じで、ビールが労働者達への支払い通貨に代わるものだった。
一方で、ヨーロッパでは野生のブドウが多く収穫されたことから、ギリシア・ローマ文化でワインが珍重された。これら古代から知られているアルコール類は、アルコールによる種々の効果もさることながら、感染症の予防に役立ったという視点には驚かされた。蒸留酒には奴隷制度という暗い部分があることにも。
そんなアルコールを禁じたイスラム社会ではコーヒーが見出され、それは異国情緒溢れる飲み物としてヨーロッパに入り込み、雨後の筍のように出現したカフェは新たな社交の場を提供することになる。カフェは科学や歴史などの知識を交換する場にもなったし、政治を動かす場にもなったという指摘は面白い。
茶は中国から世界に広まった。やがて茶は列強による中国侵略の嚆矢となるアヘン戦争とアメリカ独立戦争をもたらしたボストン茶会事件という二つの大きな世界史的事件と結びつく。
最後のコーラが、そういう視点からは異色に見えたのだが、本書を読めばそれは早合点であることが分かる。アメリカ的な民主主義、消費主義とコカコーラは我々のイメージの中で不可分に結びついている。
本書はこれら6種の飲み物について、まずどのように社会に受容されていったかを解説した後で、世界史の中でどのような位置を持つのかを語ることで、社会に与えた影響の全貌を明らかにしている。それぞれの来歴は、今に至っても各飲み物の社会的な位置づけにまで影響を与えている。
飲み物と人類との付き合い、そして辿ってきた歴史を知ることで、これらが更に身近な飲み物になったような気がしてならない。現代だからこそ、これら全てを楽しむことができるわけで、その贅沢さをつくづく感じた。この嬉しさを噛み締めながら、世界を変えてきた飲み物を楽しみつくしたいと思う。
179冊目で紹介した『一杯の紅茶の世界史』では紅茶が歴史上どのような役割を果たしてきたかに主眼が置かれていたが、本書ではそれぞれの飲み物が人類の歴史をどう彩ってきたかが語られている。ちょっとスタンスは違うが、どちらも楽しめると思う。
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