現代中国の禁書 民主、性、反日 (2005/06/21) 鈴木 孝昌 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
独裁権力のあるところ、出版への苛烈な弾圧がある。戦前の日本やナチスドイツで当局の意向に逆らう文書を出そうものならどうなったか。
ファシズム陣営よりも更に過激な監視体制を引いたのは言うまでも無く共産主義陣営だ。恐らく、規模で言えば東ドイツが最も徹底して社会を取り締まってきただろう。なにせ、国民の3人に1人が秘密警察に情報を流していたといわれる国だ。
ことほど左様に、独裁権力というのは情報統制と仲が良く、その結果として禁書というものが出るわけだ。なので、現代中国にもしっかりと禁書がある。野蛮な国の証拠だ。
本書で取り上げられているのは、様々なメディア上で当局の意向によって意見を発表する場を奪われた人々である。ある者は日本を排撃しようとして、また別の者は日本を擁護しようとして、更に別の人はSARSを公表して、あるいは農民の置かれている悲惨な状況を明らかにして、果ては自分の性生活を綴って禁書の憂き目に遭っている。
どのような思想が、どのようなタイミングで弾圧に遭うかを見ることによって、中国政府の姿勢が透けて見えてくるのが面白い。ある時は官製デモとでも言うべき野卑な行動を野放しする。あるいは、日本の中国の戦後補償が十分(※)であることを述べて弾圧される人を見れば、中国が日本への圧力をカードとして保持し続ける(おそらく未来永劫に!!)姿勢を示していると判る。
地方の農民と都市部で貧富の差が拡大している矛盾、また農民への非道な行為が横行する様には心底うんざりさせられるが、それを公表しようとしても弾圧に遭う。まず、社会不安が顕在化してしまうこと。中共はそれを解決する気がないため、表沙汰にされるわけにはいかないのだろう。
でも、社会不安ってヤツは早めに顕在化させて対応した方が、ガス抜きになって良いと思うのだが。それに、社会不安が行き着くところまで行けばどうなるか。陳渉・呉広の乱やら緑林やら黄巾やら紅巾やら、農民反乱には事欠かなかった歴史を忘れているんだろうか。
性も独裁者が管理したがる項目だ。例えばキリスト教の弾圧は広く知られていて、セックスによって快楽を得ることはキリスト教では罪だ。なので、前偽は無しで挿入するのが正しいらしい。そうじゃないと、女性が快感を得てしまうから、とか。まったくもって狂った教団だ。
SARSにしてもそうなのだが、当局に都合の悪いことを全て発禁にして他者の目に付かないようにするというのは、最終的には失敗する。どうせ明らかになるなら禁書などにしなければ良いと思わずにはいられない。
禁書は、それが正しい指標かどうかは措くとして、文化程度の低さ・野蛮さのステータスになってしまっている。中国がそれに気付き、先進国の仲間入りをする日がいつか来て欲しいと思う。なによりも過酷な弾圧に晒されている人々のため。そして、中国と関わって生きていかざるを得ない世界の人々のために。
とはいえ、発禁処分で済むならロシアのように当局に暗殺されちゃうのと比べたらまだマシかも知れないが。
※日本の戦後補償が十分に行われている論拠として以下が挙げられる。
1.中国が日本への請求権を放棄していること
2.中間賠償(軍需工場の機械など日本国内の資本設備を撤去して、かつて日本が支配した国に移転、譲渡することによる戦争賠償wikipediaより引用)を済ませている。
例えばオランダはインドネシア植民地を放棄する際(1949年。オランダは恥知らずにも、日本の植民地支配を非難するのと平行してインドネシアを再植民地化した)、現地の資本は全て回収している
3.無利子あるいは低金利での融資によって義理は果たしている。円借款の累計額は3兆1331億円とのこと(在中国日本大使館のサイトより)
4.日本の首相や政府高官が繰り返しお詫びを口にしていること
日本の謝罪や賠償が足りないというのであれば、具体的にどのような問題に対してどのような点で足りないのか明記して欲しい。それで互いに受け入れられないなら、断交すれば良い話だ。政府同士が断交していても経済は密接に結びつくことが可能なのは、台中関係を見ていれば分かるので経済界の人々も心配しないで貰いたい。
いっそ完全に縁を切ったほうが健康問題含め素晴らしいという意見も説得力があるな、うん。
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