![]() | 脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ アンドレア・ロック (2006/03/16) ランダムハウス講談社 この商品の詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
夢というのは奇妙なものである。毎夜毎夜我々の元を訪れるのに、夢を見る最中にはそれが夢であることにすら気づかないことが多い。しかも、目覚めた直後は奇妙な夢を覚えていても、掌から砂がこぼれ落ちるかのように記憶から消えうせてしまう。
一体、夢というのは何なのか。昔から人類は疑問に思ってきた。そのうち、正否はともかくとして最も人口に膾炙したものはジグムント・フロイトの理論であろう。
フロイトは自分が性欲魔人だった。別に特定の人物がセックスに耽溺してもどうということは無いのだが、彼が厄介なのは他の誰もが自分と同じくらいセックスに夢中で他の事なんて考えられないという体系を纏め上げてしまったことである。その結果、欲求不満(もちろん性欲魔人たるフロイトのこと、欲求の内容は性欲である)と夢が強固に結びつくことになってしまった。
ところが、脳の研究が進むに連れ、フロイトの主張はかなりの部分間違っていることが明らかになってきた。
意外なことに、夢を見ている際には脳が活発に活動している。部位によっては起きている時以上に活動している、という。活動する部位を精査することによって、夢を生み出す脳活動の重要さが明らかになっていく様は大変にエキサイティングで、かつ興味をそそられる事実の連続である。
詳細は是非本書に当たってみてもらいたいのだが、少なくともここでは夢が何の意味も持たない不要物ではないどころか生存に重要な役割を果たすことだけを紹介しておこう。
特に面白いと思ったのは、明晰夢のこと。明晰夢とは、夢の中で自分が夢を見ていることに気付き、意図した行動を取ることができる夢のこと。数を数えたり、歌を歌ったりすると、そのとき、脳内では起きている間と同じ部位が活動しているというのだ。
また、夢の中で思わぬ学習が起こっていることも興味深い。一つのテーマで悩み続けていて夢の中で答えを思いついたというウソのような話を聞いたことがある人もいるだろう。私の修めた化学の分野では(少なからぬ人にとっての悪夢の象徴である)ベンゼン環の構造を発見したケクレのエピソードが知られている。これは偶然ではなく、脳の正常な働きによる可能性があるとはなんと面白い話だろう。
脳にはまだまだ謎が多く、その分だけ面白い話題が沢山あることを実感させてくれる。語り口も軽妙で、読み物としても実に楽しいので、読みながら夢の世界に誘われることはないだろう。読み終わったら眠りたくなる。本の中で出会った不思議な話を実地で確かめるために。そんなわけでおやすみなさい。
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(講談社ブルーバックス・理化学研究所脳科学総合研究センター編) ※まえがきーー「こころに向かう脳科学」1 脳のシステム 脳は作業を分業処理している・脳は私たちの生存のためにある 外部環境を分析する・いざ行動を起こさん・注意...
2007/11/28 Wed 07:27:46 | 富久亭日乗
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