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309冊目 ヒストリアン 2
ヒストリアン 2

エリザベス・コストヴァ著 / 高瀬 素子訳

日本放送出版協会 (2006.2)

\1,785

評価:☆☆☆☆


 竜、すなわちドラキュラと歴史家達の戦いは終末へ向かってどんどん進んでいく。

 先の分で書いておけばよかったのだが、本書は主人公であるはずの少女がドラキュラとの戦いの終幕近くになってヒストリアン側に巻き込まれていくのと、少女の父を中心としたヒストリアン達が何を突き止めどのようにドラキュラを追い詰めようとしてきたか、というのが平行して進んでいく。分量としては父親の分が圧倒的で、主人公は少女の父親では無いかとの錯覚を覚えるほどだ。

 ところがここにきて状況が動き始める。父は姿を消し、少女は父を探す旅に出る。その少女に付きまとう影を避けながら、彼女は父を探し当てられるのか。

 追憶のような形で平行して進むのは少女の父の東欧行きの記憶。ハンガリー、そしてドラキュラことヴラド・ツェペシュがワラキア公として君臨したブルガリアがその舞台である。ワラキア公ゆかりの地に何が待つのか。

 作者の意図には反していると思うのだが、この東欧訪問が(大団円を超えて)本作品で最も印象深いところである。そのまま観光ガイドとして通用しそうなほどの名所の書き込みを読んでいると自分もその地を訪れたくなるほど。

 魅力の少なからずはこのガイド的な側面にあると思うのだが、もう一つは、非常に上手く歴史的事実とフィクションを混ぜ合わせていることにあると思う。

 正直に言ってしまえば、掘り下げが甘いためか人間的魅力に欠ける人物達と、狙いがどうにも定まっていないようなドラキュラとの戦いには、緊迫感が不足しているように感じられてしまう。その欠点を覆うのが、この歴史の扱い方にあるのだろう。ワラキア公のことを知っている人はより楽しめる、そんな作りになっていると思うし、本書をきっかけに東欧の歴史というなかなか日の目の当たらない分野にも興味が向くきっかけになるのではないかと思われてならない。


 以下、ネタバレ防止。気になるヒトは続きを読んでください。ただし、本書を読もうと思っている方は絶対に読まないよう。
 やっぱり、ドラキュラの狙いについての説得力が致命的に不足している。

 いや、彼の狙いが趣味の図書館目録作りなのだというのはまあ赦す。永遠の命なんて厄介なものを得てしまったら趣味に血道を上げるしかなかろう。

 しかし、ワラキア公である。恐らくは殺人を楽しみ、犠牲者の苦悶の叫びに快楽を得ていたような類の人物が、そちらからは(ヒストリアンを脅すとき意外は)ほぼ手を引き、読書に専念していたとなるとどうにも。。。しかも、ドラキュラの最期たるや拍子抜けするほどにあっけない。それまでの戦いってなんだったのかと。

 プロットが先にできて、最後に人物設定を合わせようとするからこんなことになっちゃったんじゃないかと思ってしまう面もある。

 歴史好きなら読んで損はないと思ったのだが、手放しに絶賛するほどのものとは思えなかった。
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SF・ファンタジー | 2007/04/23(月) 23:04 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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