FC2ブログ
カレンダー
09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

Skywriter

Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


宣伝目的以外のあらゆるコメント、TBを歓迎します。

↓ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してください。


にほんブログ村 本ブログへ


kids goo弾かれサイトですので閲覧はご注意を。頭が悪いのが伝染する恐れがあります。
notforkids.jpg

FC2カウンター
最近の記事
Tree-Arcive
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
巡回先

にほんブログ村 本ブログへ



うちの子も元捨て犬です。今はすっかり我が家の一員。甘えるのは下手だけどとっても可愛い子です。

Skywriterさんの読書メーター

ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
282冊目 レナードの朝
レナードの朝

オリバー・サックス著 / 石館 康平訳 / 石館 宇夫訳

晶文社 (1993.7)

\2,957

評価:☆☆☆☆☆


 オリヴァー・サックスの名を一躍広めた医学エッセイ。そして同名の映画の原作となった貴重なノンフィクションでもある。

 1920年前後に致死的な嗜眠性脳炎という病が流行した。感染者の多くは亡くなったが、それでも少数の生き残った人々がいた。変わり果てた姿で。脳に損傷を受けた彼らが示した症状はパーキンソン病に良く似ており、患者達は知性は失わなかったものの体をろくに動かすこともできない状態になってしまっていたのだ。

 何の治療法もなく、ただ病院で朽ちていくに任されていた彼らに医学の光がようやく当たるようになったのはなんと1960年代になってから。L・ドーパ。魔法の薬とまで過大に言われたこの薬品は、数十年に渡って病に捕らわれ続けていた嗜眠性脳炎患者に、目覚めをもたらした。彼らの多くは動きを取り戻した。その様は、奇跡といっても過言ではなかっただろう。50年の時を過ぎて甦るこの不思議。

 ところが、L・ドーパは魔法の薬ではなかった。いや、目覚めさせたことだけをとれば魔法と言ってもよかったかもしれない。だがこの魔法には強烈な反動作用があったのだ。

 脳炎から目覚めた患者達は決して病から解放はされなかった。激烈な副作用は猛烈なチックなどを誘発。時には患者を死に至らしめる結果にもなった。それでも、失うものはもう何もないと思う患者達はL・ドーパに頼るしかなかった。

 本書ではL・ドーパによって目覚めた20の症例が収められている。どれもがハッピー・エンドになったわけではなかった。幾人かは絶望して死に、幾人かは薬を呪った。しかし、薬のおかげで副作用などと折り合いを付けながら生きていく道を選べる患者もまた現れた。単純に奇跡の薬と言うわけにも、危険な薬というわけにも行かない。

 なぜL・ドーパはこのような複雑な効果を生じさせるのだろうか。脳の持つ複雑な機能と構造と環境が薬理効果の違いの根源にあるのだろう。人間の不思議さを、確かに感じることができる。

 サックスは本書で、この不思議な現象を紹介しているのだが、そこには症状の違いを見つめる冷徹な科学者としての目と、患者を一人の人間として助けようとする真摯な医学者としての目が共存している。どちらかに偏ってしまっては、きっと随分雰囲気が異なった本になったことだろう。

 なので、単純にL・ドーパの効き方を述べている本には程遠い。またその副作用を断罪しようとする姿勢とも遠い。薬にできること、医者にできること、患者を取り巻く環境にできること、そして何より患者自身ができること。全てが必要であることが良く分かる。

 脳を侵す病の恐ろしさはもちろん伝わってくるが、同時に病と闘う患者達の孤高で気高い姿も伝わってくる。人間の不思議さを感じることができる。不幸な病に犯されたかわいそうな人々の記録だけだと思ってしまっては、きっと彼らの奮闘を受け止めたことにはならないだろう。

 重いテーマでありながら映画化された理由が良く分かるまた、映画を見た方には役者たちがどのように役作りに励んだかが記されているので興味をそそられるのではないか。役者は凄まじい情熱と研究心がなければ他人を演じることなどできないのだな、としみじみ感じたものである。

 医学エッセイとして優れた手腕と、事実は小説より奇なりを地で行っている不思議な話の組み合わせなので面白さは抜群であると思う。脳研究の持つ魅力にも迫った好著。


 なお、興味を持たれた方は同じ著者の『妻を帽子とまちがえた男』と『火星の人類学者』をお勧めしたい。どちらも知的な楽しみを味わい、次いで人間の不思議さについて考えさせられるすばらしい本だと思う。
関連記事
スポンサーサイト




医学・脳・精神・心理 | 2007/03/12(月) 23:35 | Trackback:(1) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ


私は映画の方をテレビで見ただけであり、本の方は読んでいませんが、本の方が写実的で、より患者たちの苦悩が伝わってきそうですね。
2007/06/05 火 11:55:34 | URL | valvane #3un.pJ2M編集
valvaneさん、はじめまして。
コメント&TBありがとうございます。

私、映画は見ていないので比べられないのですが、本書の中で映画化の話も出てきます。
どうやら迫真の演技で、著者のオリヴァー・サックスをして演技なのか本当の病気なのか分からないと思わしめたほどとのこと。

ただ、やはり本のほうが叙情的なことは詳細に情報を織り込めますから、病気の性質や患者らがどのように病気と立ち向かったかという事実については本の方が色々と知ることができそうですね。

また遊びにいらしてください。
2007/06/07 木 00:08:57 | URL | すかいらいたあ #-編集
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

つい数日前、深夜放送で『レナードの朝』という映画を見ました。舞台は、精神病院。それまで研究一筋だった医師が、初めて臨床に就くことになったが、持ち前の探究心から患者1人1人を丹念に観察。その結果、一連の「慢性的な
2007/06/05 Tue 11:56:12 | From VALVANE