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214冊目 ジーニアス・ファクトリー
ジーニアス・ファクトリー

デイヴィッド・プロッツ著 / 酒井 泰介訳

早川書房 (2005.7)

\2,100

評価:☆☆☆☆☆


 ぴろりさんのFluffyにて紹介されていた本。面白そうで手に取ったところ、予想を超えて面白かった。(ぴろりさんのサイトはweb占いや本の紹介など面白い話題が沢山あるのでいつ行っても楽しいところです)


 性格や能力について、遺伝の大きさはもうずいぶん解明されている。おおよそ50~80%が遺伝の影響というが、一卵性双生児の性格の一致は50%よりも高いところでの遺伝率を示しているように思われる。そうした事実からも、性格が良い、あるいは能力が高い(ついでに見た目が良い)配偶者を選ぶことが大切であることが知れる。

 しかしながら、誰もがカタログじゃなくて実際の人間でやる品定め(かく言う私も品定めをし、された一人)が、スペック表と一緒に宣伝されるとなぜこれほどにも不思議な感じがするのか。どことなく優生学的な匂いがするのは間違いなくその1つの理由だろう。実際に高学歴で高収入で外見も良い男性がモテるという厳然たる事実から、女性がそれらを貴重な指標とみなしていることが示されているにも関わらず。

 あなただってチビで不細工で金もなければ教育もなければ性格も悪い人と、背が高くハンサムで金もあって高い教育を受けおまけに性格も良い人、どちらかと付き合うなら絶対後者でしょ?それと同じ選択が精子バンクでも起こるわけです。

 本書はノーベル賞受賞者のみを対象として発足した精子バンクの辿った不思議な道筋と、精子バンクに関わりを持ったスタッフ、ドナー、レシピエントたちの姿を描いたノンフィクションだ。同一人物の精子から誕生した子供たち(当然ながら卵子はそれぞれ別だ)が能力も性格もバラバラであることが面白い。能力や性格に及ぼす遺伝子の複雑な振る舞いの結果だろう。一卵性双生児ならほとんど性格は同じだが、二卵性双生児であれば一卵性双生児よりも性格の一致度は半分程度に下がる。それを考えれば、単純に精子だけノーベル賞受賞者のものを持ってきたからといって、そこから期待されるような能力がただちに導かれるというものではなかろう。

 そもそも、精子になる段階で父親の体内で祖父由来の遺伝子と祖母由来の遺伝子が複雑に交接し、組み換えを起こすことでどの精子1つをとってもオリジナルなものが出来上がる。だからこそこれほど世の中には多彩な人間が溢れかえっているのだ。単純に精子だけ良ければ後はもう放っておいても良くなるだろう、と考えるのは早計である。

 少なからず存在する環境の影響はどうか。それも本書で触れられているが、やはりそのような遺伝子を欲しがる女性は教育に熱心だろう。であるからには、環境の点では平均的な家庭よりも高い教育を受ける土壌は整っていると想定されるので、この精子バンク経由で遺伝子を引き継いだ子供は平均よりも能力が高いことが推測される。遺伝の影響を除くとしてもそう。

 こういった点を総合的に考えれば、母親の期待は少なからずはかなえられるだろうが、それは遺伝子の影響ではないかもしれない、という面白い結論にたどり着く。願ったとおり、優秀な父親からの遺伝子の影響かもしれないが。

 優秀な人々を集めた精子バンクから生まれた子供の実際の姿は、本書に余すところなく書かれている。そして、どのような人々が、どのような動機で精子バンクに参加したのかも。

 だが、私の心に残ったのは、“優秀な遺伝子”をもらった家庭が辿った道のりである。夫婦の間も、親子の間も、普通の家庭よりも緊張が強いようだ。片親だけの場合にはそれほどでもないかもしれないが、それでもやはり精子バンクを考える際にはこれが無視し得ないこととなる、ということを、私は本書を読むまで思いもかけなかった。子供ができない夫婦にとっては合理的な選択肢ではないか、としか考えていなかった自分の考えの浅薄さが身にしみる。

 天才を増やしたい、それが急務だと考えた創設者の意志は現実の人間の持つ複雑さの前にむなしく敗れ去った、というべきか。精子バンクに関与した人々の姿は面白くもあり、哀しくもあり、頼もしくもある。世の中が複雑であるのと同じように、この世界も複雑なのだ。

 ただ、不満もある。

 1つ目は、著者が(アメリカ人らしいといえばアメリカ人らしいのだが)能力や性格の遺伝性をあまり考慮しておらず、環境の影響を強く見積もっているように思えること。アメリカこそ養子が多いことから双子の性格調査などが多いので、考慮に入れて欲しかった。政治性が絡んでくるのは避けられないのが残念な話題なのではあるが。

 著者が自慰に対して偏見を抱いているように感じられることがもう1つ。(例えば「科学の名の下に自慰をすることを正当化したこと」P206など)しかしながら、自慰がなんらかの悪影響を及ぼすという証拠は全く得られていない。膨大な数の自慰にふける男性の数(経験だけで言えばほぼ100%の男性がしている)を考えれば自慰が悪影響を及ぼすという考えは過ちであることが明らかだろう。オナニーが悪影響をおぼよすというのはユダヤ教と禁欲的なプロテスタントの想像に過ぎず、むしろ適度な性欲の発散は肉体的精神的に良い影響を及ぼす可能性のほうが高い。というわけで、がんばれ、諸君(だれ?)

 知らない方のための余談だが、オナニーは聖書でいうオナンに由来する。兄が死んだ後で兄嫁を娶ったオナンが子をもうけたくないが故に精を地に流し、それが原因となって殺害される。このオナンの行為は膣外射精だったのではないかと言われるが、不思議なことに自慰に対して使われる言葉となってしまった。オナンも浮かばれまい。って、たかだか膣外射精をしただけで殺された時点で浮かばれないか。それにしても、その程度のことで殺されなければならないとは恐ろしい宗教である。がくがくぶるぶる。

 話がずれてしまったが、ノンフィクション的な手法で次々と明かされる精子バンクの実情はなかなかに興味深く、面白い。想像よりもずっと複雑な姿に、生殖という分野はどうしても合理的判断だけではやっていけないものだと感じさせられた。性格の遺伝性などに興味を持つ方も楽しんで読めると思う。そして、生殖産業について冷静に考えるには、日本よりもはるか先を行くアメリカの現状を知っておくのに損はないだろう。

 ノーベル賞受賞者の精子バンクを謳いながら、ノーベル賞受賞者の子孫を一人たりとも残すことなく終焉を遂げた末路には、いろいろ考えるべきことがあると思う。遺伝とは、家族とはということに、人間の精神というソフト面から切り込んで考えるにはなかなか良いのではなかろうか。
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生物・遺伝・病原体 | 2006/11/03(金) 00:46 | Trackback:(1) | Comments:(2)

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こんばんは。お久しぶりです。
「ジーニアス・ファクトリー」、もう読み終えられたんですねぇ。
面白かったと言って頂けて安心しました。
私の感想はあまりにも曖昧すぎて、実際にはどんな内容の本かわからないようなところがあるので・・。^-^;

トラックバック、ありがとうございました♪
2006/11/03 金 19:50:24 | URL | ぴろり #B7q/.fmY編集
この本はノンフィクションながら、一つの会社の興亡を書くことで起承転結がはっきりしていることが魅力の一端かと思いました。
話を盛り上げてくれる変人や天才にも事欠きませんし。

書評は難しいものですよね。
Fluffyさんの書評は内容の紹介というよりも、気に入った本を読んで自分がどう思ったか、ということに重点が置かれているようで、それゆえになぜその本が面白いのかということが分かるように思います。
あとは本が好きだ、という雰囲気があることでしょうか。

こことは随分雰囲気が違いますね(笑)

また遊びに行きます。
2006/11/03 金 22:37:58 | URL | すかいらいたあ #-編集
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ジーニアス・ファクトリーデイヴィッド・プロッツ (2005/07/21)早川書房 この商品の詳細を見る数年前まで実際に存在していた「ノーベル賞受賞者精子バンク」のお話です。創始者である大富豪ロバート・グラハム氏のこと、バン
2006/11/03 Fri 19:52:13 | Fluffy