須藤靖/ブルーバックス
評価:☆☆☆
宇宙には4つの力がある。ミクロの世界で働く強い力と弱い力、電磁力、そして重力である。この4つの力は、それぞれが大きかったり小さかったりすると、宇宙が生まれてすぐに死を迎えたり、恒星や惑星が生まれなかったり、恒星が生まれても生物を育むことができるほど長く存続できなかったりする。この宇宙の存在は、それこそ奇跡のようなバランスの上に成り立っているのだ。
では、なぜ4つの力はゴルディロックスのスープのようになっているのか。科学における最悪の想定、神による創造が導かれるのか。いや、そうではない。断じて。
可能性の1つは、4つの力はこのスケールになるべくしてなったが、その原理を人類はまだ知り得ていない、というものだ。もう1つは、宇宙には我々が住み、知るこの宇宙だけではなく、いくつもの宇宙が存在し、我々は4つのスケールがたまたま生物を生み出せるような設定の宇宙に生まれたというものだ。
本書は、タイトル通り、宇宙は1つだけではなく他に存在するという仮説をたどりながら、なぜ観測可能な宇宙はこのような姿をしているかを探るものである。
ビッグバン宇宙論、インフレーション仮説、量子力学など、様々な理論や仮説を取り上げながら、複数の宇宙、すなわちマルチバースの考え方自体にも複数の考え方があることを示す。
どのモデルを採用するとしても、別の宇宙を我々が観測することはできない。観測可能なら同じ宇宙になるからだ。そのため、本書で語られることは全て仮説に過ぎず、しかもそれが正しいという証明もできない。
それでは、なぜ仮説を考える人がいて、その仮説を楽しむ人がいるのか。それは、人類の欲求の深いところにある「知りたい」を適えるためなのではないか。
現在の物理学の知見からでも、宇宙はかくも不思議に満ちていることが分かる。正しいかどうか知る術すら無いとしても、この世界を成り立たせているこの世界の不思議を感じることはとても楽しい。
本書に書かれたこと全てを理解するのは難しいし、私自身できていないが、それでも仮説の数々を眺めるのは良い経験だった。
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