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1443冊目 パレオマニア―大英博物館からの13の旅
パレオマニア―大英博物館からの13の旅 (集英社文庫)パレオマニア―大英博物館からの13の旅 (集英社文庫)
(2008/08)
池澤 夏樹

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評価☆☆☆☆☆

 月刊プレイボーイをたまに買っていた。せいぜい月に1回くらいのペースで。メリケン産のゴージャスな美女が惜しげも無く披露するヌードは、いやらしさを欠いていて、淫靡さは隠そうとするところに現れるのであるなあと思ったものだ。

 中道左派的な編集姿勢で、911の後、急速に右傾化する世界から一線を画した特集に特徴のあったこの雑誌の、他の楽しみの一つがこの連載だった。ちなみに、もう一つの楽しみは鹿島茂さんの『情念戦争』。

 池澤夏樹が大英博物館を皮切りに世界の博物館を巡る、実に豪華で羨ましい旅。まだ見ぬ、いや、生涯訪れることなどないだろう地への旅を、未知の世界を知る喜びと素晴らしい旅への憧憬とを感じながらページを捲ったことを思い出す。

 大英博物館、ギリシアの神殿、エジプト、インド、イラン、カナダ、ケルト、カンボジア、ベトナム、イラク、トルコ、韓国、メキシコ、オーストラリアを巡り、そして大英博物館に戻る。なんて贅沢なんだろう。

 訪れるすべての地は、大英博物館と繋がっている。印象的な遺物を見て、現地へ向かう。パレオマニアとは著者の造語で、古代妄想狂のこと。私も中世近世よりも古代に関心があるので、まさに私好みの話題ばかり。

 エジプトやメキシコのピラミッド、ウルのジッグラトといった巨大建築もあれば、見事な金属細工もあり、動物をモチーフにした像もあれば、肉感的な仏像もある。ミイラもあれば、自然や人間による破壊に耐えて生き残った絵画も。

 いずれにも、古代に生きた人々の精神が感じられる。客観性を保とうと三人称で綴られる文章から、本物の持つ力に触れた興奮が伝わってくるのが良い。

 本物を見たい。そんな思いが湧き上がってきた。著者の旅を後追いすることは不可能だから、せめてもう一度、ゆっくり大英博物館を巡りたいなぁ。

 ただ、著者が勢い余って現代文明批判をするのは、ちょっと近視眼的かと思う。確かに、歴史的な遺物には物凄いものがある。精緻で、作った者の心の動きまで表現しているそれらの物の持つ迫力は、量産品の遙か彼方にある。

 しかし、それらは、社会のほんの一握りの層が力を独占していたからこそ、生まれ得たものだ。我々のような庶民は、それらを見ることすら叶わなかっただろう。今は、かつてなく社会が平等になった。子供は死ななくなった。戦争も減った。それらのメリットと、豪奢な芸術品が生まれなくなったことを比べたら、私は現代文明の方により魅力を感じるのである。
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エッセイ | 2014/05/14(水) 18:07 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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