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1431冊目 三国志〈第5巻〉
三国志〈第5巻〉 (文春文庫)三国志〈第5巻〉 (文春文庫)
(2010/10/08)
宮城谷 昌光

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評価:☆☆☆☆


 曹操が遂に雄飛する。5巻はそれ以外に言いようが無い。彼の興した魏が(晋に乗っ取られるとはいえ)天下を統一するのは、この巻で定まったと言っても間違いではなかろう。

 では、何が起こるのか?まず、皇帝の推戴である。李傕や郭汜の手から逃げ出した献帝を戴いた曹操の輿望は一挙に全土を覆うようになるのだ。曹操に逆らうことは、即ち朝廷に乖くこと。いくら漢王朝の威信が地に落ちているとはいえ、これは強い。なにせ、領土欲に塗れた人々に格好の理由を与えることで、幾らでもライバルを弱体化させられるのである。

 政治的に一歩も二歩もライバルたちを出し抜いたことに加え、曹操の用兵が光る。東に呂布を撃ち、西に張繍を……倒しに行ったは良いが近衛隊長の典韋と嫡男の曹昂を失ってすごすごと逃げ帰る。ここで曹操が死んでいたら、歴史はどのように動いたか。衆望を担っていた袁紹の天下となったような気がする。

 ともあれ、生き残った曹操は、北方で遂に袁紹と対峙する。即ち、天下分け目の戦いともなった感のある、官渡の戦いが開かれるのだ。そこが本書を最も盛り上げるシーンである。

 ただ、そこに至るまでは実に紆余曲折がある。引っ掻き回しているのは、まず間違いなく劉備であろう。どうして彼がこんなにも歴史の表舞台で活躍できるのかさっぱり分からない。なにせ、戦は下手。政治的にも見るべき何かがあったわけではない。それなのに、彼に惚れ込む人が次々と現れる不思議。

 一方、南方では孫堅の遺児、孫策が将に破竹の勢い(この言葉が出来たのは晋が呉を攻めるときであります)で版図を広げていた。彼の非凡なところは、曹操と袁紹が対峙するその隙に長駆許昌を衝いて献帝を奪おうとしたところ。彼が横死しなければ、これまた歴史がどう動いたか。

 曹操対袁紹というメイン以外にも目配りしないと行けないところが多すぎるのだが、この権謀術数渦巻くところが三国志の魅力だから仕方がない。

 それにしても、本当に袁紹は策を好むが決断できないという通り。いや、官渡に布陣したのは別に悪い作戦じゃないというのは私も同意するけれども、謀臣を活かせないのはどうしようもない。彼に殉じる形になった沮授が気の毒になる。

 というわけで、三国志前半戦の山場が遂にやってきた。劉備は劉表の下に去り、江東は若い孫権が立った。次なる舞台は、草廬に三顧した劉備がようやく謀臣を得、そして曹操の代における天下統一を阻むことになる赤壁である。



 正史に基いての物語なせいもあるのだろうが、どうにも血沸き肉踊るシーンにならないのが宮城谷さんの文章の美点でもあり欠点でもある。盛り上げ方は吉川英治さんの方が上だなぁ。歴史の勉強っぷりは宮城谷さんが圧倒的に上だけど。なにせ、吉川版三国志では張郃が3回も死んじゃうしね。

 また、情報の取捨選択もあまり好みではない。関羽が顔良を討つシーンも、他のところで見るものとはぜんぜん違う。曹操が淳于瓊を配下にしようと考えたが、鼻を削ぎ落とされた顔を見れば彼は自分に従わないだろうと処刑するシーンも欲しかったかな。
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その他小説 | 2014/05/01(木) 19:46 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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