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![]() | 死体は悩む―多発する猟奇殺人事件の真実 (角川oneテーマ21) (2007/09) 上野 正彦 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
もの言わぬ死体から見えてくる真実とは何か?東京都の監察医として活躍した著者だからこそ語ることができる、死体の声なき声を語ったのが本書。
と言っても、構えることはない。本書には難しい概念や数式なんかは出てこない。著者が立ち会った検死においてどのようなことが明らかにされてきたか、また、そこから著者が何を感じ取ってきたかをざっくばらんに語っているものだから。
事実の部分は文句なしに面白い。いや、面白いと言っては不謹慎かもしれないが、死体から驚くほど多くの情報が得られることには純粋に知的好奇心を刺激するものがある。
常磐線三河島駅で発生した列車の二重衝突事故、いわゆる三河島事故や、ホテルニュージャパン火災といった、時代を画するような事件。あるいは、自殺に偽装された事件を解決するのに法医学が決定的な役割を果たした事件。更には、体裁が悪いからと自殺を自然死に見せようとする見栄をきちんと見破るテクニック。
例えば、川で溺死した場合と、殺された後で死体を川に遺棄した場合、溺死した方が川を流れ下る間に服が脱げていくという。だから、全裸で見つかった死体はむしろ溺死で、服を着ている方が事件性があるというのは、現場で見聞きした人にしか知らないことだろう。
どのようにしたら死体が発するメッセージを受け取り、それを他人に伝えられるかが丁寧に語られる。こうした人々の努力があってこそ、犯罪でありながらもそれが見抜かれないという問題を極力小さくしているのだろう。本当に真摯に検死に取り組まれていたことが文章から伝わってきて、頭がさがる思いがする。
問題は、今の事件は昭和と違って云々と言い始めるところ。事件の様相が違うのは、恐らくは事件に使われるツールが変わったためだ。人の心が変わったためではなかろう。正直、老人の繰り言としか思えないレベルの文章が散見され、その度にがっかりさせられた。
過去の事件を眺めてみると、自分勝手な犯罪の姿は変わらない。例えば事件史探求のようなところで昔の事件を見てみて欲しい。
と、残念なところはあるが、検死の重要性について考えさせられる本。法医学に興味がある方は読んで刺激を得ることができるだろう。
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