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![]() | モノの世界史―刻み込まれた人類の歩み (2002/07) 宮崎 正勝 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
人は弱い。ライオンやらトラのような鋭い牙や爪も無ければ、狼のような強力な群れによる噛み付き波状攻撃で獲物を打ち倒すこともできない。タカのように遥か上空から狙いすました一撃を食らわせることも出来ないし、毒蛇やコモドドラゴンのように一噛みで相手を打ち倒すこともできない。それなのに、地上の覇者は人間である。その覇権には、人がより強い獣を従わせることを可能とさせてきた「モノ」が大いに関わっている。
本書はそうした「モノ」がどのようにして人類社会を発展させてきたかを語っている。
まず取り上げられるのは、土器。穀物生産が意味あるものになるためには土器が必要と言われて目からウロコがポロポロと落ちてきた。確かに、穀物はそれをそのまま焼いて食べるのは難しく、何らかの工夫が必要だ。土器を用いることで簡単に消化に適した形に変えることができるのだから、「料理革命」といわれるのも納得である。
灌漑のための畑や水路はやがて都市を生み、都市では文明がどんどん発達していった。文字が作られ、暦が生み出された。知を蓄積できるようになってからの最大級のトピックは、やはり紙の発明と活版印刷だろう。
また、食品も進化した。ビールやワインが生まれ、オリーブが食されるようになり、チーズや豆腐が食卓に登るようになった。ナポレオン戦争では瓶詰めや缶詰が生まれた。皮肉なのは、この時に缶切りが生まれなかったことだろうか(笑)
大航海時代からはやはり圧巻。現代の物質文明に繋がるという意味でも、作られたものの精巧さ、巨大さ、そして影響力の大きさでも。
また、技術と文化を上手く結びつけている試みが面白かった。例えば、"大「道路網」がなければ世界帝国は成立しない"という項では、中国やローマ、ペルシアといった各地の帝国で道路網が建設されていた。ここは情報のハイウェイであり、同時に帝国を1つの集団に纏めるためのツールでもあった。モノを語りながら文化や歴史を紐解くのはなかなかに楽しい。
一方で、決して歓迎されないものもある。ペストだったり、オゾン層の破壊であったり。ジャレド・ダイアモンドの『文庫 銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』では病原菌もユーラシアの文明発達をもたらした原因に組み入れていたので、長期的に見ればメリットもあったかもしれないが、それでもやはり死者の多さには圧倒される。
モノから語っているので人類の通史にはなっていないはずなのに、気がついたら世界史を辿ったような気になるところが素敵だ。そして、取り上げるもののジャンルの広さがまた良い。次々と意外な話が出てくるので、トリビア的にも面白い。歴史好きな方にはお勧めです。
これまで興味を持って読んできた多くの本と絶妙に重なるのも嬉しかった。『世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史』、『保存食品開発物語』のように強烈な印象を残してくれた本を思い出させてくれた。
関連書籍:
![]() | 世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史 (2007/05) トム・スタンデージ 商品詳細を見る |
![]() | コーヒーが廻り世界史が廻る―近代市民社会の黒い血液 (中公新書) (1992/10) 臼井 隆一郎 商品詳細を見る |
![]() | 保存食品開発物語 (文春文庫) (2001/11) スー シェパード 商品詳細を見る |
![]() | 誰が本当の発明者か―発明をめぐる栄光と挫折の物語 (ブルーバックス) (2006/08/18) 志村 幸雄 商品詳細を見る |
![]() | 文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) (2012/02/02) ジャレド・ダイアモンド 商品詳細を見る |
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