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![]() | ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF) (2002/03) マーク ボウデン 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
1993年、ソマリア。独裁者モハメド・シアド・バーレが、自分の属する氏族に偏重した資源配分を行うことに反発した反乱軍と政府軍の戦いは、反政府軍がほぼ全土を掌握する形で最終局面を迎えていた。いや、迎えていたはずだった。しかし、反政府軍内部での主導権争いが激化。モハメッド・ファッラ・アイディード将軍派は、暫定政権との戦いに入る。アイディード将軍派は、国連にまで宣戦布告した。
戦いが続くことで、国家としてのインフラ等は全て喪われる。そうなれば、待っているのは飢餓である。事実、多くの難民が生まれ、大勢の人々が飢えに苦しむ。しかし、力を持つ人々は、自らの勢力を伸ばすことにのみ注力、難民支援の食料すらそれに利用する有様だった。
そんな中で、米軍は特殊部隊(レンジャー部隊とデルタフォース)を使ってアイディードの側近2人を捕らえる作戦を立案する。作戦は、1時間程度で終わるはずだった。そして、アイディード将軍派は有力な幹部を失い、弱体化するはずだった。
順調に進んでいた作戦は、ある出来事をきっかけに暗転する。そう。中型多目的ヘリコプター、ブラックホークがRPGにより撃墜されるのである。
斯くして、何千という敵対する人々の中に特殊部隊は孤立してしまう。
ヘリコプターが墜落するときの機長のセリフをタイトルに持つ本書は、このモガディシュの戦いの詳細に迫るノンフィクションである。アメリカ側・ソマリア側双方の立場から取材しているところは特筆すべき点である。但し、その難易度の問題で、アメリカ寄りの記述になっていることは否めない。
私はやはりかつて西側と言われた思想にこそ、共感を持てる。援助物資を手中に収めて自分の勢力を保つために利用する人々には厳しい目を向けざるを得ない。自分の氏族が利益を得ていることに安住し、資源を独占する体勢に安住して独裁者に与する人々にも批判を下したい。
一方で、彼らにも彼らの人生があり、生活がある。そして、それは凄まじく貧しい。資源を独占していても。
そこへ外国が乗り込んできて、指導者を放逐しようとしても、反発があるのはある意味で当然かもしれない。彼らの本当の敵は、安定した社会を作ることが出来ない自分たちのリーダー達であることも、彼らは理解していないのだから。
戦いは熾烈だった。世界最強の武装に守られ、最高の訓練を受けた戦士たちが何人も斃れていくのだ。ソマリアに平和をもたらすはずの活動なのに、肝心のソマリ人の民兵と戦って。
一人ひとりの兵士の普段の姿をも深堀りしているので、兵士たちに感情移入しながら読むとかなりしんどい。世界に溢れる武器の多さに暗澹となる。
上巻では、ブラックホークが2機撃墜され、孤立した兵士たちがなんとかヘリの乗員を救出しようともがく所で終わっている。その悲惨さと細かな描写は舞台が丸っきり異なるにも関わらず『レイテ戦記』を彷彿させる。圧倒的な描写に、目を離すことができなかった。
それにしても、これが冷戦が終わった後の世界を待っていた現実というのが悲しくなる。
結局、先進国は、アフリカのことはアフリカに任せる、殺しあいたければ勝手にやれ、というところに落ち着いてしまう。自助努力も自浄作用も期待できないのだから、仕方がないだろう。今も、ソマリアは内戦を続けている。彼らの上に平和が訪れるのは何時なのだろうか。
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