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![]() | 参謀の戦争 (1987/11) 土門 周平 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
既に中国との泥沼の戦いに飲み込まれながら、それでも日本はアメリカと戦う道を選んだ。ハル・ノートのような過酷な文書を出されてしまったら仕方がない、という意見もある。実際、私もあの時点においては、開戦は不可避であったと思う。
しかし、そこに至るまでの過程を眺めると、明らかな過ちが見受けられる。それも、うっかりミスのようなものではない。国家としての根幹に関わる、重大なミスが。
本書は様々な時点における日本の迷走の一部始終を追っている。
例えば、ノモンハン事件における統制の無さ(死傷者数ではソ連側の方が被害が大きかったが)。あるいは、日中和平のための”桐工作”の好い加減さ。首相となった近衛の無定見。全て、相手のことを考えず、自分に都合の良いことばかりを見ていたことに失敗の原因がある。
その致命的な現れは、三国同盟締結であり、ドイツの快進撃を目の当たりにしての対ソ連戦争の準備(関東軍特種演習)であり、もたらす影響を甘く見積もり過ぎた仏印進駐であった。
本書を読めば、どれほど軽はずみに戦争へと進んでいったかが分かって慄然とする。軍はテクノクラートであることを忘れ、政治家は言葉の重みを軽んじる。そして、目の前の利益を得ることにだけは貪欲である。加えて全体最適を考えないとなれば、その先が暗いことなど言わなくても分かろうというもの。
読むほどに暗い気分になってしまった。それでも、戦争に至るプロセスが、どれほど淡々としてもので、だからこそどれほど気をつけなければならないかを感じさせてくれたことに感謝。
せめて日本の近くにある、ちょっとどうかした国々が、こんな程度のノリで戦争に踏み切らないで欲しいと思わずに居られなかった。
著者は陸軍士官学校を卒業し、戦車隊中隊長で終戦を迎えた後は自衛隊に所属し、軍事史研究を重ねた人物。だから、その言葉には重みがあった。いささか古い本でもあるし、読みづらい文章でもあるのだが、太平洋戦争への無軌道なプロセスを知るにはうってつけと感じた。
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