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![]() | ミミズクとオリーブ (創元推理文庫) (2000/10) 芦原 すなお 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
語り手である主人公の奥さんは、実に料理が上手な人である。季節の食材を絶妙に料理しては、どうにも甲斐性なしに見えてしまう主人公に振舞っている。多分、中高生はそそられないだろうけど、中高年は口内に涎を沸かせてしまうだろう。おっさんであるところの私もそそられた口です、はい。
焼いたカマスのすり身と味噌をこねあわせた「さつま」、黒砂糖と醤油で煮つけた豆腐と揚げの煮物(俺が作るなら甘みはミリンで出すけどなあ)、殻付きの小エビと拍子木に切った大根の煮しめ、新じゃがと小ぶりの目板ガレイの唐揚げ。ああ、どれも美味しそうだ。このメニューだと日本酒だなあ。
しかし、この奥方は料理が上手いだけじゃない。鋭い洞察力で、客の会話から家に居ながらにして事件を解決してしまう、安楽椅子探偵でもあったのだ。
本書はこの奥様の縦横無尽の活躍を描いた短篇集である。
その多くにおいて、事件の話を持ってくるのは主人公の旧友である警察官の河田。彼が主人公と美味しいものを食べ、酒をかっくらいながら事件の話をすると、奥様の一言で解決の端緒を掴んでしまう。もう警察官いらないんじゃないのか的な流れになりそうでありながら、実働部隊としては必要と、猟師と猟犬というか、鵜飼と鵜というか、そんな話である。
友人が突然配偶者に逃げられてしまったとか、やり手のキャリアウーマンが殺害され不仲の夫が捜査戦場に浮かんでいるとか、資産家が撲殺された(実際は意識不明なだけなのだが、語り手が撲殺という言葉が好きだから撲殺されたことになっている)とか、不思議な事件を鮮やかに解決してしまう。
でも、安楽椅子探偵ものって、ちょっと苦手だ。限られた情報から如何に驚くべき結論を導き出すかがこのジャンルの見せ所だと思うのだけれども、意外であれば意外であるほど強引さを感じてしまうのだ。
そんなわけで、好きではないジャンルでも、この人の文章はどこか味があって良い。同窓会で四半世紀前の同級生と会う時には、「生い茂った雑木林の頭はサラ地となり、紅のリンゴの頬は下に垂れて西洋梨となった」という。こんな表現が、殺人の多いストーリーでありながらどこか間延びした雰囲気を感じさせる。きちんと伏線は張られていて、卑怯だとは感じられないのもポイントが高い。
軽い感じのミステリを読みたい方にはオススメである。
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