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![]() | 生物と無生物のあいだ (講談社現代新書) (2007/05/18) 福岡 伸一 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
人間は生き物。犬も猫も生き物。ネズミもシマウマもミミズだってオケラだってアメンボだってメクラチビゴミムシだって生き物。大腸菌とかコレラ菌、マラリア原虫なんかも入れてやっても良いかな。でも、石は生き物じゃない。時計も車も本もパソコンもそう。
こうやって並べてみると、生物と無生物の違いは明らかに見える。しかし、その違いを明示しようとすると、途轍もない困難にぶち当たってしまう。今でも生物と無生物のあいだをはっきりと分ける境界線について、科学者の間ではっきりと統一された意見は無いのである。
困難を呼び込んでいるのは、ウイルス。奴らは自分だけでは生物として完結していない。なにせ、自分だけでは増殖できないのだ。その代わり、宿主の細胞に入り込み、自分の複製製造機と化してしまう。ところが、彼らの材料も、材料を指定するための暗号も、全て生物が使うものと共通している。即ち、A、T、C、Gで表される、たった4種類のアミノ酸からなっている。こうした存在があるから、”生命の本質は何か”という問いには誰もが納得する答えは出せないのだ。
技術的な限界からウイルスの存在に気付けなかった、ある意味で時代に恵まれなかった一人の科学者を追うことから本書は始まる。その人物の名は、野口英世。日本では偉人として取り上げられることの多い彼だが、外国での評価は全く異なる。彼は、何も成し遂げていないとされているのだ。
野口の悲劇から説き起こし、ワトソンとクリックによるDNAの発見、狂牛病など、生物と非生物との間を巡る様々な研究を取り上げている。
その中で、自らも研究者として関わった新発見に纏わる話が織り交ぜられて研究生活を送る中での緊張感を垣間見せてくれたりと、広い楽しみ方ができるのが特長。
特定の機能をわざと欠損させたノックアウトマウスが、予想されていた障害を示さずに元気に生きているというトピックのように、生物が発達させた生き抜く力の凄さを感じさせてくれたことも嬉しい。評判に違わぬ素晴らしい作品だった。
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