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![]() | ヘリはなぜ飛ばなかったか (1998/01) 小川 和久 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
阪神大震災において、街が火に飲まれていく姿を、その上を為す術もなく旋回するだけのヘリコプターの姿を、覚えていらっしゃる方は多いだろう。私には何もしないヘリに罵声を浴びせるしか出来なかった方の記事を読んだ記憶がある。
当時の私は、ヘリで、あのような燃え広がる大規模火災を消化できるとは思えなかった。だから、その後の国会答弁で空中消火は困難だったとの主張を信じた。しかし、その考えは間違っていたようだ。
まず、空中消火とは日の燃え盛る中心を消そうとするものではないらしい。むしろ、辺縁に繰り返し水を注ぐことで延焼を防ぐことが主目的だ、というのだ。確かに、その方法であれば、ヘリの運ぶ比較的少量の水でも十分に役に立つだろう。機動力に優れ、情報収集も容易に行うことのできるヘリは、あの火災を防ぐ絶好の手段だったかも知れない。しかし、ヘリは飛ばず、初期消火に失敗したことは広大な地を焼土に変えてしまった。何故か。本書はその謎を追っている。
本書で明らかにされるその答えは、唖然とするようなものだ。最新の研究を踏まえることなく、20年も昔のデータに固執する。過ちを認めることなく、つまりは犠牲者の屍の上に胡坐をかいているだけの幹部たち。これでは犠牲者も、現場で本当に命を賭けて働いた消防士たちや自衛官たちも浮かばれない。
空中消化の先進国である、アメリカに学ぶことはたくさんあるようだ。本書で多くの指摘が為されていることを活かして欲しい。完了の不作為を防ぐことができるのは、国民が正しい情報を知ることなので、ヘリによる空中消火は、特に初期の火災を鎮圧するのに極めて有効であることを知っておいて損することはないだろう。
思い出したことがある。それは、日本陸軍と日本海軍のいがみ合い。彼らは事あるごとに角突き合わせて互いに一歩も引かなかった。開発も別々に行い、統一する気になればできたものすら敢えてべつのものを使った。だから、海軍の飛行機が陸軍の基地に不時着しても修理すらできなかったという。規格統一は低コスト化に貢献できることもさることながら、なによりも融通性を生む。そのメリットはどれほど声を大にしても足りないことはない。
こうした、日常の活動シーンにおいてはとるに足らないことも、全体としてコーディネートする組織があっていいだろう。東日本大震災に見るまでもなく、今後も地震は日本を襲う。だから、真摯に、科学的に、そして人知を尽くして、どうすれば被害者をひとりでも少なくすることができるか、それを研究して欲しい。そのための費用負担=税金なら誰もが受け入れるだろうから。
少し古い本ではあるが、勉強になる点が多くあった。今後の空中消火の成り行きに注目していこうと思う。
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