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BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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1562冊目 サバンナ・ミステリー 真実を知るのは王か人類学者か
サバンナ・ミステリー 真実を知るのは王か人類学者か (ネットワークの社会科学)サバンナ・ミステリー 真実を知るのは王か人類学者か (ネットワークの社会科学)
(1999/12)
川田 順造

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評価:☆☆


 久々に、文化人類学ものを。

 本書には、西アフリカで数百年前から王を戴いてきたモシ社会を研究テーマとしてきた著者が、それまでほぼ前例のない即位33周年の儀式に立ち会った顛末が記されている。

 先進国で生まれ育った人であれば、「では過去の記録を読むか映像を見れば何を為すべきか分かるよね」と思うだろう。しかし、この人々は文字を持たない。勿論、映像など存在しない。ということは、儀式で何をすれば良いのかも分からない。

 だったらいっそのこと儀式なんて辞めちゃえば?というのが伝統やら常識に全く重きを置かない私なんぞは思ってしまう。伝統なんて、誰かが始めたことなんだよ?盛り塩の泣けてくるくらいに情けない由来、知ってます?三国時代終了後、晋の莫迦皇帝が後宮にこれでもかとばかりに抱えていた美女の部屋を訪れるとき、自分で選ぶのは面倒だからと羊に乗ってその羊が止まったところの女性を相手にしていた。女性側は部屋の前に塩を盛って羊が塩を舐めるために止まってくれるように祈ったのが起源。知ってみれば何の威厳も無い。ついでに、この晋はあっという間に崩壊して戦乱が長く続く。

 まあ良い、仕来りは仕来りというわけで、彼らはほぼ噂話でしか知らない儀式を行うべく、奔走を始める。

 面白いのは、その中で語られる建国物語。ローマが狼に育てられた兄弟を戴くように、日本が出来損ないの子供は海に流してしまうイザナギとイザナミに作られたように、ギリシアが我が子を喰らう恐ろしい神に端を発するように、モシにも伝承がある。ある王国から出奔した女性の話だ。彼女は荒野を彷徨い、そこで出会った狩人と結ばれて子をなしたのが起源だという。しかも、その女性の名前は日本語にすると「私の体を好きにして良い」という大変に色っぽいものだという。

 このモチーフが繰り返し出てくるのだが、詳細は記録される場所によって異なる。そこから、モシ社会がどのようにできてきたのか、著者はまずは理詰めで考え、次いで想像を巡らせる。

 全てが口伝でしか語り継がれないところにおいて歴史はどのようにありうるのか。その問の真骨頂が、まさに著者の目の前で起こる出来事。記念式典は、王が行った儀式は誰に向けたものか、著者の調べはモシ社会の人々が信じるものとは全く違う。読者には著者が正しいように見えるが、モシの人々には彼らは正しいと映っている。

 事実は一つでも、真実は人の数だけあるのだ。

 ただ、私としては、このように人によっていうことが違うことから歴史を探るのはなんとも迂遠で、しかも得られた結論が信用出来ないと思えてならない。歴史書(これもまあ実際には歪曲や捏造だらけなのだけど)や遺物といった、もうちょっと客観的な評価が可能なものに頼りたいと感じてしまう。

 そうした思いはともかく、社会において伝統がどのように作られていくか、その貴重な証言なのは間違いがない。やがて、この儀式は歴史へと姿を変えていき、そして変容した形で社会に語り継がれていくのだろう。

 もしかしたら、文字がある社会であろうとない社会であろうと、あらゆる伝統はこうやって作られていくのかもしれない。
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ノンフィクション | 2014/10/31(金) 19:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1561冊目 雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史
雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史
(2009/10/23)
マイケル・ポーラン

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評価:☆☆☆☆


 あなたは今日トウモロコシを口にしましたね?え?してない?それは間違いです。トウモロコシは形を変え、様々なところに忍び込んでいる。例えば、朝食のシリアル。あるいは、スナック菓子、フライドポテト、マヨネーズ、マーガリンといった食べ物、清涼飲料水、それどころか、肉でさえ間接的にトウモロコシを食べていることになる。

 アメリカでは、平均的なスーパーに並ぶ4万5千点の商品の4分の1にトウモロコシが入っているという。

 どうしてだろう?本書はまずここに注目する。謎を追ううちに、読者はトウモロコシが大量に栽培される理由となった生物化学的な事情や、アメリカの農業行政、人間の性とそれを利用する食品業界というように、広く社会を横断して行くことになる。

 トウモロコシに関しては、そこから作られる甘味料(果糖ぶどう糖液糖がそう)の濫用が、大量の糖尿病患者を生み出しているのが人類にとっての問題だ。『デブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのか』では、スーパーサイズの清涼飲料水やら大量に盛られるポテトフライが人の欲望を刺激し、糖尿病患者を生むメカニズムが語られている。値段の差が少しだからとLサイズを頼んでは行けない。

 ところが、この問題は人類だけでは終わらないのである。溢れたトウモロコシの流れゆく先、畜産の現場。本来ならトウモロコシを食べない牛が、肥育速度を上げるためにトウモロコシを中心に組み立てられた配合食料を与えられている。無理のある食事は、牛の健康を大きく損なう。また、穀物が多いことで本来なら中性である牛の第一胃が酸性となってしまい、そこで病原性大腸菌O-157が耐酸性を獲得する、あるいは牛が病気にならないように抗生物質を大量投与することで耐性菌を生むという問題も指摘されている。

 食品業界がおぞましく変貌している様には驚くばかりだ。動物を殺さずとも得られる乳製品ですら摂取を拒否する完全菜食主義者(ヴィーガン)の主張も分からなくも無い気がしてくる。

 一方で、本書の後半で述べられる農家はかなり様相を異にする。第一部でエネルギー収支の中心を占めたのがトウモロコシなら、第二部は牧草だ。牧草?いくら人間が雑食性だからといって、それは食べ物ではないよね?そう思って読み始めると、これは牧場を中心にした視点であった。

 放牧と農耕を繰り返すことで、土地は肥えていくという、アタリマエのことがここでは述べられている。単一種栽培という、流通業者や大規模量販店、そして一円でも安く食料を買いたいという消費者の欲求に合致したシステムには乗り切れない、このあり方しか人類が今後も生き残ることは出来ないように思える。『土の文明史』では、モノカルチャーによって土壌が失われていく様が描かれていたが、この取り組みなら土壌の喪失を防止できるのは大きい。

 ただ、それを考慮してもまだまだ驚くべきことがある。それは、石油の大量消費だ。生産は勿論、運搬にも大量の化石燃料が使われる。食料から得られるカロリーより、遥かに運搬に使われるカロリーの方が大きい。安価な石油という、限りある資源に今の社会は完全に依存しきっていることが恐ろしい。

 食料生産の現場の、目を覆いたくなるような惨状も、持続可能な社会に向けた食料生産のあり方も、共に語っているのが魅力であろう。下巻においてどのように話が進むのか、楽しみだ。


関連書籍:
デブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのかデブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのか
(2003/06/25)
グレッグ・クライツァー

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土の文明史土の文明史
(2010/04/07)
デイビッド・モントゴメリー

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その他科学 | 2014/10/30(木) 22:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1560冊目 蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係
蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係
(2014/07/10)
大倉 崇裕

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評価:☆☆


 バスで、スズメバチが飛び回ったことによる軽い騒動があった。同じように、電車の中でも。しかも、どちらも動き始めてから暫くしてハチが飛び始めている。いくらスズメバチの飛行速度が速くても、バスや電車に追いつけるものではない。いったい、ハチはどこからやってきたのだろう?

 その頃、警察では"ギヤマンの鐘"なる新興宗教への捜査に向けて動いていた。オウム真理教を思わせるこの教団は、信者を監禁に近い形で道場に押しこめ、喜捨を強要する。そのことから、過去一斉捜索が行われたが空振りに終わり、逆に教団の放ったと見られるヒットマンに管理官が撃たれて重体に陥る。当然、ギヤマンの鐘へ、前回を遥かに上回る規模で司直の手が伸びることになっていた。

 警察組織全体としてはこの対新興宗教の捜査でてんやわんやだとしても、当然それはとは関係のない部署もある。それがサブタイトルにある総務部動植物管理係。

 おいおい、幾らフィクションでも、もうちょっと現実味のある設定を作ってくれよ。

 兎に角、過去の怪我が元で捜査の一線を外れ、ここに異動してきた須藤友三。彼と、警察博物館に勤める生物オタクの薄圭子のコンビが物語の中心である。

 このヒロイン、昆虫に限らず生物全般が好きだが、一般常識に欠けている。その設定は別に構わない。というか、一般常識に欠けたヒロインは、小説界においてはもう掃いて捨てても捨ててもキリがないくらい居るのでもう食傷気味なのだが、それは別にどうでも良い。ただ、脱線ばかりで話の腰を折り続けるのは不快の一言。おまけに、語彙が少ないらしく、お鉢が回ってきたといえばハチ?と聞き返すような混ぜっ返しが多すぎてイライラする。私も確かにウンチクが好きではあるが、これは酷い。

 閑話休題、2人のところにやってきた話は、山登りの最中、スズメバチに刺されて入院した男のもの。彼は、どうもスズメバチの巣に誘導されたようなのだ。

 ハチに刺されて亡くなる方のニュースが毎年のように報じられるが、その犯人はまず間違いなくこのスズメバチだ。その巣に誘導された場合、死んでもおかしくない。犯人の狙いは何なのだろうか?捜査を続けるうちに、冒頭のハチにまつわる出来事が判明し、何者かがハチを操っている可能性が濃厚になる。

 しかも、そうこうしているうちに、悪質な事件が起こる。高速道路を走行中の車に、スズメバチの封じ込められた小箱が投げ入れられ、そこから飛び立ったスズメバチのせいで運転手が刺され、コントロールを失った車が事故を起こして助手席の男性が死亡するというものだった。

 事件の背後にギヤマンの鐘が見え隠れするのはまあお約束。一見、本流とはまったくかけ離れたところに居る主人公たちが、気がつけば対ギヤマンの鐘の最前線に居る、という流れは予想通りで驚きが全くないところが驚きであった。

 アライグマ4匹に付けられた名前がウィンダムとミクラスとアギラとセブンガーだったり仔イノシシ(ウリボウ)はザラガスだったりする小ネタは気に入ったけど、ハチャメチャなヒロインという個性に頼りすぎのキャラクター小説に感じられた。登場人物は家庭環境やら主義思想やらを全く感じさせないので、どうにも生きた人間っぽさを感じさせないのもマイナスかな。犯人も途中から誰にでも分かるようになっているので、気になるのは狙いだけだけど、それも大したことはないのでミステリとしても評価は低め。

 生物のウンチクは面白いネタが多いのだから、それを考えるとちょっと残念だった。
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推理小説 | 2014/10/29(水) 21:22 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1559冊目 専門家の予測はサルにも劣る
専門家の予測はサルにも劣る専門家の予測はサルにも劣る
(2012/05/23)
ダン・ガードナー

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評価:☆☆☆☆☆


 未来は誰にも分からない。確かに。でも、同じ分からないにも程度があるはずだ。例えば経済。経済学は数学を使っていていかにも学問っぽい感じがするし、ノーベル数学賞の代わりに経済学賞だって無理やり作った。未来が予測できてもおかしくないのではないか?

 だが、こうした期待は悲惨なほどに、悲惨を通り越して喜劇的なまでに間違っている。タイトル通り、専門家の予測はサルにも劣る。テレビで滔々と自説を述べるあの学者も、数年後の景気の行方を大胆に予想したあの本も、必ずや外れることでありましょう。そもそも、彼らがそんなにも精確に未来を予想できるのであれば、投資で大金持ちになっているはずだ。そして、彼らは大金持ちではない。である以上、彼らの予想が外れるのはおかしくない。

 本書には実際に専門家がどれほど未来予想を外してきたか、その事例が豊富に収められている。それも些細なものではない。歴史的に見ても大事件と言えるようなことすら外してきた。

 例えば、ソ連崩壊を的確に予想した人はほとんど居ない(公平を期すため、本書には数少ない例外が載っている)。石油の値段の推移も予想を大きく裏切ってきた。近年では、リーマンショックですら、専門家は予想できなかった。フセインが大量破壊兵器を隠し持っていると自信満々に宣言してイラクに侵攻した米軍が遂にそれを見つけられなかったのもそうだ。

 どうしてこんなことになるのだろう?一般人よりもより多くのことを知っているからこその専門家で、だからこそ一般人は彼らの御託宣を仰いでいたというのに。

 専門家が外した予想、言い当てられなかった出来事をただ羅列しているのではない。どのような専門家がより予想を外すかという、ちょっと意地悪なことにも光を当てている。それによると、実に困ったことに自信満々な人ほど予想を外すそうである。何故か?彼らは、ある法則を使って未来を予想している。彼らはその法則に自信を持っているが、そもそもその予想が正しいとは限らないし、仮に正しかったとしても、初期条件がほんの少し違うだけでも結果は大きく変わってしまう。

 後出しジャンケン的に見れば法則があるようにしか感じられない出来事も、実は偶然の産物であったり、サンプリングが誤っていたりするのだ。その例にアルビン・トフラーが出てくるのは、昔からの読書家には痛い指摘かもしれない。

 タイトルは、こうした未来予想を専門家にやらせたのと、チンパンジーがダーツ投げした結果で、専門家が負けることから付けられている。それほどまでに未来を予想することは難しいのだ。だから、専門家だからと無批判に信じるのではなく、そんなことを言っている人もいる、位に留めておくのが良いだろう。

 また、予測を外しにくいのは、色々な情報を組み合わせるタイプであるという。これは、我々自身も多くの分野に目配りをして知識を得ていかなければならないことを示してるのかもしれない。謙虚に、高品質の情報を、大量に得る。ううむ、ハードルはとても高そうだ。
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その他科学 | 2014/10/27(月) 23:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1558冊目 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)
(2013/11/08)
奥泉 光

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評価:☆☆☆☆


 関西圏随一の低偏差値を誇る敷島学園麗華女子短期大学、通称レータンから千葉県にあるたらちね国際大学へと赴任先を変えた桑潟幸一、通称クワコー。彼は、学生が辛うじて自分の名前を漢字と平仮名で書くことができるという底辺校にあって尚、随一の莫迦教師であった。

 という設定を、面白おかしく語る序盤ですでに爆笑。腹筋が筋肉痛になるレベル。これヤバイ。何がヤバイって、電車の中で読んでいたら確実に不審者だ。家で読んでいて本当に良かったと胸をなでおろしています。

 さて、どうしてそんなにも莫迦な教師が、沈没寸前の堂々たる泥船、レイコーから引きぬかれたのかというと、まさにその能力を買われてのことであった。つまり、彼が御しやすい莫迦である、という、他に冠絶する才能によって。

 早速千葉へとやってきたクワコーが、自分がダメ人間なのは大阪の爛れた雰囲気が悪いと、全大阪びとに謝るべき暴言を吐きつつ、今度は千葉を田舎だ田舎だと散々に莫迦にするという、主人公のダメっぷりをこれでもかと晒す展開には驚き。まさか、ミステリでこんなにもどうしようもない人間が主人公になるとは!彼が千葉を莫迦にするのは、出身が埼玉というのもあるという。埼玉と千葉が低レベルに張り合っていることを知らない人にはさっぱり分からないことではあるが。

 兎も角、彼は実にダメのダメダメなのであるが、それなのに、彼の周りには事件が起こってしまうのである。

 まず、充てがわれた研究室が、曰くのある物件であるということ。何故か4月に不可解な事件が勃発するという。4階のその部屋は、自殺者が居たとか前の使用者が窓から転落していたとか、物騒な話に事欠かない。そして、早速、彼は怪奇現象に見舞われてしまうのである。

 誰も居ないはずなのに笑い声が聞こえてきたり、4階なのに窓をノックする音が聞こえたり、休日に大学に来て働き者っぽい印象を与えようとしてみればエレベーターが止まってしまったり。極め付きは、彼が見てしまうこと。窓の外にぶらさがる縊死体を。といっても、それは偽物で、クワコーが顧問をやらざるを得なくなった文芸部の変人女子のしわざだったわけだが。

 勿論、無能の中の無能、クワコーに事件を解決する力などありはしない。彼はただ怯えるだけだ。実際に活躍するのは、神野仁美、通称ジンジンである。クワコーと部員の関係をイヌの群れに例えると、彼女らはクワコーよりずっと高い序列。千葉随一の莫迦学校なのに(笑)

 この呪われた研究室の謎に続いて、クワコーのもとに持ち込まれるのは、とある作家の襲名を狙う人物からの依頼。そして、クワコーをたらちね国際大学に引っ張ってくれた恩人にして歩くセクハラの鯨谷(シー・シェパードでもこの鯨の駆除には反対しないだろうというアレな人物)が権力拡大のために巡らす謀略にまつわる森娘の秘密の3編が収められている。

 人物のアクの強さと、大学についての自虐とも諧謔とも受け取れる教師・生徒・事務員三つ巴のダメっぷりさと、文芸部の濃ゆいメンツが織りなすはちゃめちゃさが渾然一体となったユーモアミステリ。

 一気に読むと飽きる感じはするが、読んでいて楽しい日常系ミステリであった。続きも手を出してみよう。
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推理小説 | 2014/10/26(日) 20:44 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1557冊目 タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物
タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物 (ヒストリカル・スタディーズ10)タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物 (ヒストリカル・スタディーズ10)
(2014/04/17)
キャサリン・ハーモン・カレッジ

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評価:☆☆☆☆


 先のワールドカップで、結果を見事に予想したタコのパウル(残念なことに既に故蛸である)が一躍有名となった。それがタコの知能を示すとはとても思えないが、それでもタコが賢い生物であるのは間違いがない。この本を読もうと思ったのも、他の本でタコが示す驚くほどの知的な行動を紹介しており、興味をかきたてられたからだ。

 タコがどうしてこんなに賢いのか、そこに謎が残る。タコの送る短い生涯、単独生活、脳の発達を阻害する軟体動物という設計思想の全てが、知能の発達理論と矛盾する。だが、彼らは高い知能を持つ。しかも、他にも多くの才能をもっているのだ。本書で紹介されているタコの才能は、事前に持っていた浅薄な知識だけではとても計り知れないものだった。

 タコは捕食動物である。しかも、稚児の段階では生き餌しか食べないという。狩りと天敵から隠れる必要性が彼らの知性の背後にあるのだろう。特に、この両方の手段に共通して用いられる、擬態は見事なものだ。

 擬態なら、枝に化けるナナフシやら枯葉そっくりのガやらの例もある。周囲に合わせて姿を変えるというならカメレオンが思い浮かぶ向きもあろう。しかし、タコはそれとはまた違う、一段上の変装をしなければならない。それは、水中においては光が一方向から来るわけではなく、揺らめく光の中で、どこから見ても獲物からも天敵からもバレないことが必要だというシビアな条件があることによる。

 高い知性、絶妙な擬態に加えて、タコには捕食者として研ぎ澄まされた武器がある。それは毒と、吸盤である。毒については、猛毒のヒョウモンダコの存在は知っていたが、どのタコも多かれ少なかれ毒があるというのは知らなかった。食べる分には大丈夫とのことなので安心だが、意外だ。また、吸盤は獲物を捕らえて離さないことに加えベルトコンベアのように口に運ぶ役割までするという。

 こうしたタコの能力を、様々な科学者に訪ね歩いた記録が本書。実験室で見られる迷路脱出や、タコの動きを模したロボット作りが困難を極めているというのには、自然界への畏敬の念を感じずにはいられない。

 しかも、タコ料理から、日本の触手ものと呼ばれるポルノのジャンルに至るまで、幅広く論じているところもまた楽しい。とりあえず、タコを食べたくなった。高タンパク低脂肪というのも魅力だが、あの味わいは忘れがたい。次にタコを食べるときには、ちょっと彼らの知性を思い出すことにしよう。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/10/24(金) 23:47 | Trackback:(1) | Comments:(0)

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1556冊目 2100年の科学ライフ
2100年の科学ライフ2100年の科学ライフ
(2012/09/25)
ミチオ・カク

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評価:☆☆☆☆☆


 2100年、人類はどのような暮らしをしているだろうか?

 これまでも様々な専門家が様々な未来を予想し、そして無残に敗れ去ってきた。いや、そう言ってしまっては、事実を見誤る。幾つかの予想は、まるで未来から来た使者の預言ででもあるかのように、正確に未来を言い当てた。

 例えばジュール・ヴェルヌ。彼が予想した月への旅は、打ち上げ地点、宇宙船の乗り込むパイロットの人数、旅行にかかる時間、海に着水するという帰還方法を恐ろしいまでに当てた(打ち上げ地点は近傍、という意味でだが)。あるいは、レオナルド・ダ・ヴィンチ。彼のスケッチした空をとぶ乗り物は、彼の生きた時代にはまだ存在しなかった技術さえ用いることができれば、きちんと空を飛べるものであったという。この2人は本書でも紹介されているが、ここに静止衛星を予言したアーサー・C・クラークを加えても悪くなさそうだ。

 彼らが他の人々と異なっていたのは、科学についての深い洞察を持っていたからである。2100年の未来を予想するのにも、科学を知っていなければならない。そして、著者にはその資格があると言えよう。なにせ、ニューヨーク市立大学の理論物理学教授であり、サイエンス・チャンネルのテレビ番組製作にも深く関わっているというのだから。

 未来を覗く旅の最初は、情報科学について。つい先日、『第五の権力---Googleには見えている未来』でも情報化が語る未来像を覗いたわけだが、本書は更にスケールが大きい。

 この情報科学と深く密接した形で、人工知能が発達する。それは医療の姿を変えるだろう。未来の技術であるナノテクノロジーを概観し、そして一番の懸念であろうエネルギー問題へと進む。人類の文明を永らえさせるには膨大なエネルギーが必要で、化石燃料や核燃料といった、埋蔵量が限られた資源に依存し続けることができない、という指摘は重い。

 続いて、宇宙を眺める。生命の存在しうる天体、宇宙開発と、夢が膨らむ。未来のロケットの話もあるにはあるが、なんといっても目玉は火星のテラフォーミングと軌道エレベーターであろう。後者は『天に梯子を架ける方法―科学奇想物語』にもあった、夢の技術だ。

 また、ここでは外宇宙の探査としてナノテクノロジーを用いた方法が熱く語られる。どでかいロケットを光速に近づけるのはエネルギー的に厳しい(本書はそれでも果敢に挑戦している)が、ナノサイズであれば、簡単に亜光速を出せる。これらを大量にバラ撒くのは悪い方法ではないと思われる。随分前に読んだ『無限アセンブラ』が、それを使った話であった。

 科学や技術が進めば、社会も変わる。宇宙の話の後は、一転して人類社会の展望についてだ。富や文明を語るところでは、歴史の大まかな流れをばっさりと科学中心に切り取り、短い文章で来し方を明らかにする腕には圧倒される。

" 第一の力は重力で、われわれを大地につなぎ留め、太陽の爆発を防ぎ、太陽系をひとつにまとめている。第二の力は電磁力で、街に明かりを灯し、発電機やエンジンを動かし、レーザーやコンピューターの動力源となっている。第三と第四の力は弱い核力と強い核力で、原子核のまとまりを保ち、天の星を輝かせ、太陽の中心に核の火を生み出している。(略)
 そうした力がひとつずつ物理学者の手で解明されるたびに、人類の歴史が変わった。(略)"

P.376より引用

 このように、実に簡潔に4つの力の働き方とそれが人類史に与えた影響を解説してくれているのに感銘を受けた。科学や技術にも限界はあるけれども、これほどまでに人類を幸せにしてきたものは他にないだろう。

 この本では、限界を限界と指摘しながら、ポジティブに未来を語っている。悲観論者が歴史を作ったことはない。夢が沢山詰まっていて、読んでいてとても楽しい。確かにマンガやSFが描いた未来はまだまだ遠いが、1900年ごろの生活と今を比べてみれば、余りの様変わりに愕然とする程だろう。

 本書で描かれる魅惑的な未来にも興味があるが、今既にできている技術の凄さにくらくらする。自分が如何にものを知らないかが鮮明になって、ちょっと悔しいのとまだまだ知るべきことが山ほどあることに嬉しくなるのと、複雑な気持ち。

 しかも、扱う領域は科学や技術だけではない。なんとなれば、こうした進歩は文明にも影響を与えるし、それは巡り巡って政治や社会を変える力となるのだ。加えて、高度に文明化された社会を維持するためには、労働者の質も様変わりする必要がある。となれば、労働者の質を高めるために教育は更に重要なものとなるだろう。

 単なる技術予想にとどまらず、エネルギー問題、教育問題、政治問題まで広く論じているところが余計に刺激的だ。今を生きる身には、こうした分野でまだまだ問題が山積しているように思えるのは事実であるが、長期レンジで見れば、恐らく本書の指摘通り、社会は変革を余儀なくされる。そう思わせるだけの説得力があった。

 未来に近づくのが楽しみになる、そんな一冊。人類社会がどうなるのか、短期的、中期的、長期的に分けて記してあるのも嬉しく、我々自身の思考の訓練にも役立ちそうだ。科学だけではなく、技術に興味がある方にも是非ともお勧めしたい。


関連書籍:
第五の権力---Googleには見えている未来第五の権力---Googleには見えている未来
(2014/02/21)
エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン 他

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天に梯子を架ける方法―科学奇想物語天に梯子を架ける方法―科学奇想物語
(2000/04)
ジェイ イングラム

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無限アセンブラ (ハヤカワ文庫SF)無限アセンブラ (ハヤカワ文庫SF)
(1995/11)
ケヴィン・J. アンダースン、ダグ ビースン 他

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その他科学 | 2014/10/22(水) 23:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1555冊目 ときめくコケ図鑑
ときめくコケ図鑑 (Book for Discovery)ときめくコケ図鑑 (Book for Discovery)
(2014/01/24)
田中美穂

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評価:☆☆☆


 コケにときめきますか?私は全くときめきません(笑)。だけど、このタイトルが良いではないですか。コケを好きだという気持ちがひしひしと伝わってくるこの感じが。

 世界でおよそ18,000種が知られ、日本にも1,800種が生息しているという、コケ。蘚類、苔類、ツノゴケ類からなるコケ類は、草や木と比べると分化の進んでいない、原始的な形態の種である。たとえば、彼らは根を持たない。それなのに、ふと見ると、いる。ある時は地面に、ある時は塀に、またある時には木の幹に、気が付けば、彼らがいる。

 だが、どんなコケがどんなところにいて、どうやって生きているか、私は全く知らない。なので、入門書に良いかと思って、手に取ってみた。

 結論から言うと、入り口としては申し分ないと思う。薄手ではあるが、1ページごとに1種のコケについて、写真と簡単な解説がのっている。樹木が様々な形をとるのとまったく同じように、コケもまた、種によって姿が全然違うことに気付く。草と見間違うほど、葉をふさふさと茂らせたものもいれば、もやしみたいな種もいる。形だけではなく、生息場所も全然違う。

 また、和名が楽しい。ヒョウタンゴケ、シラガゴケ、ホウオウゴケ、ダチョウゴケ、ヤスデゴケ、クサリゴケ、カビゴケなんていう、カビなのかコケなのかはっきりしろと言いたくなるのまで居る。中でも目を引くのが、ナンジャモンジャゴケ。発見当初はコケなのかどうかすら分からなかったというこの種には、近縁に当たる仲間も居ないそうである。

 こうしたコケの特徴に加えて、どういったところでコケに出会えるかを熱心に語っているところも、コケ好きが書いたと思わせてくれる。

 一方、配置に趣向を凝らした感じがするが、それによって情報量が落ちているところは嬉しくない。写真を大きくすることもできただろうし、そうでないならば解説をより多く詰め込むこともできたように思う。もっとも、ハイキングなんかに行く時に、リュックサックに忍ばせるにはうってつけかも知れない。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/10/20(月) 23:32 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1554冊目 第五の権力---Googleには見えている未来
第五の権力---Googleには見えている未来第五の権力---Googleには見えている未来
(2014/02/21)
エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン 他

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評価:☆☆☆☆


 Googleの会長、エリック・シュミット、GoogleのシンクタンクGoogle Ideas創設者のジャレッド・コーエンの共著になる本書は、未来がどうなるかの大胆な予想である。驚くべきは、彼ららしくネットワークに関わりのあることという観点から、教育、政治、宗教、戦争、圧政国家、テロリズム、革命、災害からの復興というように、実に幅広い現象について論じているところだろう。

 今、ネットワークにつながっているのは20億人。それがやがてほぼ世界中すべての人に広がると見られている。世界中がネットワークでつながった時に起こる変化は大きなものであるとは容易に想像ができる。

 例えば、教育格差。教育に全くアクセス出来ない途上国の子供も、安価なスマートフォンを使って最先端の教育を受けられるかもしれない。例えば、政治。様々な情報へのアクセスが容易になることで、国民の血税を私利に流用するクソそのものの政治家は駆逐されるようになるかも知れない。今の日本では残念ながら小渕優子を追放できないかもしれないが。あのような、極めて悪質な犯罪者を再選させるようなことはしないで貰いたいが、次も当選するんだろうなあ。他にもっとマシな人は幾らでもいると思うが。

 閑話休題、圧政政府の情報統制も、なんらかの迂回路を使って無効化されるかもしれない。PtoP技術を使えば、口コミで様々な情報を共有化できる可能性があるとの指摘は重要だ。

 一方で、技術は使う人によって、善にもなれば悪にもなる。人々の自由や平等、更なる可能性の追求に使われるその同じ技術が、威圧的な国家によって悪用されれば、国内の少数民族の発言力を奪うことができるだろうし、あらゆるネット上の言論を見張ることでかつて無いほどの監視社会が到来するかもしれない。

 本書は、こうした様々な点を考慮しながら、未来はどのような姿をしているかを縦横に論じている。未来予想というものは大いに外れるものと相場が決まっているが、それでも本書の語る世界が正しいかどうかは別に、ネットワーク化が更に進んだ社会が今とは全く違った姿をとるであろうことは確信できる。

 著者たちは未来に対して、一定の懸念を評しながらも大枠では明るくなるだろうと見積もっている。この技術は圧政者に利するよりも、彼らの統制を奪う方向に向いていると思うので、私も彼らの見方に賛同する。ただ、そのためには、人々はもっと色々なことを知らなければならない。そして、考えなければならない。それにはちょっと悲観的になってしまうのだった。
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技術 | 2014/10/18(土) 18:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1553冊目 人につむじがあるわけ 数学を味わうための12話
人につむじがあるわけ 数学を味わうための12話人につむじがあるわけ 数学を味わうための12話
(2014/08/22)
一樂 重雄

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評価:☆☆☆☆


 "人につむじがあるわけ"というタイトルを見ると雑学本っぽいが、サブタイトルを見ると意外な思いにとらわれる。" 数学を味わうための12話"だって?つむじと数学にどんな関係があるんだ?

 そんな疑問は読み始めたら氷解する。自然界は全て科学の対象だ。科学が様々なことを解き明かしてきたことを考えると、科学の言語である数学で解明できることは多い。本書で取り上げているのは、4つのパートからなる12の謎。これが、数学の様々な分野に目配りされていて、バランスが良い。目次を引用しよう。

Ⅰ.数の話(第1章 あなたの誕生日はいつ?  第2章 魔法のような魔法陣  第3章 いろいろな量を升で量る)
Ⅱ.形の話(第4章 植木算から位相幾何学へ  第5章 人につむじがあるわけ  第6章 量を考えない数学)
Ⅲ.無限のはなし(第7章 無限の不思議  第8章 数列と極限)
Ⅳ.微分と積分のはなし(第9章 変化する量をまとめる 積分とは?  第10章 瞬間速度のパラドックス 微分とは?  第11章 将来を予測する 未知なる関数を探せ!  第12章 殺虫剤は害虫を増やす!人口モデル再考)

 誕生日は、気がつけば情報伝達時に、誤りが含まれていても元の文章を復元できる驚異のテクニックの紹介へと進む。魔法陣は、魔法陣の作り方のみならず、技術者ならお馴染みの実験計画法へ、升の計算では3合の升と5合の升のみで4合を量る方法からユークリッド互除法という最大公約数を求める謎めいた方法へと、読者は導かれていく。一見取り留めがないようでいて、これらは全て同じ数学テクニックを使っているのが凄い!

 確かに数式は出てくるが、必ずしも難解というわけではなく、意外な答えを導き出す流れを見て楽しめるレベル。しかも、表題作の人につむじがあるわけのように、雑学ネタを織り込んでいるので、読んでいて楽しい。数学の楽しさを感じさせてくれる本。
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数学 | 2014/10/18(土) 01:08 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1552冊目 もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく
もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく (中公新書)もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく (中公新書)
(2007/12)
竹内 薫

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評価:☆☆


 おお!面白そうなタイトル!あぁ、それなのに、著者は竹内薫なのね。。。と、逡巡したが読んでみることにした。そして、やっぱり竹内薫は竹内薫だった。内容の薄さ反比例する勿体ぶった書き方に、辟易しながらも何とか読み終わりました。俺、エライ(※偉くない)

 さて、本書はサブタイトル通り、色々なシチュエーションの思考実験をしたもの。時間をかけて読んで欲しいそうで、章の代わりに日を使っている。目次を記しておこう。

第一日 もしもあなたが猫だったら?
第二日 もしも重力がちょっぴりだけ強かったら
第三日 もしもプラトンが正しかったら
第四日 もしもテレポーテーションされてしまったら
第五日 もしも仮面をつけることができたら
第六日 もしも悪魔がいたならば
第七日 もしもアインシュタインが正しかったならば

 第一日にだけ最後にクエスチョンマークが付くが他は付かないとか、"~ら"で終わったり"~ならば"で終わったりする不統一感が気になるが、まあ良い。大切なのは内容だよね!

 猫だったら?というのは、猫の見え方の話になる。犬や猫が色を見分けられないと聞いたことがあるだろうか?何故そんなことが分かるかというと、色を見分ける錐体細胞を何種類持っているかに依っている。犬や猫を始め、哺乳類は基本的に2種類である。人間は、突然変異が起こったために3種類持つ。だから色が見分けられる、という話だ。だが、これはちょっとおかしい。なんとなれば、赤緑色盲の人もカラフルな世界に生きているからだ。赤と緑を見分けられないだけで。だから、犬や猫もそれなりに色のある世界で生きているはずだ。

 しかし、もっと面白いのは鳥類や爬虫類である。彼らは、錐体細胞を4種類持つのである。しかも、4つ目は紫外線領域にあるので、彼らの目に映る世界は、我々人間のものとは全く違うと推測可能だ。

 これらのことは、視覚に興味がある方にとってはもう前提条件みたいなものなのだけど、それを得々と説かれても困る。せめて、新しい視点が欲しい。あるいは、新しく分かった情報が欲しい。いや、それらが無いなら、それはそれで受け入れる。だったら、せめて事例を面白くして欲しい。残念なことに、こうした希望は全く叶えられることが無い。

 二日目は重力に限らず、宇宙定数と呼ばれるものの数値が本の少し違ったらどうなるか、三日目は社会の統治システムが民主主義ではなくプラトンが唱えた哲人による独裁制だったらどうなるか、といった調子で進む。科学だけではなく、社会も視野に入れているのが斬新と言えば斬新か。

 ただ、私の感じた不満を逆に言えば、初歩的なところから丁寧に解説している、ということにもなる。勿体ぶった文章は鬱陶しいが、それを我慢できるなら、それはそれで入門書には向いているのかもしれない。あるいは、忍耐力を鍛えるのに向いているのかも(笑)
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エッセイ | 2014/10/15(水) 21:28 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1551冊目 「宗谷」の昭和史―南極観測船になった海軍特務艦
「宗谷」の昭和史―南極観測船になった海軍特務艦 (新潮文庫)「宗谷」の昭和史―南極観測船になった海軍特務艦 (新潮文庫)
(2011/12/24)
大野 芳

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評価:☆☆☆


 南極越冬隊の派遣は、敗戦後の日本に喪失しかけた誇りを取り戻させた快挙であった。その越冬隊員を運んだのが、宗谷である。南極への旅は過酷を極める上に、氷を割って進まなければならない。なので、私は砕氷船としての姿しか知らなかったのであるが、元々は商船として作られたものである。しかも、ロシア向けの。

 本書は、宗谷がソ連からの受注生産として建造されてから、退役して船の博物館で余生を送るまでの、彼女の数奇な歴史を追いかけている。

 宗谷の変遷には、時代が大きな影を落としている。ソ連が発注した船でありながら、第二次世界大戦前夜という状況が、引き渡しをさせない。結局、海軍の特務艦として南方で測量業務に当たり、終戦後には残留邦人の引き揚げに奔走する。その後は灯台補給船として働き、普通の船であれば20年ほどで退役するというのに、その後で南極観測船となる。

 ここまでの歴史からして波瀾万丈。それを、実に多くの史料を読み込んで、丁寧に追いかけている。まずはそれに脱帽だ。

 また、描かれる事実から浮かび上がってくることに、重さを感じる。戦争だから当然かもしれないが、次々と沈む僚艦、攻めてきた軍隊の残虐さ、一年に一度しか来ない船を待ち侘びる灯台守の孤独、エトセトラ。

 私が興味を持つ、南極観測船となってからも苦労の連続だ。船にとってではないが、南極越冬隊も主導権争いが激しかったことを、本当に多くの史料から、丁寧に描き出している。だが、そこには余りにもみっともない争いが綴られていて、ときおり目をそらしたくなった。

 南極越冬隊は朝日新聞の社を上げた協力もあって成立した事業だが、いざ計画が動き始めると、朝日外しまで行われそうになったというのは恩知らずとも言える。

 一方で、冷房がまだ高価だった時代、犬ぞりを引かせるための樺太犬用にだけ冷房設備があったとか、南方の「吠える40度」、「狂う50度」、「叫ぶ60度」と呼ばれる過酷な海域、そして、第二次越冬隊の送り込み断念と、この時に残置されたイヌとの再会も語られる等、興味深いトピックには事欠かない。特に、樺太犬たちの運命や、タロ・ジロとの再会は『南極越冬隊 タロジロの真実』も引用して、かなり丁寧だ。

 南極観測船として働いた宗谷だったが、その後も北の海の守りとして活躍は続く。漁船が近づいてきてロープを降ろさせ、そこに釣ったばかりの魚を括りつけてプレゼントされた、といったエピソードから、漁船たちがどれほど砕氷船としての宗谷を有り難く思っていたのかが感じられる。

 戦中・戦後を駆け抜けたという表現が相応しいほど、波乱に富んだ来歴で、知らなかった数多のエピソードに息を呑んだ。一隻の船の物語とはとても思えないほどの獅子奮迅の働きだ。その各シーンを、本当によく調べていると思う。

 ではあるのだが、日本語がどうにも読みにくくて困る。表現次第でもっと面白くなっただろうにと思うと、ちょっと残念だ。


関連書籍:
南極越冬隊 タロジロの真実 (小学館文庫)南極越冬隊 タロジロの真実 (小学館文庫)
(2007/02/06)
北村 泰一

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ノンフィクション | 2014/10/14(火) 19:58 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1550冊目 偽りの名画
偽りの名画 (ハヤカワ・ミステリ文庫)偽りの名画 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/03/24)
アーロン・エルキンズ

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評価:☆☆☆☆


 著者のアーロン・エルキンズは、法人類学者を主人公に据えた"スケルトン探偵"シリーズで知られている(以前に読んだ『騙す骨』がそうだ)のだが、こちらの作品はまた別シリーズに当たる。

 学芸員クリス・ノーグレンは憂鬱だった。妻が行方不明となり、方々手を尽くして探し当てた先は他所の男のところだったのである。それどころか、離婚を巡って妻は過剰な要求をしてきていて、自分から出て行って不貞行為(笑)をしておきながら、いけしゃあしゃあと権利だけは主張する姿に慄く。こりゃあ、アメリカ人の女性とは結婚できんわ。って、知り合いすら居ないけど。

 中々仕事に集中できない主人公に上司が命じたのは、気分転換も兼ねたベルリンで開かれる名画展への派遣であった。

 この名画展、ある富豪から借り受けたものの他に、ナチスドイツによって奪われて以来、行方不明となっていたものも含まれる。しかも、フェルメールを始め、有名ドコロがズラリとな名前を揃える豪華なものだ。出張先に着き、現物を確かめようとした主人公だったが、いきなり絵画泥棒に遭遇する。

 『【文庫】 FBI美術捜査官 (文芸社文庫)』みたいな世界がやってきたぞと期待は否が応でも盛り上がる。しかも、主任が"この中に贋作がある、君なら見れば分かる"と言った直後に死体となって発見される。

 きな臭い動きがある中で、美術展は無事に開催できるのだろうか?そして、主任を殺したのは誰なのだろうか?

 というのがミステリ部。これだけでもディテールがしっかりしていて面白いのであるが、加えて絵に関する蘊蓄が楽しい!真作と贋作はどうやって見分けるのか?あの画家の絵にはどんな特徴があるのか?この調査そのものがミステリのようだ。しかも、その薀蓄を語る理由は、贋作は見つけるため。

 つまり、本書には"殺人犯は誰か?"という、ミステリ全般にある謎に加えて"贋作はどれか?"という謎が含まれているのだ。しかもこれらの謎が密接に絡まり合っている。おまけに、合間には強欲な元奥さん(いや、まだ離婚が成立したわけではないので現奥さんか)の話が出てくることで、ホラー、じゃなかった、喜劇要素もある。色々な楽しみ方ができる、名作。

 ミステリ好きの他に、美術展に行くのが好きな方もきっと楽しめるだろう。

関連書籍:
【文庫】 FBI美術捜査官 (文芸社文庫)【文庫】 FBI美術捜査官 (文芸社文庫)
(2014/02/04)
著者 ロバート・K・ウィットマン ジョン・シフマン 訳者 土屋 晃 匝瑳玲子

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騙す骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫 エ 3-11)騙す骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫 エ 3-11)
(2010/11/26)
アーロン・エルキンズ

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推理小説 | 2014/10/13(月) 21:46 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1549冊目 役に立たない日々
役にたたない日々 (朝日文庫)役にたたない日々 (朝日文庫)
(2010/12/07)
佐野 洋子

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評価:☆☆☆☆


 『100万回生きたねこ』の著者、佐野洋子さんのエッセイ。晩年になってからのもので、自分をババアと読んでいるのであるが、これが確かに近くにいたら☓☓ババアと呼びたくなるかも知れないと思わせる(笑)

 満州で過ごした幼少時代(彼女の父親は満鉄に勤務していたそうである)、誰もが貧しかった青春時代、これまでに出会った変わった人たち、親との確執、本ばかり読んできた人生を、特有のシニカルな視点で語る。

 なにせ本ばかり読んできた著者のこと、知っていることは多いはずだ。それなのに、自分は何も知らないと繰り返す。そこから導き出されることはたった1つ。彼女は、知っている、知らないということを、物凄く深い意味で使っているということだ。そして身につまされる。自分は知ったつもりになっているが、実は何も知りはしないのだ、と。

 学生時代の思い出が、淡々と、しかし熱く語られるのが良い。彼女にひたすら絵を描かせた男。あるいは、本を貸してと頼んだら「買えば」とそっけなく返した女。あるいは、寮の食堂へこっそりと忍び込み、パンを取ってきて食べてしまったこと。私ももう人生を半分は終えたような気がしなくもないのだが、思い出といって出てくるのは愚かだった学生時代のことばかりだ。惜しむらくは、愚かであるということに関して言えば、それが過去形で留まらないところが残念である。

 閑話休題、著者がそうした思い出をとても大切なものとして抱えてきたことが、文章の端々から感じられる。だからこそ、そこに哀切を見出してしまう。

 その一方で、決して満ち足りた少女時代を送っていたわけではなさそうだ。実際、母親との確執について、繰り返し書かれる。と言っても、具体的に仲が悪かったことを書くわけではない。年をとってボケた母親を許せるようになったとことあるごとに書くことで、それは示される。そういえば西原理恵子も、人生に大切なのは仕事と家族だが母親は家族ではないと切って捨てていた。

 また、彼女は自然を愛している。毎年毎年、植物の育つスピードに驚き、感動すると綴る。北軽井沢という、軽井沢とは別世界の田舎の暮らしを、それも冬を愛していると宣言するのである。恐らくはそれと全く同じ視点から、月に人類が到達したのは面白くないそうだ。この点に関しては、私と全く思想が違う。

 全体的に、恐らく私と彼女は違う星の人間のように、互いに認め合うことはできないのだろう。恐らく、彼女は私が興味を持つあらゆることに興味を示さないと思う。それなのに、エッセイをそれなりに楽しめたのは意外で楽しかった。

 ただ、何度も同じ話が出てくるのはちょっと興ざめ。雑誌の連載で読んでいた人は何週間あるいは何ヶ月ぶりに目にするであろうから、"そういえばそんなこともあったっけ"と思うかもしれないが、まとめ読みをすると、さすがの私でも忘れないタイミングで同じ話が繰り返される。編集のしようがあったと思うけどなあ。

関連書籍:
100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)
(1977/10/19)
佐野 洋子

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エッセイ | 2014/10/11(土) 23:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1548冊目 ねずみに支配された島
ねずみに支配された島ねずみに支配された島
(2014/06/13)
ウィリアム ソウルゼンバーグ

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評価:☆☆☆☆


 ヤギ、ネコ、ネズミ、ブタ、ウサギ。これらの哺乳類が共通して持つ特徴はなんだろうか?食べ物?それはそうかもしれないが違う。ペット?それも同じように違う。答えは、ひとたび島に根付くとそこの生態系を破壊し尽くす動物、というものである。

 本当にそうなのか?表紙の可愛いとも思えるネズミを見ると、にわかには信じられない。だが、本書の書き出しは強烈だ。ウミスズメを殺し、頭蓋骨に穴を開けて脳と目玉を食べ、死体を巣に積み上げる凶悪な生物。それがドブネズミである。彼らは船や飛行機にのってやってきて、新天地にたどり着くとそこで猛烈に増えていく。それまで捕食者がいなかったところで。

 島は、海によって他の土地と隔絶されている。こうした環境は、生物を進化させる条件でもあるため、島は面積こそ小さくとも多数の独自の種を抱えている。そこに大陸で鍛えあげられた強力な捕食者が辿り着いたらどうなるだろう?

 彼らの殺戮の凄まじさは想像を絶している。本書でまず紹介されている具体的な例は、飛べないオウム、カカポ。複数の島で栄華を誇った彼らは、たった数匹になるまで追い詰められてしまった。ネズミやイタチによって。

 種は、ひとたび絶滅してしまったら二度と蘇ることはない。この、現在進行形の種の消滅をなんとか食い止めることはできないか?

 本書は、ネズミを中心とする外来生物によって絶滅させられた、あるいは絶滅寸前となってしまった動物についての悲劇を語り、また、外来種を駆逐して豊かな自然を取り戻そうとする人々の戦いの模様を教えてくれるノンフィクションである。

 島中に蔓延る何万というネズミを、一匹残らず退治するなんてことができるだろうか?ネズミ罠や銃では、そんなことはできない。銃による抹殺は、ヤギのように大きくてネズミよりずっと数の少ない動物相手にも失敗してきた。では毒餌は?ネズミは賢い。毒で死ぬ仲間を見たら、彼らはたちどころにそれが危険な食べ物だと悟ってしまう。考えれば考える程、難しさばかりに目が行ってしまう。

 だが、画期的な武器を得たことで、状況は一変する。血液凝固を妨げる、プロジファクムという薬が得られたことで。この薬の優れた点は、高い毒性と、食べてから死ぬまでにかかる時間の長さである。この2つの特徴を兼ね備えたために、ネズミには薬と死が結びつかないのだ。このような薬を生み出したところに不屈の闘志や化学の強さが見える。

 複雑な思いをするのも事実だ。ネズミやヤギやネコは、別に悪いわけではない。彼らは彼らなりに、敵の多い大陸で生き抜くための進化をしてきただけ。彼らを島に連れてきて、意図的に放った人間こそが悪いのである。だから、害獣の駆除が可能になったかに見えた時、環境保護団体が抗議をしたのも、分からないではない。しかし、希少種がどんどん絶滅していくのを防ぐには、彼らを排除するしかないのだ。そして、私は希少種を守ろうという動きを支持する。

 害獣との戦いを実に詳しく描いた、素晴らしいノンフィクションだった。

 尚、著者は『捕食者なき世界』で生態系の頂点に立つ捕食者が居なくなった時に何が起こるのかを教えてくれたノンフィクションライターである。生態系を豊かに保つためには何が必要か、という本書と同じ視点に立って書かれたものなので、合わせて読むと面白さ倍増だと思う。

 そして、野中香保子さん、今回もまた素晴らしい訳をありがとうございます!


関連書籍:
捕食者なき世界 (文春文庫)捕食者なき世界 (文春文庫)
(2014/05/09)
ウィリアム ソウルゼンバーグ

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生物・遺伝・病原体 | 2014/10/09(木) 22:18 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1547冊目 内科医からみた動物たち―カバは肥満、キリンは高血圧、ウシは偏食だが…
内科医からみた動物たち―カバは肥満、キリンは高血圧、ウシは偏食だが… (ブルーバックス)内科医からみた動物たち―カバは肥満、キリンは高血圧、ウシは偏食だが… (ブルーバックス)
(2002/01)
山倉 慎二

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評価:☆☆☆


 "カバは肥満、キリンは高血圧、ウシは偏食だが…"という惹句が好奇心をくすぐる。しかも、「内科医からみた」という、依って立つ視点を明確にしているところもポイントが高い。さあ、医学的に見たら動物たちはどんな意外な顔を見せてくれるのだろうか?

 と、期待をして読み始めたのであるが、むしろ哺乳類の紹介になってしまっていた。

 確かに、カバの肥満については、体を大きくすることで体温を保ちやすくする(恐竜も同じように巨大化することで雰囲気温度の影響を受けにくい慣性高温を得ていた)ためだというが、それって、内科医じゃなくても分かるように思うのだが。。。キリンがあの高い脳に血液を送り込むために300mmHgという恐ろしいほどの血圧をしていて、それゆえに水を飲むために頭を下げると今度は脳に血液が集まりすぎてしまうリスクが有る。素晴らしいことに、網状血管と呼ばれる血管網が見事に血圧を分散させてくれるというのだが、これも類書には必ず載っている話だよねえ。

 内科医から見たと謳っているが、そうした視点から書かれた記事が占める分量が実際には極めて少ないことを考えると、タイトルに偽りありと思わざるを得ない。内科医だからこそ書けることを中心に据えないのであれば、正直に申し上げて、内科医が書いたから、だから何?ということになる。

 というわけで、タイトルから受ける印象を捨てて、改めて本書を見てみよう。特筆すべきは、取り上げる動物の多様さである。カバ、キリン、ウシはサブタイトルにもあるから当然出てくるとして、ウマやイヌ、ネコ、パンダ、コアラにカンガルーといった動物園の人気者も軒並み顔を揃える。それだけではない。海に住む哺乳類、クジラ、イルカ、アシカ、アザラシらも取り上げているし、ビーバーやバク、ハイエナ、マングース、ヤマアラシ、センザンコウ等の比較的マイナーな動物も顔を出す。

 オポッサム、タスマニアデビルなんてまず見ることは無いだろう。しかも、きっちりカモノハシまで取り上げているところは嬉しい。ツパイという動物は、哺乳類にもかかわらず、授乳はなんと2日に1度、それも5~10分くらいで、親は他には何も面倒を見ないというのには心底驚いた。哺乳類は子の数を減らす代わりに手間をかけて死ぬ数を減らすというK型戦略をとっているわけだが、これでは長い妊娠期間にも関わらず子が死にやすいではないか。ううむ、戦略の幅の広さを感じさせる。

 有袋類がアメリカ大陸発祥の可能性があるというのは不勉強で知らなかった。オポッサムがその証拠の一端を担っているそうであるが、そうか、オポッサムは有袋類だったのか。他にも、知らなかったネタが多数ちりばめられていて、読むのは楽しかった。

 が、どうにも専門外のことに余計な口をはさみがちなのは頂けない。先ほどのツパイの項で"近頃、ヒトの中にも子育てのできない親が増えてきている"(P.229)なんてことを書いてしまうけど、乳幼児の殺された数は今が統計上一番少ない時代である。他が面白いだけにがっかり感が半端ない。

 と、残念なところはあるが、哺乳類の多様性と生態を手軽に知ることができるのは嬉しい。動物好きはきっと楽しめると思う。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/10/08(水) 19:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1546冊目 チェルノブイリの森―事故後20年の自然誌
チェルノブイリの森―事故後20年の自然誌チェルノブイリの森―事故後20年の自然誌
(2007/02/25)
メアリー マイシオ

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評価:☆☆☆☆


 『HALF LIFE チェルノブイリ:死の森か、エデンの園か(WIRED Single Stories 002)』を読んだところ、両論併記型で余り面白みを感じなかった中に本書のことが触れられていた。やはり、まとまった知識を得るためにはそれなりの厚さの本を読まなければならない。そんなわけで、早速読んでみた次第である。

 著者はウクライナ系アメリカ人の女性。そのため、チェルノブイリ事故には深い関心を抱き続けてきたという。彼女の素晴らしいところは、何と言ってもその行動力である。本書を読んでも、チェルノブイリのかつては強制的な避難が実施された地区を、ウクライナ側からもベラルーシ側からも訪れ、自身の見聞を余すところ無く書き綴っている。

 福島原発事故以降、色々と放射線生物学関連の本を読んできたが、そこで得た知識が裏付けされた印象である。

 チェルノブイリにおいても、哺乳類、魚類に変異体や奇形は見つかっていないそうである。これは、広島・長崎において被曝二世、三世に奇形が見つかっていないことと一致する。

 一方で、原子炉近くでは、鳥類の巣立ちする子の数に異常が見られるとも言う。ストロンチウム90はカルシウム代謝の流れによって体内に運び込まれるため、全く同じ理由で卵の殻に多く含まれる。発生中の胚という最も放射線の害を受ける時期に、放射性物質がすぐ近くにあるという不利を考えれば不思議はなさそうだ。

 ただし、チェルノブイリ周辺では絶滅危惧種に指定された鳥類も多く見られるという。彼らはその絶対量の関係から、他所から移ってきては子孫を残さず死んでいく訳ではないことが推測される。だとすると、チェルノブイリは動物たちの楽園になっているというのが事実なのだろう。

 恐らくは、10キロ圏内とかの、本当に危険な領域に定住することさえ避ければ、人間にもさしたる問題は無いのではなかろうか。実験するわけにはいかないにしても。『チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書』にある通り、石棺による封じ込めや除染に携わった人を含め、白血病の罹患率増加が見られないというのは覚えておいて良いと思う。

 一方、憤りを覚える話もある。

 チェルノブイリの原子力発電所が事故後も2000年まで稼働していたことは不勉強にして知らなかった。石棺に覆われた姿を見て、誰もいないものかと思っていたが、事故を起こした部分だけが覆われていたという。

 そして、彼らは事故後も莫大な利益を上げながら、保障にはそのカネを使わなかったようだ。あの事故が極めて杜撰な冒険的実験のせいで発生した事実を鑑みれば、とても許されることではないように思える。除染員や住民に白血病や奇形の増加が見られないのは事実のようだが、それは時間が経ってから分かったことだ。少なくとも彼らは健康調査に資金を提供する義務があろう。

 増加が報告された甲状腺がんにしても、あれは放射性物質に汚染された牛乳を垂れ流しにしたために起こった側面が強い。共産主義国家というのは恐ろしいところだ。

 情報の公開についても、民主主義国家として歩み始めたばかりのウクライナはやはり独裁国家として悪名を馳せたベラルーシより遥かにマシなようだ。情報の公開が無ければそもそも国民は正しい評価などできるわけがない。その点、福島原発事故で情報を隠そうとした政府は避難されてしかるべきである。

 一方で、チェルノブイリ事故の痛ましい過去から得られた貴重な教訓、低線量被曝は健康に影響を与えず、むしろ強制避難が多くの死を生むという事実を、日本が無視しているのは悲しむべきことである。『人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用』と共に、今後に活かすために活用して欲しい本である。

 こうした政治的な動きに加えて、どのような食べ物に放射線が濃縮されて、それは何故なのかといった話まで丁寧に救い上げてくれているので、福島後の日本には役に立つことが多いと感じられた。原発事故後について、正しく知るために格好の一冊である。


関連書籍:
HALF LIFE チェルノブイリ:死の森か、エデンの園か(WIRED Single Stories 002)HALF LIFE チェルノブイリ:死の森か、エデンの園か(WIRED Single Stories 002)
(2012/03/23)
Adam Higginbotham

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人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)
(1998/12/18)
近藤 宗平

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チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書 [最新版] (SANGAKUSHA Vita(産学社ウィタ))チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書 [最新版] (SANGAKUSHA Vita(産学社ウィタ))
(2013/05/10)
ベラルーシ共和国非常事態省チェルノブイリ原発事故被害対策局/編

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ノンフィクション | 2014/10/07(火) 19:52 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1545冊目 大気の海―なぜ風は吹き、生命が地球に満ちたのか
大気の海―なぜ風は吹き、生命が地球に満ちたのか大気の海―なぜ風は吹き、生命が地球に満ちたのか
(2008/01)
ガブリエル ウォーカー

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評価:☆☆☆☆☆


 科学書コーナーを巡っていて、著者の名前に目が止まった。ガブリエル・ウォーカー。どこかで目にしたことがあるぞ!私の脳が高速に検索を始める。だがしかし、我が灰色の脳細胞はやはりポンコツであった。ようやく著者の正体に気がついたのは、著者来歴の過去の著作リストで、『スノーボール・アース: 生命大進化をもたらした全地球凍結 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』を見つけた時であった。あの面白い本を書いた人なら、こちらも期待できるぞ!

 地球が火の玉状態を終えるのとほぼ同時に、生命の誕生が起こったようだ。それを見ると、生命の誕生は実にありふれた出来事のように思える。しかし、生命に何が必要かを考えていくと、地球が幾重にも生物を守るバリアを用意してくれているかのような錯覚に陥ってしまう。

 とんでもない冒険的な行為から、本書は幕を開ける。遥か遥か上空からのダイビング。その高さ、なんと、約31キロ。私のような高所恐怖症の人間には、想像するだけでも胃が縮み上がるような行為だ。しかし、ちょっと考えてみて欲しい。地球の生命は、たったこの31キロの層で守られていると言っても過言はないのである。地球の半径6400キロから比べたら、20分の1にも満たない、薄皮一枚で。

 本書がまず教えてくれるのは、熱について、である。実は、太陽からの熱と放射性物質の崩壊熱だけが熱源だとすると、地球の温度はもっと遙かに低くなる。水は液体として存在することは無く、従って生命の誕生もありえない。今の地球が液体の水を持つ環境なのは、水蒸気を始めとする温室効果のおかげだ。

 そこに辿り着くまでに、迂遠とも思えるような話の持って生き方をする。大気が実態を持った何かであることをはっきりと示したボイル(ボイルの法則のあの人)、今も大気圧の単位にその名を刻むトリチェリから、酸素を発見したプリーストリー、彼の乱雑な実験をより内容を深めた人物であり、フランス革命で断頭台の露と消えたラボアジエと言った、科学史に残るビッグネームが続々と出てくる。特に、ラボアジエは化学の父とも呼ばれるのだが、彼が処刑されるに至る事情にまで踏み込んでいるので、科学史に加えて伝記の側面もしっかり持っている感じだ。

 酸素の発見と比べると、二酸化炭素の発見史はもっと知られて良いだろう。ジョゼフ・ブラックやスティーブン・ヘイルズといった人物が取り上げられているのだが、恥ずかしながら名前を知らなかった。彼らが動物実験や燃焼実験を繰り返し、二酸化炭素を見つけて行った歴史は、今や中学生でも当たり前にやる実験の裏に天才たちの深い洞察に満ちた発見の歴史があったことを教えてくれる。

 だが、何と言っても知られていないのはウィリアム・フェレルだろう。彼は、地球規模での熱循環について、多大な発見を為した人物である。本書が面白いのは、彼の話題に辿り着く前に、コロンブスの新大陸発見という、大気とは全く関係のなさそうな人物を持ってくるところだ。そして勿論、コロンブスは単なる脱線ではない。ともすれば無味乾燥な事実の羅列になりがちなノンフィクションを最高級に面白い傑作とするために不可欠な優れた導入部なのである!

 気がつけば、複雑な熱循環の概要を知ることができているのは何とも嬉しい。

 地球の平均気温の推移が、二酸化炭素濃度と綺麗に歩調を合わせているという指摘は良い。しかし、それを書くなら、"二酸化炭素濃度が変わるのは平均温度が変わってから"という事実も書いて欲しかった。こちらは実に簡単なメカニズムで、気温が上がると海に溶け込んでいる二酸化炭素が大気中に放出される(気温が下がった場合には溶け込む)ためである。セレブな皆様なら、シャンパン(スパークリングワインなんてケチなものではなく)、私のようなブルーカラーならビールを思い浮かべれば良い。ぬるくなるとすぐ炭酸が出てくる、あの現象が地球規模で起こるという話だ。

 後半は、宇宙に満ちた脅威から大気がどれほど生命を守ってくれているかを教えてくれる。そこには、3つの層が絡んでいる。有害な紫外線から地球を守ってくれるオゾン層、X線で細胞が焼きつくされるのを防いでくれる電離層、そして大量の放射性物質の侵入を防ぐヴァン・アレン帯である。

 これらも、また実に面白い!オゾン層のフロンによる破壊についてはジェームズ・ラブロックが否定側にたったというのも面白い。権威だのなんだのから自由だった彼らしくないように感じもするが、ガイア仮説が行き過ぎて環境は強力な復元力を持つと信じていたのであれば無理からぬ気もする。

 電離層では、何故かマルコーニの話になる。無線を発明した技術者である。そして、その使われた1つの例として、悲劇の豪華客船タイタニック号も深く取り上げられているので読み応えがある!まだ定められたばかりのSOSを無線で発したことが繋がるのだ。そして、なぜ無線が地平線や水平線を超えた彼方にも届くのか、という疑問から電離層に話を持っていく。

 勿論、ヴァン・アレン帯についてはヴァン・アレン教授のイキイキとした好奇心や、オーロラについても話題がでる。

 本書で語られるのは、発見の歴史であり、科学者の生き様であり、知の興奮であり、大発見を前にした政治的・社会的な動きであり、そしてなによりも、地球が奇跡のようなバランスの上に成り立っているという事実である。勿論、大数の法則で説明のできることなのであろうが、だからこそ、より一層、地球の貴重さを感じられてならない。読んで楽しく、得る知識は多い。一級の科学書である!
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環境 | 2014/10/05(日) 19:45 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1544冊目 櫻子さんの足下には死体が埋まっている 骨と石榴と夏休み
櫻子さんの足下には死体が埋まっている   骨と石榴と夏休み (角川文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている 骨と石榴と夏休み (角川文庫)
(2013/05/25)
太田 紫織

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評価:☆☆☆☆

 美人の骨マニアかつ性格破綻者である櫻子さんを主人公に据えた短篇集第二弾。著者が書き慣れてきたためか、キャラクターが前よりしっかり動くようになってきた感じがする。お陰で、前作よりも楽しく読めた。

 収められているのは、鍾乳洞見学に行ったついでに白骨化した死体を見つけてしまう『夏に眠る骨』、寝苦しい真夜中に涼を求めてコンビニへでかけたら迷子に出会ってしまった『あなたのおうちはどこですか』、一代の成り上がり者がパーティーの夜に死体になって発見される『殺されてもいい人』の3編。

 鍾乳洞、良いですねぇ。悠久の歴史を感じさせるあの石筍。ライトアップされると特に色とりどりの石が出迎えてくれるのも嬉しい。勿論、我らが櫻子さんはそんなものに興味はない。彼女が興味をもつのは骨だけだ。主人公の希望で鍾乳洞に行ったため、次は彼女の希望で遊歩道を歩き(まるでデートだ)、そして獣道を分け入って骨を探す(もう全くデートっぽくない)。

 小動物の死体を見つけてホクホクの櫻子さんだが、そこにカップルが青い顔をしてやってくる。白骨死体を発見してしまった、というのだ。それにしても、彼らはこんな遊歩道から外れたコースでナニをしていたのでしょうね?ええと、自然観察かな?閑話休題、喜び勇んで現場に向かう櫻子さん。彼女の導き出した結論は?骨に関する雑学を増やしたい人、白骨死体を見た時に見るべきポイントを学ぶには調度良い感じです。普通の人は一生役に立たないだろうけどね。

 主人公が朝の4時に迷子を見つけてしまう『あなたのおうちはどこですか』。パジャマで靴も履かずに歩きまわる幼児の足の裏には、血が付いていた。この子はどこから来たのだろう?事件に巻き込まれたのだろうか?交番に助けを求めるけどイマイチ役に立たないので櫻子さんに頼るというのは、頼る相手を間違えているかもと思わなくもないけど、後を考えると最善手なのでありました。

 最後の話は、どこからどうみても立派なクソジジイが死ぬ話。これが90にもなって未だ意気軒昂、色々な女に産ませた子供の総数は20人を超え、しかも今でも若い子と寝まくっているという恐ろしい人物。そりゃあ、家族からしたら邪魔だろうなあ。年かさの子供にとっては、自身の孫がいても不思議はない時に弟やら妹ができるわけで、ありがたくない。

 彼のためのパーティーも、あの爺もさっさとくたばれば良いのにと本人の居ないところでささやかれる始末。うーむ、ある意味で、男子として生まれたからの本懐を遂げているのかもしれないが、そんな殺伐とした家にで暮らすだけの精神的な毅さは無いなあ。兎も角、ヒッチコックの喜劇、『ハリーの災難』を思わせる展開が続くわけだが、果たして彼の死に責任を負うべき人間は誰だろう?

 と、色々なシーンの事件を用意しているので飽きないところが素晴らしい。各話の雰囲気もだいぶ違う。それなのに、登場人物のキャラがしっかり立っていることと、合間に挟まれる美味しそうな食べ物の描写が統一感を醸し出している。続きが楽しみだ。


関連書籍:
櫻子さんの足下には死体が埋まっている (角川文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている (角川文庫)
(2013/02/23)
太田 紫織

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推理小説 | 2014/10/04(土) 17:57 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1543冊目 エデン
エデン (新潮文庫)エデン (新潮文庫)
(2012/12/24)
近藤 史恵

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評価:☆☆☆☆☆


 自転車レースの最高峰、ツール・ド・フランス。23日間に渡って行われる過酷な耐久レースである。高低差は2000mを超え、総走行距離3300kmにも及ぶというのだから、その数値を見ただけでも肌に粟を生じそうな程だ。自転車レースの総本山、ヨーロッパではこうした耐久レースこそが花型だという。

 プロの自転車乗りの多くが夢見るこの舞台に、白石誓は立っていた。名作『サクリファイス』から3年後。彼はしっかりヨーロッパで戦い、アシストとして仕事を果たしていたのである。

 最高峰のレースだからこそ、その勝者には限りない栄光が与えられる。レースが行われる間、各日のの総合1位にはマイヨ・ジョーヌと呼ばれる黄色いジャージが与えられる。レース最終日にそれを纏うことになる者こそがチャンピオンだ。自転車チームは、いずれもこの栄冠を掴むために調整してくると言って良い。

 だが、レースの直前に、白石の属するチーム、パート・ピカルディに悪いニュースがもたらされる。スポンサーの撤退。それは、チームの消滅を意味する。

 チームで走ることができる最後のレースだから協力しよう、となれば美しかったかもしれない。しかし、監督はチームを潰させたくない一心で、奇手を放つ。それは、他チームのエース、若くして頭角を現してきたニコラ・ラフォンを勝たせろ、ということ。重要なのは、彼がフランス人で、そしてツール・ド・フランスを制するエースを長年フランスが産んでいないという事実であった。彼の勝利に貢献したことをアピールすることで、フランスの企業にスポンサーとなってもらう。それが狙いだった。

 だが、ずっとこのレースに照準を合わせてきた者にとってはどうだろう?

 前作同様、選手たちの葛藤と疑心暗鬼を巧みに物語に織り込みながら、チームワークが大切な自転車レースの世界を展開していくところ。自転車レースを全く知らない読者でも、気がつけば独特のルールを持つこの競技の醍醐味を感じることができるのはお見事。

 監督のためにギクシャクするチームに加えて、もう1つレースに暗い影を落とす問題がある。自転車レースを少しでも知っている方であれば予想がつくであろう問題が、ここでも顔をだす。自転車レースも、そして人間模様も終盤に向けて一気に盛り上がっていくので、読み始めたら止まらない。『サクリファイス』を超える面白さだった。

 でも、できればチカ(主人公)にはもうちょっと幸せになって欲しいなぁ・・・・・・


関連書籍:
サクリファイス (新潮文庫)サクリファイス (新潮文庫)
(2010/01/28)
近藤 史恵

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推理小説 | 2014/10/03(金) 19:00 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1542冊目 NHKスペシャル MEGAQUAKE II 巨大地震 日本列島“大変動期" 最悪のシナリオに備えろ
NHKスペシャル MEGAQUAKE II 巨大地震 日本列島“大変動期NHKスペシャル MEGAQUAKE II 巨大地震 日本列島“大変動期" 最悪のシナリオに備えろ
(2012/08/28)
NHK取材班

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評価:☆☆☆☆


 東日本大震災は地震学者にも大変な衝撃を与えた。もちろん、震源地となったあの場所で、いつか大地震が起こる可能性は彼らも認識していた。しかし、その規模はせいぜいマグニチュード7クラス。マグニチュードは1の違いで32倍の差があることを考えれば、地震学者たちは今回の規模の1%以下のものしか予想出来ていなかったことを示している。

 複雑系科学の不思議な側面を語った魅力的な書『歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』では、地震の規模は予想不可能であることが書かれているが、これが正しいとしても外し過ぎだ。

 誰よりも、地震学者たちこそが、そうした現実を受け止めている。彼らは、もし自分たちが精度の高い予想をできていたのなら、あれほどの死者を出さずとも住んだのではないかと自問しているのである。

 そうした深い悔いから、従来の予想にとどまらず、地震が一定のタイムラグをもって複数発生した場合の被害、とりわけ津波被害の大きさを論じているのが光る。こうした場合には、先の地震で発生した津波が浅瀬で速度を落としたところに後の地震で発生した津波が被さり、波を高めることでより大きな津波となり、より大きな被害を与えることになる。

 また、火山活動との関連も注意が必要だ。地震後、圧縮されていた力が解放されたことで大地が引き伸ばされると、マグマにかかっている圧力が下がり、揮発分が膨らむことで噴火が起こりやすくなる、という。このメカニズムは知らなかったので驚きだ。それを考えると、御嶽山の噴火も311の影響であるかもしれない。

 とにかくスケールの大きな話が続き、地球は一つなんだと実感させられる。311以降、地震の活動期に入っていることから、彼らの必要性は更に増していると思えてならなかった。

 地震は短期的な予想は困難だが、直前に情報をキャッチできれば被害は抑えられる。その点で、最終章で取り上げられていた電離層における大気成分の異常は、根拠の弱い地震雲のような宏観現象と違って役に立つかも知れない。今後の研究に期待だ。

 タイトル通り、日本の大変動期の全容を知ることができる好著と言えよう。
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その他科学 | 2014/10/02(木) 19:44 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1541冊目 いつまでもショパン
いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)いつまでもショパン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2014/01/09)
中山 七里

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評価:☆☆☆☆


 『さよならドビュッシー』、『おやすみラフマニノフ』に続く、岬洋介を探偵役に据えたシリーズ第三弾。

 ロシアを訪問したポーランド大統領の搭乗機が帰国途中に爆弾テロの標的となり、大統領夫妻を含む96名が死亡する痛ましい事故が発生した。ポーランドはイラクへ派兵しているため、アルカイダグループによるテロの標的となったのである。そして、この事故を皮切りにポーランドは爆弾テロに見舞われることとなった。

 騒然とする中、5年に1度の音楽の祭典、ショパン・コンクールは幕を開ける。

 岬洋介シリーズにおけるいつものあり方で、今回もまた探偵役ではない人物が物語の中心に据えられる。今作においては、ヤン・ステファンスという、4代に渡って著名なピアニストを輩出してきた家の若き希望の星がそう。彼は、父が果たせなかったコンクール制覇だけを目標に育てられてきたと言っても過言はない。自分の野望を息子に叶えさせるべく威圧的に振る舞う父、存在するかどうかも分からない母。彼の境遇は、金銭的にはともかく精神的には恵まれていなかったことが感じられる。

 ヤン・ステファンスが出会うのが、岬洋介。彼は突発性難聴という難病を押して、ショパン・コンクールに参加していたのである。と、ここでシリーズのファンは驚くことになる。岬は持病もあって、こうしたコンクールには出られないものかと思われていたから。

 だが、事件は思わぬところで起こる。コンクールの会場で、10本の指全てが失われた異様な死体が見つかったのだ。しかも、それは爆弾テロ事件を追う刑事だった。第一発見者が盲目の日本人ピアニストで、岬よりもポーランド語がたどたどしいことから、岬は捜査に協力することを申し出る。

 テロは、ある目的を達成するために使われる暴力である。では、このテロの究極的な目的は何なのだろう?犯人は誰なのだろう?

 といったミステリ要素に、いつも通り、ピアノ作品のどこが難しいのかが微に入り細を穿つように描かれる。そして、ショパンがポーランドの誇りであるということも。ポーランド的なショパン解釈しか受け入れられないだろうという大方の予想、そしてヤン・ステファンスの思いが、日本人ピアニスト2人を含む外国人の解釈で大きく揺らぐところが面白い。

 ピアノの音よりも弦楽器が好きなのではあるが、いつしかピアノの曲を聞きたくなってしまう。丁寧な描写が心地よい。続きが楽しみだ。

 犯人は分かったけど、動機についてのヒントがもうちょっと欲しかったかな。

関連書籍:
さよならドビュッシー (宝島社文庫)さよならドビュッシー (宝島社文庫)
(2011/01/12)
中山 七里

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おやすみラフマニノフ (宝島社文庫)おやすみラフマニノフ (宝島社文庫)
(2011/09/06)
中山 七里

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推理小説 | 2014/10/01(水) 19:18 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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