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Author:Skywriter
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BK1書評の鉄人31号。
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1540冊目 鉱物図鑑
鉱物図鑑 (ベスト新書)鉱物図鑑 (ベスト新書)
(2014/01/09)
松原 聰

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評価:☆☆☆☆


 実は、鉱物には疎い。名前を覚えるのが苦手というのもあるし、所謂地学に分類される学問の中では地球科学的な分野に興味が向かってしまって、なかなかこちらにまで辿り着かなかったのである。が、この表紙の美しくかつ多様な姿を見て、思わず手が伸びた。

 まず、写真の美しさを讃えたい。この値段の新書なので限界はあるわけだけど、項目のある鉱物は全てカラー写真で実際の姿を紹介してくれている。結晶構造が見えるもの、鮮やかな色を持つもの、光を複雑に反射させるもの。また、形状にしても針状だったり幾何学的であったり他の鉱物と交じり合ったりと実に多様である。百聞は一見に如かずという通り、写真があるとないとでは大違いである。私は深い青が好きなので、銅を含む鉱物のページでは特にほれぼれとしてしまった。

 丹砂と呼ばれた水銀化合物。中国史に興味がある方なら、ここから得た水銀で始皇帝は地下墳墓に巨大な池を作った伝説を想い出されよう。あるいは、美術に興味がある方ならば瑠璃(ラピスラズリ)が青色の顔料としてよく利用されたこと、特にフェルメールのあの印象的な青がラピスラズリであったことに思いを馳せるのではなかろうか。

 あるものは宝石として珍重され、またあるものは色の美しさを買われて顔料として歴史を彩ってきたことが分かる。そしてまた、近代文明という観点から言えば、こうした鉱物は資源の存在を示すものでもある。アンチモンやら銅やらマンガンやら何やらが~と、その結晶の中身をきちんと説明してくれているのは、鉱物学が発達してきた背景を教えてくれるのである。

 美しい写真を眺めながら、鉱物の来し方に悠久の時の流れを感じたり、その美しさに魅せられた人間の歴史を思ったりと、楽しい読書であった。ただ、やっぱり鉱物の名前は覚えられませんでした・・・・・・。
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その他科学 | 2014/09/30(火) 19:01 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1539冊目 生命の逆襲
生命の逆襲生命の逆襲
(2013/04/19)
福岡伸一

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評価:☆☆☆☆


 ご存じ福岡ハカセのエッセイ。著者が科学者になった原動力に、昆虫への興味が深く関わっていたことが分かるもの。昆虫を集めるのにとにかく熱中していた少年時代。そして、その頃の愛読書は『ドリトル先生』シリーズであった、という。

 ああ、分かるなあ。私はそこまで昆虫採集に夢中になったクチではないが、それでもカマキリの卵を見つけては家に持ち帰ったり(春には庭に小さなカマキリが溢れかえり、一部は家の中に侵入したものだ)、カエルの卵を金魚の用に設置してあった屋外のタンクに放ったり(微生物が湧きまくってミニビオトープになっていた)、カナヘビを捕まえては庭に連れてきたのできっと多くのカマキリは餌になってしまったりとやっていた。

 そして、恐竜に始まった私の読書遍歴は、ドリトル先生で大きく般化する。動物と話ができるドリトル先生の、世界を知りたいという願いと動物との厚い友情、好きだったなあ。

 こうした幼少時代の思い出から、免疫学者として知られた多田富雄さん、やはり虫好きで知られた手塚治虫さん、ハチの大量消失まで幅広いテーマを、温かみのある視点で語る。読みやすさはエッセイの名手として知られた日高敏隆さんに通じるものがあるように感じる。

 ウーパールーパーについて、海の魚が真水を得る方法、閉経後の女性が存在する進化的な理由、iPS細胞、そして著者が好むフェルメールと、縦横に話題を振っているので、著者の知的世界を垣間見ることができることもまた楽しい。やっぱり、エッセイは博識な人に限る。
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エッセイ | 2014/09/29(月) 19:30 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1538冊目 へんな古代生物
へんな古代生物へんな古代生物
(2012/08/25)
北園大園

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評価:☆


 ずっと内緒にしてきたのであるが、実は古生物が大好きである。私が人生で最初に買った本は恐竜の本だったし、恐竜博には足を運ぶ。ピザーラのえびマヨ浮き輪だって、私の目にはカンブリア紀の覇者アノマロカリスに見えてしまうほどだ。

 奇妙なデザイン。信じられないサイズ。それなのに、現生の生物とつながっていることを窺わせる構造。ああ、もし頭が良かったら古生物学者を目指したであろうに!

 そんな、ごくごく一般的な興味をもつ人には、本書のタイトルが心に響くのは当然であろう。なにせ、"へんな"、それも、"古代生物"である。きっと8本指のイクチオステガやら、背中に帆を張ったディメトロドン&エダフォサウルスコンビや、石炭紀にいた30センチ級のゴキブリや2メートル級の多足類(ムカデやヤスデの仲間)、翼開長30センチ級のトンボ、史上最大のカメアーケロン、デボン紀の海の覇者ダンクレオステウスや奇怪な形の三葉虫、と、話題は尽きないに決まっている!!!!!!!!!!!!

 期待に胸を膨らませて読み始める。なんと、のっけからアノマロカリスだ!こいつは期待できるぜぃ。でも、あれ?謎のUMAスカイフィッシュがアノマロカリスという説があるとかいうゴキブリのフン以下のクソ下らない愚劣な妄想まで紹介されてるぞ???そんなことに割く行は無いでしょ!見開きたった2ページで、しかも片方はイラストで埋まってるんだから、アノマロカリスについてのあんなことやこんなことを書かないでどうするの!!阿呆なの!?

 確認されている最初の脊椎動物、ミロクンミンギアも載っているぞ。うんうん、この余り知られていない生物を取り上げているのは嬉しい。彼らは無顎類と言い、顎がまだ発達していなかった。ヤツメウナギがその数少ない生き残りである。なになに?日村(バナナマンのアゴがないほう)や山根(アンガールズのアゴがないほう)も一見無顎類っぽいが、彼らは両方哺乳類であるため、間違えぬよう注意が必要である・・・・・・???

 このクソッタレ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 俺を莫迦にしてんのか?コラ?

 おいおい、ミロクンミンギアだぞ?他にもっと書くことあるだろ???見開き2ページじゃ足りないだろ?んなカエルのションベンより下衆な芸能ネタなんぞをよくも!よくもこのおれに!読者の貴重な時間を費やさせるんじゃねぇぞ、ボケ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 と、怒髪天を衝くが勢いで腹が立つ。著者がふざけてどうするんだよ!しかも、こんな低レベルなことを書いてどうするんだよ!!こんなの、乳幼児を過ぎた人間に読ませるには恥ずかしい出来である。

 私が期待した生物はたいてい載っていたが、下らないネタ満載で、嬉しさよりも怒りに体を震わせることになったのだった。誰に対しても、決してお勧めしません。寒い時に燃やして暖を取る位がせいぜいの本。
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地球史・古生物・恐竜 | 2014/09/28(日) 19:36 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1537冊目 たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する
たまたま―日常に潜む「偶然」を科学するたまたま―日常に潜む「偶然」を科学する
(2009/09/17)
レナード・ムロディナウ

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評価:☆☆☆☆


 ベストセラーは優れた作品だから売れるのだろうか?幾つかのベストセラーを読んで心底ウンザリした経験からすると、とてもそうは思えない。大ヒットした映画は楽しめるものだろうか?そうとも言えまい。ある会社の業績が素晴らしかったのは経営者が優れていたからだろうか?そう。この答えもまた、否である。そう、断固として、否。ベストセラーもナンバーワンヒットの映画も経営者も、大したことはしていない。

 でもね、実際に面白かった本にはちゃんと理由があるよ?と思われるかもしれない。しかし、実はそれは順序が逆だ。売れたから面白いと思ってしまったのである。あるいは、後出しジャンケンで経営者のあの布石が今の成功をもたらしたと判断するのである。

 本書は、こうしたちょっと刺激的な指摘に満ちている。実に面白い実例に溢れているのだが、ここではワインを使った実験を紹介しよう。

 あるワインを5種のボトルに詰めて、ラベルだけを変えてテイスティングさせると、貼られた価格に応じて脳の報酬系の活発さまで変わったという実験があるという。あるいは、白ワインに食紅を加えたというものも。こちらも、しっかり食紅を加えていない白ワインと、加えた偽赤ワインの味の違いを検出するというのだから、人間の感覚なんて当てにならないものだ。

 だとすれば、全く同じ作文を提出して、片方が90点、もう片方が79点という結果が出たというのも、驚いてはいけない。それどころか、作家が書いた文章が国語教師にダメ出しされることだってある。

 人間が評価に絡むシステムでは、必ずこうした問題が起こる。世界的なベストセラーを、こっそりと小説の賞に応募したらけちょんけちょんにけなされる。あるいは、『ハリー・ポッター』のように何千万部も売れた本は持ち込みの段階では次々と断られる。鳴り物入りでやってきた経営者が業績をあげられずに失脚する。そのどれも、背後には偶然という悪戯が潜んでいるのだ。

 本書では、こうした実例を上げながら数学的にみれば正しいのは何か?主観的な判断に忍び込む過ちとはどのようなものか?ということを鮮やかに浮かび上がらせる。

 こうした問いかけの解決に出てくる人物も豪華だ。晩年におかしくなってしまったパスカルや、ダーウィンの従兄弟のフランシス・ゴールトンといった、錚々たる人々が登場して、客観的な正しさに挑んでいる。そのせいかを享受できるのを幸いと思うべきか、それでもまだ正しく物事を考えられない人類の宿痾を嘆くべきか。ともあれ、必然と思っていることが実は偶然に過ぎないという辛辣な真実を教えてくれたことに感謝。ただ、ちょっと訳は読みにくいのが残念である。
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数学 | 2014/09/27(土) 19:32 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1536冊目 わたしたちの体は寄生虫を欲している
わたしたちの体は寄生虫を欲している (ポピュラーサイエンス)わたしたちの体は寄生虫を欲している (ポピュラーサイエンス)
(2013/07/25)
ロブ・ダン

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評価:☆☆☆☆☆


 パスツールやコッホといった、細菌学の分野における知の巨人たちが活躍して以来、病気の背後には病原体があり、病原体を除くことが健康になる道だと思われるようになってきた。上下水道の完備に代表される清浄化によって、コレラやペストといった多くの病気は一掃された。

 しかし、病原体を周りから追い払い続けてほぼそれを達成した現在、ヒトは健康になっているのだろうか?自己免疫疾患や激しいアレルギーは、発展途上国ではほとんど見られない。清潔なはずの都市部でこそ、患者が多いという不思議な矛盾がある。その背景に、我々の役に立つ寄生虫までをも追放してしまったことがあるとしたら、どうだろう?

 本書の扱う範囲は、寄生虫に限らない。産業革命以降の人間社会の急激な変化に、人類の体が付いて行けていないということを広く論じている。

 実際、上記のアレルギーやら自己免疫疾患に対して、敢えて寄生虫に感染することで症状を大幅に緩和できた事例は広く知られている。日本では寄生虫博士こと藤田紘一郎博士が同様の主張をしていることで知られているが、本書で驚いたのは、多発性硬化症にも寄生虫感染が効くかもしれないという知見である。難病に、思わぬ治療法が現れたかもしれないと思うと、胸が熱くなる。

 また、本書では盲腸が細菌の隠れ家として利点を持つ可能性だとか、牛乳を消化できるようになった経緯だとか、人類の辿ってきた遥かな歴史を感じさせる仮説が多いことも、読んでて楽しい点である。

 俄には信じ難いような仮説が、それを補強する証拠によって徐々に固められ、気がつけば"そうだったのか!"と思ってしまうのは快感だ。しかも、牽強付会という感じを受けないのは、証拠を丁寧に積み重ねた証拠だろう。

 しかも、本書はただ単に刺激的な仮説を提示しているだけではない。人類の未来、健康といった、幸福に係ることにも重大な影響を及ぼすであろう対策を提示しているのである。お腹に2、3メートルのペットを飼うのがぞっとしないアイディアであるというのには同意するが、本書で語られているのはそれだけではなく、もっとずっと多くのアイディアだ。きっと、読んでいてワクワクしてくるはず。読んでいて楽しい科学書だ。

 実に読みやすいと思って、訳者を確認したら野中香保子さん。彼女の腕には感服するばかり。また面白い本を訳してください!


関連書籍:
捕食者なき世界 (文春文庫)捕食者なき世界 (文春文庫)
(2014/05/09)
ウィリアム ソウルゼンバーグ

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生物・遺伝・病原体 | 2014/09/26(金) 19:04 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1535冊目 殺人者の顔
殺人者の顔 (創元推理文庫)殺人者の顔 (創元推理文庫)
(2001/01)
ヘニング マンケル

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評価:☆☆☆


 年明け早々、雪の気配が漂うスウェーデンの片田舎の村で、異変が起こる。老夫婦が襲われたのである。男の方は、血まみれの惨殺体と成り果てていた。鼻にはナイフで削がれかけた跡が残り、脚は砕かれて骨が見えるほどだ。女の方は、椅子の足にロープで縛り付けられ、しかもそのロープは深く首に巻き付けられながらすぐには命を奪わない程度には弱く結ばれていた。結局、病院に運ばれた女は「外国の」という言葉を最期に遺して息絶える。

 この事件の解決に当たるのは、当然警察。

 主人公の警察官や探偵がヒーローでは無くなったのはいつからだろう。流石に『テロリストのパラソル』みたいに無職のアル中というのは珍しいが、せいぜいがコカイン中毒だったホームズや洒落者のポアロとは偉い違いだ。

 本書においても、主人公は格好良くない。妻に去られたダメージから回復しておらず、一人娘は15歳の時に突如自殺未遂を図ってからは心が通い合わない。一人暮らしの不摂生さからか、腹回りは突き出てくるという始末で、実に情けない中年男である。

 興味深いのは、死んだ老婆が「外国の」と言い残したことから、外国人排斥運動に関わる人々が蠢動するところ。主人公の家にまで、テロの予告電話がかかってくる始末。犯人は本当に外国人なのだろうか?

 一方で、殺された男にも、なにやら隠していた秘密があったようだ。40年来のお茶飲み仲間である隣人は勿論、妻や子でさえ知らない何かが。果たして、主人公はこうした謎を解き明かして、犯人を捕らえることができるのだろうか?

 スウェーデンでも、ドイツやオーストリアで話題になったネオナチ風の集団が跋扈しているというのが事実なのかどうかは分からない。しかし、移民政策に苛立つ人々の姿が、外国人を労働力として移入しようとする日本の将来に重なる(とか言いつつ、将来的には受け入れた上で優秀な人にはどんどん国籍を与えるアメリカ風のやり方しか日本が生き残る道はないと思うが)。

 普段知ることのないスウェーデンの社会を垣間見えることができるのはありがたい。警察とマスコミの対立やら、検察の杓子定規さに苛立つシーンはどの社会も同じなのだなとも思わせるのも良い。あまりにも異質な社会では、社会システムを理解するだけで終わってしまうからね。一方で、ミステリとしてみると、私は孤島の連続殺人のように、犯人が当初の登場人物の中に居ることが確実な物語のほうが好きだなぁ。ついでに、主人公がもっと格好いいほうが良い(笑)。というわけで、そんなミステリを読んでみよう。
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推理小説 | 2014/09/25(木) 19:42 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1534冊目 スットコランド日記
スットコランド日記 (幻冬舎文庫)スットコランド日記 (幻冬舎文庫)
(2013/12/05)
宮田 珠己

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評価:☆☆


 イギリスからの独立を巡って騒ぎになったスコットランドを思わせるタイトルながら、どこか牧歌的というか頭にクエスチョンマークが1ダースくらい思い浮かぶ表紙絵だ。そう。この本は、スコットランドの話ではない。著者の窓から見える光景がスコットランドっぽい(それがどのようなものか、評者には分からないが)ということでスットコランドと名付けられた、そんな場所に住む作家の脱力系のエッセイである。

 著者については、かの辺境作家、高野秀行さんの友人といえば、ごくごく一部の人にはイメージが湧きやすいかもしれない。そう。そのヒントで想像された通り、なかなかに変わった感性の持ち主である。

 四国へお遍路に出てみたり、水泳をはじめて3日坊主で終わってみたり、子供のサッカーを見に行ったり、高野さんと一緒に那珂川で川下りをしてみたり(高野さんらしき人がボートをひっくり返してしまったところを見たが、まさか早稲田大学冒険部の高野さんがボートを転覆させるわけがないから別人であろうと推測を述べている)、原稿がちっとも進まなかったり、ダムの貯水率を気にしたりという日常を書いている。

 はっきりとどこが面白いというのではないが、そこはかとなく楽しい表現が好まれるのだろうか。私としては高野さんとのやりとりがとにかく楽しく、著者を楽しんでいるのか高野さんを楽しんでいるのかさっぱりわからなくなってしまった。まだまだ精進が足りないようだ。

 ただ、全体としてみたら、私の好みのエッセイではないなあ。溢れるムダ知識をさりげなく散りばめ、その結果、知と自分の知っている卑近な世界が結びつく様が好きなのだが、そもそも著者は客観的なデータなり事実なりを記すことに関心を持っていないのだ。

 本書の存在そのものも、高野さんのブログで激賞されていたので知ったのであるが、私にはイマイチであった。高野さんの本は好きなのだが、高野さんが評価する本はあまり合わないのかもしれない。。。『探偵はバーにいる』が私も大好きな『フロスト』シリーズに近い感じがすると評しているのを見て読んだがイマイチだった。変わり者は高野さんだけに収めておいたほうが良いのかもしれない。
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エッセイ | 2014/09/24(水) 19:06 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1533冊目「もしも?」の図鑑 恐竜の飼い方
「もしも?」の図鑑 恐竜の飼い方「もしも?」の図鑑 恐竜の飼い方
(2013/03/19)
土屋 健

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評価:☆☆☆


 恐竜を見てみたい。それは人類の見果てぬ夢。30メーター級の竜脚類アルゼンチノサウルスが闊歩する姿、あるいは最強のプレデター・ティラノサウルスが捕食するシーン、あるいはディノニクスのような比較的小型の恐竜が素早く動きまわるのを追いかける。ああ、ジュラシック・パークがあったら絶対に遊びに行きますとも!例えその実態が白亜紀の恐竜ばかりだとしても!

 本書は、この恐竜が現代に生きていたら、どうやって飼ったら良いかという壮大なIFの本である。飼い方に加え、飼いやすさも10段階で評価されているので、いざ恐竜を飼うことになった時にも安心できる。

 例えば、我らがヒーロー、ティラノサウルスを見てみよう。飼いやすさ3。うむ、まだまだ飼い難さにかけては上がいるようだ。餌はなんだって?ええと、ストレス解消も兼ねて生きたウシなどの大型動物をだって?うーむ、個人で飼うのは難しそうだ。

 ティラノサウルスよりデカいスピノサウルスは?おお、4段階だ。魚食だから安全面で評価されたのだろうか。しかし、最近のニュースで奴は泳いでいたという説が出てきたが、あの巨体が泳げるプールは水代だけで大変なことになりそうだ。

 では、何が一番飼育が難しいのだろう。巨大な竜脚類?いや、これも3段階だった。獣脚類が襲えないほどの彼らが獣脚類と同じランキングというのはちょっと納得行かないところもあるが、気を取り直してページを捲る。おお、居たぞ!翼開長12mにもなる、ケツァルコアトルス!奴らは空を飛ぶからなあ。しかも上昇気流がないと行けないし。飼育場所の限定が勝因(?)だね!

 逆に飼いやすいのはなんだろうか?当然、飼い難さの逆になる。つまり、サイズがほどほどで、空を飛ばず水に潜らず、できれば草食。というわけで、雑食性で体長2m程度のオヴィラプトルが見事1位を獲得!

 って、待て待て、大型犬でも死亡事故を起こすんだぞ?相手は爬虫類だから大脳皮質が発達していない。だから、芸を教えこむ以前に、飼い主が誰かを教えることすら不可能ではないか。やっぱり、サファリパーク方式で見に行くしかなさそうだ。ティラノに追われるそんなパークには行きたくないけどね(笑)

 と、実際の恐竜の特徴から飼い方や飼い易さを妄想爆発で語っているところが面白い。恐竜好きなら目を通しても良さそうです。イラストも沢山収められていて楽しいし。が、多少なりとも知識がある方にはやや物足りないかも。
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地球史・古生物・恐竜 | 2014/09/23(火) 19:01 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1532冊目 協力と罰の生物学
協力と罰の生物学 (岩波科学ライブラリー)協力と罰の生物学 (岩波科学ライブラリー)
(2014/05/23)
大槻 久

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評価:☆☆☆


 弱い生物が生き残っていくには幾つかの戦略がある。天敵に襲われないように背景に紛れ込んだり、食べられるよりも早いスピードで次世代へ命をつないだり、とにかく数で勝負したり。そうした戦略の中に、協力がある。

 本書はまず協力を取り上げる。窒素を必要とするが自分では生み出すことの出来ない植物と、栄養素は生み出せないが大気中の窒素からアンモニアを作ることができる根粒菌が協力し合い、根に住み着いた根粒菌へ植物は栄養を与え根粒菌は窒素分を与える。こうした関係を相利共生というが、これがなかなか面白い。

 同じ例で広く知られているのが、お掃除魚。彼らは大型魚の体から寄生虫を食べて除いてくれる。だから大型魚は彼らを食べない。自らの安全を確保しながら食料まで得てしまうちゃっかりっぷりが面白い。残念なことに、ミツバチの巣のありかを人に教えてくれる鳥、ミツオシエは話題に上がっていなかったが、別種の生物同士が協力しあって生きているのは進化の妙を感じさせるではないか。

 他にも虫媒花と昆虫の共進化、ミツバチの共同子育て、粘菌の不思議なライフサイクルと、生物同士の協力を初めて知る人には格好の例が多く載っているのが魅力。

 だが、協力しあう生き物がいれば、そこに付け込む者もいる。例えば、アリのコロニーで働かずに自分の子供を生んでしまう個体が現れる。ハチも同様に、巣に寄生してしまう個体がいる。彼らだけを集めると、働く者がいなくなってコロニーは崩壊してしまう。それでも、この寄生者(フリーライダーと呼ばれる)は、普通の社会にいる間には有利であるため、消えることはない。

 寄生者ばかりが有利なのかというと、そうではない。フリーライダーを見分け、彼らに罰を与えるように社会は進化してきた。この罰については、人間を被験者にした様々な心理学的な実験とその解釈が載っているのも素敵だ。特に、罰を与えている人の脳内では報酬系と呼ばれる部分が活性化しているとういのは、復讐は蜜の味という金言の背後にある生理的な理由を感じさせてくれる。

 協力があって、そのために罰があるという組み合わせ。協力の背後には罰という強制力があるから、我々は互いに協力しあうことができるという面白い視点も与えてくれるので、入門書としてうってつけである。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/09/22(月) 10:13 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1531冊目 地熱が日本を救う
地熱が日本を救う (角川oneテーマ21)地熱が日本を救う (角川oneテーマ21)
(2013/03/09)
真山 仁

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評価:☆☆☆


 ブクレコのお友達から与えられた課題図書。以前、エネルギーのあり方について他の人と議論したことがあったのを覚えていてくださり、参考にということである。そうとなれば、読まない訳にはいかない。

 著者は、小説家。以前、『マグマ』なる小説で地熱発電を調べたことがあり、原発後のゴタゴタを見て余り日の当たっていないこの技術に注目してもらうべく、別途ノンフィクションを記したというもの。地熱発電への追い風が吹いてきたと思ったら揺り返すような意見を目にして、"今度は浅薄な知識による偏見のような意見を耳にするようになった(P.8)"とお嘆きである。これは期待が持てそうだ。

 まず好感が持てるのは、エネルギーの需給がどのようになっていなければならないか、また、各発電方式にはどのようなメリット・デメリットがあるのかを、懇切丁寧に記しているところ。その中で、老朽化した火力発電所をフル回転している危険な状態であることや、原子力発電がベース電力としてどれほど優れているかをきちんと論じている点も評価が高い。

 肝心の地熱発電についても、自然エネルギーでありながら安定供給が可能という特性からベース発電足りうることに始まり、利点をこれでもかと並べている。

 これほどまでに利点ばかりなのに、どうして事業者は手を出さないのだろうか?ひょっとして、彼らは阿呆なのだろうか?

 いや、違う。本書には、地熱発電について語らなければならない点が語られていないから、そのような誤解をしてしまうのである。上記の、地熱発電の性格については間違いが無いが、これは定性的といって、質の話でしかない。エネルギー問題を語るのであれば、量の話をしなければならないのである。

 日本の地熱発電の賦存量は、経産省の試算によると、2,400万kWであるという。原発1基が100万kWであるということを考えると、日本中を地熱発電所だらけにしてもようやく原発24基に並ぶ、ということである。つまり、原発の代替は不可能ということだ。終章になっていきなり地産地消が良いと言い始め、私もその結論には同意するが、最終的には地熱発電+原発でベース電力を賄う必要があると思う。

 また、もう一つ、地熱発電には不利な点がある。それは、高コストであることだ。原発を無くせるなら高コストでも良いという意見もありうるが、それは間違いである。電気料金が上がれば、生活は苦しくなり、企業は新規採用を抑えて首切りを断行する。広がりつつある貧困層を増やす結果に繋がる。そして、それはより多くの死を生む。反原発というイデオロギーで多くの人命を危険に晒すのは、私には受け入れることのできないものである。

 このように、定性的な議論に終始し、定量性な評価を無視することで、残念だが"浅薄な知識による偏見のような意見"に堕してしまっているように思えてならない。

 個人的には、放射性廃棄物の少ない、かつ全電源喪失になっても事故を起こさないという次世代原発の開発にもっとリソースを注入し、それに地熱発電を加えるのが良いと思うが、如何だろうか?
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技術 | 2014/09/21(日) 19:48 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1530冊目 生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント
生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)
(2012/07/20)
西原 理恵子

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評価:☆☆☆☆


 ブクレコのオフ会で、本の交換会をやったのですよ。私が持っていったのはケン・グリムウッドの傑作、『リプレイ』。そして、頂いたのがこちら。久々の西原理恵子だ。

 この本、西原理恵子がまじめな人の悩みにアドバイスをするというもの。サイバラの助言を仰ぐとは世も末だ(笑)。だって、あの人は高校卒業を控えて飲酒で退学させられたりアル中の旦那に散々苦しめられたりと、とても相談しがいがあるようには見えないでしょう?(笑)同じ失敗をしたいなら役に立つかもしれないけどさ。

 妻が太ってしまったのを痩せさせたいという男性には自分は結婚出産後に林真須美そっくりになったと言い、彼女のアソコが臭いと訴える男には病院に連れて行って、"で、無事治ったら、しっかり舐めてください。舐めないと捨てられますよ"と参考になるのかならないのかさっぱり分からないが強烈なことだけは分かる助言を与える。

 親と仲良くできないと嘆く相談者には、自分も親は大嫌いだと言い放ち、挙句の果てに"一番大事なのは、家族と仕事でしょう。私、その家族に親は入ってないから"と断言する。子供のエロ本は放っておけと(全くもって同感な)ことを言うかと思えば、夫の携帯に女性からの怪しいメールが来ているのを見てしまったという女性には浮気がダメなら病気もダメなの?と聞いてしまう。

 全体的に、いつものサイバラのノリの、下品でしょうもない助言をしているのだが、それが妙に笑える。なにせ、彼女の周りには変人が勢揃い。サイバラの口から彼らの話が出てくるのを聞いているだけで笑ってしまうレベルだ。ついでに、相手に依存していると見た相談者には、かなり厳しい言葉を投げかけているところも良い。

 結局、真面目な人生相談というよりも、サイバラという一個の突き抜けた個性を持つ人物が社会に対して抱いている感情を相談を通して眺めるという感じ。その突き抜けっぷりが半端ではないのを楽しいと思うか、下品さにげんなりするか、であろう。

 自分では決して選ばない本なので、こうした機会があっても良いかな、と思った次第。でも、当分課題本は良いかな(笑)
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エッセイ | 2014/09/20(土) 19:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1529冊目 死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
(2012/11/24)
門田 隆将

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評価:☆☆☆☆


 東日本大震災の、揺れそのものが被災地へ与えたダメージは小さなものではなかったが、破局的なものではなかった。確かに道路や電力網は寸断されたが、建物の倒壊やそれに伴う死者はほとんど出ていない。高い耐震性を見せた形だ。そう。被害のほとんどは、津波によって生じた。最大10メートルと事前に想定されていた高さを遥かに上回る暴力的な波は、多くを飲み込んだ。原発の予備電源のディーゼル発電機まで。

 原発は、核分裂で発生する猛烈な熱で蒸気を作り出すことで発電する。加熱に電力は必要ない。むしろ、冷却に電力を使うのである。その原発で、電力は地震で届かなくなり、バックアップの予備電源は津波によって失われた。そして、予備電源以外のバックアップ手段は、自分たちで作り上げた安全神話に拘泥する余り、講じられることすらなかった。

 事態を放置すれば、行き場を失った熱は大量の蒸気を生み、原発内の圧力は急速に上昇する。やがて高圧に耐え切れなくなった格納容器は圧力に負け、吹き飛ぶだろう。大量の放射性物質をまき散らしながら……。

 予備のディーゼル発電機が止まったところから、吉田所長を始めとする東電メンバーの決死の戦いが始まる。早くから海水注入だけが唯一の解決方法だと喝破した所長の素早い動きによって、ルートそのものは得られた。もしここで後手に回っていたら、周囲は放射線量が高くなりすぎて、幾人もの死者を出さなければ沈静化は不可能だったかもしれない。実際、チェルノブイリでは多くの消防隊員が死亡している。

 とにかく、ここから冷却が回るようになるまではこれでもかとばかりに危機が続く。海水注入をためらう中央、東電との意思疎通の悪さに苛立つ官邸。

 原子炉格納容器の破損を防ぐために、中の圧力を抜くベントの指示が出るが、電力が無いためスムーズに行かない。おいおい、ちょっと待ってくれよ。ベントが必要なのは、こうした緊急事態でしょう?なんでこんなときにもっと簡単にできる方法を構築しておかないのさ。東電の見通しの甘さが感じられてならない。

 とにかく、ベントをやると言いながらいつまでも進まないことに爆発した菅首相は原発を自ら訪問する。リーダーは大局に立たなければならないのに、それを放棄して一番気になるところに赴いてしまったことは、責められて当然のことである。しかも、ここでどう考えてもリーダー失格の態度を取ってしまう。ああ、この危機を迎えるにあたって、冷静さを欠いた首相を戴いていたとは、痛恨事だ。結果論から言えば、彼の行動は致命的な失敗にはならなかった。

 恐らくは、彼以外の人が首相であっても東電は同じくらいのダメージを受けていたし、回復までの時間は少しは短くなったかもしれないが、レベルとしては変わらないものだろう。それでも、不要な危機を招いたことに、未成熟なリーダーの姿が見えて悲しくなる。

 刻一刻と事態が悪化を辿る中、所長は死を決意したそうだ。そして、一緒に死んでくれる人の顔を思い浮かべた、という。現場でも、職長級の人々を中心に、決死の作業を行うことを決めた人々が居た。彼らは文字通り、命をかけて破局を食い止めてくれたのである。

 以前に読んだ『前へ!: 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』では、東電が消防へ正確な情報を届けない・有能な人間を折衝役に使わないために、意思疎通が不十分だったとされるが、有能な人物を消防の案内より優先度の高い仕事に割り振っていたのであれば無理の無いことだったかもしれない。東電、消防双方の言い分をしることができたのは有難い。

 本書を読むと、現場では本当に死に物狂いの戦いがあったことが分かる。自分の命を捨ててでも大事故を防ごうと悲壮な決意をする人々の姿は胸を打つ。しかし、本来なら、そんな事態を招いては行けないのだ。下っ端にそんな決意をさせないことが、経営者の役割ではなかったのか。アメリカでは911を受けてあらゆる角度から原発を護るための手法が考えられたというのに、日本は「そんなことはありえない」と思考を停止しただけである。その戦略的な過ちを、現場の人間の奮闘で補ってはいけない。

 残念なことに、本書では吉田所長を始めとする幹部や、現場で体を張った作業員を称揚するのと同じ迫力で、中枢を批判してはいない。それでは、いつまで経っても同じようなミスと同じような感動話を生むだけだ。美談などいらない。美談を生む前に、知恵で危機を防ぐことが、危機管理の要諦ではないか。そう思われてならなかった。そして、大事故を防ぐためには、虚心坦懐に、何が起こるかわからないという姿勢で臨むべきだと改めて感じたものである。

 また、一時期ほとんどのメンバーが福島第一から福島第二へ避難した事実を巡り、朝日新聞が事実を歪曲した記事を垂れ流し、大騒ぎとなっている。その背景を知るにもうってつけのノンフィクションである。



関連書籍:
前へ!: 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録 (新潮文庫)前へ!: 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録 (新潮文庫)
(2014/02/28)
麻生 幾

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ノンフィクション | 2014/09/19(金) 20:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1528冊目 続 獄窓記
続 獄窓記続 獄窓記
(2008/02)
山本 譲司

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評価:☆☆☆☆☆


 著者は、衆議院議員時代に政策秘書給与を詐取したために逮捕され、実刑に服した人物である。彼は服役した黒羽刑務所で恐るべき事実を知る。刑務所が、知的障害者の最後のセーフティーネットになっているという実態を。しかも、ただ知っただけではない。糞尿を垂れ流す人の下のお世話まで行って、深く知ることになったのである。

 その模様を『累犯障害者』で知り、物凄い衝撃を受けた。自分の名前さえ理解していないような状態の人が、罪を自白して裁判では責任能力を認められ、そして実刑を受けるというのだ。警察の誘導や、検察に唯々諾々と従う裁判所(それで三権分立とは片腹痛い)の腐った実態には戦慄した。

 本書は、"続"が冠してある通り、『獄窓記』の続編である。ええ、著者の名前を見た時に、記憶力の無さに関しては驚嘆すべき力を持つ私のこと、『累犯障害者』の続編かとうっかり手にとってしまったわけである。てへ。

 で、しまったとは思ったのだが、そんなことでは挫けずに読み進める。前振り長すぎですね、済みません。。。

 さて、本書は著者が服役を終えたところから始まる。監獄を後にした彼を、奥様はとても温かく迎え入れる。服役囚にとっては、これだけでも珍しいことだという。多くは、帰るところがない。だから、また同じようなつまらない罪を犯してしまいがちのようだ。しかし、恵まれた立場のはずの彼を、激しい劣等感が襲う。

 スタンフォード大で行われた監獄実験をご存じだろうか?ごく普通の人を看守役と囚人役に分けただけで、囚人は卑屈になり、看守役は高圧的になった挙句に囚人役の人に暴力まで働いてしまった、という実験だ。あまりのことに、実験は僅か6日で中止に追いやられた、という。

 このうちの、卑屈になる方がしつこく著者を苛む。

 正直なところ、事件は、国民の税金を盗み取る卑劣な犯罪であると思うのと同時に、彼だけが秘書給与の詐取で実刑を受けるのは著しい不平等であると思われてならない。例えば辻元清美も同容疑があるが、服役もしていないし、それどころか恥じた風でもない。

 そのような中で、控訴を取り下げ、自らの意志で下獄した著者は、それだけで他の同類とは一線を画した存在である。そうした中で、『獄窓記』を書き、福祉に携わる立場として社会に戻っていく姿を克明に記している。特に立ち直ってから、一緒に服役した障碍者たちのためにもと奔走する著者の姿には、胸が熱くなる。

 彼への実刑判決は、他の人とのバランスは欠いているかもしれない。しかし、彼が服役し、そこで知ったことを改善すべく奔走する姿からは、彼の服役は日本の福祉行政のあり方を変えることになる、重大な出来事になるのかもしれないと思わせるものだ。また、警察でも様々な取り組みを進めているようで、それもまた心強い。

 罪はもう十分に償ったものと思う。障碍を持つ人でも自然と生きていける社会のほうが、そうではない社会よりずっと素晴らしい。だからこそ、これからの彼の活動にエールを送りたい。



関連書籍:
累犯障害者 (新潮文庫)累犯障害者 (新潮文庫)
(2009/03/30)
山本 譲司

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ノンフィクション | 2014/09/18(木) 19:17 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1527冊目 ガガーリン
ガガーリン ----世界初の宇宙飛行士、伝説の裏側でガガーリン ----世界初の宇宙飛行士、伝説の裏側で
(2013/07/23)
ジェイミー・ドーラン、ピアーズ・ビゾニー 他

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評価:☆☆☆☆☆


 1961年、ボストーク1号に乗って人類で初めて宇宙に飛び立ち、弱冠33歳で訓練飛行中に事故死した伝説的な宇宙飛行士ガガーリン。

 ここまでは、宇宙開拓史に興味がある方なら知っているかもしれない。しかし、その他のことはどうだろう?全く知らない。読み始めたところ、これが実に興味深い。

 独ソ戦の中、幼いユーリ少年は排気口の中にジャガイモを突っ込んで車を動かなくさせるといった対独破壊工作を行い、弟を殺されかけるといった経験を重ね、そして青年になって金属工場へ働きに出る。とても後に宇宙飛行士になるとは思えない経歴だ。だが、そこで熱心に働いたため、技術学校へ進み、やがてパイロットになると、2200名からわずか20名ほどしか選ばれなかった、パイロット候補生に選抜される。

 この前半生だけでも波瀾万丈であるが、やはり面白くなるのはここからだ。ソ連の宇宙開発を引っ張ったコロリョフや、後に人類初の宇宙遊泳を行うことになるレオーノフといった、宇宙開発史に燦然と輝く人々が次々と登場する。

 彼らとの関係の中で、ガガーリンの温かい人柄と克己心に満ちて常に努力を欠かさなかった生き方が、彼の成功を導いたことが分かる。後に有名となった後も、周りから英雄視されることを好まず、威張ることも無かったという。

 特に、ソユーズ1号の悲劇的な事故について、彼のとった行動は感動的ですらある。もともと、ソユーズ1号には帰還時にパイロットを十分に守れないという致命的な欠陥があることが分かっていた。だが、ソ連の官僚主義社会は、ロケット発射に向けて突き進む。ガガーリンは懸命にそれを止めようとし、最後まで彼にできることは何でもやったそうだ。それが彼の権威の失墜につながるかも知れずとも。

 人命が掛かっていることが事前に分かっていても、それでも事故に向けて突き進む様には血の通わぬ官僚社会の恐ろしさをつくづく感じる。

 他にも事故は続く。高酸素濃度下での火災でソ連でも死者が出ていたのは知らなかった。まるで、アポロ1号の悲劇を先取りするような話だ。アポロ1号では、アメリカ人初の宇宙遊泳者エド・ホワイトを含む3名が焼け死んだ。

 また、ガガーリンの乗った船も高速回転に陥って危うく意識を失うところだったというのも知らなかった。こちらについてはアームストロングの乗った宇宙船ジェミニ8号でも、スラスターの不具合から同じような回転に陥ったことがあって、アームストロングは自身の判断でミッションを中止し、地上に戻っている。宇宙開発には同じような苦労があるんだとしみじみ。

 宇宙開発史に興味がある人には垂涎のエピソードが沢山盛り込まれており、一気に読んでしまった。そして彼の悲劇的な最後。その真相は今に至っても全てが明らかになったわけではないが、その解決に上述のレオーノフが活躍したことが意外で読み応えがあった。因みに、レオーノフについては彼自身も著者の1人である『アポロとソユーズ―米ソ宇宙飛行士が明かした開発レースの真実』が抜群に面白いので興味がある方には強くお勧めしたい。

 最後に、彼に関するお気に入りのジョークを引用して終わりにしよう。

ガガーリンは愚かだ。宇宙に出て地球を1周したのに、よりにもよってソ連に帰ってきた。



関連書籍:
レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまりレッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり
(2009/01)
マシュー ブレジンスキー

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アポロとソユーズ―米ソ宇宙飛行士が明かした開発レースの真実アポロとソユーズ―米ソ宇宙飛行士が明かした開発レースの真実
(2005/05)
デイヴィッド スコット、アレクセイ レオーノフ 他

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ノンフィクション | 2014/09/17(水) 18:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1526冊目 共謀者たち 政治家と新聞記者を繋ぐ暗黒回廊
共謀者たち 政治家と新聞記者を繋ぐ暗黒回廊共謀者たち 政治家と新聞記者を繋ぐ暗黒回廊
(2012/12/04)
河野 太郎、牧野 洋 他

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評価:☆☆☆☆


 どうして日本のメディアはこうもだらしがないのだろう。朝日新聞が従軍慰安婦や吉田調書について散々捏造した挙句にようやく過ちを認めたこと、ではない。あれはあれで問題なのだが、特定のイデオロギーを事実に優先させたことと、朝日新聞のねらいは「慰安婦」ではなく「国家賠償」だったという池田信夫さんの記事を見れば、まあ事情は理解できる。納得は出来ないけど。

 だが、もっと深いところに病根はある。それは、報道のあり方という、マスメディアとしての骨格を為す部分にまで食い込んでいるのだ。本書を読めば、日本のメディアのどこに問題があるのか、実によく分かる。

 例えば、日本の報道で、政治家について書かれている記事を思い浮かべて欲しい。政局の話ばかりなのに気が付かれるだろう。語られなければならない政策については、全く理解できないようになっている。

 かつて立花隆さんが田中角栄の金脈を暴いたとき、田中の取り巻きとなっていたジャーナリストたちは、「あんなのは誰でも知っている」と嘯いた。そう。彼らは知っていた。彼が政治家という立場を利用して巨額の私利を得たことを。ロッキードだけではない。貧乏でラーメン代にすら事欠いていた人物が立場を利用して一等地に豪邸を構えるようになるというのはグロテスクだ。しかも、列島改造論は猛烈なインフレを生み、国民生活はむしろ厳しくなって支持率を落としたというのに。(巷間囁かれる、ロッキードで失脚したというのは事実ではない。1972年の就任当初は70%という驚異的な支持率を誇ったが、73年には30%以下に落ち込む。立花隆の批判が出たのは1974年の10月)

 記者たちは田中の取り巻きとして田中の情報を知り尽くしていたのに、それを国民のために使おうとはしなかった。権力と馴れ合うことによって、自らも出世街道を歩んだ1人が渡辺恒雄である。彼は自分のライバルとなり得る有能な同僚を尽く追い出して無能な人だけで社内を固めたと言われる。

 閑話休題、彼らは情報を権力から得ることを、主要な情報収集の手段としている。ということは、彼らに権力を批判することはできないということだ。本書ではそれが繰り返し繰り返し批判されている。そして、著者の1人で、元日本経済新聞編集者、後にアメリカに渡った牧野氏が、アメリカのジャーナリズムと比較して日本の足りないところを指摘し始めると、彼我の差に溜息しか出なくなる。何も欧米を礼賛しようとは思わないが、それでも、権力から情報を貰って垂れ流すのを恥じる姿勢や、内部告発者はなんとしてでも守るという気概、知る権利を守るために戦う姿は、日本のメディアには存在しない。

 悪名高い記者クラブ(こいつのお陰で、事実上どの新聞も官の情報垂れ流しに堕してしまう)批判を始めとして、重い批判が続く。メディア関係者はきちんとその批判に答えて欲しいし、我々情報消費者もこうした事実を知って、メディアを厳しく見なければならないだろう。

 反原発である理由を明かさないまま、原発稼働は反対だと言い続けるところはいただけないが、その他の点では勉強になることが多く、とても参考になった。

 また、政治関係では完全にネット後進国となっているのに風穴を開けようとする人々の姿や、ネットが従来のメディアの情報独占体制を崩そうとするところにも未来を感じさせる。そうした点からも貴重な提言が多いので、政治家諸氏にも是非読んでいただきたいものだ。
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ノンフィクション | 2014/09/13(土) 19:35 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1525冊目 犬はあなたをこう見ている ---最新の動物行動学でわかる犬の心理
犬はあなたをこう見ている ---最新の動物行動学でわかる犬の心理犬はあなたをこう見ている ---最新の動物行動学でわかる犬の心理
(2012/06/19)
ジョン ブラッドショー

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評価:☆☆☆


 動物学者であり、多くの犬と共に暮らしてきた著者が、犬についての誤った考えが蔓延している状況を憂い、誤解を解くべく、犬についての多くのことを書いたもの。

 犬はご存知の通り、オオカミの子孫であるわけである。それが故に、オオカミの特徴を多く今に残している、とする人が多い。しかし、人間との暮らしを長年続けるうちに、オオカミとして生きるための幾つもの特質を喪ってしまった、という。おかげで、今では犬同士よりもむしろ、犬と人との間の方が関係を結びやすくなっている。

 だから、犬をオオカミと思って家族に組み入れようとするのは間違いである、と著者は指摘する。それどころか、オオカミに対する理解も間違っていると来たら、もう救いようがない。

 オオカミは常に群れのトップを狙って争ってはいない。何故か?それは、オオカミの群れは基本的に家族を核としているからだ。『狼の群れと暮らした男』の著者が外部から群れに入ることができたのを見ると、群れに外部のオオカミが加わることは珍しいことではないように思うが。それでも、『狼の群れと暮らした男』においても、群れの中の役割分担は安定していることが伺われたので、常にアルファオスの座を巡って虎視眈々と機会を伺うというのは間違いであろう。

 犬に対する誤解がまかり通っているお陰で、犬への躾はトンデモの様相を呈している。本書で批判的に引用しているのを見て驚いた。

(6)犬を抱きしめたり、やさしくなでたりしてはいけない
(7)なんらかのしつけをする以外、犬と触れ合ってはいけない
(8)仕事や買い物から帰ってきたとき、犬に「ただいま」の挨拶をしてはいけない


 そもそも、だったら何で犬なんて飼うのさ、と思わずに居られない。犬は撫で回してやるのが正しい飼い方なのだ。

 他にも、血統書付きの犬が近親交配による遺伝病に苦しんでいる現実や、飼い主と離れるのが辛くなってしまった犬への対処法、犬はどうしてこのような性格をしているか等、犬飼いとして知っておいて損はない情報が沢山載っていたのは感謝。

 一方で、文章がやたらと読みにくいのは何でだろう。訳が悪いのか、構成が悪いのか……。貴重な内容なのだから、もっと表現を上手くして欲しかった。

関連書籍:
狼の群れと暮らした男狼の群れと暮らした男
(2012/08/24)
ショーン エリス、ペニー ジューノ 他

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生物・遺伝・病原体 | 2014/09/12(金) 23:58 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1524冊目 世界を救う7人の日本人 国際貢献の教科書
世界を救う7人の日本人 国際貢献の教科書世界を救う7人の日本人 国際貢献の教科書
(2010/10/14)
池上彰

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評価:☆☆☆☆


 "衣食足りて栄辱を知り、倉廩満ちて礼節を知る"、という。春秋時代、斉の桓公に仕えて彼を覇者の地位に導いた賢宰相、管仲の言葉である。説明するまでもないだろう。名誉だの礼儀や節度などというものは、最低限の生活ができるようなって初めて身につけられるものである、ということだ。

 だが、世界にはまだまだ、衣食が足りず、倉廩が空であるという地域が沢山ある。本書は、そんな地域にあって環境整備をライフワークにしている7人の日本人と、分かり易い表現に定評のある池上彰さんの対談。

 対談相手は、いずれも世界を股にかけて活躍している人々。ただし、その活動の舞台はやや偏りがある。世界で最も開発や発展の遅れた地域、つまり、アフリカを良くしようとする人が中心だ。彼らは水、紛争後の復興支援、母子保健、食料、教育、経済、そして国際協力について問題に取り組んできた。

 例えば、水。世界には、安全な飲水にアクセス出来ない人がおよそ9億人近くもいる。彼らにとって水を入手するのはそれだけで重労働だ。毎日毎日、数リットルずつ30分以上も水を運ぶ人が居る。その多くは女性や子供だ。彼らが教育を受ける余裕は、事実上存在しない。公衆衛生上の問題であるとともに、教育の問題がそこに横たわる。

 特に興味深いのは、教育について。当たり前に学校に通える地域でむしろその有り難さが自覚されていない。しかし、教育は文明社会を築く上で必須の存在である。途上国で、学校がどれほど切望されているかを目の当たりにすると、インフラの整った国に生まれたことがどれほど幸せなことなのかを感じさせるとともに、世界を救うために日々奮闘する彼らを応援したくなる。

 著者の中にどれほど深く広い知識があるかを感じさせずに、対談相手から様々な話を引き出しているところは流石の一言。しかも、読み易い。ノンフィクション好きには本当に有難い存在である。興味を持たれた方は、世界を底上げすべく奮闘する人々の姿を眺めるべく、本書を手にとって見て欲しい。
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ノンフィクション | 2014/09/09(火) 23:22 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1523冊目 デボン紀の生物
デボン紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))デボン紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))
(2014/07/19)
土屋 健

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評価:☆☆☆☆☆


 デボン紀!それは、魚の時代!そして、脊椎動物が上陸を果たした時代である!!

 それを知った上で表紙の写真を眺めてみよう。いかにもゴツイ鎧のような外殻に、鋭い牙を備えた口。目は前方を向いており、獲物との距離を的確に測っていたであろうことが伺われる。こいつの正体こそ、デボン紀の海を支配した板皮類、ダンクレオステウスである。その噛む力は海棲生物として史上最高であったと計算されている。この横顔、他人の空似というには無理があるほど見覚えがあるぞと思っていたら、国立科学博物館のものとのこと。道理で(笑)

 さて、本書は上記の二大イベントが揃い踏みしているため、従来と違って1冊で1時代である(1巻はエディアカラ紀とカンブリア紀、2巻はオルドビス紀とシルル紀、おまけに4巻は石炭紀とペルム紀)。それだけに、深堀りされているところが素晴らしい!

 植物がほそぼそと地上に上陸したのもこの頃。彼らは維管束を発達させ、次の石炭紀で地表を覆い尽くすことになる。その頃、海の中では棘魚類やら板皮類やらといった、名前だけ聞いてもさっぱり想像も付かない魚が急激に発達していった。従来の海が節足動物の天下であったことを考えると、この頃の海は今の海とさほど大きく変わらないのかもしれない。

 もっとも、三葉虫が奇妙に姿を多様化させたように、今では見られない生物も勿論いる。もう一つ、アンモナイトも忘れてはいけない。背中に角が生えていたり複眼がタワーのようになった三葉虫の化石のカラー写真がこれでもかと並ぶのは壮観で見ていてとても楽しい。想像をたくましくすれば、魚類が顎を持ち(従来はヤツメウナギのように魚類には顎がなかった)巨大化したことで、その捕食圧から生き残るために防衛戦略を発達させたためだと思いたくなる。いや、確かにカンブリア紀最大の捕食者アノマロカリスに噛まれたと見られる三葉虫の化石があることは分かっているのだけど。

 サメのように強力な捕食者に興味がある方には、上述のダンクレオステウスについて詳述されているのも嬉しいところ。

  本書後半戦の主役は上陸を始めた生物であろう。魚類と両生類を結ぶ、初期の生物として出てくるのがアカントステガにイクチオステガ。1メートル級という、なかなかにデカイ生き物だ。腕の関節から先の骨の付き方は、この頃から現生の哺乳類へのルートが決まったというのも面白い。ついでに言うと、歯の構造は両生類から以降は同一だが、魚類は違うというところに、遥か先祖から連綿と続く生命の連鎖が感じられる。

 オルドビス紀の魅力を余すところ無く伝えてくれる素晴らしい書である。

関連書籍:
移行化石の発見移行化石の発見
(2011/04)
ブライアン スウィーテク

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地球史・古生物・恐竜 | 2014/09/07(日) 19:30 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1522冊目 なぜ地球だけに陸と海があるのか――地球進化の謎に迫る
なぜ地球だけに陸と海があるのか――地球進化の謎に迫る (岩波科学ライブラリー)なぜ地球だけに陸と海があるのか――地球進化の謎に迫る (岩波科学ライブラリー)
(2012/03/16)
巽 好幸

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評価:☆☆☆☆


 陸地があって、海がある。我々にとっては見慣れた景色。だが、視野をもっと広くとってみよう。太陽系規模で見ると、水星、金星、火星といった地球型惑星には海がない。火星にはかつて海があったとされるが、少なくとも今は存在しない。それより離れた木星、土星、天王星はガス惑星で、これまた海は存在しない。

 となると、疑問が浮かぶ。どうして、地球には海があるのだろうか、と。

 水が液体として存在するには、それなりの温度がなければならない。また、水を地表に繋ぎ止めておくためには、惑星にそれなりの質量が要求される。地球は、その条件にたまたま合っていた。まず惑星形成理論からこれを語り始めるところが壮大で素晴らしい。

 だが、これでは片手落ちである。なぜなら、惑星形成理論で水がどうこうという話は、地球に海がある理由は説明できるが陸地がある理由は説明できないからだ。

 なぜ陸地があるのか。本書は、その謎を最新の地球科学から説明しようとする意欲作である。

 大陸と海洋では、地殻を構成する成分が異なる。平たく言えば、陸地の地殻は軽く、海洋の地殻は重い。この違いが生じる理由を、マントルの化学進化から丁寧に追いかけている。知らない世界の話なのでじっくり読む必要があるが、論理で丁寧に追いかけているので理解は難しくない。

 また、今の姿を生み出したプレートテクトニクスのメカニズムや、大陸地殻を生み出す地球のダイナミズムを活き活きと語ってくれるので、知的な興奮も味わうことができる。ちょっとだけネタバレになってしまうが、大陸が海底で生み出されたなんて、不思議で面白くありませんか?しかも、その答えに辿り着くのに、日本が大きな貢献を果たしている(研究面は勿論、試料面でも)というのも素晴らしい。

 地球という惑星の独特さ、素晴らしさを実感できる本である。
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その他科学 | 2014/09/06(土) 19:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1521冊目 冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間
冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫 (044))冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫 (044))
(2000/06/16)
斎藤 惇夫

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評価:☆☆☆☆


 夏休みを憂鬱にさせる読書感想文。ああ、いやな思い出が蘇る。唯一楽だったのは高校時代、項羽と劉邦が課題図書にあったので、項羽のダメっぷりを書いた時だけだ。読まずに。だって、内容分かってるもん。そんな苦行を、今年から息子も強いられることになった。何を書くか探すため、一緒に図書館に行って子供向けのコーナーを覗いていたら懐かしいタイトルがあるではありませんか。

 このネズミを主人公に据えたガンバの大冒険、調べてみたら私が生まれる前にアニメ化されたようだが、再放送でちょっとだけ見た記憶がある。内容は忘れていたが、私が懐かしがっていたら息子がこれにするというので借りてみた。で、彼が読み終わったので私も読んでみた次第。

 物語は、食料庫で快適に暮らすガンバのもとへ友人のマンプクが訪れるところから始まる。港で行われるというパーティーに一緒に行こう、というのである。あたかも引き籠もりのように、居心地の良い住処から離れることを嫌がったガンバだが、マンプクの説得にあって一緒に港へ出かける。

 宴会もたけなわとなった頃、一匹の傷だらけとなったネズミが現れる。忠太という名のそのネズミは、故郷の島から命からがら逃げ出してきたところだった。その島は、ほんの少し前まではネズミの天国だった。イタチのノロイが現れるまでは。単独で狩りをするイタチだが、ノロイは彼らを糾合、集団で狩りを行うことで、ネズミたちを全滅寸前にまで追いやっていたのである。忠太は助けを求めるため、イタチの虎口(イタチなのに)を脱して港へとやってきたのだった。

 しかし、多くのネズミをたちまちのうちに屠った狡猾なイタチを相手にして忠太を助けようとするネズミは現れない。しびれを切らしたガンバは、遂に一匹だけでも忠太と共に戦おうと立ち上がる。お約束といえばお約束の展開だけど、その後で一匹一匹と仲間が増えていくところは素直に胸が熱くなる。

 こうして15匹の仲間と共にノロイに立ち向かうことになったガンバたち。島で彼らを待つのは何か?

 平穏な暮らしを捨てて立ち上がるガンバの姿がまず格好いい。ただ、彼は決してヒーローらしいヒーローではないところが、読んでいて自然な感じを受ける。忠太と戦うと宣言しながら、後悔する。リーダーを任されながら、責任の重さに逡巡する。それはそうだろう。なにせ、命の掛かった冒険だ。ほんの少しのミスが自分と仲間の死に直結する。

 それでもネズミたちは進む。まだ見ぬ忠太の仲間を助けるために。

 15匹の仲間がそれぞれ個性的で、彼らが旅を盛り上げる。そのため、命をかけた冒険譚でありながらどこかユーモラスでもあるので、児童文学に相応しい。

 新たに加わる味方、そして強大な敵と戦い斃れる仲間。大人が読んでも十分に楽しめる作品であった。

 ガンバはみたいに強く生きたいとおもいました。(読書感想文にありがちの、適当な締め)
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その他小説 | 2014/09/04(木) 23:49 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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1520冊目 援助する国される国―アフリカが成長するために
援助する国される国―アフリカが成長するために援助する国される国―アフリカが成長するために
(2001/02)
服部 正也

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評価:☆☆☆☆


 著者は、1960年代にルワンダ中央銀行総裁を勤め、かの国の発展に多大な功績を残した人物である。その時の模様は『ルワンダ中央銀行総裁日記』に詳しい。経済的には先進国の遥か後塵を拝するルワンダの人々を見下すことなく、対等の立場で向かい合う姿勢、目的を果たすためには何が必要かを見極め的確な対策を講じる能吏ぶり、そして経済や金融に疎い門外漢にもわかりやすく伝えようとする丁寧さにすっかり参ってしまったものだ。

 本書は著者が1999年に惜しくも亡くなられた後、親しかった方々が遺稿を整理して出版されたもの。上記の来歴とタイトルから想像のつく通り、アフリカが成長していくためには何が必要なのかを論じたものである。相変わらずの服部節が健在で、勝手に嬉しくなってしまった。

 アフリカは多大な援助を受け取りながら、むしろ経済的には1980年代より1990年代の方が凋落してしまった事実があるようだ。何故か?それを詳しく論じているが、どうやらアフリカが必要としていることと、先進国が援助として行うことの間に大きな乖離があることが原因とのことだった。

 例えば、バターを作る機械。とても大きな容器を牛乳で満たすには2週間も掛かってしまい、牛乳は腐ってしまったという。

 しかも、援助をする側は、自分たちは物事をよく分かっているが相手は何も分かっていないと思い込む傾向があるため、こうした問題は頻発しているそうだ。著者の目は、その裏に度し難い差別があることを鋭く見抜く。

 丁寧に話を聞いてみれば、当初は不合理に思われた彼らのやり方も道理の通ったものである、ということを経験し、著者は現地の人の知を活かすべきだとの持論を繰り返す。それは上記の『ルワンダ中央銀行総裁日記』から一貫した姿である。

 そして、行き過ぎた援助は、援助される側に必ずしも良い影響を与えない、とも説く。誇りのある人々なら、援助がなければ過ごせない現状に甘んじないはずだ、と。あるいは、援助慣れして自助努力を失わせてはならない、と。

 暖かい視線の中に冷静な知恵を隠すバランス感覚は本当にお見事で、アフリカに限らず他国の援助について色々と考え冴えられる良書であった。15年以上前に書かれたとはとても思えない、見事な書である。



関連書籍:
ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)
(2009/11)
服部 正也

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ノンフィクション | 2014/09/02(火) 23:19 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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