化学探偵Mr.キュリー (中公文庫) (2013/07/23) 喜多 喜久 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
科学をネタにした探偵モノはかなり世を席巻するようになった。検死官だったり法人類学者が主人公になったのはいつからか。そんな現代社会にあっても、化学をネタにしたミステリは珍しい。元化学屋さんとしては、こんな珍しいタイトルを見たらつい手にとってしまいたくなる気持ち、分かって頂けると思う。
さて、本書は地方大学で理学部化学科の偏屈者の沖野助教授を探偵役に、庶務課の新人を水先案内人に据えた短篇集。学内に次々と掘られる穴から宝探しをするハメになる最初の物語。懐かしの元素記号表(メンデレーエフ、汝の名は永遠に讃えられん!)が重要な意味を持つところがもう化学やさん的には嬉しい。が、本書を読んでも読者が正しい推理を出来ないようになっているのはちょっと頂けないかな。犯人が誰かは分かるようになっているけど。
続いて、七瀬の叔父がホメオパシー(出た!!)に引っかかってしまう話。この愚かな迷妄を一刀両断しているところで私の中の好感度が鰻登り。残念なことに、あらゆる証拠がホメオパシーにはプラシーボ効果以上の効果は存在しないことを示しているのに、未だに引っかかるアレな人(婉曲に表現しないとさすがに検閲喰らいそう)がいる中で、こうやって楽しみながら啓蒙できる小説を書いてくれたことはそれだけで評価に値する!
他の話も、化学をちょっとした小ネタ程度に使って軽い感じの日常ミステリを書いているので、理系の人でなくても大丈夫。人体自然発火現象をネタにしているところなんかはオカルト系のネタに関心がある人も楽しめそうだ。科学主義者で感情表現の下手なMr.キュリーにどういうわけかはさっぱり分からないが親近感も感じてしまったし。
因みに、このアダ名は先祖のフランス人がキュリーという姓を持っていたからだが、ピエール(ノーベル物理学賞)とマリー(ノーベル物理学賞と化学賞)夫妻とは全く関係ないという設定。あんな天才一家(娘のイレーヌもノーベル化学賞受賞)と比べられたら適わないよね、ホント。
続きもあるみたいなので、機会があれば読んでみよう。
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