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Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
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BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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1519冊目 職業は武装解除
職業は武装解除職業は武装解除
(2011/09/20)
瀬谷ルミ子

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評価:☆☆☆☆


 世界のあちこちで紛争は起こっている。戦闘が停止したとしても火種はくすぶり続けるため、社会は不安定になりやすい。だから、それらの地域では戦いが再燃しやすいのだ。タリバンの復活が囁かれるアフタにスタン然り、宗派間の争いがのっぴきならない状況のイラク然り、和解の道筋が見えない中東問題然り。

 松本仁一さんの『カラシニコフ』にあるように、安価でメンテナンスが楽というカラシニコフを筆頭に、殺傷力の高い武器が社会に出回っているため、火種を煽って再び乱を起こそうとする人々は有利だ。だが、それで苦しむのは、常に力のない人々である。

 だから、紛争が終わった地域では武装解除を進めることが重要になる。それによって社会から武器を無くし、不安定な社会を変えていく。『武装解除 -紛争屋が見た世界』でその必要性を教えてもらったものだが、ここにもう1人、武装解除に全力で取り組む邦人がいる。1994年のルワンダの大虐殺。その報道写真を見たことがきっかけとなり、最終的にこの道へ進むことになった著者である。

 彼女がどうして武装解除を職業に選んだのかを皮切りに、ルワンダ、シエラレオネ、アフガニスタン、コートジボワール、ソマリア、ケニア、南スーダン、バルカンと、それこそ世界中の紛争地帯を仕事場にしてきた人だから語ることのできる、迫力たっぷりの話にぐいぐい引き込まれる。本当に人々が必要としていることは何か?どのようにしたら平和を取り戻すことができるのか?

 中には痛ましい話も沢山ある。シエラレオネの反政府軍RUFは残忍なことで有名だが、彼らは恐怖で支配するために人々の手首から先を切り落とした。両腕とも。また、少年兵を使い、彼らが反乱軍から抜けられないように故郷の人を殺させた。こんな酷い目にあった人々を、加害者とともに生きる社会に統合していくのは至難の業だ。

 武装解除は、このような戦闘中の犯罪行為を罰しない。罰されると分かって武装解除に応じるような阿呆はいないから。だから、被害者と加害者は、例え仲良くは出来なくとも、一緒に生きていかなければならないのである。

 著者が手探りで選択を重ねていく姿に胸を打たれる。

 かといって、重苦しい話ばかりではない。ソマリアでは現地女性とガールズトークで盛り上がり(曰く、あちらで人気の男性は国連職員か海賊との由)、泥棒相手にいきり立つ人々には自分たちは紛争予防センターだから平和的に解決して欲しいとボヤき、シエラレオネでパキスタン軍の兵士からセクハラを受ける。そこではパキスタンの軍人はヒゲを剃るのに上官の許可が必要という一生役に立たないトリビアを身につけたそうであるが。

 と、こうした話を間に挟むことで、ともすれば暗澹としがちな本を希望の見える方向へ導いている。

 彼女たち、武装解除に取り組む人々のお陰で、世界は少しずつ良い方向に向かっているはずだ。いつか、全ての紛争が終わり、こうした存在は不要となることを願ってやまない。


関連書籍:
カラシニコフカラシニコフ
(2004/07/16)
松本 仁一

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武装解除  -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)
(2004/12/18)
伊勢崎 賢治

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ノンフィクション | 2014/08/31(日) 19:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1518冊目 数学ガール
数学ガール (数学ガールシリーズ 1)数学ガール (数学ガールシリーズ 1)
(2007/06/27)
結城 浩

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評価:☆


 数学をこよなく愛する主人公が、じぶんよりもっと数学が得意な同級生のヒロイン、彼に憧れて勉強を教わりに来る後輩の女の子と3人で辿る数学ワールド。しかも、初歩的な、算数に毛が生えたレベルのものではない。高校レベルの数学で挫折したレベルの人なら裸足で逃げ出しても追いつかれてギタギタにされるくらい。というわけで、私には全く歯が立たず。タイトルとレベルがぜんぜん違うよ……orz。でもいいの。幾何の授業を"取っていただけ"で、統計上は平均寿命が伸びるから。

 だから評価が低いわけではない。自分が理解できる・理解できないと、本の面白さは別の問題である。問題は、登場人物の魅力が絶望的なまでに欠けていること。

 数学が得意というのは別にどうでも良いのだけど、主人公が後輩の女の子に図書館で数学を教えていると、いきなりやってきて椅子を蹴飛ばす。斬新だよ。確かに斬新だよ。でも、誰が得をするんだ?と頭のなかにはてなマークを1億個くらいならべてしまう程のキャラクター造形。そして後輩は、それなんてエロゲ?と言いたくなるくらいべったりと主人公に懐いてくる。そして、唐突に出てくる青春小説っぽいパート。

 ホント、その記述いらないんですけど。。。

 数学部分は理解できず、小説パートではイラッとさせられるという経験が生み出す絶妙なハーモニー。

 これなら参考書片手にギャルゲーだかエロゲーだかをやっている方がずっと楽しいのではなかろうかと思った次第であります。しかも、エピローグでは読者を遥か彼方に投げっぱなしにした終わり方。これはひどい。こんなの、シリーズ化するなよ。

 それはそれとして、もう一回数学を勉強しても良いかなぁとはちょっと思った。子供の成長に合わせて取り組んでみよう。
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未分類 | 2014/08/30(土) 23:54 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1517冊目 石炭紀・ペルム紀の生物
石炭紀・ペルム紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))石炭紀・ペルム紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))
(2014/07/19)
土屋 健

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評価:☆☆☆☆☆


 来ましたよ!石炭紀!

 植物が上陸を果たし、それを追うように脊椎動物も上陸を果たす。といっても、脊椎動物の活躍する舞台はまだまだ海中である。この時代に覇を唱えるのは、サメ類。長い長い口吻を持つ不思議な形態のサメがうようよ居た。その機能については諸説あるようだが、何らかの感覚器だったのは間違いないだろう。

 陸上は、広義のムシの仲間の天下だった。史上最大のトンボ、メガネウラの時代。この時、既にゴキブリは生まれていたそうである。ゴキブリは基本的に植物食の分解者なので、台所に潜む不快害虫というようりも、ダンゴムシのような分解者として重要な立場だったに違いない。

 もっとも、この時代は本書にも引用される『恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた』によれば分解者が少なく、それ故に木が生み出した炭素質が石炭として残ったというが。

 それにしても、2メートルもある多足類(ムカデやヤスデの仲間)が生きていたという。1つの節から脚が2つ出ているイラストを見ると、現生の多足類と同じならヤスデの仲間で、つまりは植物食であるかもしれない。石炭紀に一気に植物が増えたため、その栄養に惹かれて多様な生物がニッチを埋めていったのだろうか。想像するのもまた楽しい。もっとも、妻が見たら失神しそうだが(笑)

 他にも『カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化』に言及する等、知っている本が取り上げられているのが嬉しかった。

 そして、悲劇のペルム紀。古生代の最期を極彩色で彩るペルム紀末の大絶滅で、種の96%が絶滅したと言われるが、それでもこの過酷な時代を生き残った生物が次の中生代に栄えることになる。

 貴重な写真や復元の想像図イラストが多数、カラーで収められているので、眺めるだけで楽しい。だが、本書の強みは最新の研究成果を多く収めたところにある。

 哺乳類は爬虫類から進化したのではなく両生類から爬虫類とは別に進化したと考えられるようになったため、哺乳類型爬虫類という呼び方をしなくなっているとか、背中に独特の帆を張ったディメトロドンやエダフォサウルスをまとめた盤竜類というグループ分けがされなくなっているというのは驚き。知らぬ間に研究がどんどん進んでいるのを実感する。しかも、エダフォサウルスに関しては、あの帆に血管が通っていないことから体温調節に使われたわけではないとされているそうだ。

 古生物の面白さを余すところ無く教えてくれる本シリーズ、まだまだ続くようです。そして、次は中生代。恐竜の時代ですよ!

 同時並行で、朝日新聞社の46億年の旅シリーズを読んでいるのだが、同じ時代を扱いながらそれぞれアプローチが違って面白い。46億年の旅は、フルカラーという特色を活かして時代を代表する生物の解剖図のような解説を丁寧にやっているのに対し、こちらは時代を代表する生物は勿論扱うが、全体として時代の流れや生物相の移り変わりを書いている。重複する内容を読むことで記憶は定着しやすくなるし、各々の良い点を重ねあわせることで知識をより深めることができるのが嬉しい。問題は、一年後に記憶に残っているかどうか、だ(笑)

関連書籍:
恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた (文春文庫)恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた (文春文庫)
(2010/10/08)
ピーター・D. ウォード

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カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)
(2007/10)
平山 廉

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地球史・古生物・恐竜 | 2014/08/29(金) 19:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1516冊目 居場所としての住まい: ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層
居場所としての住まい: ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層居場所としての住まい: ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層
(2013/07/31)
小林 秀樹

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評価:☆☆☆


 サブタイトルにある、"ナワバリ学"というのが興味をそそる。ナワバリを作り、維持するとなると、まるで犬のようではないか。読み始めると、"個室がない昔の住居は「順位制」、現代の個室がある住居は「ナワバリ制」に対応している"(P.4)という記述に目が止まった。なるほど、サル型(順位制)と犬型(ナワバリ制)の暮らしがあるのね!

 家族であろうと他人であろうと、複数の人間が一つ屋根の下で暮らす場合には、何をどうしても互いの間に緊張が生じる。一々衝突していては身が持たないから、争いを未然に防止して平穏な暮らしをできるようにするための知恵が集団生活のルールとして結実しているわけだが、そのあり方は個室の存在を前に大きく変わったというのは面白い視点だ。

 読み進めると、単純にナワバリについて書かれている本ではないことがすぐに分かる。その扱う範囲は読み始める前に思ったより遥かに広い。例えば、アメリカでは幼児期から個室が与えられるが、日本では概ね小学校高学年か中学生くらいからである。その背景に、靴を脱いで室内に入る床上文化がある、というのはどうだろう。いきなりそう言われると面食らうが、床上文化であるがゆえに添い寝ができることが幼児期の個室を不要としていると説かれると納得だ。

 このように、意外な視点から日本の住宅事情はどのような背景から成立し、どのような性格を持つかを丁寧に追いかけている。ホームドラマに典型的な嫁姑問題にしても、このナワバリ制あるいは順位制に緊張が生じたことから生まれてくるというのは興味深い指摘だ。二世代あるいは三世代の同居は今も昔も難しいものなのだろう。

 家族のあり方も、温情主義から友愛主義に変わりつつあるといった指摘も重い。それに関して、こんな指摘が有った。

 “親を呼び捨てにすることは、仲の良い友達家族のあかしではなく、順位行動を身につけることに失敗したことのあかしなのである”というのは同感。子供には、家を安心できる場所に、家族は油断できる存在にしてやりたいけど、それと集団のルールを蔑ろにして良いと思い上らせるのは違うことだし、子供の将来にも良くないと思う。

 友達なんて自分の才覚次第でいくらでも作れるのだから、親子関係を友人関係にする必要はない。と、友達の少ない人が言っても説得力無いな(笑)

 兎も角、色々と刺激を受けることができたのが嬉しかった。近い将来、子供に部屋を明け渡す時など大いに参考になりそうだ。
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未分類 | 2014/08/27(水) 23:33 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1515冊目 二流小説家
二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
(2013/01/25)
デイヴィッド・ゴードン

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評価:☆☆☆☆☆


 ヒットに恵まれないまま、気がつけば中年になってしまった二流の小説家ハリー。恋人にも去られ、売れない小説を出自を偽りながら(読者層に併せて、性別や人種まで変える!)書きつづけてはいるが、中学生相手の家庭教師で糊口をしのぐ日々を送っていた。それどころか、その中学生は高校生になり、ハリーの代理人として切り盛りする始末。こりゃ情けない。

 そんな彼の元に、刑務所から一通の手紙が届く。彼が昔ポルノ雑誌の読者相談コーナーに恋愛指南役として架空の出来事に基づく(って、基づいてないじゃん)話を載せていたのが理由で、刑務所から手紙が届くこと事態は珍しいことでは無かった。今回が特殊だったのは、差出人が有名な事件の犯人とされるダリアン・クレイだったこと。女性4人を殺害して切り刻んで捨てたことで死刑判決が下ったという。

 ダリアンは逮捕されてもずっと自供を拒み続けていた。その彼が、ハリーに真相を告白するという。ベストセラーまちがいなしだ!ダリアンを訪れたハリーは、1つの提案をされる。ダリアンの元にやってくるラブレターの相手に会ってどんな女性か確かめ、彼女らとダリアンを主役に据えたポルノ小説を書け、というのである。その代償として、ダリアンは事件の真相を告白する、と。

 3人のタイプの異なる女性たちを訪れたハリーだったが、3件目でちょっとしたミスをしてしまう。会話を取るのに使った録音機器を、取材相手の部屋に忘れてしまったのだ。慌てて取りに戻ったハリーが取材相手の部屋で見たものは、その女性の惨殺死体だった。それも、ダリアンが殺したとされるものとそっくりに殺された。

 こうした凄惨な事件が起こるわけだが、ダリアンは逮捕されているので彼が犯人ではありえない。では、過去の事件もダリアンは手を下していないのだろうか?今、目の前にある死を生み出したのは何者なのか?

 最初はやや冗長ぎみに進んできた物語は、このあたりから一気に加速する。ああ、ここまで来たら続きを読まないわけには行かないではないか! “ポルノというのは水虫みたいなもので、女に飢えた男たちの集う場所であればどこででも繁栄する”(P.56)みたいな表現も好きだ。

 過去の、そして現在の事件の真相を追うハリーと、遺族でありハリーに協力するストリッパー、敏腕マネージャー兼女子高生で辛辣なクレイといったメインキャラに加えて、ハリーが小説の著者として名前と写真を借りたゲイのモーリスを始めとする脇役もいい味を出している。ハリーが書いたという小説の断片が挟み込まれているのも面白い。

 そして、あちこちでばら撒かれた伏線は全てきっちり回収してくれるので読み応えがある。死体のシーンだけはちょっと苦手だったが、後は楽しめた。アメリカでも日本でも絶賛されたのがよく分かる。翻訳物のミステリがお好きな方はきっと楽しめると思う。
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推理小説 | 2014/08/25(月) 19:02 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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1514冊目 ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー
ヤモリの指から不思議なテープヤモリの指から不思議なテープ
(2011/12/21)
松田 素子、江口 絵理 他

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評価:☆☆☆☆

 『ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー』という素晴らしく面白い本を読んでから、ヤモリが垂直の壁でも簡単に貼り付ける理由を知り、『ナノ・スケール 生物の世界』で実際にヤモリの指が持つ微小構造を目にしてから、生物が進化させてきた機能に魅せられてきた。

 理学部で学び、技術者をやっている私にとっては、生物の編み出した、驚異の機能がどのように生まれたか、あるいはどのように働くかという学術系の興味もあるし、それをどのように利用できるかという技術的な側面にも関心がある。そんな立場の人には、大変に興味深いトピックがズラリと並んでいた。

 取り上げているのは、表題作になったヤモリの指先の数百万にも及ぶという微小な突起が生む分子間力による接着、蓮の葉の超撥水、蚊の刺されても痛くない針(痒いのは蚊の唾液へのアレルギー反応で針の刺激そのものは痛くない)、ひっつき虫から生まれたマジックテープ、フナクイムシとトンネル、蛾の目の原理を利用した無反射フィルム、シロアリの巣の驚異的な空気循環システム、ハチの巣の驚嘆すべき働き等の全16の技術。

 フナクイムシが木に穴を穿った巣に身を潜めながら巣の崩壊を防ぐために、穴を作った傍から補強材を分泌して穴が崩れないようにしたことが、テムズ川の下にトンネルを掘るための技術に活かされ、それが更に発達してシールド工法となり、今も地下鉄や地下道、トンネルを作るのに大活躍している例のように、自然界の機能と、そこからインスピレーションを得た発明者のエピソードを一緒に載せているので、科学にも技術にも興味がある人にはうってつけ。

 もう一つ嬉しいのは、最近の発見や発明については、発明者のコメントが載っていること。カーボンナノチューブの飯島さん(ノーベル賞はまだかな~)を筆頭に、超撥水スプレーの開発者、500系新幹線の開発に携わった技術者(パンタグラフやトンネルに入る際の騒音を軽減した)、無反射フィルムの発明者たちが直接語ってくれるのは、熱意が伝わってくるようで嬉しい。

 内容も平易で分かり易く、自然界の不思議と驚異を教えてくれるのが嬉しいところ。更に、こうした技術が思わぬところで使われていることも分かって、尚嬉しい。進化の素晴らしさを実感できる一冊。


関連書籍:
ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジーヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー
(2007/03)
ピーター フォーブズ

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ナノ・スケール 生物の世界ナノ・スケール 生物の世界
(2010/11/26)
リチャード・ジョーンズ

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技術 | 2014/08/24(日) 19:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1513冊目 サヴァイヴ
サヴァイヴ (新潮文庫)サヴァイヴ (新潮文庫)
(2014/05/28)
近藤 史恵

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評価:☆☆☆☆


 『サクリファイス (新潮文庫)』が面白かったとレビューしたら、こめこめさんが貸して下さった。こちらは、上掲書と、その続編である『エデン』(未読)と同じ登場人物を用いた短篇集であるが、『エデン』は未読でも楽しめるとのことで、有り難くお借りした次第。

 さて、ロードレースは奥が深くて面白そうだと思わせてくれた『サクリファイス』であるが、それだけではなく、じっくりと練られた登場人物の織りなす世界が魅力であった。本書も同じ雰囲気を持つのだが、過去の長編で既に性格が分かっているキャラクターの概要を書く必要が無いためか、より深堀りされている気がする。

 特に、私としては石尾の活躍を描いていたのは嬉しい。

 どんなスポーツでもそうだろうが、トップアスリートの多くはアクが強い。そうした人物を主人公に据えてしまうと、他のキャラクターを活かすことは難しくなるのだろう。だから、『サクリファイス』ではレースの最後に残っていた全ての力を使ってゴールを先頭で駆け抜けるエースという存在ではなく、そのアシストである白石誓を主人公に据えたのだろうし、本書にあっては白石や、石尾のアシストだった赤城が中心となる話が多いのだろう。例外は、若くして頭角を現したエース候補伊庭。

 彼らを通して、ロードレーサーとはどのような生き方をするものなのかが活き活きと描かれる。

 勝利に、特に山道での勝利に徹底してこだわる石尾。彼がチームに加わって、他のメンバーと、特にエースと軋轢を生むのは『サクリファイス』通りのキャラで嬉しい。もっとも、彼が登場する全ての話で、石尾が自転車競技と真摯に向き合って、全てを傾けていることが分かるので、畏れられる描写はちとわからなくなるが。

 『サクリファイス』の主人公だった白石の、外国での姿を知ることができるのもまた有難い。中で、ポルトガルで闘牛を見て嫌な気分になるところは、同じくあの行為が嫌いな私には自分と共通するところを感じてしまった。他国の文化であるとはいえ、動物をなぶり殺しにするところを眺めるというのはどうにも受け入れがたい。『ドリトル先生』シリーズで闘牛を知り、そして先生によってその酷さを教えてもらって以来、もしかしたら私の精神は成長していないのかもしれない。白石がどうなったかは、是非実際に読んで確かめて欲しい。

 相変わらず面白かった。こうなったら、『エデン』も読んでみないわけにはいかないかな。

関連書籍:
サクリファイス (新潮文庫)サクリファイス (新潮文庫)
(2010/01/28)
近藤 史恵

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その他小説 | 2014/08/22(金) 23:32 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1512冊目 三国志 第十二巻
三国志 第十二巻三国志 第十二巻
(2013/09/17)
宮城谷 昌光

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評価:☆☆☆☆


 長い戦乱の時代も、ようやく終わりが近づいてきた。だが、まだまだ血なまぐさい事件は潜んでいる。

 まず、呉を見てみよう。老害を余すところ無く発揮した孫権が、トドメとばかりに忠臣名臣を失脚させてしまった後でようやく死んだと思ったら、実権を握った諸葛恪が外征で躓いて誅殺されている。その後に権力を掌握したのは孫峻。これがまた実に酷い男で、権力を壟断するばかりで何も生み出さない。それでも、彼の病死後に後を襲うことになる孫綝よりはマシだ。

 孫綝は次々に自分の邪魔になる人物を除いていく。遂には、皇帝の孫亮まで廃される有り様だ。その次に即位したのは孫休。歴史に残る、最も古いDQNネームの名付け親である。彼は皇帝である。そんじょそこらのDQNとは程度が違う。なんと、自分の子供用に新しい漢字を考えだしたというのだから、DQNの思考は想像を絶する。三国志に膨大な注を付けた裴松之は、そんな阿呆なことばかりやってるから死後に妻子が皆殺しになるのだと呆れ顔。でもこの人、趣味は勉強だったのだよね。勉強は人格を陶冶しないことが分かる。そういえば、ヒトラーもスターリンも毛沢東もすさまじい読書家だった。

 次に、魏。淮南の地で反逆事件が起こる。それも、3度も同じ土地で。後にの三叛と呼ばれることになるこの事件は、それぞれ王凌、毌丘倹、諸葛誕が起こしたものだ。端的に言ってしまえば、曹氏から司馬氏へ権力が移っていくに際してのゴタゴタである。ライバルだった曹爽派の人物は次々と誅されてしまうため、彼らと親しかった重臣が不安になって起こしたのだ。

 しかも、淮南の地は、呉と隣り合っている。事と次第によっては呉の助力を得ることができること、形勢不利となれば呉に亡命することができること、が精神的に追い詰められた彼らが蹶起するにあたって重要だったのだろう。これを叩き潰したことで、司馬氏の専横は著しくなる。もっとも、この戦いの間に司馬氏の頭領である司馬師が死に、実績の少ない司馬昭が継いだのは計算外であっただろうか。

 蜀は劉禅の治下、特筆すべきことが無いまま時がすぎる。唯一目立つのは、姜維の度重なる出兵である。しかし、彼の行動はなかなか実を結ばない。しかし、それは確実に蜀の力を削いでいった。

 劉禅は暗愚であるとされるが、思うに政治面で特筆すべきことがないというのは、下々の者にとっては過ごしやすい時代ということである。苛斂誅求があれば、史書はそう記す。華々しい軍功も、一将功成りて万骨枯るの言葉どおり(その言葉が生まれたのは遥か後の唐代であるが)、その影で国民は苦しい時代を迎える。前漢で最も華々しい武帝の時代、匈奴を圧した影で国民の負担は凄まじい物だったという。

 ともあれ、こんな状況の中で、魏で起こったある事件をきっかけに、三国時代は一気に終わりへ向かう。4代目の皇帝に即位した高貴郷公曹髦<ソウボウ>は、司馬昭の専横に耐え兼ねて遂に討伐の軍を起こし、敢え無く敗死する。この時に動きまわった賈充が、私は三国時代でトップクラスに嫌いだ。

 結局、曹髦は廃帝ということになり、諡すら与えられず、即位前の高貴郷公と呼ばれることになる。

 皇帝弑逆という汚名を晴らすためだろうか。司馬昭は、連年の出兵で弱っていた蜀を一気に鏖殺すべく、鐘会と鄧艾という、この時代有数の将軍2人を中心に、大軍を送り込む。三国志の、ラストシーンだ。

 物語は、実質、蜀が滅び、そのドサクサに紛れて蜀の一部を切り取ろうとした呉軍を防いだ羅憲の活躍で終わる。孫綝より遥かに酷い孫晧が皇帝として即位し、暴虐の限りを尽くした呉のことは書かれない。ちょっと残念だ。太りすぎて馬に乗れなかった杜預の話なんかも見たかったのに。因みに、杜預は杜甫の先祖と言われておりますです。

 まあでも、ここまでしっかり書いてくれただけで満足である。

 ただ、納得いかない点もある。大好きな三国時代を、それも正史ベースで書いてきた本に☆5つをどうしても付けられなかった理由がある。それは、どうにも登場人物の野望が感じられないところだ。特に、司馬一族は曹爽をクーデターで打倒した後は権力の中枢にあり続けるために陰謀を巡らせ続けた。そうした原動力の背後に権力欲があったと思うのが自然であるのに、どこかこう、王朝を良くしようとしているうちに気がついたら簒奪もとい禅定を受けるようになっていた、みたいなところがある。どうしてもイメージと合わない。もちろん、私の正史理解が甘いせいかもしれないが。そうしたギラギラした欲望についても書かれていればもっと面白かったのではないかと思われてならない。
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その他小説 | 2014/08/18(月) 19:37 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1511冊目 櫻子さんの足下には死体が埋まっている
櫻子さんの足下には死体が埋まっている (角川文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている (角川文庫)
(2013/02/23)
太田 紫織

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆


 名探偵は大変だ。例えば版権の都合で爺ちゃんの名前を呼べない金田一少年はどこに行っても完全犯罪を狙った連続殺人事件に巻き込まれる。あるいは、体は子供、頭脳は高校生というコナン君は、サー・アーサー・コナン・ドイルから名前を取ったとはとても思えないほど合理的な推理をする(ドイルは笑っちゃうくらい簡単にオカルトに騙されている)のだが、なんと平均すると作中の1日あたり1件以上の殺人に遭遇する始末(70巻までに429人死んでいるとの由)。おいおい、日本の殺人の何割に遭遇してるんだよ(笑)。因みに、2012年の殺人認知件数は、犯罪白書によれば1,030件である。つまり、コナン君は4割以上の殺人のすぐそばにいることになる。映画とアニメを併せると、日本の年間殺人件数を越えるそうだ。

 彼らは、まず間違いなく犯人を使嗾して犯罪を行わせている(数だけ見ればそうとしか考えられない)のだろうが、本書のヒロイン、九条櫻子さんはちょっと違う。彼女の行く先で事件が起こるのではなくて、起こった後に出くわす、のだ。更に違うのは、金田一やコナンが望んで居合わせているわけではないのに、彼女は死体を見ると喜んでしまうところである。いや、正確に言うと、骨を見ると、だ。

 そう。彼女は骨が大好き。趣味は動物の骨格を組み立てること。死体を煮て、あるいはカツオブシムシに食わせて(この場合には腱が残る)骨を取り出し、再現する。趣味が昂じてわざわざ動物の死体を求めて旅行に行ってしまうくらい。

 櫻子さんは、北海道の旭川在住のお嬢様。そして、主人公である高校生の青年は、美人な彼女が奢ってくれるご馳走についつい騙されて腐敗臭漂う現場に駆り出され、ついでに事件にも遭遇してしまうのであった。

 最初の事件は、主人公の母親が経営しているアパートの住人と連絡が取れないと家族が連絡してきた事案。中で何かがあったときに備えて、というか、櫻子さんはむしろ何かあって欲しいと期待たっぷりに訪れた部屋は、内側からチェーンが掛かった密室で、室内は荒らされ、ベッドに女性の死体が残されていた。喜ぶ櫻子さん。ヒロイン的にそのキャラ造形はどうなんですかと言いたくなるけど、昨今の流行りかも知れぬ。スレイヤーズのドラまたリナをパクった田中芳樹の薬師寺涼子あたりからちらほら見るなあ。いや、もっと前からなのかもしれないけど、詳しくないので分かりません。

 次は、海に骨を漁りに言って下顎骨を見つけてしまうもの。骨から殺人の模様を推理するあたり、BONES等の洋ドラを彷彿させてなかなか良い。それを何とかもって帰ろうとする櫻子さんを必死に諫める主人公が哀れだ。なんとか通報したところ、急行してきた警察官がなんとか骨に触らないようにしているあたり、警察も大変だ(笑)。さて、その警官によれば、近くで男女の心中遺体が発見されたとのことで、こちらでも何かと思って駆けつけたそうである。またまた喜ぶ櫻子さん。ダメだ、この人。

 最後は、櫻子さんがお世話になっている人のところを訪れたら、そこで降霊会をやるという。おお!ドイルがコロリと騙された、歴史あるインチキ術ではないか!櫻子さんは散々に腐すのであるが、その合理主義敵精神に惚れた!☆1つ追加!閑話休題、霊はある殺人を告発し始める。勿論、「○○を殺した犯人は、この中にいる!」というやつだ。事故死と思われていたのは、実は殺人だったと霊は言う。霊のお告げは正しいか!?

 と、人間的にだいぶアレなヒロインではあるが、オカルトをこき下ろしてくれるところが素晴らしい。そして、作中に美味しそうなご飯の話が沢山出てくるのも読んでいて楽しい。北海道の豊かな魚介類を臨場感たっぷりに表現してくれるので、お腹が鳴るかと思った。こちらまで魚介を楽しみたくなるが、本書を読みながら食べるのはオススメできなそうだ。
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推理小説 | 2014/08/17(日) 21:37 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1510冊目 殺人分子の事件簿―科学捜査が毒殺の真相に迫る
殺人分子の事件簿―科学捜査が毒殺の真相に迫る殺人分子の事件簿―科学捜査が毒殺の真相に迫る
(2010/01/25)
ジョン・エムズリー

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評価:☆☆☆☆


 反乱分子だとか不満分子的な雰囲気を醸し出しているタイトルではあるが、サブタイトルを見れば分かる通り、殺人分子は毒物を指していて、人のことではない。まあ、中には分子ではない毒物もあるのだが、そこはご愛嬌。

 本書で取り上げられているのは、第一部の天然の毒物が5つ、第二部で扱われる人工の毒物が5つ計10の毒物で、それぞれ章立てされている。扱われているのはリシン、ヒヨスチン、アトロピン、ヘロイン、アドレナリン(以上、天然の毒物)、クロロホルム、一酸化炭素、シアン化物、パラコート、ポロニウム(以上、人工の毒物)である。

 一酸化炭素もシアン化物も天然の毒物のような気がするけどなあ。そんな誰もが入れるツッコミを入れつつ読み始めると、どのような機序で人を殺すのか、解毒法があるならその方法、分析方法、実際の事件の経緯と様々な視点から書かれているので実に興味深く読むことができる。

 例えば最初のリシンを見れば、ゲオルギイ・マルコフ暗殺事件という近代史的にも興味深い話題が出てくる。彼は、傘の先に仕込まれた小さな金属製の球体に入れられたリシンによって殺害された。その暗殺方法もさることながら、東西冷戦の絡む背景からも関心を引く。特に、ロシアが今も都合の悪い人物をあらゆる手段で排斥している(『暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う』ではジャーナリストの殺害を扱っている)のが恐ろしい。

 ロシアについては、それが過去のものではないこともまた、恐怖を呼ぶ。ソ連からの遺産であろうか。本書も最終章はリトビネンコ暗殺を扱っている。犯人がロシアであることはどのような証拠が裏付けているのかがしっかり書かれているところが面白いところ。

 他にも、エミール・ゾラの死因が、故意に塞がれた排気口のための一酸化炭素中毒であるとか、クロロホルムを麻酔に使った時代の医療事故と、これを殺人に用いた事例やシアン化物とラスプーチン暗殺等、興味深い話題が多く、楽しく読むことが出来た。惜しむらくは、文章がやや読みづらいところか。

 こういう本を読むと、本当に恐ろしいのは(ありもしない)亡霊だの妖怪だのではなく、悪意を持った人間であるとつくづく思う。


関連書籍:
暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う (新潮文庫)暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う (新潮文庫)
(2013/05/27)
福田 ますみ

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推理小説 | 2014/08/16(土) 07:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1509冊目 化学探偵Mr.キュリー
化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)
(2013/07/23)
喜多 喜久

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評価:☆☆☆☆


 科学をネタにした探偵モノはかなり世を席巻するようになった。検死官だったり法人類学者が主人公になったのはいつからか。そんな現代社会にあっても、化学をネタにしたミステリは珍しい。元化学屋さんとしては、こんな珍しいタイトルを見たらつい手にとってしまいたくなる気持ち、分かって頂けると思う。

 さて、本書は地方大学で理学部化学科の偏屈者の沖野助教授を探偵役に、庶務課の新人を水先案内人に据えた短篇集。学内に次々と掘られる穴から宝探しをするハメになる最初の物語。懐かしの元素記号表(メンデレーエフ、汝の名は永遠に讃えられん!)が重要な意味を持つところがもう化学やさん的には嬉しい。が、本書を読んでも読者が正しい推理を出来ないようになっているのはちょっと頂けないかな。犯人が誰かは分かるようになっているけど。

 続いて、七瀬の叔父がホメオパシー(出た!!)に引っかかってしまう話。この愚かな迷妄を一刀両断しているところで私の中の好感度が鰻登り。残念なことに、あらゆる証拠がホメオパシーにはプラシーボ効果以上の効果は存在しないことを示しているのに、未だに引っかかるアレな人(婉曲に表現しないとさすがに検閲喰らいそう)がいる中で、こうやって楽しみながら啓蒙できる小説を書いてくれたことはそれだけで評価に値する!

 他の話も、化学をちょっとした小ネタ程度に使って軽い感じの日常ミステリを書いているので、理系の人でなくても大丈夫。人体自然発火現象をネタにしているところなんかはオカルト系のネタに関心がある人も楽しめそうだ。科学主義者で感情表現の下手なMr.キュリーにどういうわけかはさっぱり分からないが親近感も感じてしまったし。

 因みに、このアダ名は先祖のフランス人がキュリーという姓を持っていたからだが、ピエール(ノーベル物理学賞)とマリー(ノーベル物理学賞と化学賞)夫妻とは全く関係ないという設定。あんな天才一家(娘のイレーヌもノーベル化学賞受賞)と比べられたら適わないよね、ホント。

 続きもあるみたいなので、機会があれば読んでみよう。
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推理小説 | 2014/08/15(金) 23:16 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1508冊目 漱石と倫敦ミイラ殺人事件
漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)
(2009/03/12)
島田 荘司

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評価:☆☆☆


 夏目漱石はご存知の通りロンドンへ留学し、そこで気を病んで帰国している。その滞在時期は素晴らしいことにホームズが活躍した頃と重なり、おまけに住んでいた場所がベーカー街に近いということで、日本のホームズファンの作家はこの両者を登場させるパスティーシュに惹かれるようだ。

 本書もその1つで、奇怪なミイラ事件をホームズと漱石が追うもの。漱石の視点とワトスンの視点が交互に語られるのであるが、文体がそれぞれ漱石とホームズのパスティーシュとなっているところが特徴。漱石側の視点で見ると、ホームズは推理というより戯言抜かす頭のおかしいおっさんで、それがワトスン視点だといつものホームズ、というところがおかしい。

 たまたま漱石も巻き込まれた事件は、ある婦人が結婚相手と死別して、それなりの財産を引き継いだことがきっかけに始まる。彼女には生き別れになった弟が居て、貧窮に喘いでいたので引き取ることにしたのだが、彼は呪いを恐れて奇矯な振る舞いを続けていた。そして、彼は実際に死んでしまう。奇妙なことに、その死体はミイラ化していた。たった一日で。

 ライヘンバッハの滝に落ちてからすっかり頭のおかしくなってしまったホームズ(なるほど、性格がガラリと変わってしまった謎が解けた;笑)と、自分はおかしくないと信じる漱石たちは事件の謎を解くことができるだろうか?

 ユーモアが効いているのと、新聞広告ネタで原作っぽいものがあったりと、軽く楽しめるのは良い。ただ、ホームズに活躍して欲しいという往年のファンにとっては、ホームズがおかしな人になっているのは残念であった。
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推理小説 | 2014/08/14(木) 22:43 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1507冊目 なぜ疑似科学を信じるのか: 思い込みが生みだすニセの科学
なぜ疑似科学を信じるのか: 思い込みが生みだすニセの科学 (DOJIN選書)なぜ疑似科学を信じるのか: 思い込みが生みだすニセの科学 (DOJIN選書)
(2012/10/19)
菊池 聡

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評価:☆☆☆☆


 疑似科学に囚われる人は少なくない。阿呆な助産師がホメオパシーにハマって新生児にビタミンKを与えず殺害してしまう事件は極端な例かもしれぬが、情報番組を名乗る番組ではなんちゃら占いでランキングを付ける。実は同じレベルで愚かだ。民主主義社会にあっては国民のレベルに相応しい番組しか作られることはないので、それを見れば日本人がいかに愚かであるか分かろうというものだ。

 本書は、人はどうしてこうした不合理を信じてしまうのか、を説明しているものである。ホメオパシー、血液型差別(本書では血液型性格学と呼称している)、精神分析といった具体例があるので分かりやすいところが特徴。

 某メリケン国では元大統領のご婦人が占星術にハマって、おかげで政策にまでその影響があった可能性が指摘される。しかし、この占星術、科学の手法で正しさを証明しようと何度も挑戦しようとしている。一方の血液型差別は、そんなアプローチをやらない。○○氏は☓型で予想に合うとやるばかりだ。勿論、予想と合致しない△△氏は取り上げないのだから、そんなものは科学ではない。

 この手の本としては、非科学的な概念を列挙するものと、心理的なアプローチをするものがあって、後者として優れているのは『人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか』がとてもおもしろかった。本書はこちらの系譜に連なるもの。著者は心理学者であるため、信じてしまうメカニズムを説明するのにはうってつけの人材かもしれない。

 特に、日本で猖獗を極める血液型差別を繰り返し批判しているのは好感を持てる。どうしてこの愚かなレイシズムが蔓延っているのか、その説明がまた面白かったので引用しよう。

 先に紹介した大村政男は、このような血液型性格学が誰にでも当てはまることを「フリーサイズ」効果と呼んだ。加えて、そういわれるとそう思えるという「ラベリング効果」、いわれたとおりに思い込んでしまう「インプリンティング効果」をあわせてFBI効果と称して、血液型性格学が信頼されてしまうメカニズムを整理している
(P.148)


 わはは。こういう、冗談を交えてやってくれるのは魅力だなぁ。どうして迷信が蔓延ってしまうのかを知るのには良い一冊である。

 私は、(医療関係以外で)血液型を聞かれたら、その時点で相手の評価を下げることにしている。そもそも血液型と性格に関係がないことは多くの学術的な調査全てで確定しているのだから、それを知らぬ愚かさがある。加えて、生まれによって相手の性格を決めつける。それは差別の定義そのものである。愚かな差別主義者なんぞと、私は付き合いたいと思わない。
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反疑似科学・反オカルト | 2014/08/11(月) 19:37 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1506冊目 くらべるシリーズ〈1〉さびる?さびない?金と鉄
くらべるシリーズ〈1〉さびる?さびない?金と鉄 (くらべるシリーズ 1)くらべるシリーズ〈1〉さびる?さびない?金と鉄 (くらべるシリーズ 1)
(2004/11)
不明

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評価:☆☆☆☆


 息子の自由研究用にヒントになるかと思って借りてみた本。読み始めてみたら、どうやら中学~高校くらいの、これから科学を学ぼうとする人たち以降を対象にしているようで、うちの子供にはまだ難しそうだ。なので私が読んでみたところ、確かに初心者向けではあるが、これが十分に面白い。

 くらべているのは以下の項目。

・金と鉄
・ピストンエンジンとジェットエンジン
・テレビ
・海水と真水
・世界のお茶
・光と音
・新幹線と超電導リニア
・冷蔵庫
・化粧品の日焼け効果
・歩行手段
・デジタルとアナログ

 金と鉄では、鉄が錆びるのに金が錆びない例として、ツタンカーメンの仮面が金で出来ていたため発見時も輝きを失っていなかったことや、鉄の製造で高炉を説明する等、興味を持たせるエピソードをしっかり織り込みつつ、簡単にしすぎないというバランス感覚を持たせている。

 本書を編んだ目的が、少しでも多くの人に科学への興味を持ってもらうこととしているのは成功していると思う。

 光と音では、雷が光ってから音が聞こえるまでの時間差で距離を測る方法や、同様に地震で初期微動の時間から震源までの距離を測る方法があるのは嬉しい。高校で理系科目を取っていた人なら知っているレベルのことを、きちんと説明することで、科学に興味のない人にも優しい仕上がりとなっている。

 また、技術に目配りされているのも良い。リニアモーターカーや冷蔵庫、テレビといった、技術の進歩が生んだ商品を見ると、今が本当に便利な時代であると思わされる。どうして薄型テレビができるようになったか、冷蔵庫の使用電力が大幅に減ったのはどうしてか、といった身近ななぜに答えている。家電の開発も大変そうだ。

 科学はちょっと苦手、だけどちょっと読んでみたいという方は、子供向けと思わず一度手にとって見て欲しい。身近なところにも不思議は潜んでいるし、その背後には驚くような仕組みがあることがわかると思う。
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その他科学 | 2014/08/10(日) 14:26 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1505冊目 うなドン 南の楽園にょろり旅
うなドン 南の楽園にょろり旅 (講談社文庫)うなドン 南の楽園にょろり旅 (講談社文庫)
(2013/07/12)
青山 潤

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評価:☆☆


 旬な話題のうなぎについて、研究者が苦労談を交えて語るなら面白いに違いない!と期待を込めて読み始めた本。青年海外協力隊で一度社会に出た著者が、再び大学に戻ってうなぎ研究に取り組む。うむ、幸先良いスタートじゃ。

 そう思いながら読み進めていく。確かに、面白いシーンはある。特に、外国で言葉もろくに通じない人々の協力を得ながらうなぎを捕まえようとするあたりは。しかし、全体としてみると、どうにも面白く無いのである。

 どうして面白く無いのだろうかと考えてみた私なりの結論は、ここには破天荒な冒険の面白さ的な側面はあっても、膨大な知識であるとか、新たに切り開いた知というものが無いためであると思い至った。

 例えば、『そして、奇跡は起こった!―シャクルトン隊、全員生還』のように優れたリーダーシップが絶体絶命の危機を救うようなことは起こらないし、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』のように過去に起こった悲劇があるわけでもない。そして『孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生』のように、研究の結果明らかになった意外な事実があるわけでもないし、研究過程の面白さがあるわけでもない。

 莫迦な大学生のやっていること、というならまだ良かったのだけど、研究者がやっていると思うとちょっと寂しくなる。せっかくなのだから、うなぎを捕らえる旅だけではなく、日本に戻ってからの研究等で得られた最新知識を盛り込んでくれればよかったのだ。全体的に、とても残念な仕上がり。

 ただ、学生同士の軽いノリは充満しているし、逆に難しいことは全く書かれていないため、軽い読み物を求めている方には絶好かも知れない。
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科学者 | 2014/08/07(木) 22:55 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1504冊目 ドイツの犬はなぜ幸せか―犬の権利、人の義務
ドイツの犬はなぜ幸せか―犬の権利、人の義務 (中公文庫)ドイツの犬はなぜ幸せか―犬の権利、人の義務 (中公文庫)
(2000/08)
グレーフェ アヤ子

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評価:☆☆☆☆


 再び犬を飼い始めたのです。前の子はキャンプ場で拾ってきたのだが、今度は殺処分寸前の犬をボランティア団体から貰ったもの。それを知ったFumikoさんが貸してくださったのが、こちら。

 本書はドイツ人と結婚してドイツで暮らす女性が、飼い犬の口を借りてドイツにおける犬の暮らしをレポートしたもの。

 日本ではよく見られる、外飼いで鎖を付けたまま一日過ごす犬。あれは、ドイツでは法律違反である、という。犬は群れを作って生きる生き物なので、家族という群れの中に入れてやらねばならぬ、というのが理由だ。しかも、1日8時間は誰かの目が届くところに居させることとされているそうである。

 一緒に室内で暮らすとなると、きちんと躾けなければならぬ。そんなわけで、ドイツではかなり犬の学校も整備されているようだ。それは意外では無かったのだが、彼の地では普通のレストランは犬と一緒に入れるというのはびっくり。日本では、犬を連れて遊びに行くと食事に困ることがあるので、大きな差だ。勿論、これができるのもきちんと躾ける風潮があるからだろうけれど。

 その中で繰り返されるのが、犬と序列の問題。自分が家族で一番エライと犬に思わせてしまうと、噛み付いたり言うことを聞かなくなったりと問題が多い。幸い、うちに来たのは中型犬で、こちらには敵わないと思っているようなので今のところは問題無さそうだが、今後もそれはキープせねばならぬ。

 子犬との接し方、躾け、やってはいけないこと、やるべきこと等が平易に語られているので大変勉強になった。前の子と8年過ごしたとはいえ、吠えない・咬まない・飛びつかないという完璧な犬だったため、犬の飼い主経験値は低いままなのである。

 実用的な側面に加えて、飼い主が可愛くて仕方ないと思っているところが垣間見えるところも良い。やっぱり、一番大切なのは愛情だよね。殺処分の多い日本が学ぶべき点がとても多いように感じられた。犬と一緒に楽しく過ごす世の中を作るためにも有効そうな一冊。
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ノンフィクション | 2014/08/05(火) 21:59 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1503冊目 宝くじ戦争―戦後の日本を救ったのは宝くじだった
宝くじ戦争―戦後の日本を救ったのは宝くじだった (新書y)宝くじ戦争―戦後の日本を救ったのは宝くじだった (新書y)
(2005/03)
大山 真人

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評価:☆☆☆


"宝くじに隠された戦後日本の真実とはいったい何か?
宝くじは国民の射幸心を煽り、不浄な金であるという宿命を持つと為政者から言われ続けた。その実「勝札」として聖戦遂行の貴重な財源とされ、戦後は一転して、日本経済の救世主の役割を担わされた"


 へえ、面白そうなタイトルだなぁと思って手に取ったところ、目に飛び込んできたカバー裏の文章が上に引用したもの。これは益々面白そうだ。

 日本の宝くじには1人の仕掛け人が居たということを知った。その名を、片岡一久、という。彼なくして宝くじの発展は無かったと言って過言はあるまい。実際、本書は宝くじの歴史を追いかけているのか、はたまた片岡の人生を俯瞰しているのか分からない程である。

 戦時下の都市部では、金を仮に持っていたとしても使う先はなく、それが夢を買う宝くじに流れた、という説明はなんともわかりやすい。明日どうなるかも分からない中で夢を買うのはせめてもの喜びになりそうだ。その最初の宝くじ"勝札"は、膨れ上がる軍事費を賄うために編み出されたものだという。皮肉なのは、その売り出し最終日が1945年8月15日であるというところだろうか。

 戦後はインフレ抑制として町に溢れた金を回収する手段としても宝くじが役立った、などという視点は思いもよらぬもので驚きであった。激しいインフレのため、宝くじの景品が賞金の他にタバコだったり日用品だったりするところは今と隔世の感がある。しかし、物資が足りない時代であれば十分に購買の動機になったことであろう。

 スピードくじやら有楽町の宝くじ売り場も、片岡のアイディアで生まれたそうである。ということは、今の我々が知る宝くじの姿は、彼なくしてはあり得なかったのかもしれない。加えて、片岡がどうやって宝くじを売るかに腐心した挙句に取った宣伝戦略も、今の宣伝と似通ったところがあるところもそう。

 なんとも意外なところに傑物が居たという感じだ。

 これまで、"宝くじは、数学ができない人が払う罰金である"といったような諧謔が気に入っていたし、実際、宝くじを買ってこなかったのだが、本書を読んで、被災地の復興くじみたいなものはもっとやっても良いかな、と思うようになった。勿論、宝くじではなく、直接寄付するのが良いに決まっている。しかし、宝くじ形式にすれば"復興に寄付する気はないけれども宝くじは買いたい"という層にも訴求できる。しかも、何の後ろめたさを感じることなしに。

 そんなわけで、復興のくじがあったら、試しに買ってみようかな。飲み会代くらい当たれラッキー、くらいの積りで。
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ノンフィクション | 2014/08/03(日) 19:09 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1502冊目 お任せ! 数学屋さん
お任せ!  数学屋さん (一般書)お任せ! 数学屋さん (一般書)
(2013/06/11)
向井 湘吾

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評価:☆☆☆☆


 これもまた、ブクレコで存在を知ったもの。他の方の挙げるレビューで面白そうと思うものを片っ端から読みたいに入れていったところ、これが結構な数になってしまい、優先消化中なのであります。

 物語の舞台は、中学校。ある学校に神之内宙という転校生がやってきたところから話が始まる。お約束の転入生の挨拶で、「神之内宙です。特技は数学。将来の夢は、数学で世界を救うことです」と大まじめに述べてクラス中をドン引きさせることに成功する。

 お約束通り、この一風変わった転校生は主人公である天野遥の隣に席を与えられる。遥にとって残念なことに、彼は真面目も真面目、大真面目であった。しかも、小さなことからコツコツと、という苦労人でもあった。そのため、一週間後に遥が登校した時、"数学屋"と書かれた珍妙な幟が机に括りつけられているのを目にすることになるのである。

 宙は、数学で全てが解決できると宣言する。その意気たるや良し!数学はあらゆる科学の母なのだ!生物は複雑すぎて数学じゃ扱えないけどね! 「数学で解けるのって、計算問題くらいじゃないの?」と問いかける主人公に、宙は「『素数』ってあるよね?」と言って、公開鍵暗号方式の説明を始める。全国に64億6969万3231人(※)は下らないと見られる素数ファンの心を鷲掴みすることに成功した瞬間である。

 なかなか貯まらないお小遣いで欲しいグローブを買うにはどうしたら良いか(一気に身近な話題になったぞ)は算数レベルの計算だったが、校庭を野球派とソフトボール派が仲良く半分こして使うために2次方程式の解の公式を使い、やる気のない野球部員のモチベーションを上げるために囚人のジレンマを用いる等、上手く数学を使って物語を進めていくので読んでいて楽しい。

 最後、いかにも中学生らしい、切実な悩みが寄せられるが、果たしてそれに数学屋さんは答えることができるか!?

 数学を使うとは言っても、そこは軽い読み物なので、数学っぽい話ではない。なので、素数は大好きだけど数学はちょっと苦手という、世に遍く存在する人々にも安心して読んで頂きたい。もうちょっと興味がある方に向けて、リーマン予想やらオイラー積なんて単語も散りばめられているのも良い。

 とても楽しい小説であった。


※素数です
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その他小説 | 2014/08/02(土) 19:30 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1501冊目 QED ベイカー街の問題
QED ベイカー街の問題 (講談社文庫)QED ベイカー街の問題 (講談社文庫)
(2003/09/12)
高田 崇史

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評価:☆☆☆☆


 シャーロキアンの集うクラブ"ベイカー・ストリート・スモーカーズ"。そこは濃ゆいホームズファンがホームズの物語をあれこれと語り合う、仲間に入りたくはないけれど会話は聞いてみたい集団であった。隔月で行われる集会で、次はなんと"空家事件"100週年ということで、参加者は盛り上がっていた。

 棚旗奈々は偶然再会した大学時代の先輩からこの記念集会に誘われ、やはり同じ大学の卒業生桑原崇、アダ名をタタルと共に参加することになる。

 事件が起こったのは、パーティーの最中であった。主要メンバーで"まだらの紐"を演じる中、惨劇が起こる。沼毒蛇に咬まれて死ぬはずの教授が姿を表さないのを不審に思って探したところ、控室で刺殺されているのが発見されたのだ。状況からして、犯人はこの中にいる!

 しかも、事件はそれだけでは終わらなかった。更に1人、変わり果てた姿となって発見されてしまうのである。

 凄まじい知識を織り込みながら物語を進める著者らしく、本書もまた、ホームズネタの濃ゆい濃ゆい話がこれでもかと詰め込まれているので、ホームズファンには堪らない。そして、しっかりホームズの謎と事件の解決が結びついているのがお見事。

 菜々がタタルに連絡を取ればタタルのご高説が始まり、パーティーに出れば丁々発止の遣り取りが繰り広げられる。その度に、あの話にはそんな解釈もあるのかと楽しむことができる。ホームズは長年に渡って書かれてきたし、ドイルが細かいところに拘泥しない人物だったらしく、矛盾点をあげつらえば幾らでもできる。でも、そうしたアラを分かった上で楽しむのがファンなのだよなぁ。

 事件の解決にタタルが一肌脱ぐことになるのは、まあお約束といったところだが、彼の知識もまた凄い。ホームズの矛盾点をこれでもかと挙げていくのだが、最後にそれを見事に回収してしまったのに脱帽。細かなウンチクも散りばめられていて、文章自体はあまり好きではないのにあったという間に楽しく読了。ただ、ホームズファンではないなら、多分楽しめないと思いますです。
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推理小説 | 2014/08/01(金) 19:48 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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