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Skywriter

Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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1477冊目 スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実
スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実
(2014/05/16)
ルーク・ハーディング Luke Harding

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評価:☆☆☆☆

 レビュープラスから献本頂いた本。

 世界でも最も謎のベールに覆われた諜報機関、アメリカ国家安全保障局NSA(National Security Agency)。そこから大量の機密文書が流出した。エドワード・スノーデンの手によって。彼がロシアに逃れた経緯は、連日のように報じられたのでご存じの方も多いだろう。

 暴露された情報にはどのようなものがあったのか、また、その影響はどのようなものなのかが、専門家だとか解説委員と名乗る人々によって説かれ続けた。しかし、どうして彼が自分の属する国を裏切ったように見える行動を取り、自らを苦難の道に追い込んだのかは、さっぱり分からなかった。本書を読むまでは。

 表紙の折り返し部分に記された、たった1つの文章に、その全てが詰まっていると言っていいだろう。"表現のすべてが記録される世界になど住みたくありません"。重い言葉だ。国家が国民のあらゆる表現を監視しようとしたときに立ち現れるディストピアはジョージ・オーウェルの『一九八四年』でおぞましく描かれている。

 オーウェルが想定したのは共産主義国家で、実際にソ連や東ドイツはゾッとするほど徹底して国民を監視し続けた。中国はまだ崩壊していないのでこのあたりの記録は出ていないが同じようなものだろう。

 ところが、これは共産国家だけのことではなかった。自由を旗印に掲げるアメリカにおいても、情報の収集は行われていた。徹底的に、しかも大規模に。その転機は911にあったわけだが、それでも一般人がネットワークを通じて行うあらゆる種類の遣り取りを国家が監視しているという事実は空恐ろしさを感じる。

 スノーデンが訴えたかったのは、将にこのことである。その監視の手は、想像しうるあらゆるところに伸びていると思って良い。検索サイトも、電子メールも、スマートフォンも、SNSも。グーグル、ヤフー、フェイスブックといったIT系の大企業もまた、その営みに力を貸している。つまり、こうしたツールを使う人は、自分の嗜好やら行動が、国に筒抜けになっているということだ。

 俺は何も後ろめたいことなど無いから自由に情報を収集してくれ、というのも1つの立ち位置だ。だが、ゴリゴリの自由主義者(リバタリアン)であるスノーデンには、それが許せなかったのである。

 本書はスノーデンがなぜ内部告発者になったのかという最も根源にある謎を追うことで、彼の人生を丁寧に解説することになる。自分にとって正しくないと思われることであれば、相手が国家であろうとも容赦しない。勇気が必要なことだ。特に、彼のような愛国者には。

 彼の考えに賛同する人も反発する人も、まずは国家がそこまで情報を管理するべきかどうかを考えてるきっかけになるだろう。なにせ、やっていることといえば、国があらゆる封書を開けて中身を記録してから何事もなかったかのように配達するようなものなのである。

 テロとの戦いという、それなりに正義がありそうに思わせながら曖昧な概念に振り回されて、大切なことを見失ってはならない。それは、民主国家は国民の思想信条や信仰の自由を保証することで成り立つということだ。今は分析だけかもしれないが、それが一歩進んだ時に何が起こりうるか、考えておいて悪いことは無いだろう。

 ついでに言えば、我々自身の情報もまた、アメリカは収集している。サーバが外国にあれば、どこかの経路でアメリカやイギリスの勢力圏を通っている可能性が高い。そこではあらゆる情報が傍受されているのだ。

 現代のスパイ戦の一端を垣間見せてくれるノンフィクション。これを機に、是非、国家と情報のあるべき姿について考えてみて欲しい。



 それにしても、これを無料で頂けるとは実にありがたい。興味がある方はレビュープラスに登録してみてください。


関連書籍:
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
(2009/07/18)
ジョージ・オーウェル

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ノンフィクション | 2014/06/29(日) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1476冊目 ただし少女はレベル99

ただし少女はレベル99 (講談社ノベルス)ただし少女はレベル99 (講談社ノベルス)
(2014/02/06)
汀 こるもの

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評価:☆☆☆☆


 ふざけたタイトル、これは凄く面白いか怒髪天を衝くつまらなさかどちらかであろうと当たりをつけて読み始めたところ、これが予想外に面白い。

 決して写真に映ることのない出屋敷市子は、クラスメイトからデビット・カッパーフィールドっぽいということで「カッパー」と呼ばれている。という時点で、もう対象読者若くないよね(笑)。で、実は彼女は強力な力を持っており、その力を利用しようと様々な神が部下を彼女の下に派遣している。

 たまたま、クラスメートである葛葉芹香が撮った写真に出屋敷市子が写ってしまったからさあ大変。芹香には、雑誌の裏表紙あたりに載っている幸福のペンダント並みの幸運が続々と押し寄せる。と言っても、眉毛つきコアラのマーチだとかハートのピノだとか、そのレベルなのだけど。市子から消せと言われた写真をついつい放置してしまった芹香に、奇妙な老人がつきまとう。

 彼は元日本海軍の軍人で、死後にその魂が天狗になったという珍妙な経歴の持ち主で、言うに事欠いて「消えるのはカッパーフィールドじゃなくハリー・フーディーニだ」と、実に分かりにくい、だが分かる人には笑えるツッコミで私の心を鷲掴み。次々起こる異常事態にも、やれ荒俣宏じゃ、荻野真じゃと、往年の名作『孔雀王』を思い出させるボヤきで、アラフォー辺りでサブカルに手を出していた人は懐かしくて仕方がないネタが満載。しかも、彼はレイテの謎の反転に居合わせたそうなので、現代史に興味がある人もついていけるという親切設計である。

 と、まさに私好みのネタオンパレードで、実に楽しく読んでしまった。

 本書はこんな出屋敷市子を主人公に据えて、随所に要らない薀蓄を埋め込んだ(しかも、それを嫌味にならないやり方で提示するという素晴らしさ)短編を4つ収めている。ネタの密度の濃さは保ったままなので、これは今後も楽しみだ。
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SF・ファンタジー | 2014/06/28(土) 19:04 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1475冊目 さいはての彼女
さいはての彼女 (角川文庫)さいはての彼女 (角川文庫)
(2013/01/25)
原田 マハ

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評価:☆☆☆


 著者の作品の多くがブクレコで高く評価されているので、気になって手に取った。

 本書は、それぞれ何らかの失意を抱く女性4名を主人公に据えた短篇集。

 仕事に生きてきた女性が失恋し、目をかけていた部下にも去られて失意の旅に出る。行き先は、沖縄。のはずだった。しかし、当日30分も遅れて自宅に迎えに来た秘書のせいで、予約してあった便にギリギリで滑りこむと、その行き先は女満別だった。北海道の中でも最北にある飛行場だ(笑)

 おまけに、高級車しか乗ったことがないのに、レンタカーでは最も安いボロボロの軽自動車を予約され、キャンセルするにも繁忙期で変わりがない。キレまくりながら走りだした彼女の目の前に現れたのは、ハーレーを駆る少女だった。

 この表題作は、出だしの面白さと上記2人に加え、登場するキャラクターの暖かさが心にしみる作品。常に気を張った感じの主人公が、最終的に人間として物凄く成長したように感じられるようになるところが良い。

 次の"旅をあきらめた友と、その母への手紙"は、一人旅に出かけた女性がいつもの旅の相方を思いながら過ごすもの。更に、"冬空のクレーン"は"さいはての彼女"同様に仕事で行き詰まった女性がこれまた北海道に旅をするもの。完成度はそれぞれ高いし、悪くはないのだけれども、同工異曲の短編が連発でちょっと食傷気味。

 最後、"風を止めないで"で、表題作の登場人物の家族を主人公にした短編は、他とやや雰囲気が違う。ただ、これも巨視的に見れば、失ったものの大きさから癒やされていない女性が、再び前を向いて歩き出す物語という点では同じか。

 人気がある理由はよくわかったが、続けて読むとちと飽きる。そんな感じ。長編にチャレンジするか否か、悩んでみる。
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その他小説 | 2014/06/26(木) 19:52 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1474冊目 ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい
ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたいぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい
(2014/01/30)
クリスティン・バーネット

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評価:☆☆☆☆☆


 障碍を持った子供と関わりのある全ての方に、是非ともおすすめしたい本。

 これもまた、ブクレコで存在を知った本。Konishi Isaoさんのレビューを拝見して読み始めたら、圧倒されて一気に読んでしまった。

 本書は、著者クリスティン・バーネットさんの半生を追いかけたもの。都会派アーミッシュの家族に生まれた彼女は、マイケルという男性と出会い、すぐに意気投合して結ばれる。24歳で生まれた初めての息子ジェイコブくんは、重度の自閉症アスペルガー症候群を患っていた。2歳の時に親に告げられたのは、ジェイクはどれほど大きくなっても自分で靴紐を結んだり、字を読んだりすることはできないという見解だった。

 だが、9歳になった時、彼は大学に入学する。書き間違いではない。9歳で大学に、だ。それも、理論物理学を学ぶ若き天才として。入学後は相対性理論と取り組み、教授をして「ジェイクについて行けているのか、自信がないぐらいですよ!」と言わしめるほどの才能を見せる。

 もちろん、それまでの道のりは平坦ではない。なにせ、彼は字を読むことなどできないと判定された過去を持つ。おまけに、心の理論を欠くアスペルガー症候群では、日常生活に大変な苦労があった。

 困難を乗り越えることができたのは、間違いなく著者とマイケルという素晴らしい夫婦の力だろう。特に著者は、ジェイクを専門家の決め付けから取り戻すと固く決意する。それは、導き手の居ない旅。賭けているのは、自分たちそのもの。それでも果断に運命に立ち向かい、家族が互いに支えあうという当たり前であり同時に尊くもあるところに辿り着く。

 特に、著者がジェイクのためにも自宅を知的障害者向けの託児所にしたところは感動なしに読めない。できないことをできるようにするという、従来の教育方法では少しも改善が見えなかった子供たちが、得意なことを伸ばすという姿勢に触れ、驚異的な進歩をみせるところは背中に鳥肌が立つほどだ。

 こうした取り組みを、しかも著者は無償で行っていた。それなのに、運命は過酷だ。多くが1歳までに死ぬといわれる難病を抱えて生まれ、リーマンショックではマイケルは失業、著者の務める保育園も半ば閉園状態となる。これでもかとばかりに著者は脳卒中を病んでしまう。

 捨てる神あれば拾う神ありとはこのことで、そうした時には意外な形で救世主がでてくる。神は自ら助くるものを助くというべきか。彼女の信仰もまた、大きな力になっているようだ。信仰は心の強さに結びつく。それを他人に押し付けることに向ける人もいるが、著者は飽くまでも自分の為すべき教育事業に向けるところが心を暖かくさせてくれる。

 いつの間にか著者にどっぷり感情移入しながら、ジェイクくんの成長を見守るような気分になっていた。頭はあちらのほうがずっと良いのだけど(笑)

 とにかく、母である著者の献身的でひたむきな愛情と、子供たちの才能を伸ばしたいという熱意に胸を打たれる良書。こうした成功事例が、他の場所でも活かされることを願いたい。そのためにも本書を読む人が一人でも増えることを願ってやまない。

 文句なしの☆5つ!


関連書籍:
ずっと「普通」になりたかった。ずっと「普通」になりたかった。
(2000/04)
グニラ ガーランド

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わが家は自閉率40%―アスペルガー症候群親子は転んでもただでは起きぬわが家は自閉率40%―アスペルガー症候群親子は転んでもただでは起きぬ
(2007/06/27)
星空 千手

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なぜかれらは天才的能力を示すのか―サヴァン症候群の驚異なぜかれらは天才的能力を示すのか―サヴァン症候群の驚異
(1990/10)
ダロルド・A. トレッファート

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ノンフィクション | 2014/06/23(月) 22:34 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1473冊目 聖書を読む
聖書を読む聖書を読む
(2013/08/29)
中村 うさぎ、佐藤 優 他

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評価:☆☆☆☆


 私には信仰心が無い。宗教に必ず付いて回る、理性を越えた何かを信じることをどうしても信じられないから。マリアの処女懐胎は「結婚する前に子供を産んだ」を「処女」と翻訳した誤訳で、当時の人は誰一人そんなこと信じていないのに、疑いを挟まず信じ続けるキリスト教徒は今もたくさんいる。他の宗教も一緒だ。どんな御託宣も、"導師は最終解脱者である"という狂った宗教と原理的には同じ。客観的に正しさを示すことはできないし、外部の人間から見ると薄気味悪い妄想を信じていて気持ち悪い、ということになろう。

 但し、他人が宗教を信じるのは他人の勝手で、そこに口を挟む気は毛頭ない。だから、信じる人は私を折伏しようなどとは夢にも思わないで欲しい。

 それなのにこの本を読む気になったのは、ブクレコのレビューで、"対談で佐藤優氏が圧されている箇所が随所にある"とあるのを見て驚いたから。あの中村うさぎが、神学を専攻していた佐藤優を圧するとは、信じられなかったから(笑)。実際に読んでみたら、その通りで、中村うさぎへの認識を改めなければと思った次第である。

 幼い頃から聖書に親しんでいたという中村うさぎはバプテスト派(アメリカに多い保守的な宗派)、対する佐藤優はカルヴァン派。宗派としては善き行いをしたら救われるという前者と、生きている間の行動は救いと関係なく神が救う者は事前に決まっているという後者の思想の違いが対談で色濃く出ていて面白い。

 聖書は本当に非合理的な物語に満ちている。アダムとイヴが知恵の実を食べて楽園を追放されるところだって、本当に神が全能なら、そんなことをしない人間を作っていれば良かった。で、その結果永遠の生を失うわけだが、神は人に永遠の生を与える気なんか無かったと喝破する中村うさぎ。小説家らしく想像力豊かに聖書を読み解いていくのは、快刀乱麻を断つような心地よさがある。

 また、二人共、原理的に信じているわけではないところも大きいだろう。聖書にはおかしな記述が沢山あるという前提を受け入れているし、パウロと池田大作を重ねあわせてみたり、その流れで使徒言行録を池田大作著作集になぞらえてみたりとやりたい放題(笑)。

 そんな中でも、佐藤優の専門知識は、どうして聖書がこんなにも非合理なのかをユダヤ人の性格にまで掘り下げて語ってくれているのが光る。なるほど、日本人の感性では受け入れ難い、アブラハムが息子を神に捧げるために殺そうとするシーンも、相変わらず納得は出来ないが、それなりに明快な答えがある。

 時にドラクエに話がそれるように脱線もあるが(余談も面白いから良いが)、二人の会話が咬み合っていて、読んでいて楽しい。こんな無茶な話をなんとか合理的に解釈しようとする聖書学者たちは大変だ。私なら「合理的全くなし!☆0!」とか書いて終わりにしてしまいそう。

 頂けない所も勿論ある。

 中村うさぎがディスカバリーチャンネルで見たという曖昧な記憶で"まだ陸地にはまったく生物がいない時代、海中に哺乳類型爬虫類というのと巨大なサソリとかの節足動物とがいて、それぞれが巨大化してるんだけど"云々(P.96)と言ってるが、巨大サソリってウミサソリのことでしょ?シルル紀の。そんな時代に哺乳類型爬虫類なんて居ないぞう。両生類が上陸を果たした後で進化したんだぞう。佐藤優も同調してる場合じゃないぞう。

 女性が虫を嫌いだと一般化した挙句に、こうした太古の記憶が云々とかも言ってるけど、狩猟採集時代において、昆虫は有益なタンパク源で、それを集めるのは主に女性の仕事だった。単なるナンセンスである。想像の翼を広げるのは結構だが、事実に属する分野はきちんと調べて欲しい。

 こうした欠点も無いではないし、聖書へのイメージが変わったわけでもないが、対談としては実に面白かった。
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未分類 | 2014/06/21(土) 09:33 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1472冊目 捕食者なき世界
捕食者なき世界 (文春文庫)捕食者なき世界 (文春文庫)
(2014/05/09)
ウィリアム ソウルゼンバーグ

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評価:☆☆☆☆☆


 表紙が素晴らしい。この特徴的な巨大な牙は、伝説的な捕食者、サーベルタイガーのスミロドンのものだろう。永遠に喪われてしまった巨獣の頭骨は、本書のタイトルと実にマッチしている。そう。彼らのような、強大なる捕食者、人類をすら晩御飯の一種にしか見ないであろう強者達の多くは、永遠に地表を去った。ライオン等の数少ない生き残りは、細々とその命脈を保っているに過ぎない。

 捕食者が喪われた結果、何が起こっただろう?被食者は、恐怖に怯えなくて済むようになった。そして、彼らは増えに増えた。環境が悪化しても、なお。本書は、捕食者なき世界で何が起こったかを克明に追ったものである。

 陸上でも海中でも、捕食者が一掃された後は被食者が急激に増加することが分かる。他のライバル種は追放され、餌となる小動物や植物は食いつくされてしまう。その結果、生物多様性は恐るべき勢いで低下していくのである。

 オオカミを失った森林ではシカが猛烈な勢いで増え、植物を食い尽くすので、新芽は生えなくなってしまった。捕鯨のためにクジラが減ると、シャチはトドやラッコを捕食するようになり、海底はウニで荒らされた。フカヒレの材料として大型のサメが採り尽くされた結果、巡り巡ってハマグリやカキ、ホタテは激減した。

 そんな莫迦なと思われるかもしれない。しかし、本書に出てくる豊富な実例の前には、そんな疑問は飲み込むしか無いだろう。導入部でヒトデの捕食圧と、それが喪われたときの影響を見るところから、大陸で、海中で進む生物多様性の急激な低下へと読み進めると、すんなり納得できる。

 希望は、アメリカで始まったオオカミ復活プロジェクトだろう。オオカミは、増えすぎたシカを一気に駆除などしない。数の差が大きすぎて、そんなことはできない。しかし、オオカミの好む地域をシカが避けることで、あるいはシカが食事に集中できなくなることで、植物は芽を吹き返したのである。彼らの危険性を過剰に恐れ排撃するのではなく、自然界にあるべき捕食者をきちんと配置することで、豊かな自然を保つべきであろう。

 日本でも、増えすぎたシカによる食害が問題となっている。オオカミ導入は、有効な手段かもしれない。我々のアウトドアライフは多少の不自由さを強いられることにはなるだろうが。

 捕食者の果たしてきた大いなる役割を余すところなく描いた良書である。生物だけでなく、環境に興味があるという方もぜひ手にとって見て欲しい。

 最後に、翻訳がまた素晴らしいことを記しておきたい。野中香保子さんの明快かつ平易な文章は定評があるのは知っているが、改めてその読みやすさに感銘をうけたものである。訳者の腕次第で翻訳本が魅力を輝かせることも地に落とすこともできることを考えると、科学書好きに彼女のような優れた訳者がいることは実に慶賀すべきことである。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/06/18(水) 21:45 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1471冊目 ナチ・ドイツと言語―ヒトラー演説から民衆の悪夢まで
ナチ・ドイツと言語―ヒトラー演説から民衆の悪夢まで (岩波新書 新赤版 (792))ナチ・ドイツと言語―ヒトラー演説から民衆の悪夢まで (岩波新書 新赤版 (792))
(2002/07/19)
宮田 光雄

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評価:☆☆☆


 ヒトラーは演説の名手だった。多くの聴衆が、彼の言葉に酔った。酔いが覚めないままに彼らはヒトラーを国家元首に選び、そしてドイツは滅びへの道を歩んだ。

 演説において、ヒトラーは宗教的な言葉を使った、という。ナチスとカトリック教会とは敵対した時期もあったが、それなりに近しい関係を築いていた(実際、敗戦後にはカトリック教会がナチ高官の逃亡を助けている)ことを考えれば不思議はないかもしれない。"摂理"や"神"、そして"全能者"が良く使われた言葉だという。聖書のフレーズを意識した演説も行ったそうで、それは人々にヒトラーの演説へ親しみを感じさせる力になった可能性もありそうだ。

 ともあれ、この独裁者にとって言葉は力の源泉だった。もう一つは、黎明期だった映像技術であろう。レニ・リーフェンシュタールによるナチス党大会の模様を描いた『意志の勝利』こそがその集大成といえるかもしれない。

 言葉と映像を駆使した政権だからこそ、彼らはまた民衆の言葉にも敏感だった。政権批判を行っただけで、刑場の露と消えた人々が大勢いたのである。だが、人の口に戸は立てられぬという。民衆は、こっそりと政権批判のジョークを囁きあった。傑作だと思うのはこれ。

 ある男が「我々の生活が苦しいのは全てあの男のせいだ!」と叫んだところ、ゲシュタポに逮捕されて尋問を受けた。「あの男とは誰だ!」と問い詰められた男は心外そうに、「勿論、チャーチルのことです。貴方は誰のことだと思ったのですか?」

 ここには間違いなく痛烈な皮肉がある。スターリン治下のソ連でも、やはりこうしたブラックジョークが語り継がれたところを見ると、笑いは圧政に対する強力な武器と思えてくるから不思議だ。こうしたジョークが幾つか収められているのはポイントが高い。

 他にも教育者の抵抗も取り上げられているが、最終章で夢の解釈という愚行に走っているので評価は下げざるをえない。そもそも、夢解釈などというものは、正しいか間違っているかを判定することができない。単なる後出しジャンケン以外の何物でもないのである。フロイトの説も目も当てられないほど酷いという事実が明らかになっている(『精神分析に別れを告げよう―フロイト帝国の衰退と没落』や『フロイト先生のウソ』に詳しい)のだから、いい加減にこの手の妄想をありがたがるのは辞めてもらいたいものだ。ヒトラーの唱導したユダヤ人差別が間違っているからといってユダヤ人のフロイトの妄想が正当性を持つようになるわけではない。

 こうした悲惨な間違いもあるが、言語に拘って第三帝国の姿を追った本書は、言論とはどのようなものであるかを考えさせてくれる点で価値があると思う。


関連書籍:
精神分析に別れを告げよう―フロイト帝国の衰退と没落精神分析に別れを告げよう―フロイト帝国の衰退と没落
(1998/05)
H.J. アイゼンク、H.J.Eysenck 他

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フロイト先生のウソ (文春文庫)フロイト先生のウソ (文春文庫)
(2003/01)
ロルフ デーゲン

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太平洋戦争・二次大戦・現代史 | 2014/06/17(火) 19:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1470冊目 はい、泳げません
はい、泳げません (新潮文庫)はい、泳げません (新潮文庫)
(2007/11/28)
高橋 秀実

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評価:☆☆☆☆


 エンタメ系ノンフィクションといえば、私の中では高野秀行さんの『怪獣記』等の著作が真っ先に思い浮かび、続いて北尾トロの『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』が思い浮かぶ。そこに、『「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー』のヒットで一躍有名となった著者を加えることにした。

 本書はその高橋 秀実が、一点の曇もない完全無欠のカナヅチから脱却すべくスイミングスクールに通った一連の出来事を面白おかしく記録したノンフィクションである。

 40過ぎて泳げない人が泳ぎを身につけようと思うところは凄い。その段階でもう感服だ。読み始めると、彼の凄さに驚く。何が凄いって、泳ごうとしながら実に色々なことを考えているところ。私に言わせれば、そんな状況で考え続けたら泳げるものも泳げないということになるが(笑)

 インストラクターも独自の思想を持っているらしく、壁につかまってバタ足からなんてことはやらずにいきなり泳げと言い、あるいは、リラックスしようと思ったらリラックスすることに意識が集中して逆にできなくなるからリラックスするなと言ってみたりと面白い。

 かつてスイミングスクールに通っていて、(長距離は無理になったが)泳ぐことだけなら何の苦もなくできる私としては、その助言が正しいのかどうかわからないが、泳げなかった人を次々と泳げるようにしている実績は凄い。

 著者も体当たりで挑んでいき、少しづつおよげるようになる。そこで彼はすっくと立ち上がって、地に足をつけたところで喜びをかみしめようとするのだが、インストラクターから「立つな!」と叱責が飛ぶ。この繰り返しがお約束のパターンで、表現の旨さもあって笑いどころになっている。

 こうした苦労話(?)だけで済ませないのがまた面白い。なにせ、異端ではあるが興味深い水棲類人猿仮説について触れてみたり、生物学者の長沼毅さん(彼もまたカナヅチ)に話を聞きに行ったりと、凡そ泳げるようになるための本からは掛け離れたことまで話が広がる。しかも、決して堅苦しくなることはない。おまけに古式泳法にまで体当たりで挑んでみたりもする。

 気づかぬうちに色々な話を楽しませてもらえるのだが、果たして著者は泳げるようになるのだろうか?その答えは、ぜひ皆様がご自身で確かめて下さいませ。



関連書籍:
怪獣記 (講談社文庫)怪獣記 (講談社文庫)
(2010/08/12)
高野 秀行

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裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)
(2006/07)
北尾 トロ

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「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)
(2014/02/28)
高橋 秀実

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ノンフィクション | 2014/06/15(日) 19:47 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1469冊目 三国志 第八巻
三国志 第八巻 (文春文庫)三国志 第八巻 (文春文庫)
(2012/10/10)
宮城谷 昌光

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評価:☆☆☆☆


 蜀が勢力を最大に伸ばし、そして凋落するのがこの巻。劉備は蜀を得、喉元に突きつけられた匕首にも等しい漢中の地を、かの曹操と争い奪い取った。猛将夏侯淵を討ち取るというおまけ付きで。曹操が魏王に封じられたのに対抗し、漢中王を名乗ったこの時が、劉備の生涯最善の時であったに違いない。

 本国の動きに呼応するように、関羽は北上して襄陽と樊城を囲む。前半戦はまさしく関羽の鬼神が如き活躍が目立つ。樊城を崩壊寸前まで追い詰め、援軍としてやってきた龐徳を捕らえて処刑し、曹操麾下有数の名将だった于禁を虜にする。

 史料を読み込んで、独自の解釈を打ち出すのが著者の魅力なのだが、ここでは関羽の心は劉備から離れていた、とするのが面白い。劉備の入蜀は、どう考えても正義のものではない。そこに反発したとの解釈が見えるが、そもそも関羽自信も故郷で人を殺して出奔したとも言われるので、そんなに正義に拘るか、個人的には疑問であるが。

 だが、関羽は政治的な配慮の無さから自滅する。北方攻略にあたって絶対的に確保しなければならないこと。それは、呉との同盟関係である。しかし、彼は孫権が子供同士を結婚させようとした時に、こともあろうに「狢の子に虎の子はやれん」と、非常識な断り方をして、敵対の構えを見せる。部下には優しかったが士大夫を常に軽んじた彼は、小集団においては有能な兵士であり部隊長であったかもしれないが、要衝の地を守るには向いていなかったと言えよう。

 呉が、後に彼の国を背負って立つことになる陸遜と大黒柱である呂蒙の共同作戦の形で関羽の本拠地・公安を奪った時に関羽の運命は決まる。

 荊州を失ったことよりもむしろ、劉備は関羽の敵討に立ち上がったと信じたい。だが、これもまた悲惨な失敗となる。蜀軍の支柱である張飛が部下に殺されるという最悪の幕開けとなった弔い合戦は、劉備が陸遜に大敗することで潰えるのだ。彼の部下をよくよく見ると、流浪集団時代からの古参の者と荊州で劉表のもとで飼い殺しにされていた時代の者が多い。後者の忠誠を得るために荊州は取り戻さなければならなかったというのは、それはそれで分かる。

 関羽の死とその後の夷陵の戦いによる蜀の凋落で、もう三国志の行き末は決まったと断じて良いだろう。後は、早いか遅いかの差だけだ。それでも、この一連の出来事は三国志ファンの襟を正させる効果があろう。なにせ、関羽の後を追うように曹操が死に、夷陵の戦い後には傷心の劉備も死ぬ。乱世の叩き上げはほぼ姿を消し、二代目の時代となるのだ。
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その他小説 | 2014/06/14(土) 22:44 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1468冊目 FBI美術捜査官
【文庫】 FBI美術捜査官 (文芸社文庫)【文庫】 FBI美術捜査官 (文芸社文庫)
(2014/02/04)
著者 ロバート・K・ウィットマン ジョン・シフマン 訳者 土屋 晃 匝瑳玲子

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評価:☆☆☆☆


 これもまた『面白い本』に教えてもらったものだ。珠玉のノンフィクションがいくつも紹介されているので読みたい本が増えすぎて困る。そして、読んだら面白すぎてこれまた困る。睡眠時間が足りなくなるじゃないか。

 著者のロバート・K・ウィックマンは、多くの名画や歴史的な記念品を取り戻すのに成功してきたFBI捜査官。唾棄すべきことに、多くの美術品や遺物が、ごうつくばりな個人によって私蔵されている。そうした人々は、しばしば高値で美術品を買い取る。となると、美術品を専門に狙う強盗もでるというものだ。著者のような人々は、美や歴史を個人のものにしようとする欲望と戦う存在と言っていいだろう。

 しかも、彼が行っていたのは潜入捜査である。命の危険を伴う捜査によって、その価値数総額億ドルにもなろうという程の盗難品を取り戻してきた。その彼の半生を追った自伝が面白くないわけがない!

 本書は、マイアミの豪華なヨットでのクルーズを舞台に始まる。水着姿の美女、傅く給仕。そこで、レンブラントやフェルメールの失われた名画の売買が行われようとしていた。きっと、世界の何処かで本当に行われていることだろう。だが、この集まりは他とはちょっと違う。何故なら、取引におびき寄せられた者以外は全てFBI捜査官だったから。

 興味を引きつけてやまない捜査の山場に始まったストーリーは、著者の来歴を語るところで一度区切られる。アメリカ人の父親と日本人の母親との間に生まれた著者がFBI捜査官を志すまで。FBI捜査官になってから降りかかってきた不幸な事故。そして、美術捜査官として腕を磨き、数々の事件に関わっていく姿。

 誰もが知るような有名な画家の作品が、こんなにも闇の市場に流れていることにまず驚く。そして、ゆっくりと犯人側の信用を醸成しながら取引を進め、最後の最後で犯人を裏切る。一歩間違えば犯人には逃げられ、肝心の美術品は永遠に喪われるリスクも有る。だからこそ、逮捕劇のシーンは圧巻だ。面白くて、事実は小説よりも奇なり、との金言の価値をつくづく感じさせる。小説だったら「もっとリアリティを出せよ」と思ってしまうかもしれない。

 人類が共有すべき知や美を独占しようという人が居なくなってくれれば良いのだが、人の欲望に限りがない以上、それは望むべくもないだろう。であるからには、彼らの活躍で多くの名画が取り戻されることを願ってやまない。そして、事件捜査の裏にある事実の面白さもこうやって伝えて欲しいものだ。


関連書籍:
面白い本 (岩波新書)面白い本 (岩波新書)
(2013/01/23)
成毛 眞

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ノンフィクション | 2014/06/13(金) 19:34 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1467冊目 サクリファイス
サクリファイス (新潮文庫)サクリファイス (新潮文庫)
(2010/01/28)
近藤 史恵

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評価:☆☆☆☆☆


 sacrificeは犠牲と訳されることが多いようだが、それでは本義である"神に捧げられた生贄"のニュアンスが抜けてしまう。しかし、本書を読む分には問題ない(笑)

 自転車レースについて私が持っていた全ての知識は黒田硫黄さんの『新装版 茄子』に出てきた"アンダルシアの夏"というマンガで読んだ僅かなもの。駆け引きの妙以前の、そもそもどのような競技なのかというところからして知らなかったが、凄いなぁくらいの感じは持っていた。本書を読むとそんなレベルでは済まないことを理解した。

 主人公は若手の自転車レーサーで、アシスト役を務めている。このアシスト役というのが他の競技では見られない役割だろう。彼の仕事は、トップでゴールに飛び込むことではない。チームのエースを優勝させるため、風よけになったりライバルを牽制したり、とにかくチームが有利になるように働くこと。犠牲の名をタイトルに冠するのはそういうところかと納得。

 決してスポットライトを浴びる立場ではない。だが彼は、そんな自分の役割に満足していた。そんな彼に、思わぬチャンスが転がり込む。その世界に属するものは誰もが憧れる、ヨーロッパチームへの移籍話と、大きなレースでの優勝のチャンス。

 だが、そのチーム活動に、一つの暗い影が見え隠れする。エースでもあり先輩でもある人物が、主人公を潰そうとしているのではないかと危惧を抱くチームメイトが居たのだ。そして実際、そのエースは主人公の優勝の芽を潰すような行動にも出る。おまけに、彼にはかつて若手チームメイトを半身不随の事故に追いやった事故を起こした事実があるのだった。

 人物設定が上手いのと、背景となる自転車レースの世界を丁寧に描くので、すんなりと物語に入っていける。気がつけばレース模様に手に汗握るような思いをしている。

 そして、惨劇が起こる。その謎を解いた時、タイトルの持つ意味がひときわ大きく存在感を持ってくる。知らなかった世界を垣間見せてくれただけではなく、物語としても実に面白い。他の作品も読んでみたくなった。
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推理小説 | 2014/06/11(水) 19:37 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1466冊目 恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた
恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた (文春文庫)恐竜はなぜ鳥に進化したのか―絶滅も進化も酸素濃度が決めた (文春文庫)
(2010/10/08)
ピーター・D. ウォード

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評価:☆☆☆☆


 壮大なタイトルだ。そもそも、科学は、WHYへの答えを苦手としている。だから、次善の策としてHOWを突き詰めてきた。だから、重力の働き方はとっくに明らかになったが、どうして重力が働くのかはまだ理論の段階にすぎない。そこにきてこのタイトル。恐竜は"なぜ"鳥に進化したのか、である。恐竜ファンとして読まない訳にはいかない!

 そう思って手に取ったのだが、しょっぱなから驚かされることになる。第一章のタイトルを見てもらえればその理由がお分かり頂けるだろう。それはこうだ。"哺乳類の呼吸とボディ・プラン"。ええ!?恐竜じゃないの!?と思ってよくよく見ると、二章以下のタイトルにはカンブリア紀だとか三畳紀だとかのタイトルが踊り、恐竜絶滅は全十一章の十章。つまり、本書は恐竜から鳥への進化にだけスポットライトを当てた本ではない。約4.5億年の生物進化の物語なのである。

 カンブリア爆発と呼ばれる多様性の急激な増大、ビッグファイブとも呼ばれる5回の大絶滅、そして生き残った生物の適応拡散という生物の歴史はかなり明らかになっている。しかし、従来の説明は、例えば史上最大の絶滅であるペルム紀末のものはホットプルームによる大噴火、白亜紀末は隕石の衝突と、それぞれの理由を探るものだった。しかし本書はそれら類書とは一線を画している。即ち、酸素濃度という一つの指標を元に、生物はどうやって進化してきたかを説いている。

 酸素濃度の変化と言われて、自分が今の世界と同じ状況が少なくとも石炭紀以降は続いていたものと根拠もなしに信じていたことにまず驚いた。

 だが、それよりもお見事なのは、カンブリア紀のあの多様性の発達も、(『眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く』で魅力的に語られる眼の発達がトリガーではなく)酸素濃度が今よりも遥かに低かったことに原因を求めることができる、という。

 低酸素濃度だったカンブリア紀に生きる生物にとって死活的に重要だったのが、能動的に酸素を取り込む能力であり、それを得るために体節が生まれた、と著者は説く。体節がなければ甲殻類は生まれられないので、この説が正しいのなら地球が低酸素だったからこそ今の生物がある、ということになるのだ!その後の頭足類の進化にしても、水をいかに循環させ、そこから酸素を得るかという問題になる。地上への生物の進出も、酸素が地に満ちたからだ。

 ペルム紀の絶滅についても、新しい視点を示してくれる。火山の噴火は大量の粉塵による地球の冷却化をもたらす。そして、それは低酸素状態を生み出すことに繋がる。驚いたのは、ここで内温性が進化したこと。これもまた、酸素濃度に求めることができるという。

 このようにして、一つのメカニズムに基いて、恐竜が鳥に進化するまでの長い長い歴史を語っているのは、従来の生物史には無かった視点で、読んでいて実に面白い。竜脚類がどうしてあんなにも巨大化したかを説明していたり、恐竜と同じ主竜類に属するワニはかつて恒温性を進化させたが低酸素に対応するために再度変温性を進化させた可能性があるという指摘が有ったりと恐竜ファンに楽しめるネタも豊富に揃っている。

 筆を走らせすぎたか、インドガンがエベレストより高いところを飛ぶとか、恐竜は繁栄のピークから短期間に絶滅した(実際には絶滅の100万年ほど前からは衰退が明らかだった)、なんて記述はあるが、そうした欠点を上回る魅力を備えている。検証が進むことを期待したい。


関連書籍:
眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く
(2006/02/23)
アンドリュー・パーカー

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生命40億年全史生命40億年全史
(2003/03)
リチャード フォーティ

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地球史・古生物・恐竜 | 2014/06/10(火) 20:41 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1465冊目 BONES ― 動物の骨格と機能美
BONES ― 動物の骨格と機能美BONES ― 動物の骨格と機能美
(2008/06/23)
湯沢英治、東野晃典 他

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評価:☆☆☆

 動物の骨の写真集という、そのまんまなタイトルを持つ一冊。骨は、動物の動きを規定する。ということは、そこには彼らがどのような生き方をしているかが刻まれている。

 ヘビの歯が内向きに生えていて噛み付かれた獲物は逃れることが出来ない仕組み、ナマケモノが樹上生活をするためにフックのような手足をしていること、トラが獲物を捕えるために発達させた前足("恐ろしい鉤爪"を意味するディノニクスを彷彿とさせる)のように、彼らが進化の中で身につけた武器あるいは防具が一目で分かるのは最高の利点だ。

 写真を見るだけでも楽しいのではあるが、終盤でそれぞれの写真がどの種のもので、どのような進化の道筋が今に見られる構造を作り上げたかを説明してくれているのも嬉しい。

 イグアナは植物食なのに哺乳類とは違って臼歯を発達させていないのには気づいていたが、爬虫類では顎関節が上下にしか動かないためであるというのは知らなかった。セイウチのあの歯は氷に穴を開けたり、海中から氷上に体を引き上げるときにも使われるそうであるということも。

 こうした新たな知見を、骨を見ながら飲み込めるのは嬉しい。どこか芸術性をも感じさせる、そんな一冊。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/06/08(日) 12:48 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1464冊目 華竜の宮
華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
(2010/10/22)
上田 早夕里

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評価:☆☆☆


 スノーボール・アースの話題が出た時に、この本はその後の世界のお話だよとブクレコのお友達に教えて貰い、せっかくなので手に取った本。だって、赤道まで氷河が浸出するような時代を超えて人類が生き残れるなんて思えないではありませんか。どう料理するのかと思って読み始めた。

 ところが、この上巻では氷河期まで達しない(笑)

 ホットプルームの上昇により、海底地殻が持ち上がり、海面が260メートルも上昇した世界。そこでは、陸地に住み続ける通常の人類と遺伝子操作を受けた海上民が、複雑な利害関係を結びながら共存していた。

 この設定に出てくるホットプルームといえばペルム紀末の大絶滅(全ての種の90%以上が絶滅したと言われる史上最大の大絶滅)が思い浮かぶ。古生代に興味がある人は嬉しくなるだろう。

 主人公は陸上民であるが、海上民の生き方を積極的に認める外交官。彼を取り巻く登場人物がきちんと作りこまれているので、我々とは異なる社会、異なる生き方をする海上民にも共感を寄せやすいのはお見事。また、彼らの住居であり同時に仲間でもある<魚舟>と呼ばれる生物の設定も面白い。

 主人公と海上民のリーダーは会談をきっかけに相互理解への道を探ろうとするが、一方で国家連合は海上民の排除に乗り出そうとしていた。

 しかも、そこに再びホットプルームの活動活発化の情報が。うん、人間関係よりこっちの方が面白いぞ(笑)。ホットプルームは超巨大噴火につながると予想され、それによって舞い上がった塵埃によって地球は氷河期に入ると予想される。将に大ピンチだ。陸上民は、海上民は、この未曾有の危機を生き残ることができるかといったところで第二部に続く。

 でも、スノーボール・アースって、カンブリア時代よりも更に前だよね(笑)。シベリアで起こった超火山はアメリカ全土を覆うほどの溶岩を噴出させ、そのせいでペルム紀末は寒冷化はしたがスノーボールアースには結びつかなかった。ということは下巻で予想される超火山はペルム紀末を超えるのだろうか。そこが楽しみ(え?)

 第一部は設定を語るのに時間を費やしすぎたためか、イマイチ物語性が薄かった(ただ、科学的な設定は面白かった)が、第二部で物語が一気に動き出すと俄然面白くなってくる。

 ホットプルームによる超巨大火山の噴火が近い将来確実に起こるものと判明する。それは、人類社会を壊滅させるであろう。なにせペルム紀に起こった時には90%以上の種を死滅させたのだ。ファーストインパクトと言えるであろう、噴火地震に耐えられたとしても、噴煙が地球を覆うことによる植物の壊滅は、破滅をもたらすであろう。どれだけ科学が進んでいたとしても、地球は人の生きる場所ではなくなる。

 それが分かっているからこそ、各国家は熾烈な自己利益の確保に乗り出す。ほとんどの食べ物が無くなるならどうすればいい?それは、少数の人間だけ生き残らせれば良い、という発想だ。

 国同士の利益が衝突するその前に、陸上民と海上民の対立が先鋭化する。と言っても、陸上民が一方的に海上民を排除しようというのだ。

 各勢力が鎬を削る中、主人公は一方的なやり方は止めさせようと奮闘する。カタストロフィの原因を科学で潰すという発想ではなく、破局をどうやって生き残るかというところが面白い。

 現実的には、スーパープルームは超大陸と関連付けて考えられており、次に同じことが起こるのは2億年ほどは先であると考えられているようだが、それでもホットプルームそのものは今も活動し、アフリカ大陸を真っ二つにしようとしている。

 人類に制御できない巨大な力を前に、どう生きるのが最善であるかを探る主人公と、情報処理係でありながら人間らしい感情を見せる不思議なロボット、生きる船等、不思議な世界が構築されている。SF好きは楽しめると思う。
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SF・ファンタジー | 2014/06/07(土) 22:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1463冊目 未解決事件(コールド・ケース)―死者の声を甦らせる者たち
未解決事件(コールド・ケース)―死者の声を甦らせる者たち未解決事件(コールド・ケース)―死者の声を甦らせる者たち
(2011/12)
マイケル カプーゾ

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評価:☆☆☆☆☆


 この本もまた、『面白い本』で紹介されていたもの。事件もののノンフィクションが好きなので飛びついたら、これがもう寝食を忘れるくらい面白い!

 アメリカでは、毎年1万人を超える人が殺されている。2012年のデータで比べると、日本の383件と比較してアメリカの14,827件はいかにも多い。それだけ事件が起これば、当然ながら司直の手をすり抜ける者も現れる。恐ろしいことに、単純な粗暴犯は現行犯は捕まりがちだが、狡猾なシリアルキラーは巧妙に立ち回り、捕まらないことがある。いや、それは事態を甘く見すぎている発言だろう。なにせ、殺人事件の3件に1件が未解決だというのだから恐ろしい。

 殺人事件が発生してから2年以上たってもなお、解決の道筋の見えない未解決事件<コールド・ケース>。そこに敢然と切り込む人々がいる。彼ら、彼女らは探偵気取りのミステリマニアなどではない。世界で最も活躍している犯罪捜査のプロである。殺人犯をのさばらせないために、彼らは毎月第三木曜日に集まり、未解決事件を論じ合う。そして、司法機関に助言を与えるのだ。

 その集まりを、ヴィドック・ソサイエティという。名前からして興味深い。19世紀のフランスに生まれた犯罪者で、後に警察に協力するようになり、更には世界初の私立探偵であるヴィドックこそは、あらゆる手段を駆使して犯人を追い詰めるグループの名に冠するに相応しい存在であろう。

 本書はヴィドック・ソサイエティの創設者であるビル・フライシャー、リチャード・ウォルター、フランク・ベンダーの3名を中心に、彼らがどのような事件解決に尽力してきたかを明らかにするノンフィクション。

 ポリグラフの世界的権威であるフライシャー、『FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記』のロバート・レスラー(彼もまたヴィドック・ソサイエティのメンバーである)と共にプロファイリング技術を開拓してきたウォルター、破天荒で女好きの法医学アーティストであるベンダーという、天才的な3人の軌跡を追うだけでも面白い。

 特に、妻と愛人とその他大勢の恋人を抱えるベンダー(妻と愛人も仲良し)の神がかり的な技能は凄い。顔のない娘の事件と呼ばれたケースでは、眼窩から上顎までが全て失われた頭蓋骨から被害者の生前の姿を驚くべき精度で蘇らせ、母と妻と3人の子供を殺した大量殺人犯ジョン・リストのケースでは18年後の顔をこれまたそっくりに復元している。

 また、ウォルターも数少ない証拠から犯人をピタリと言い当てる。その背後には、何千件もの殺人事件を扱う中で磨かれた鋭い分析があると知っていても、魔法のように見えてしまう。

 犯罪者の、それもシリアルキラーの心の奥底を覗き込み、凄惨な現場に居続けるのは生半な心の持ち主ではとてもムリだろう。ウォルターは後継者を希望する若者に、人並みの生活を送りたいような人間はこの仕事はできないと告げている。だが、彼らの存在があって、ようやく狡猾な殺人犯によって人生を狂わされた被害者やその遺族は一筋の光明を見出すことができるのだろう。彼らの活躍の場そのものが無くなることを願いたいが、そうはならないだろうから、次善の策として彼らの奮闘を支える側になりたいものだ。

 複数の事件を、同時並行的に論じていくのでやや飲み込みにくくなっているところはあるが、事実は小説よりも奇なりを地で行く意外さと事実であるが故の迫力で一気に読んでしまった。ノンフィクション読者だけではなく、ミステリのファンも楽しめると思う。

関連書籍:
面白い本 (岩波新書)面白い本 (岩波新書)
(2013/01/23)
成毛 眞

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嘘発見器よ永遠なれ嘘発見器よ永遠なれ
(2008/04/22)
ケン オールダー

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FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記 (ハヤカワ文庫NF)FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記 (ハヤカワ文庫NF)
(2000/12)
ロバート・K. レスラー、トム シャットマン 他

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ノンフィクション | 2014/06/04(水) 22:47 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1462冊目 人類が絶滅する6のシナリオ: もはや空想ではない終焉の科学
人類が絶滅する6のシナリオ: もはや空想ではない終焉の科学人類が絶滅する6のシナリオ: もはや空想ではない終焉の科学
(2013/09/18)
フレッド・グテル

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評価:☆☆☆


 人類+滅亡と聞くと自動的にΩΩΩ「な、なんだってーーー!」が頭に浮かぶダメ人間なワタクシメであるが、これはダメな本ではない。まじめに人類を滅亡させるにはどうすれば、じゃなくて、人類が滅亡しかねない危機にはどのようなものがあるかを論じたものである。

 人類を滅ぼしかねないシナリオとして著者が挙げるのは、章のタイトルを記せば分かるだろう。

第1章 世界を滅ぼすスーパーウイルス
第2章 繰り返される大量絶滅
第3章 突然起こり得る気候変動
第4章 生態系の危うい均衡
第5章 迫りくるバイオテロリズム
第6章 暴走するコンピュータ

 疫病で人類が大きなダメージを受けるとしたら、それはインフルエンザであるに違いない。世界で4000万人とも1億人とも言われる死者を出したスペイン風邪よりも凶悪なウイルス株が生まれれば、恐ろしい勢いで死者が発生するのは確実である。ただ、感染力と致死性はトレードオフの関係にあるので、これで人類が滅亡するかと言うと、私としては怪しいと思う。

 それはそれとして、著者がリスクにあげているのが鳥インフルエンザ。確かに、あの株は致死性が非常に高い。もし人から人への感染力を持ってしまえば、かなりの被害は避けられないし、日本に入ってくることも確実である。かと言って、薬を国民全員分確保し、貯蔵するというのもナンセンスであるため、社会としては正しく恐れることが必要だろう。

 第2章は扱う範囲が広いが、ペルム紀末に90%以上の種を滅ぼした謎の事件(超巨大なマグマの塊であるスーパープルームが上昇することで起こる大噴火が原因と唱える学者も居る)クラスの何かが起これば人類は間違いなく滅亡するだろう。正直、これが一番怖いかな、という気がする。

 気候はかなり短期間で大きく変わることを論じていたり、生態系の複雑さ故に環境破壊が手痛いしっぺ返しに成りかねないことを示したりと、自然は技術でどうこうするには巨大すぎるあるいは複雑すぎることがつくづく感じさせられる。

 面白いのは、後半で人為的な理由による滅亡シナリオを論じているところ。従来なら、必ず核戦争を論じていただろうが、ここではコンピュータやバイオテロである。なぜ、核戦争ではなくこれらなのか?その選択理由には感心した。つまり、核兵器は作るのに資金や設備が必要であるため、国レベルでしか保有ができず、それ故に自制が働くだろうというここと。一方で、バイオテロや破壊的なマルウェアは、遥かに少ない資金で起こすことができる。

 特に興味深かったのは、イランの核開発を阻害したマルウェア。こいつは"イランの遠心分離器の制御コンピュータ"に的を絞ったもので、回転数をほんのちょっとだけ速くしてしまうことで機器を破壊していたという。同様のことが他の技術にも使われたらどうなるか?その未来像はかなり薄ら寒いものがある。

 滅亡を論じながら、その背後にある科学を説明しているところが面白いのと、隕石の衝突と核戦争という、おなじみのテーマからは離れたシナリオを提示しているところが本書の最大の魅力であろう。だから、例えばマルウェアのせいで社会インフラが破壊されて近代社会が被害を被っても人類滅亡にはならないだろうというような思いはあっても、読んでいて興味はどんどん湧いてきた。

 やはり怖いのは人の悪意であると、そんなことを思った一冊。
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その他科学 | 2014/06/03(火) 19:55 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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