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1461冊目 スエズ運河を消せ―トリックで戦った男たち
スエズ運河を消せ―トリックで戦った男たちスエズ運河を消せ―トリックで戦った男たち
(2011/10)
デヴィッド・フィッシャー

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評価:☆☆☆☆☆


 先日読んだ 『面白い本』に紹介されていて、度肝を抜くタイトルと、それをすら上回る面白そうなレビューに釣られて読んだのだが、想像を圧倒するほど面白い本だった!

 第二次世界大戦中のエジプト。そこでは熾烈な戦いが繰り広げられていた。なぜエジプトなのだろうか?それは、イギリスの死命を制するスエズ運河があるからである。ドイツ側は名将の名をほしいままにするロンメル率いる機甲師団が、強力な火力を持って攻め寄せる。それを守るのは、イギリス。その防衛ラインに思わぬメンバーがいた。手品師、である。

 なぜ戦場にマジシャンが?そう思うのは私だけではないだろう。実際、イギリスで志願兵の面接に当たっていた人も、また、彼らの上司となった人も、等しくそう思ったらしい。

 では、どうして手品師が戦争に行ったのだろうか?それは、愛国心のなせる業だった。マジシャン一族に生まれ、スポットライトを浴び続ける人生を送っていたジャスパー・マスケリン。彼は足繁く面接に通い、遂に戦場への切符を手にしたのだった。と言っても、誰もが役に立たないと思っていた有名なマジシャンを、軍は持て余した。

 ところが、ある作戦をきっかけに、マスケリンは予想だにできないような活躍をするようになる。彼の率いるマジック部隊は、ありもしないところに軍勢を生み出し、あるはずのところから武器を消し去った。

 迷彩をやっただけ、と思われるかもしれない。しかし、彼が成し遂げたことの大きさはそんな小さなことではない。なんと、アレクサンドリアを移動させ、スエズ運河を消し、ありもしない戦艦を地中海に浮かばせた。最終的にロンメルをアフリカから追い落とすことになる作戦では、大規模な偽装を取り仕切り、ドイツ軍を見事に欺いた。しかも、彼が使ったのは主にゴミだった。

 なぜ彼は奇跡のような活躍ができなのか?それは、彼がマジシャンだったから。どうやれば観客にイリュージョンを楽しませられるのかという問題は、同時にどうやれば敵を欺くことができるのかという問いに答えうる。

 彼らの活躍には驚くばかりで、560ページにも及ぶノンフィクションなのに全く長さを感じさせない。読めば読むほど面白く、残りが少なくなってしまってからはページを繰るのが勿体なくなってしまうほど面白かった。

 同時に、本書はイギリスとドイツがエジプトの支配権を、ひいてはインド洋への補給路を争った戦いの帰結を追うものでもある。現代史に関心がある方も楽しめることができるだろう。それにしても、『ナチを欺いた死体 - 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』と言い、イギリスの諜報戦はお見事の一言に尽きる。日本も見習うべきことが多そうだ。


関連書籍:
ナチを欺いた死体 - 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実ナチを欺いた死体 - 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実
(2011/10/22)
ベン・マッキンタイアー

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面白い本 (岩波新書)面白い本 (岩波新書)
(2013/01/23)
成毛 眞

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太平洋戦争・二次大戦・現代史 | 2014/05/31(土) 21:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1460冊目 行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅
行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅 (幻冬舎文庫)行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅 (幻冬舎文庫)
(2007/06)
石田 ゆうすけ

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評価:☆☆☆☆


 世界一周という言葉には、どこか引きつけられるところがある。それはきっと、色々なものを見たい、という欲望と深く結びついているから。自然現象であればオーロラや名だたる大瀑布を、遺跡であれば空中都市マチュピチュ、南米やエジプトのピラミッド、モアイやストーンヘンジも見てみたい。博物館も美術館も巡りたい。でも、中々そんなことはできない。先立つモノが無いし、時間も無い。だから、せめて体験記を読んで満足するわけだ。

 本書は7年半をかけて自転車で世界一周してきた体験記である。つまり、上述の欲求を持つ人にはとても向いた本である、ということだ。会社員として働き資金を貯めた著者は、アラスカに渡る。そして南北アメリカ大陸を縦断。そこからヨーロッパに渡り横断、更にはアフリカを縦断して喜望峰で祝杯を上げ、今度はアジアを横断してようやく日本に帰る。

 それだけ旅をすれば様々な物を見て、そして、色々な人に出会う。ジャングルでジャガーの鳴き声が聞こえるという噂を聞いて恐る恐る踏み込んでみれば実はサルの声だったとか、マチュピチュは小さくて拍子抜けだったとか(うぅぅ、羨ましい)、マヤ遺跡に圧倒されたとか、夜中にピラミッドの横で寝転んで月を見るのが最高だとか、カヌーで川下りをしてみたとか、羨ましい話が詰まっている。

 だが、これらの素晴らしい景色や遺跡よりも、人との出会いが胸を打つ。旅の途中で何度も出会う自転車仲間、現地で知り合った人の思いやり、そして、重い言葉の数々。12歳で骨肉腫のため片足を切断し、義足を嵌めた女性が「きれいな景色を見ながら音楽を聴いていると、涙が出るんよ。ああ生きててよかったなぁって」というのを聞くと、当たり前の幸せだと思っていることが、実は当たり前なんかではないことが分かる。そして、ペアで走る楽しさも伝わってくるのが良い。

 勿論、順風満帆に旅が進むわけもなく、南米では強盗に遭っているし、もしかしたら危ない目に遭いかけたのかということもある。しかし、さり気なく助けてくれる人が多くて、読んでいて心が温まってくる。

 この旅の模様は、この本の続編に当たる『いちばん危険なトイレといちばんの星空―世界9万5000km自転車ひとり旅〈2〉』で少しは知っていた。それでもとても楽しく読めた。やはり、7年を超える旅の話がたった1冊の本で収まるわけがない。というわけで、興味を持たれた方は併せて読まれることをお勧めします。


関連書籍:
いちばん危険なトイレといちばんの星空―世界9万5000km自転車ひとり旅〈2〉 (幻冬舎文庫)いちばん危険なトイレといちばんの星空―世界9万5000km自転車ひとり旅〈2〉 (幻冬舎文庫)
(2010/07)
石田 ゆうすけ

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エッセイ | 2014/05/28(水) 19:15 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1459冊目 指が月をさすとき、愚者は指を見る―世界の名科白50
指が月をさすとき、愚者は指を見る―世界の名科白50指が月をさすとき、愚者は指を見る―世界の名科白50
(2004/02)
四方田 犬彦

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評価:☆☆☆


 タイトルを見てこれは!と思って読んでみたのだが、やっぱりワタクシメ、この手の名言集は好きではないことを再確認した。どこがダメなのであろうか?と改めて考えてみたのだが、知識がぶつ切りになっているところだろうと思う。

 さて、本書はサブタイトル通りに世界の名セリフを集めたもの。表題の"指が月をさすとき、愚者は指を見る"は、誰のセリフかは知らないとのことだが、楞厳経(りょうごんきょう)という大乗仏教の経典にあるらしい。グーグル先生、今日もありがとう。意味は言わずとも分かろう。それも、強烈なメッセージ性とともに。

 他にも心を打つような台詞はある。私が気に入ったのは、"英雄を必要とする国が不幸なのだ"というもの。劇作家ブレヒトの『ガリレオの生涯』に出てくるそうである。銀河英雄伝説でヤン・ウェンリーが昇進した時、その理由を「負けたからでしょう」と喝破したのに被る。(その直前、ヤンの属する自由惑星同盟は不倶戴天の敵である銀河帝国にボロ負けしたがヤンの部隊のみは彼の活躍でなんとか被害を抑えているため、国民の士気を下げないために英雄を作り出す必要があると見抜いている)

 あるいは、スターリンの独裁下に生きたミハイル・ブルガーコフが書いた"一度書かれた原稿は消えない"。これも歴史の重みを感じさせて余りある言葉だ。私は勝手に崔杼弑君のエピソードを思い出した。これは、崔杼という春秋時代の斉の大臣が、自分の妻と密通した主君を弑逆した時のこと。史官は"崔杼、その君を弑す"と公式文書に書き記したことで崔杼に殺される。史官の弟はそれを知り、公文書にこう書く。"崔杼、その君を弑す"、と。その弟も殺されて、2人の弟が公文書を書くことになる。しかし、彼もまた"崔杼、その君を弑す"と書いたのである。遂に崔杼は言説を圧殺することを諦めたという。

 確かに、ヒトラーやスターリンや毛沢東やクメール・ルージュの虐殺を、ペンが止めることはできなかった。いや、ユーゴ内戦の時には積極的にペンが特定の勢力を貶めることもやった(『ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)』を参照されたい)。しかし、独裁者の危険さは広く世界に知られているし、ユーゴでのプロパガンダの実相も知られている。書かれたことは消えないという信念が、事実はどのようなものだったのかを教えてくれていると思う。

 人口に膾炙したセリフとしては、寺山修司の"書を捨てよ町へ出よう"を取り上げたり(寺山自身は本に溺れ続けたくせに)、"みんな、お菓子を食べればいいのに"というマリー・アントワネットのものとされるものもある(著者もそうしているが、実際は間違いである)。かと思えば、締めは天才バカボンのバカボンのパパの"それでいいのだ"まで取り上げていて、守備範囲は実に広い。

 一つのセリフに費やしているのは5ページくらいなので、切れ切れの時間を活用して読むのには向いているかもしれない。


関連書籍;
ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)
(2005/06/15)
高木 徹

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エッセイ | 2014/05/27(火) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1458冊目 謎の1セント硬貨――真実は細部に宿る in USA
謎の1セント硬貨――真実は細部に宿る in USA (講談社文庫)謎の1セント硬貨――真実は細部に宿る in USA (講談社文庫)
(2012/02/15)
向井 万起男

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評価:☆☆☆☆


 著者は、宇宙飛行士だった向井千秋さんの旦那さん。奥様がスペースシャトルの搭乗員だった関係で、何度もアメリカに行くことになる。

 アメリカ内を飛行機で移動中に、ファーストクラスで余ったシャンパンが1本あるので、それを一番古い1セント硬貨を持っている人にプレゼントする、という放送があった。すると、自信満々に、自分が貰えると宣言した人がいる。彼はスチールペニーと呼ばれる、二次大戦中の亜鉛不足の時代にのみ作られた硬貨を持っていたのだ。

 そこから始まるスチールペニーとな何かという問いかけに始まるプロローグで幕を開ける本書は、紀行文とアメリカで出会った謎解きが絶妙に入り混じったエッセイ集である。

 時には思いもよらず二次大戦中の日本人強制収容所の跡地を訪ねてみたり、アメリカと日本の風呂文化の違いを感じてみたり、伝説的な大リーガー、ハンク・アーロンが子供の頃にボールを追い続けた球場を探し当てたりと、視野の広さと細部の面白さにぐいぐい引き込まれる。

 アメリカの建築家、ミース・ファン・デル・ローエが残した名言"神は細部に宿る"をもじったタイトル通り、面白いのは細部を知った時だというのには同感。だから、私は一行知識を集めたような類の本は読まない。面白くないもの。

 また、著者の抱いた素朴な疑問は、主にアメリカの人々との遣り取りで解決されるのだが、どれも丁寧な返信があったようなのも楽しくなる。きっと、オタク的な気性の人が沢山居て、自分が好きなことに外国人まで興味を持って連絡してきたことに感激しながら答えてくれたのだろう。勝手にそのシーンを想像してにやりとしてしまう。

 予想よりもずっと面白いエッセイだった。
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エッセイ | 2014/05/26(月) 19:22 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1457冊目 菌類のふしぎ―形とはたらきの驚異の多様性
菌類のふしぎ―形とはたらきの驚異の多様性 (国立科学博物館叢書)菌類のふしぎ―形とはたらきの驚異の多様性 (国立科学博物館叢書)
(2008/09)
国立科学博物館

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評価:☆☆☆


 退院後の蟄居中、ビジュアルの華麗な本を眺めたいなと思って漁っていたら、こんな魅力的な本を見つけた。菌類の不思議、ですよ。しかも、編者は国立科学博物館ですよ。これはもう読んでみるしかありません。

 というわけで、読み始めたら予想外に専門的で、読むのにかなり時間が掛かってしまった。だが、分類、進化、生態、研究の歴史と、実に広い分野にわたってしっかり取り上げていることと、フルカラーの写真に助けられて読み進めることが出来た。

 不勉強な身なので、粘菌も一緒に取り上げられているのだろうなと期待していたら、粘菌は菌類から除かれたとあってビックリ。そうだったのか!それなのに、粘菌の研究で知られる南方熊楠が菌類でも偉大な足跡を残しているというのを知って、あの人はやはり知の巨人であると再確認。

 菌類は分解者であって、植物のように太陽光と水と二酸化炭素があれば良いという存在ではない。どちらかというと、彼らは動物に近い。それ故に、生存戦略が多様で意外な側面もあり、実に面白い(植物も面白いのですけどね)。

 例えば、動物の糞にのみ発生する菌類(糞生菌類)の少なからずは、胞子が動物の消化器系を通過してからでないと発芽しないそうである。幾つかの植物も同じ戦略を採っているが、植物は繁殖域を広げようとする戦略で、菌類は確実に次世代の食料を得る戦略だろう。収斂進化の不思議には目を見張る。

 面白いのはその先で、同じ餌を与えても羊とウサギでは糞生菌が異なるそうである。菌類はどうやって望んだ生き物の消化器系を通過したことを知るのだろう。これも共進化なのだろうが、何とも面白い。

 また、冬虫夏草を始めとする、動物を食い物にする菌類も凄い。この手の菌の胞子がある土壌では、90%以上の虫が成虫にならずに餌食になるというから、その威力には驚くばかりだ。蚊の幼虫であるボウフラにも寄生し、命を奪う種があるというので彼らには是非とも大活躍してもらいたい。そう、彼らは殺虫剤に代わる、有力な防虫剤になり得るのだ。

 他にも、菌類とコケ類が共生している地衣類だとか、植物との持ちつ持たれつの関係だとか、感心することが沢山あった。美味しいキノコについてのエピソードまであるのだから読者サービスも完璧だ。科博に行く予定の方は、ちょっと本書をめくってから行くとより楽しめそうだ。

 一方、著者が複数に分かれているので、内容の重複があることはややマイナス。また、文章が硬く、一般の読者が楽しく読むにはやや向いていないところも残念だ。科学書は内容を正しく書くことは最低限必要なことであるが、世に出すのであれば、読みやすくすることもまた、求められることであろう。もっと、読んで楽しい作品を期待したい。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/05/25(日) 19:45 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1456冊目 謎の独立国家ソマリランド
謎の独立国家ソマリランド謎の独立国家ソマリランド
(2013/02/19)
高野 秀行

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評価:☆☆☆☆


 ソマリアという国はそれなりに名を知られているであろう。主に、失敗国家として。有力者同士が武力闘争を繰り返し、安定には程遠い、世界でも最も危険な国の1つだ。余りの酷さに介入を図ったアメリカですら、戦闘ヘリ・ブラックホークの墜落に端を発する一連の無残な事件後、撤退を余儀なくされている(その模様は『ブラックホーク・ダウン―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録』に詳しい)。

 そんなリアル北斗の拳の隣に、ソマリランドという"国"がある。住むのは同じソマリ人。となれば、ここも戦乱の地だと想像も付くものだ。そう思うのは至極当然であろう。しかし、このソマリランドは全然違う。例えば、彼らはきちんと選挙をやる。どこぞの独裁国家みたいに支持率99%なんていう絶対確実やらせで支持しない人は収容所に送られるみたいな、形ばかりのものじゃない。きちんと選挙して、与党は負けたら野に下るのだ。先進国では当たり前のことかもしれないが、後進国においては驚くべきことである。

 ソマリランドについて知ったのは、『カラシニコフ I 』だった。ここは、国中に溢れかえっていたカラシニコフを人々が手放し、平和を手に入れたとあった。だが、このソマリランドは独立を宣言したものの、国として認められていない。だから、アクセスも困難で、それ以上のニュースはなかなか入ってこなかった。

 となると、我らが高野さんの出番だ。北斗の拳の隣にある謎の国には、その謎という部分だけで見てみようと思ってしまう。流石は誰も行かないところに行くという辺境作家だ。

 思い立ったら実際に行ってしまうというのが高野さん。日本を出るという将にその当日、ソマリランドから日本に来ている人がいるというのを知り、急遽アポを取って押しかけ、信頼できる人を紹介してもらったら、なんとリストの第一位は大統領。この人、建国の英雄らしく、その後もリストに出てくるのは政界の大物ばかり。そんなに役に立たなそうなリストは初めて見た(笑)

 実際のソマリランドは、確かにソマリアとは全然違った。新聞は堂々と政府批判を繰り広げ、そして内戦とは無縁だった。一方で、同じ民族性を感じさせるところは確かにある。それが顕著に現れるのが、利益の絡むところ。高野さんも、カネを巡るトラブルには何度もトラブルに巻き込まれている。主に、一度払ったカネでも、物証がなければ未払いだとゴネる輩がいて、おまけに彼らが実に近視眼的な行動に出るところには直接巻き込まれていないこちらまで辟易とさせられる。

 それでも、彼らは彼らなりのルールで平和をもたらした。そこには氏族という枠組みが大きいようだが、そんなものはどうでもいいだろう。まずは、平和がなければ何事も前には進まない。

 ソマリランドがどれだけ困難な道を歩み始めたかは、同じソマリ人の国、ソマリアと海賊で知られるプントランドそ見れば分かる。え?そんな国なんか知らんって?大丈夫、そこは親切な高野さん、世界で一番危険な国へ、最も危険な時期に訪れた際の困難(実際、途中で戦闘に巻き込まれている)も一緒に収録されている。著者の手にかかると、海賊国家プントランドも氏族としての行動の枠内に収まってしまうように感じてしまうのが凄い。

 正直、ソマリアを巡る氏族同士の軋轢は興味が薄いところもあったが、まずはこの複雑怪奇な関係を解きほぐしたところに感心したいところ。そして、従来報じられてきた情報が、どれほど西側というフィルターを通したもので、ソマリ人達の感覚からは掛け離れたものかを教えてくれる所も本当に貴重だ。

 破天荒な高野さんの荒唐無稽な旅も楽しいが、こうした骨太なノンフィクションも好きだ。今後も追いかけて行こう。

関連書籍:
ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)
(2002/03)
マーク ボウデン

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ノンフィクション | 2014/05/24(土) 19:45 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1455冊目 天地明察
天地明察天地明察
(2009/12/01)
冲方 丁

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評価:☆☆☆☆


 随分前、妻がアフタヌーンを買ってきた。確か、おおきく振りかぶって目当てだったはずだが、あるからにはとページを捲る私の目に飛び込んできたのは、驚くべき人物の名前であった。関孝和。和算と呼ばれる高度な数学理論を作り上げた伝説的な人物である。まさか彼の名前をマンガで見る日が来るとは思わなかった。そのマンガは天地明察というもので、原作があると知ってからいつか読んでみようと思っていた。

 ようやく手に取ったら、これが面白い。

 本書の主人公は、渋川春海というマイナーな人物。少なくとも、私はその名を知らなかった(←日本史嫌い)。彼は碁を持って江戸幕府に仕えていたが、それよりも数学に興味を持つという変わった性格を持っていた。ギリシアやアレクサンドリアで数学が発展していったところを見ると、実利的な側面だけではなく、数学に引き寄せられるのは古今東西変わらない人間の性癖なのかもしれない。

 渋川は一瞥即解の士、関孝和の存在を知り、自分の作った問題を出す。しかし、あろうことか、その問には正解が存在しなかった。正解が複数あるというのではない。問題が間違っていたのである。その間違いに気づき、呆然となったが、彼はそのまま別の任務に赴かなくてはならなくなった。日本各地の緯度の測定に駆り出されたのである。

 緯度の測定は地球の形状を知る術であり、天文を測ることはまた暦を生むことに直結する。そして、その背後には数学がある。暦は農業において極めて重要な意味を持つ。だから、洋の東西を問わず、正確な暦を得るために人々は大変な苦労をしてきた。その模様は『暦をつくった人々―人類は正確な一年をどう決めてきたか』に詳しいが、ここに渋川春海も加わることになる。

 この暦作成という大仕事を軸に、和算の関孝和や、今に至るも碁のタイトルにその名を冠する本因坊一族、為政者である水戸光圀といった豪華メンバーとの交際を絡めて記される。これが実にドラマティックで、ぐいぐいと読ませる力を持っている。

 相当調べて書いたことが見え、ツッコミを入れる余地がないところも素晴らしい。算術の塾へ行った時のこと。そこの門下生が居ないことの理由として"鈴虫飼って売るのまでいる"とさらっとしたセリフが出てくるが、江戸時代に虫の鳴く声が愛され、鈴虫屋が居たという事実があったことなどをさり気なく出している。もっとも、私には日本史についてツッコミを入れられるだけの知識も何も無いのだけれども。

 人間ドラマも面白いけれども、やはり理系人(民族風に"りけいびと"と読む)としては暦を作るという、数学者の全身全霊の戦いに魅せられてならなかった。それもこれも、地球の公転が有理数ではないせいだ。だから、単純な答えは必ず大きな誤差を生む。それは10年くらいであれば、別に問題になるレベルではない。しかし、数百年と使っていればどうしても誤差が大きくなってくる。観測技術もろくにない中で、無理数をどこまで求めるか。その果て無き戦いに痺れる、憧れる。歴史好きも数学好きも読んで楽しい小説である。

関連書籍:
暦をつくった人々―人類は正確な一年をどう決めてきたか暦をつくった人々―人類は正確な一年をどう決めてきたか
(1998/12)
デイヴィッド・E. ダンカン

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その他小説 | 2014/05/22(木) 19:47 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1454冊目 ペンギンが教えてくれた 物理のはなし
ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)
(2014/04/14)
渡辺 佑基

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評価:☆☆☆☆☆


 うわ!面白そうなタイトル!と、タイトルに飛びついて読み始めたら大当たり。

 遥か上空を飛ぶ鳥や海の底深くまで潜る海獣を見ると、その進化の凄まじさに感嘆する。だが、最初の感動が去ると、次には山のような疑問が押し寄せてくる。どうして彼らはあんなことができるのだろう?どうして彼らはそんな行動を取るのだろう?どれくらいの速さで動き、どこまで高く、あるいはどこまで深く到達できるのだろう?

 こうした謎を解くには、物理を考えなければならない。なんとなれば、動物の動きは物理法則に規定されているのだから。といっても、構える必要はない。本書には物理の法則やら数式やらは出てこないのだ。では、どこに物理がでてくるのかというと、複数種の動物を眺めた時。質量と運動の関係をみると、一定の増減が見られるのである。

 といっても、野生動物はどのような行動をとっているのかについて人間が観察できることなど、高が知れている。そこで活躍するのがセンサで彼らの動きを記録するデータロガーである。

 このデータロガーについては 『ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待』や『巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学』といった先行する本で次々と明かされる驚くべき事実の数々を楽しんできたので期待に胸を膨らませて読み始めたら、やっぱり面白い!!

 アホウドリはたった46日で地球一周ほども飛ぶことができる。海中で最速なのはホオジロザメとマグロという進化の道筋から言えばかけ離れた奴らだ。勿論、タイトル通りペンギンも出てくるし、はるかヒマラヤの尾根を超える鳥も出ててくる。彼らが皆、揃いも揃って効率の優れた動きをしていることには進化の妙を感じて恐れ入るばかりだ。

 マンボウは背ビレと尻ビレは一対の水中翼として働くらしい。そこへたどり着くのが凄い!また、浮力は浮袋で得ているのではない。彼らは浮袋を捨て、脂肪を得た。それは食料となるクラゲを追うために、海中で垂直方向への移動を行うためだという。あやつ、とぼけた顔して油断ならぬ奴じゃのう。

 データロガーから発見された素晴らしいデータの数々が面白いのに加え、研究生活も面白おかしく紹介してくれているので、本当に読んでいて楽しい。物理の二文字に怯まず、ぜひ手にとってもらいたい本だ。


関連書籍:
ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)
(2007/08)
佐藤 克文

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巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学 (平凡社新書)
(2011/01/15)
佐藤 克文

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生物・遺伝・病原体 | 2014/05/21(水) 19:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1453冊目 デブの帝国
デブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのかデブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのか
(2003/06/25)
グレッグ・クライツァー

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評価:☆☆☆☆

 それは、コーンシロップとパームオイルから始まった。アメリカを覆う恐怖の問題、肥満である。もちろん、肥満の問題は見た目にあるわけではない。脂肪の過多による健康被害である。4人に1人は問題のあるレベルで太っているというのだから、これはもう個人の問題に留まるレベルを遥かに超えている。

 本書はコーンシロップとパームオイルという高カロリーで肥満を生みやすい食材の流入と、ジャンクフードの蔓延およびボリュームアップ、肥満に寛容な社会という様々な要因を取り上げ、どうしてアメリカが"デブの帝国"になってしまったのかを追いかけている。

 中心にあるのは高カロリーの食事を、際限なく取ることであろう。本書でも大手ハンバーガーチェーンの営業成績面での成功の歴史と、それが生んだ健康被害という公衆衛生上の敗北の歴史がこれでもかと綴られる。

 だが、それだけでは済ませていないのも本書の魅力。即ち、なぜ我々はこのような病的に太りやすい食事を好んでしまうのか、その背景にまで切り込んでいるのである。それも、飢えに備えて肥満遺伝子を持っているからという通り一遍のものではなく、目の前にあるものは取り敢えず食べてしまいたくなるという悲しい事実によって。

 確かに、太りにくい体質だと思っていた私も東欧へ出張した際にはたった2ヵ月で7キロも太って、残しては行けないという日本式美徳に山盛りのフライドポテトが組み合わさった時の恐ろしさを思い知ったものだった。

 また、アメリカ社会の抱える問題もかいま見える。例えば、体育教育が蔑ろにされて体を動かす習慣が失われたり、医学会も肥満は問題ではないという誤った主張を行ったり(痩せが早死するように見えたのは喫煙リスクを補正していなかったというお粗末な話)、学校にもソフトドリンクとジャンクフードが溢れかえっていたり。

 肥満を生み出す構造は、若年層でかつて無いほど肥満によって生じる2型糖尿病(1型糖尿病はほぼ遺伝要因)の急増という形で現れている。

 日本は同じ轍を踏んではならない。体質的に日本人の方が太りにくいとは言われるが、問題の在処は同じで、対処も同じである。企業にも人々の健康を失わせるようなことはしないでもらいたいが、彼らは営利企業なので期待はできない。だから、自衛するしか無いだろう。即ち、高カロリー食を大量に摂取することは避け、きちんと体を動かすこと。結局、入ってくる量を減らして、出て行く量を増やすしか、高カロリー食に対向する手段は無いのだ。
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ノンフィクション | 2014/05/20(火) 19:30 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1452冊目 面白い本
面白い本 (岩波新書)面白い本 (岩波新書)
(2013/01/23)
成毛 眞

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評価:☆☆☆☆


 元マイクロソフト社長で、ノンフィクションを専門に紹介するHONZの代表を務める著者による、タイトルどおりの本(笑)

 類書と異なるのは、前述の背景から取り上げる本がノンフィクション中心であるというところ。しかも、科学書がかなり多い!最初に取り上げているのがスティーブン・ジェイ・グールドの『ワンダフル・ライフ』というところで豪華さを感じてください。

 で、こうした本にありがちなのが、人生の役に立つとか、人格を陶冶するとか、それってこの世で一番くだらない類の、こんなに本読んだ俺って凄いでしょ、という自慢に堕してしまうこと。だが、安心して欲しい。著者はまずこう宣言する。

 読書は道楽。そういう割り切りが大事だと私は思っている。成功するためにとか、何かの役に立つようにとか、目的を持って本を読むのはおカド違いというものだ。それではせっかくの面白い本も、面白くなくなってしまう。本を読むことに何も意味を求めない。純粋に面白ければそれでいい。それが私の読書の理想だ。
(ivページより)


 素晴らしい!

 斯くして、面白いノンフィクションの山をかき分けるようにして紹介が進んでいく。『ワンダフル・ライフ』で太古の地球に思いを馳せ、『ロゼッタストーン解読』で歴史を解読する喜びを感じ、サイモン・シンの名著『フェルマーの最終定理』や『暗号解読』で数学と歴史の見事な混淆に酔い、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』で笑いを確保することも忘れない。

 冒険好きには『エンデュアランス号漂流』を薦めたいし、宇宙開発に興味がある方には『アポロ13号 奇跡の生還』は外せまい。今の世界がどうしてこうなったかを明快に説く『銃・病原菌・鉄』も紹介されているし、かと思えば米原万里さんの痛快エッセイ『不実な美女か貞淑な醜女<ブス>か』もあり、実に幅広い分野を読んでいると呆れるばかりだ。

 この本の難点は、読みたい本が山ほど紹介されていることだけだろう。前から目をつけていた『解剖医ジョン・ハンターの数奇な人生』や、動物の骨格写真集『BONES』、『眠れない一族』はますます読みたくなったし、存在すら知らなかった『スエズ運河を消せ』(タイトルからして魅力的でしょう?)あたりはもう必ず読もうと決めた。いつか知りたいと思いつつ、その凄惨な実像に慄き手を出せていない共産主義国家の悪夢の数々にも改めて注意を払わなければなるまい。

 私も色々とノンフィクションを読んできたのではあるけれども、まだまだ世界には面白い本が溢れている!というわけで、もっと色々な本に出会いたくなってしまった。
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未分類 | 2014/05/19(月) 19:11 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1451冊目 狼と香辛料
狼と香辛料 (電撃文庫)狼と香辛料 (電撃文庫)
(2006/02)
支倉 凍砂

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評価:☆☆☆


 友人に勧められたもの。

 豊作の神として麦畑に縛り付けられていた神がひょんなことから呪縛を断ち切り、行商人の主人公と共に故郷の北方を目指す、という物語。

 狼は少女の姿をしているが、犬耳と尻尾がオプションで付いてます。そう言えば、旧友のTという人物が彼女にねだってネコミミをつけて貰って、ゲフンゲフン、それは本筋には関係ない話であった。

 神であるが故の孤独であったり、独善的な一神教(そんな宗教、ラノベの中だけの存在なら良いのに……)に苦しめられたりといった表現は良いかな。

 やや盛り上がりに欠ける(世界の破滅とか国家の存亡みたいな話は無いからね)のだが、持ち込まれたちょいと怪しい儲け話から物語が大きく動き出す。

 という感じで、狼少女に萌えるかどうかで評価は変わりそう。

 90ページには銀貨の銀含有率を高めるとあって、国力は弱まっているとのこともある。どう考えても、逆だよね。古今、こんな状況で貴金属の含有率を高める政府は存在した例がない。

 と思っていたら、古い銀貨は回収して鋳潰せばより多くの銀貨が発行出来るとしていて、これはもう完全に逆だ。処女作なので大目に見てやろうとは思うけど、これは編集甘いよ何やってんの!というレベル。やっぱりすべからくの使い方間違ってるし。

 次作に期待だ(とか言いつつ読まなそう^^;)
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SF・ファンタジー | 2014/05/18(日) 19:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1450冊目 マハン海軍戦略
マハン海軍戦略マハン海軍戦略
(2005/02)
アルフレッド・T. マハン

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評価:☆☆☆

 マハンは20世紀の世界の海軍戦略に多大な影響を与えた兵学者である。彼の時代に軍艦は帆船から蒸気船に変わっていった。そうした技術革新の時代にあって、徹底して過去の戦史に学ぼうとした人物である。

 本書は、海軍大学校の校長を勤めたマハンの講義録をまとめたもの。

 日本海海戦やナイルの戦いといった、海戦史上に名高いものは勿論、ナポレオン戦争のように舞台が陸上であった戦いも多く取り上げているのが特徴である。

 上記を見て分かる通り、かなり専門的で一般人が読んで役に立つものではないかも知れない。しかし、軍とはどのようなもので、どうあるべきかを考えるに当っては、その価値が減じたとは思えない。特に、四方を海に囲まれ、政治的に不安定な隣国を持つ日本にとっては。


 ナポレオンの金言、"戦は位置取りの業なり"が何度も引用されるのが記憶に残る。戦略上の要所を占めることの死活的な重要性は理解できたかな。

 ネルソンの「国家に要なるは敵の殲滅なり。そは実に兵数多きなるをもて可能なるべし」(P.244)という言葉に端的に示される兵力集中の重要さも説かれている。戦中の陸軍指導者に聞かせてやりたい。

 物凄く乱暴にまとめてしまえば、兵力の集中と目的の単一性 の重要さを、戦史にあたりながら詳述する感じがする。研究の中で、日露戦争がかなり詳しく分析されているので、興味がある方はここだけでも読む価値がありそうだ。
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未分類 | 2014/05/17(土) 19:19 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1449冊目 空耳アワワ
空耳アワワ (中公文庫)空耳アワワ (中公文庫)
(2008/03/23)
阿川 佐和子

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評価:☆☆☆


 絶対に空耳アワーが元ネタだよねな、阿川佐和子さんのエッセイ。

 "女とオバサンとエイジングを基本のテーマ"としているという通り、この手の話題を面白おかしく綴っている。

 この手のエッセイは、著者の感性が自分に合うかどうかだけが問題なので、特にどこが良いというわけでもないが、小難しい本を読んでいて自分の理解力のなさを天道是か否かと嘆きたくなったあたりで1つ2つ読むと良いのですよ。

 そんなわけで息抜きに読んでいたのだが、こりゃあネタを集めるの大変だと思う。

 さり気なくオチがある、というのは実は大変なことで、私もネタを仕込もうと思いつつ難しさに断念することが多い。難しいことは書くの簡単なんんだけどね。論理さえ合っていれば良いから。笑いは微妙に論理を外れたところに起こるから大変だ。

 ついでに、日常でもネタを探すのはさぞ大変であろう。必死にネタ探ししているのは、アニサキス感染ネタで感じられた。ついでにこの話が面白かったかな。
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エッセイ | 2014/05/17(土) 18:12 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1448冊目 図説世界史を変えた50の植物
図説世界史を変えた50の植物図説世界史を変えた50の植物
(2012/09/18)
ビル ローズ

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評価:☆☆☆☆

 "文明に大きな影響を与えた植物、なかでもとくによりすぐりの50種を美しい図版とともに紹介している"と謳う通りの内容である。

 植物は食料にもなれば医薬品や衣類の材料にもなるので、50種に絞るのはさぞ大変だったろう。

 50種と言うのを見て、真っ先に脳裏に浮かんだのがケシやコカイン、大麻等の薬物の原料だったのは、三国志(この時代の名医、華佗は麻酔術を使ったとされる)の影響か、はたまた麻酔への興味か。

 もちろん上記3種は紹介されている。他には麦、米、トウモロコシ、リンゴ、サトウキビ、ブドウ、ココヤシ等のアルコール飲料の原料(ビール党の皆様、ホップもきちんと載ってますよ!)、トウガラシやコショウやナツメグといった香辛料、ダイズやタマネギやパイナップルやジャガイモにカカオのような食品、茶やコーヒーといった嗜好品等々、幅広い分野から選択されている。

 それぞれが人類の歴史にどのような影響を与えたかが、簡単に紹介されている。酸素の供給や食料という役割以外でも、植物がなければ文明は発達せず、文化もさぞツマラナイものになっていただろう。

 なにせ、毛皮や化繊以外の衣料も、アルコール類も、嗜好品も、チョコレートすらない。しかも手術は麻酔無し。そんな世の中じゃなくて本当に良かった!

 図版も多いので、軽い気持ちで読める。読んで楽しい、眼も楽しい。ページを捲るのが楽しくなる、そんな本。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/05/16(金) 19:09 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1447冊目 ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか
ヒューマン  なぜヒトは人間になれたのかヒューマン なぜヒトは人間になれたのか
(2012/01/20)
NHKスペシャル取材班

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評価:☆☆☆☆


 ヒトはいかにしてヒトになったか。その問いに応えるべく、様々な分野の科学者が研究に取り組んでいる。本書は、そんな人類学の最新の成果を探るドキュメンタリーである。

 6万年程前にアフリカを出た少数の集団が、その後世界中に散っていった。農耕を始め、都市を築き、文明を発展させてきた。その歴史は、決して平坦なものではなかった。

 そもそも、原始の人類社会が常夏のユートピアであれば、人類がアフリカを出なければならないような理由は無い。となると、何らかの理由で、人類はアフリカから出ざるを得なかったのだ。

 74,000年程前にインドネシアのスマトラ島で起こったトバ火山が、その候補に挙げられている。過去10万年で最大と言われるこの火山で、地球の平均気温が10〜15℃も下がったと考える科学者もいる。本当だとしたら哺乳類より気温の爬虫類や両生類で絶滅が多数見られるだろうから、まあここまで極端な変動は無かったと断じて良いだろう。しかし、この時期の寒冷化が人類進化に与えた影響は小さなものでは無さそうだ。

 興味深いのは、シラミのミトコンドリアDNAから他のホモ属と交配があった可能性が指摘されること。人類のDNAからも少数の交雑があったと示唆されるらしい。原生人類は先行するホモ属を総て排除したわけではないかもしれない。

 農耕の始まりも、宗教と関連があるかも知れないというのは面白い。農耕が始まり、余剰な食料が生まれたことから祭祀を行う余裕が生まれたと思ってきたが、逆に祭祀を行うために農耕が生まれた可能性もある、と指摘している。労働力の余剰ということであれば狩猟採集の方が大きい(労働時間は農耕民族の方がずっと長い)ことを考えると正しいかも知れない。

 環境考古学の視点からもアプローチがあるのは面白い。古代ギリシアの発展と崩壊を追っているが、塩害等の土壌の問題はローマやマヤ文明でも起こっていることで、そこに言及が無いのはちと残念であるが、テーマが散漫にならないよう、このレベルで留めるのも良いかも知れぬ。

 ただ、"すべからく"を総ての意味で使っている(P.256)のは頂けない。君たちはプロなんだから、須く〜べしと言葉を正しく使ってくれ。

 類書として、ジャレド・ダイアモンドの『昨日までの世界』や『土の文明史』、『環境考古学入門』等があるので興味を持った方はどうぞ。

 一流の本は巻末の参考文献リストが充実していると一般に言われるが、本書にはそもそもそんなページが存在しないので、残念極まりない。出版社は改めて頂きたい。
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医学・脳・精神・心理 | 2014/05/16(金) 18:04 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1446冊目 悪魔のピクニック―世界中の「禁断の果実」を食べ歩く
悪魔のピクニック―世界中の「禁断の果実」を食べ歩く悪魔のピクニック―世界中の「禁断の果実」を食べ歩く
(2006/07)
タラス グレスコー

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評価:☆☆☆☆☆


 あらゆる国は、何らかの形で国民の生活を制限する。法律と呼ばれるもので。その中には、食品や飲料の摂取を禁じるものもある。アルコールやニコチンを筆頭に、大麻やコカイン等の薬理効果のあるもの全般に加えて、道徳だとか経済的利益を守るために定められた法が。

 本書は、そんな決まりを破ってやろうという、苦労は大きい割に恵みの少ない冒険についてのノンフィクションである。道徳主義者は絶対に読まない方が良い(笑)

 かくして著者はノルウェーでアルコール度数96%もの密造酒を飲んだり、シンガポールでありとあらゆる悪事(自分の部屋で全裸で過すとかガムを電車の中で食べてみたりとか)を試したり、アメリカの基準では輸入が禁止される殺菌なしの全乳から作ったチーズを食べ、アブサンを飲み、チョコレートをつまみ、コカ茶を啜る。

 世界各地でアルコールが愛されているのは、"ワインには知恵が入っている。ビールには力が入っている。水にはバクテリアが入っている。"というドイツのことわざが象徴する。それも地域によっては不法行為だ。

 コカ茶には、当然コカインが含まれる。低量過ぎて決してオーバードーズにならないくらいに。コカインの問題は、特定のアルカノイドを極限まで純粋化することにある。同じことをニコチンやカフェインでやればどれだけ死者が出ることか。

 ボリビアの女性は、アメリカはドラッグ戦争と称して他国に正義を押し付けるより自国の問題を解決すべきと、こう指摘する。「(略)どうして国民の半分が、リタリンやプロザックやコカインでいつもラリっていなければならないほど人生に満足いないのかという問題をね」

 気がつけば、法は何の・誰のためにあるのか考えている自分がいる。確かに、著者のやっていることは法には背いている。そこで善悪を決める近視眼的な立場をとるなら、本書は悪へ誘う危険なものだだが、私は、人々が自然と付き合っていくにはどのようなスタンスが適しているかは難しく議論を積み重ねて行かなければならず、本書はその入口として優れたものだという立場を取りたい。
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ノンフィクション | 2014/05/15(木) 19:35 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1445冊目 三国志〈第7巻〉
三国志〈第7巻〉 (文春文庫)三国志〈第7巻〉 (文春文庫)
(2011/10/07)
宮城谷 昌光

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評価:☆☆☆☆


 劉備がそのズルさを遺憾なく発揮するのがこの巻に凝縮されている。

 赤壁で曹操を破った周瑜は荊州へ兵を進める。しかし、曹操はこの地に屈指の名将を留め置いた。曹仁である。彼の必死の抵抗により、周瑜は江陵に釘付けになる。

 その隙に劉備は荊州南方を制圧してしまうのだ。そして蜀に入り、騙し討ちと呼ばれて当然のやりかたで劉璋から国を奪う。

 やっている事はとても君子らしくない。それなのに、劉備を慕う人が多いのは本当に不思議だ。皇帝の一族を詐称しては居たが、それは力にならなかっただろう。なにせ、劉表と劉璋は正真正銘の皇族だ。ところが、彼らの配下から劉備に鞍替えする者が実に多かった。劉備は本当に不思議で面白い人だ。

 この時期はややこしくて、北方では曹操が更なる地盤固めとして隴西を撃つ。即ち、馬超と韓遂の反乱を誘うのである。残念な事に、小説では反乱を起こすことを予期した曹操が軍を向けて備えたことになっているが。

 面白いのは、馬超の反乱とその失敗が劉備の蜀攻略と密接に結びついているところ。

 さらにややこしいのは、珍しくやる気に溢れた孫権が何度も合肥を囲み、何度も敗退する動きもあること。これを一回で理解するのは大変ですよ。ただ、知っている人にとっては張遼の大活躍に目を見張る大チャンス到来!10万の軍勢を僅か800で退けた、屈指の名シーンだ。(分かっていても格好良いんですよ!)

 と、三国のどの陣営も力を伸ばし、いよいよ相克の時代が、来る。
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その他小説 | 2014/05/15(木) 18:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1444冊目 だます心 だまされる心
だます心 だまされる心 (岩波新書)だます心 だまされる心 (岩波新書)
(2005/06/21)
安斎 育郎

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評価:☆☆☆☆


 著者の安斎育郎さんは、ジャパン・スケプティクス(超常現象を批判的・科学的に究明する会)の会長を務めていた科学者である。その経歴を見たら、騙す・騙されるがどのような話題なのか、想像できるだろう。

 手品や詐術を超能力である、あるいは霊能力であるとして衆を惑わす者がいる。マスコミも、彼らが売れているから、というたったそれだけの理由で持て囃す。その一つの悲劇的な帰結が、オウム真理教事件ではなかったか。

 ユリ・ゲラーのスプーン曲げ然り、サイババの物質化然り。

 本書は、こうした誤りを敢然と糺す。更に、合理的に考えれば、騙されるのを防ぐことができただろうことにまで話を広げているので、騙されないためにはどのような心掛けが必要かを教えてくれている。端的に言うならば、それは懐疑的であれというべきか。

 例として、ファラデーが無意識の手の動きと断じたコックリさん(正確にはウィジャ盤)、旧石器発掘捏造、ミステリーサークルに水子供養詐欺等、話題を集めたトピックが多い。

 他にも、コナン・ドイルが騙された妖精写真(あれに騙されちゃあイカンよ)、森鴎外の自説拘泥で多くの将兵を死に追いやった脚気の原因論争、野口英世の意外な程の功績の無さ、更には騙し絵や推理小説や手品に至るまで、幅広く論じているので飽きることが無い。

 楽しく、かつ詐欺に騙されにくくなる、心のワクチンと言って良いかも知れない。
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反疑似科学・反オカルト | 2014/05/14(水) 19:09 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1443冊目 パレオマニア―大英博物館からの13の旅
パレオマニア―大英博物館からの13の旅 (集英社文庫)パレオマニア―大英博物館からの13の旅 (集英社文庫)
(2008/08)
池澤 夏樹

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評価☆☆☆☆☆

 月刊プレイボーイをたまに買っていた。せいぜい月に1回くらいのペースで。メリケン産のゴージャスな美女が惜しげも無く披露するヌードは、いやらしさを欠いていて、淫靡さは隠そうとするところに現れるのであるなあと思ったものだ。

 中道左派的な編集姿勢で、911の後、急速に右傾化する世界から一線を画した特集に特徴のあったこの雑誌の、他の楽しみの一つがこの連載だった。ちなみに、もう一つの楽しみは鹿島茂さんの『情念戦争』。

 池澤夏樹が大英博物館を皮切りに世界の博物館を巡る、実に豪華で羨ましい旅。まだ見ぬ、いや、生涯訪れることなどないだろう地への旅を、未知の世界を知る喜びと素晴らしい旅への憧憬とを感じながらページを捲ったことを思い出す。

 大英博物館、ギリシアの神殿、エジプト、インド、イラン、カナダ、ケルト、カンボジア、ベトナム、イラク、トルコ、韓国、メキシコ、オーストラリアを巡り、そして大英博物館に戻る。なんて贅沢なんだろう。

 訪れるすべての地は、大英博物館と繋がっている。印象的な遺物を見て、現地へ向かう。パレオマニアとは著者の造語で、古代妄想狂のこと。私も中世近世よりも古代に関心があるので、まさに私好みの話題ばかり。

 エジプトやメキシコのピラミッド、ウルのジッグラトといった巨大建築もあれば、見事な金属細工もあり、動物をモチーフにした像もあれば、肉感的な仏像もある。ミイラもあれば、自然や人間による破壊に耐えて生き残った絵画も。

 いずれにも、古代に生きた人々の精神が感じられる。客観性を保とうと三人称で綴られる文章から、本物の持つ力に触れた興奮が伝わってくるのが良い。

 本物を見たい。そんな思いが湧き上がってきた。著者の旅を後追いすることは不可能だから、せめてもう一度、ゆっくり大英博物館を巡りたいなぁ。

 ただ、著者が勢い余って現代文明批判をするのは、ちょっと近視眼的かと思う。確かに、歴史的な遺物には物凄いものがある。精緻で、作った者の心の動きまで表現しているそれらの物の持つ迫力は、量産品の遙か彼方にある。

 しかし、それらは、社会のほんの一握りの層が力を独占していたからこそ、生まれ得たものだ。我々のような庶民は、それらを見ることすら叶わなかっただろう。今は、かつてなく社会が平等になった。子供は死ななくなった。戦争も減った。それらのメリットと、豪奢な芸術品が生まれなくなったことを比べたら、私は現代文明の方により魅力を感じるのである。
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エッセイ | 2014/05/14(水) 18:07 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1442冊目 ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
(2004/12)
ピーター アトキンス

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評価:☆☆☆☆


 ガリレオの指というのは何とも謎めいたタイトルだ。これはガリレオの技法、つまり科学という営みが知を永遠のものとしていることの象徴だ。

 尚、フィレンツェの科学史博物館には彼の右手の中指が保存、展示されているとの由である。

 ガリレオが科学史上に燦然と輝く偉人であることに異論はないが、指を丸で聖遺物ででもあるかのように飾るのはいかにも西欧的だなぁ。そんなものに偉大さを感じるのは、少なくとも科学的な合理性からはかけ離れた、信仰に属する行為に思われる。

 さて、本書は以下の10大理論を取り上げている。
1.進化ーーー複雑さの出現
2.DNAーーー生物学の合理化
3.エネルギーーーー収支勘定の通貨
4.エントロピーーーー変化の原動力
5.原子ーーー物質の還元
6.対称性ーーー美の定量化
7.量子ーーー理解の単純化
8.宇宙論ーーー広がりゆく現実
9.時空ーーー活動の場
10.算術ーーー理性の限界

 自然科学の広い分野を押さえていることが分かろう。著者はオックスフォード大学の化学教授で、理系の大学教育を受けた人は『アトキンス物理化学』のお世話になった方も多かろう。

 私?お世話になりましたとも。寝ずにいるのが大変でした。

 順に眺めると、人類が到達した知の広がりには感嘆するばかりだ。科学という営みの有効性がよく分かる。この手の話だと無視されがちな化学からもしっかりトピックが選ばれているのも良い。

 しかも、最後に算術を持ってくるのがにくい。理性の限界とあるように、最終的にゲーデルの不完全性定理で締めることで科学の限界までをも見据えた議論になっている。

 ただ、一般向けというにはレベルが高いかな、と思わされた。原子の性格を説明するのに、量子力学から求められる電子の軌道(s軌道とかp軌道とか)にまで深堀して説明しているので、じっくり読み込むのが必要である。

 しかも、それでも無限についての議論にはついていけなかった。

 入門書を読んで先に進みたくなった人向けだと思う。理解できるところはとても読みやすく面白かったので、科学書好きという方はぜひ挑戦してみてください。
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その他科学 | 2014/05/13(火) 19:59 | Trackback:(0) | Comments:(1)

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1441冊目 頭の中身が漏れ出る日々
頭の中身が漏れ出る日々 (PHP文芸文庫)頭の中身が漏れ出る日々 (PHP文芸文庫)
(2013/05/17)
北大路 公子

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評価:☆☆☆☆


 これもまたブクレコで存在を知ったのである。奇矯な女性のエッセイということで、本を読み疲れた時に読む本(かつてワケがわからないとツッコミを入れられたことがあるが、ツッコミを入れられるワケがわからない)に良いのではないか、と思って手に取った次第。

 が、これは失敗だった。実に危険な本であった。人前で吹き出しちゃったじゃないか。

 中身はと言えば、特に何があるというわけでもない日常系のエッセイなのだが、視点が独特なのか表現が妙なのか、とにかくおかしい。

 昼酒しては見知らぬおっさんにツッコミを入れられたり、ひたすら餅を食い続ける父親に噛んでくれと頼みこんでいたら母親が蒟蒻ゼリー12個一気食いの暴挙に出てみたり、過去付き合っていた男性が牛刀で貫かれたり、周りもネタに溢れている。

 重厚なノンフィクションを読む合間に読み進めると、ギャップの大きさにますます笑えます。読み終わった私の目の前で妻がゲラゲラ笑っているので、ノンフィクションを読まない人にも向いているかも知れません。
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エッセイ | 2014/05/13(火) 18:08 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1440冊目 三国志〈第6巻〉
三国志〈第6巻〉 (文春文庫)三国志〈第6巻〉 (文春文庫)
(2010/10/08)
宮城谷 昌光

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評価:☆☆☆☆


 官渡で大敗した袁紹が失意の内に死ぬ。強敵がいなくなったのだから、曹操は南方の荊州や揚州に目を向けても不思議はなかった。しかし、彼はあくまでも北方の制圧を重視する。

 自分が都を空けても、優柔不断な劉表は劉備を使って攻め込むことはせず、権力を握って間もない孫権は動けない。であるからには、北方の確保を優先させる。

 かくして、前半は袁紹の遺児、袁譚や袁尚討伐に向かう曹操が描かれる。

 曹操麾下には名将も某臣も綺羅星のごとくに並び、苦戦がむしろ不思議なくらいだ。この間に郭嘉が病死する不幸はあるが。

 一方の劉備は、徐庶の助言に従い、伏龍とも称される諸葛亮を幕下に加える。また、孫権の配下にも甘寧と魯粛(演義では間抜けなお人好しに過ぎないが、確固とした戦略眼を持つ傑物)が加わる。

 人物が揃ったところで、いよいよ赤壁の戦いである。何と言っても絵になるのは、孫権が降伏か抗戦かを臣下に問うシーン。張昭ら重臣が降伏に偏る中で抗戦を求めて周瑜を呼べと主人に迫る魯粛が格好良い。曹操による徐州の虐殺は高くついた。魯粛と諸葛亮は共に徐州の人なのである。赤壁の戦いの帰趨は、ここに定まったのかも知れない。

 そして、ようやくにして劉備の雄飛が始まる。
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その他小説 | 2014/05/12(月) 19:01 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1439冊目 見る
見る―眼の誕生はわたしたちをどう変えたか見る―眼の誕生はわたしたちをどう変えたか
(2009/01/23)
サイモン・イングス

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評価:☆☆☆☆

 我々が世界と付き合う上で、視覚がどれほど重要か、改めて言うまでもないだろう。車のように危険な存在を避けたり、食べ物が何処にあるか確認したり、色鮮やかな世界を楽しんだり。

 それにしても、どうやって目はこんなにも精巧に働くのだろう。本書はその謎に迫る、進化や科学史を巡る探求の旅の記録だ。

 目がどのようにして生まれ、どのように働くのか。形や色をどうやって知るのか。そうした謎の数々に迫っている。

 ミツバチのような昆虫や小鳥が紫外線も見ることができるのは知っていたが、それは害が出る前に彼らの寿命が尽きるからというのは想像もしていなかった。哺乳類とは違って昼の世界で進化してきたからだと思っていたので驚きだ。

 我々の目が静止した物を見ることができないのも知らなかった。え?見えてるって?そう。静止した物も見える。いや、静止した物も見えるように、目が動いているのだ(マイクロサッカード)。この現象を確認しようとしたのがかのエルンスト・マッハというのも驚き。しかも、下瞼をパテで固めてというのには慄く。

 こんなにも素晴らしい視覚システムは、カンブリア紀に発明されたものだ。しかも、単純な光を感じる組織から完全な目ができるまで、わずか50万年で事足りる。そのためか、生物は40〜60回も独立に目を進化させてきたという。

 完全であるように思えて、実は多くの欠陥も持つ視覚。その奥深さを楽しめる一冊。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/05/12(月) 18:58 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1438冊目 イカはしゃべるし、空も飛ぶ―面白いイカ学入門
イカはしゃべるし、空も飛ぶ―面白いイカ学入門 〈新装版〉 (ブルーバックス)イカはしゃべるし、空も飛ぶ―面白いイカ学入門 〈新装版〉 (ブルーバックス)
(2009/08/21)
奥谷 喬司

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評価:☆☆☆


 日本の食卓を賑わせてくれる、イカ。元々は殻を背負っていた、軟体動物である。世界の消費量の40〜50%は日本が占めるという。

 このイカの生態を軽く紹介してくれているのが本書。

 一口にイカと言っても様々な種類がある。

 発光イカは、ルシフェリンとルシフェラーゼの作用によるものと、発光性の微生物を体内に蓄えるものがある。前者は光るタイミングをコントロールできるが後者はどうするのかと思っていたら、光を漏らしたくない時は墨で覆っているというのに自然界の妙が感じられる。

 遊泳力で浮力の不足を補う(死体は沈む)種もいれば、アンモニアで浮力を得る(死体は浮く)種もいる。交尾の際に精包と呼ばれる精子の詰まった袋を雌に渡す種もあれば、雌の体を引き裂いて精包を埋め込む種もいる(雌に同情せずには居られない)。

 空を飛ぶトビイカの存在は知っていたが、彼らが揚力を得るのはヒレではなく腕を広げて作った膜というのには驚いた。著者は納得していないようだが。

 いろいろなイカがいるし、資源としてみてもまだまだ有望なようだ。知らなかった世界を覗けたのは楽しかった。

 ホタルイカの沖漬けで日本酒を一杯飲みたくなる、
そんな一冊(笑)
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生物・遺伝・病原体 | 2014/05/11(日) 20:28 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1437冊目 誰かに話したくなる恐竜の話
誰かに話したくなる恐竜の話誰かに話したくなる恐竜の話
(2013/07/26)
平山 廉

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評価:☆☆☆☆

 中生代、およそ一億六千万年の長きにわたって地上の覇者として君臨した恐竜。今も人気のこの生物、本当はどのような生態だったのだろう?

 化石となった数少ないサンプルから、その全体像を知るのは難しい。しかし、わかったことも多いし、推測できることも多い。

 本書は、古生物学者が大胆な推測を交えながら、有名な恐竜がどのように生きていたかを語る。

 ステゴサウルスの歯は草食性にしては摩耗が少ないところから、糞食だった可能性を指摘している。

 頭蓋骨の形状が実に独特なパキケファロサウルスは、メスを奪い合うためにオス同士が頭をぶつけ合っていたとされてきたが、骨の強度から否定されるとのこと。

 竜脚類があの巨体を首から尻尾まで繋がる腱が支えていた(吊橋効果)ことを知れば、博物館で骨を見るときの注目点もわかる。また、彼らが頭を垂直方向に高く持ち上げられなかったことも理解できよう。

 他にも、恐竜やその仲間の翼竜類、海棲の首長竜や魚竜類が絶滅したのは、ユカタン半島に落下した隕石が唯一の理由ではなく、その前から衰退が見られたことから、火山噴火説や哺乳類の台頭説を組み合わせているのは面白い。

 恐竜が好きな人だから書ける、著者の興奮に満ちた本。その熱意に、こちらの関心も高められるのが魅力の一冊だ。
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地球史・古生物・恐竜 | 2014/05/11(日) 19:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1436冊目 マザーネイチャー 下
マザー・ネイチャー (下)マザー・ネイチャー (下)
(2005/05/26)
サラ・ブラファー・ハーディー

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評価:☆☆☆☆


 アメリカの貧困層における問題は、肥満である。高脂肪高カロリーのファーストフードの影響が大きい。肥満は、女児に取っては新たな問題を引き起こす。初潮年齢の低下である。女性の体は脂肪分の蓄積をもって、性的成熟を計っているためだ。

 かくして、低年齢での妊娠出産が増える。これは若い母親にとっても、生まれてくる子供にとっても、ハイリスクだ。特に、彼女らが子育てに援助を受けにくく、配偶者も確保しづらい現実の下では。

 その一つの必然的な帰結として、子捨てや子殺しが起こる。乳幼児突然死症候群の一部は、なんと意図的な殺害であるようだ。

 忌まわしいと感じさせるこの現象も、母親の視点にたてば適応の一つに過ぎない。上記の例以外にも、広範な理由で子殺しが行われてきた。子殺しは人類社会に普遍的に見られる物なのだ。

 下巻はこのショッキングなトピックで幕を開ける。その一つのバージョンである、性別による排除も。性別で子供の生死が分けられる時、殺される子の性別ははっきりしている。富裕層ではまず間違いなく女児で、貧困層では男児だ。これは動物界で広く見られる選考と恐ろしいほど一致する。(ただし、地域によっては女児が選択的に排除される)

 驚くべきことに、自然界でもこうした選別が起こる。選択的に中絶(胎児は母親に取り込まれる、あるいは流産する)されるのだ。

 母親が自分自身の利益と子育てをトレードオフにしていることがよく分かる。

 一方、子供の側も生き残るのに懸命だ。人見知りはそのための適応かもしれないというのは、過去の時代がどれほど子に過酷なものだったかを偲ばせる。

 自然界での生き残り戦術も載っているのが良い。アカメアマガエルの卵は樹上に産み付けられるが、蛇の襲撃があると直ちに孵化することで全滅を避けるという。

 これと同じように、人間の赤ん坊にも生き残るための戦術がある。それは、可愛さだ。それすら進化の賜物とは面白いではないか。

 多くの証拠から、子供の健全な成長には母親でなくても構わないが特定の人物の密接な関係が必要であるとの指摘は重い。

 ただ、社会病質がこの時期の関係性の欠如から生じているというのはどうだろう。確かに一部はそうだろうが、残りは遺伝要因が大きいのでは無いか?人の性格、とりわけ成人後の性格はほぼ遺伝で規定されることを考えるとちょっと疑問だ。

 賛成できない点もあるが、母親が進化に果たした役割は十分に説明されている。他種の話も興味深い。

 だが、何よりも、現代社会に生まれることができたことのありがたさを実感させてくれる本。
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その他科学 | 2014/05/11(日) 18:20 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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入院体験記 1
 それは連休を直前に控えた4/25(金)の夜のことであった。お風呂に入って、体を洗っていた時に違和感を覚える。確認。再確認。

 間違いない。左の睾丸が右対比2~3倍くらいにデカくなっている。たんたんたぬきの金玉は~♪の片側バージョンですよ!わはは。どうせでかくなるなら竿の方が良いのに!

 って、絶対悪い病気に決まってるよね……orz

 慌てても仕方がないのでゆっくりお風呂に入ってからネットで調べようと思ったのだが、冷静さを欠いていたらしく、適切な単語が思い浮かばぬ。取り敢えず、"金玉 倍 腫れる"で検索。イヤンな情報が引っかかってきて、どうもそれっぽいと覚悟は決める。

 この時点で妻にも事情を話して、患部を見せ、多分手術になる旨を伝える。そんな深刻なシーンも、どこから見ても変質者っぽいのが玉に瑕だ。

 幸い、4/28(月)は休みを取って4連休にしていたので、ここで病院に行くことに。ネットで受信すべきは泌尿科であることを確認。近所の病院を探したら、あるある。2つも。

 幼稚園に行く娘を見送って病院に行くと、今日は先生が不在ですと2連チャンで言われてがっくし。受付の人は内心"この人性病なんだろうな"と思ってんだろ!と被害妄想を抱きながらすごすごと家に引き返してもう一度検索すると、車で20分くらいのところにあるではないか。泌尿器専門のクリニックが!

 ようやく巡り会えた医師(男性。良かった~)は、暫く患部を確認すると、ジャブを打つような感じの質問をしてくる。ご結婚は?とか、お子さんは?とか、今後のご予定は?と聞かれた時点で分かるよね。ああ、やっぱり切除なんだな、と。

 そこまでは予想していたのであるが、おもむろに物騒なことを言い始める。

 「この病院は手術できないんです。紹介状書いてお望みの病院は紹介できます。ただ、泌尿器科は一ヶ月くらい先まで手術の予定が埋まってるんですよ連休があるので、連休明けに再受診をされても、月内に手術は難しいかもしれません。でも、命のことを考えると早めに手術を受けられることを勧めますよ

 と、申し訳無さそうに教えてくれる。

 やっぱり、癌か。覚悟はしていたので、特にショックを受けはしなかった。いつかそんな日が来るかもと思っていた日が来た感じ。それより、こちらに都合の悪いことでもきちんと教えてくれるところに好感を持つ。

 「明後日なら、僕がもう1つ勤めている病院が手術1件しか入ってなかったと思うんですよ。こちらは病院に確認してみますから、お仕事休めそうか確認してみてください。早めに手術を受ければ予後は良いですから」

 命がかかっているなら、悠長なことは言ってられない。というわけで、上司に電話をかけて、ちょっと話を膨らませて伝えたのもあって、快く認めてくれた。ありがとう!

 というわけで、思いもしなかった予定が入ってしまったのだったのだった。
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体験記 | 2014/05/10(土) 23:52 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1435冊目 マザーネイチャー 上
マザー・ネイチャー (上)マザー・ネイチャー (上)
(2005/05/26)
サラ・ブラファー・ハーディー

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評価:☆☆☆☆


 母親。彼女たちは、長い間単に子供を生むだけの存在とされてきた。進化学者でさえ、男性の役割には注目するのに女性のそれには目を瞑ってきた。

 しかし、女性も自然選択の賜物であるし、性選択を潜り抜けて子孫を残してきた。

 本書は、女性の人類学者が綴る、母親の進化の歴史である。注目を浴びにくかったテーマに果断に飛び込む時には、過激で注目は集めるが実証性に欠けることがしばしばあるが、本書は違う。幅広いテーマのそれぞれの話題について実証的に論を進めている。

 様々な人類集団を取り上げたり、類人猿と比較しながら、人の性や男女の繁殖戦略を探っているので説得力がある。

 私としては一夫多妻制では子供の死亡率が一夫一婦制に比べて7〜11倍というのに驚いた。

 複数の妻を持てるということはそれだけ妻や子に投資できると思っていたが、そういう社会では男性にとって大勢の妻子は単に自分の力を示すだけのものらしい。

 厳格な一夫一婦制は生物学的に無理があると思うが、一夫多妻制はその解決策にはならないのだな。もっとも、それは男女の体格差が小さいことからも導かれることだが。(一夫多妻制をとる種では通常オスはメスより遥かに大きい)

 なぜ閉経後も女性は生き続けるのか?その疑問に応えるお婆さん仮説や多婦一夫制を取る民族の戦略等、面白いテーマが山積みである。このボリュームで下巻もあるのは凄い。

 興味と時間があるかたにはお勧めです。
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ノンフィクション | 2014/05/10(土) 15:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1434冊目 泡のサイエンス
泡のサイエンス―シャボン玉から宇宙の泡へ泡のサイエンス―シャボン玉から宇宙の泡へ
(2001/05)
シドニー パーコウィツ

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評価:☆☆☆☆


 タイトルを見れば一目瞭然、泡についての本なのだが、表紙のちょっとSF風なCGとサブタイトルが示す通り、本書が扱う泡の範囲は驚くほど広い。シャボン玉より遥かに小さいミクロの世界から人類の知りうる最も大きな構造、銀河の集合にまで至る。

 これらの泡はそれぞれ異なった理由で存在する。しかし、泡という共通点は、それらを同じ切り口から考察することを可能とする。

 例えば軽石。火山活動に伴って噴出されるこの石が気泡を大量に含むのは、潜水病と同じ原理による。

 こうした話に、歴史的なエピソードを織り込んでいるので読むのが楽しい。火山では、大プリニウスが死んだのはピナツボ火山の噴火による(ただし、死因は有毒性のガスのため)といった感じで。

 あるいは宇宙探査では、マーズパスファインダーを軽量化するのに、また、観測機器を低温から守るのに泡が使われている。彗星から放出される物質の回収にも。

 身近なところではビールやシャンパン、エスプレッソにパンにクリームといったものの泡について語る中で、それらがなぜ美味しいのかを教えてくれる。

 読んで楽しく、かつ思いもしなかった繋がりを教えてくれる本であった。
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その他科学 | 2014/05/10(土) 12:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1433冊目 坊っちゃん
坊っちゃん坊っちゃん
(2012/09/27)
夏目 漱石

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評価:☆☆☆☆


 今更語るまでもない、漱石の名作。

 親譲りの鉄砲で子供の頃から産婆狩りして居る、じゃなかった、それは本読みHPのネタだった、子供の頃から損ばかりして居る坊っちゃんが物理学校を卒業して松山に教師として赴任した時の物語である。

 江戸っ子気質の坊っちゃんは、教師の間にうまく溶け込めず、生徒からはからかわれ、すっかり嫌になって啖呵を切って東京へ戻ってしまう。その模様が実に滑稽で、ユーモア小説として本当に楽しめる。

 天麩羅蕎麦を食べたと言ってはからかわれ、団子を食ったと言えばからかわれ、銭湯で泳いでもやっぱりからかわれる。それが誰がやったと分からない、あるいは坊っちゃん以外の人間を指していると言えなくもないという陰険な感じで、短気な主人公が怒る怒る。自分も同じことをやられたら怒るだろうから当然なのだが、これがデフォルメされていて読む分には笑える。この生徒対教師の構図は『吾輩は猫である』に通じるところがある。

 同僚の教師には赤シャツとか野だいこ、うらなりに狸とあだ名を付けているのだが、それがまた効果的。陰湿な赤シャツとその提灯持ちの野だいこが実に嫌なやつらで、主人公を当て擦る発言を多用する。

 このように生徒も教師も阿呆ばかり、おまけに町の人もまともなのは居ないみたいにけちょんけちょんに歯に衣着せず書いているのが面白い所以だろう。教師も新聞記者もダメなのばかりと書いているのが、今だったら表現がどうこうと文句を言われて日の目を見ることが無いような気がする。

 この単刀直入さが江戸っ子気質を上手く表していて、とかく官僚的になりがちな組織を快刀乱麻を断つが如くに批判するところが人気の秘密ではないか。

 尚、これもキンドルストアで無料配布しているのを読んだもの。素晴らしい時代だ。
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その他小説 | 2014/05/07(水) 19:56 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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