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Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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1430冊目 三国志〈第4巻〉
三国志〈第4巻〉 (文春文庫)三国志〈第4巻〉 (文春文庫)
(2009/10/09)
宮城谷 昌光

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評価:☆☆☆☆


 剣に生きる者には戦場での不慮の死が付きものである。三国志前夜の動乱において一際強く輝いた人物が、あろうことか横死する。袁術に命じられて襄陽の劉表を攻撃に向かった孫堅が、劉表の部将・黄祖の手勢によって敢え無く討ち死にするのである。

 孫堅は常に陣頭に立ち続けた人物であった。それがために、敗戦の際に絶体絶命の危機を迎えたこともある。だが、この最期はあまりにも油断し過ぎと感じられてならない。単騎進む中を伏兵にあって射殺されてしまうのだ。

 ここで、なぜ袁術が孫堅に命じて劉表を攻撃したのか、もう一度振り返ってみよう。中央は董卓が抑え、地方は中央の統制が効かなくなった状況で、天下を分けようとしていたのは袁紹と袁術という異腹の兄弟だった。袁紹は曹操や劉表と結んで袁術を牽制し、袁術は公孫瓚と南北から袁紹に圧力を加えていたのである。袁紹の目が北方を向いている間に南方を抑えようという動きだったと考えれば分かりやすい。

 そして、この後で時代の動きは一気に加速する。

 中央では、王允が陰謀を進めていた。董卓を除く、という。その起死回生の手段が、董卓に侍る武勇の士、呂布を使うというのだから非凡なものだ。陰謀は成るが、その後も長安は混乱が続く。

 董卓は実にあっさりと殺されてしまうのだが、彼の経済政策の悲惨な失敗についてしっかり書かれていないのが困りモノだ。貨幣の改鋳を行って経済を混乱させたとは書くが、実際はそんなものではない。なんと、一説に物価が1000倍にもなったとされるハイパーインフレを引き起こしているのだ。跋扈将軍梁冀からすれば董卓は可愛いものだみたいなことを書いていたが、梁冀は宮廷内で猖獗を振るったものの民衆をそこまで苦しめはしなかったのではないか。

 閑話休題、やはり、この辺りから曹操が主役級の活躍をするようになる。父親の曹嵩が徐州刺史の陶謙の部下に殺されたために苛烈な復讐戦を行う。ところが、この戦いのせいで謀将の陳宮が、曹操が親友だと思って厚い信頼を寄せていた張邈と、都落ちした呂布を仲間に引き入れて背く。ようやく曹操の圧力が減じた徐州では陶謙が死に、劉備がその後釜に据えられる。

 曹操と劉備がこうやって大きく取り上げられるようになると面白くなってくる。

 この巻で重要なのは、曹操が青州兵と呼ばれる黄巾族を下して得た軍勢を得たこと、劉備が雌伏の時代を経てそれなりに基盤を得たこと(まあ、すぐに無くしてまた当分の間雌伏の時代を迎えるんですけどね)、そして、名ばかりの存在となったとはいえまだまだ利用価値を失っていない献帝が長安から逃げ出したところか。

 見どころとしては、知将・謀将の策の冴え渡りぶり。曹操を救ったのは程昱と荀彧の知恵だったし、長安の混乱を長引かせたのは必死に生き延びようとする賈詡の策だった。次巻、いよいよ曹操が献帝を擁する。そして、プレ三国時代の狂言回し、呂布との戦いが待っている。どう描かれるのか楽しみだ。
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その他小説 | 2014/04/28(月) 19:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1429冊目 大腸菌 〜進化のカギを握るミクロな生命体
大腸菌 〜進化のカギを握るミクロな生命体大腸菌 〜進化のカギを握るミクロな生命体
(2009/11)
カール ジンマー

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評価:☆☆☆☆


 尾籠な話で恐縮であるが、便は何からできているかご存知だろうか?昨日のご飯?ハズレです。一昨日のご飯?いやいや、ハズレです。実は、便の乾燥重量の6割は大腸菌を筆頭とする細菌である。

 汚いと思った人、残念なことに、あなたは大腸菌を駆逐しては行けない。そんなことをしたら、たちどころに死が襲いかかる。大腸菌は我々にとって欠くべからざる栄養素を作ってくれている上に、他の細菌を寄せ付けないことで感染症に罹るのを防いでくれているのだ。

 この大腸菌、地上で最も研究された生物でもある。そして、バイオテクノロジーの成果として、インシュリンのような薬を生み出すようにもなっている。大便の主成分である汚いバイ菌なんてものじゃない。生命の歴史を探る上でも我々が生きる上でも重要な役割を持つ生き物なのだ。

 そんな大腸菌についての研究成果をまとめたのが本書。著者は様々な科学分野に切り込んでいく気鋭のノンフィクションライターのカール・ジンマー。柔らかな雰囲気の文章で、理解しやすいのに決して過度な単純化をすることはしないという凄腕です。とならば読まないわけには行きません。

 期待に違わず、次から次へと面白い話題が出てくる。
 
 病原性大腸菌O-157がどのようなものなのか、他の大腸菌とはどう違うのか、彼らの遺伝情報から明らかになった生物進化の道筋とはなにか、等々、本当に幅広く論じていて、読者は飽きる隙がない。

 アメリカにおける原理主義者の教育界への介入にすぎないインテリジェント・デザイン仮説(私に言わせれば仮説じゃなくてせいぜい妄説である)への批判まで飛び出てくるので科学史ファンにも堪らない。

 大腸菌を通して地球生命の奇跡のようなあり方を知ることができるところが魅力。ちっぽけでつまらない存在に見えて、なかなかどうして、大した生き物だ。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/04/27(日) 19:32 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1428冊目 犯罪は「この場所」で起こる
犯罪は「この場所」で起こる (光文社新書)犯罪は「この場所」で起こる (光文社新書)
(2005/08/17)
小宮 信夫

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評価:☆☆☆


 妻が洋ドラの『クリミナル・マインド』を気に入ってよく視ている。一緒に眺めていると、被害者学という言葉が何度も使われていることに気づいた。なるほど、面白い視点だ。切り裂きジャックは売春婦を切り刻んだ。犯行時間は夜。視認性が悪く、人目が届きにくい環境だった。犯罪者がどのようにして生まれてくるかを探るのも悪くはないかもしれないが、こういう被害に合いやすい場所を無くす、あるいは場所を特定することで警戒することで犯罪を減らすというのも良いだろう。

 本書はこのような立場から、犯罪者がどうして生まれてくるかという"原因論"ではなく、犯罪を犯しやすい環境にいる者が犯罪を犯すという"機会論"に立ち、機会を無くすことが大切だと説く。

 視点は面白い。特に、池田小の児童殺傷事件で、犯人は「門が閉まっていれば入らなかった」と述べていることや、奈良小1女児殺害事件で、犯人は奈良の前に大阪の八尾市に行ったがターゲットを見つけられなかったと言っていたことを鑑みれば。

 本書の価値は、犯罪が実際に起こったところや不審者が居るという場所ではなく、誰も出入りできるのに視認性が悪く犯罪を犯そうと思ったらそれが可能な場所こそが危ないと認識すべきというところにある。これなら具体的な注意ができるというものだ。

 と言っても、連続殺人犯のテッド・バンディは黒髪の白人女性をターゲットにしていたから黒髪はやめなさいというわけにも行かず、やっぱり機会論は機会論として役立てるとしても、特定の犯罪に特化した情報開示も必要なのだろう。

 こうした点で価値はある。あるのだが、どうにも怪しい記述が多くて困る。

 例えば割れ窓理論に基づき、こうした乱れがあることは犯罪を犯しても良い場所だという認識を与えるから云々とか書いているが、割れ窓理論が正しいというはっきりした証拠は存在しない。アメリカで犯罪の増加率が低下したとか言っているが、それは割れ窓理論を導入した都市も導入していない都市も同様である。ということは、この理論は相当に怪しい。

 また、少年犯罪が増えているとか言っているが、犯罪自体は統計の取り方によってどうにでも変わるので信頼性が無い。定義の変わり様がない殺人に限って言えば激減しているので、著者が主張する少年犯罪の増加やら、生活の欧米化やらデジタル化に伴って犯罪が増加するというのは、著者の脳内以外には存在しない現象であろうとの思いを強くさせる。

 犯罪を犯した少年の更生に向けた取り組みも書いているが、再犯率が◯◯%とか言われても、それはそのプログラムを受けていない人と比較しないと意味が無い数字だ。そして、比較対象の数字は無い。だから効果もわからない。一箇所あったのは、受けた者と受けていない者で再犯率が変わらなかったというもので、それじゃあ意味が無いよね。効果が無いものに公費を湯水のごとくに突っこむのは、法務省に勤めていたという著者の来歴を考えれば元同僚の天下り先確保に役立つだろうが、国民の役には立たない。

 と、怪しいところが山ほどあるのだが、犯罪を減らすためのヒントはあると思う。興味がある方は、マユから唾が滴り落ちるくらいの心づもりで読んでみて欲しい。
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ノンフィクション | 2014/04/26(土) 19:07 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1427冊目 金曜のバカ
金曜のバカ (角川文庫)金曜のバカ (角川文庫)
(2012/11/22)
越谷 オサム

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評価:☆☆☆☆


 著者の本は『階段途中のビッグ・ノイズ』に続いて2冊目。10代のお莫迦な頃を書く人だと思っていたところ、本作に出てくる登場人物の一人が私を彷彿させるという証言を得て読んでみたところ、いやまあ、実に私っぽい。そこまで見ぬかれているのは喜ぶべきか恥じるべきか悩むところであります。

 さて、本書は5つの短編を集めたもの。

 引きこもりニートの青年がたまたま出かけた時にこれまたたまたま見てしまった女子高生のスカートの中に魅せられてすっかりストーカーになってしまったのが、どういう訳か武闘会になっちゃった表題作で幕を開ける。これはもう莫迦であるとしか言い様がないと感心。

 続いて、しし座流星群を見に行った男の子が女の子と出会う"星とミルクティー"。こういう自然科学ネタを持ってくると嬉しくなりますよね?ね?自分が見に行ったことなんかを思い出したりして、あの次々出現する流れ星を一緒に眺める楽しさって良いなぁと思う。そういえば、火球が出現したまさにその時、ワタクシメはおでんを温めようと奮闘していたのも思い出しました。悔しい!ああええと、小説の話ね。この女の子は、ちと正体わかりすぎなんじゃないかなぁ(雑)。

 "この町"は、坊っちゃんの舞台となった松山。あの、ボロクソに言われる松山です。それなのに坊っちゃん列車なんてのがあるらしくて、主人公はボヤきます。越谷オサム風の知識の出し方は嫌味じゃなくて良い。さて、主人公は恋人と東京へ行く約束をするが、夜行バスに乗るまでに色々な人と遭って東京や故郷について考える、という話。東京近郊で生まれ育った身には、東京への過剰な思い入れというのが分からないし、中途半端に大きなベッドタウンに居ると地方という感じも無い。東京の属領くらいの感覚で、それもあってイマイチ共感できなかったかな。

 "僕の愉しみ 彼女のたしなみ"。これは良いですよ。主人公は恐竜オタクの少年です。何故かは全く分からないが親近感が湧くなぁ。冒頭でいきなり”正確にいうと、プテラノドンは恐竜とはちがう種類の生き物なんだ。翼竜といって、空飛ぶ爬虫類の仲間なんだよ。小さい文字でもいいから、そんなふうに断りを入れればいいじゃないか”とあるのに全くもってその通りだと共感(笑)

 ついでに、恐竜の展示の横に如何にも仲間ですといった感じでディメトロドン(肉食)とかエダフォサウルス(草食)がいるのにツッコんでたり、竜脚類を首長竜と間違う他の客にイライラしたりしながら、デート相手にオタクであることがバレないよう必死で黙っているところはなんとも可愛い。あ、ちなみに、私はそういうのを隠してませんでした。そしてやっぱりモテませんでした。しくしく。

 君たちは仲良くやってくれ。ぷんすか(逆恨み)

 最後、"ゴンとナナ"は、いい雰囲気になったと思ったばかりの男の子を目の前で掻っ攫われるナナちゃんと、その愛犬のゴンの物語。部活だとか恋だとか、懐かしいよね。それぞれの視点から語られる世界はちょっと違っていて面白い。

 それぞれ、主人公に合わせて語り口が変わるところが良い。また、どこか抜けたところのある主人公が身の丈にあった奮闘をしているところも共感が持てて、読んでいて楽しくなる。若く、今よりももっとお莫迦だった時代を懐かしみながら読むべき本であろう。



関連書籍:
階段途中のビッグ・ノイズ (幻冬舎文庫)階段途中のビッグ・ノイズ (幻冬舎文庫)
(2010/05)
越谷 オサム

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その他小説 | 2014/04/24(木) 19:44 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1426冊目 野良女
野良女 (光文社文庫)野良女 (光文社文庫)
(2012/11/13)
宮木 あや子

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評価:☆☆☆


 ブクレコであかつきさんを筆頭に多くのレビュアーが高く評価していたので、これは読まねばと手に取った本。自分だけで本を選んでいたら生涯決して手に取らないであろう。

 さて、2年間付き合っている男がおらず孤閨をかこつ鑓水を皮切りに、年上の男性と付き合いながら若い職人を翻弄してしまう朝日、遠距離恋愛中の彼氏にヘボいポエムを贈られて絶望の底に沈む壺井、ダメ男の暴力に苦しみながらもその後のセックスは楽しみな桶川、精神に不安定なところを見せながら不倫を続ける横山という5人が持ち回りで主人公を務める連作短編集。

 全員が鑓水と付き合いがあるというので、徐々に登場人物を増やしながら各人を取り上げるのが云々、というのがストーリーなのだけど、この本に関してはそんなものを書いても仕方がない。

 むしろ、性という男も女も莫迦になるその現実をあけすけに描いているのを楽しむ本だ。読んで気になるのは、本書に出てくる奇矯な男たちはまさか著者の実体験に基づいたものではあるまいな、ということ。こんなのに沢山巡りあうにはどれほどの苦労(?)があったものかと要らぬ心配をしてしまう(笑)

 "某<ソレガシ>の某<ナニガシ>が下克上でござる"ってどうかしている(笑)。こんなバカバカしく、かつ笑える表現は自慰行為を"下部構造の矛盾を解決"と表現した『まるくすタン―学園の階級闘争』以来かもしれない。

 取り敢えず、良い年こいて三国志好きな私ではあるが、ナニを致す時に「孔明の罠か!」だとか「なにがムムムだ」だとか「君と予だ!」とか「酒が冷める前に出してみせます(むしろ駄目じゃん)」とか「出師の表じゃ」とか、そんな類のことを口走ったことはないのにちょっと安心。

 まあ、女性に幻想を持っていたい人は読まないのが吉かと思います、はい。
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その他小説 | 2014/04/23(水) 20:27 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1425冊目 永訣の朝
永訣の朝 (河出文庫)永訣の朝 (河出文庫)
(2008/08/31)
川嶋 康男

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評価:☆☆☆


 終戦の詔が発表された直後の1945年8月20、南樺太の真岡へソ連軍が侵攻する。ソ連が南樺太を回復しようという動きは分からないでもない。実際、終戦の交渉がどのように進もうとも、彼の地はソ連のものになっていただろう。だから、ソ連の狙いはそれ以上にあった。最終的には北海道までをもその版図に組み入れようとしていたのである。

 が、それはここでは置こう。取り上げるのは、この真岡侵攻の時に起こった一つの悲劇。真岡郵便局で逓信に従事する女性たちが服毒自殺を遂げた事実である。

 近代戦争において、戦況をリアルタイムに知ることは死活的に重要なことだ。そのため、通信に従事する彼女たちには決死の覚悟が求められた。そう。彼女らは、決死隊として残ったのだ。そしてソ連が攻めてくる。覚悟があったからだろうか、12名の逓信係のうち、9名が自殺する。

 どうして彼女たちが自殺することになったのか、そこに焦点を当てたノンフィクション。

 彼女たちの顔写真の下に名前と、そして享年が記されるのだが、享年◯とある年齢の余りの若さに慄然とする。最年長の高石ミキが24歳だったと言えば、その雰囲気が分かって貰えるだろう。彼女たちは、最後まで残るメンバーを決めるときに、むしろ志願したという。惜しむらくは、彼女たちの若さ故の思い込みの激しさと、彼女たちを制止するべき年長者の不在であろう。

 その後の状況を見ると、どうしても自殺するほどのことには思えないのである。実際、自殺した9名と共に居た3名の女性は助かっているし、別の係の男女は自殺者を出すこと無く生還している(但し、殉職者は出ているが)。では、年長者はなにをしていたのか?そのうち一部は、どうやら現場を放棄していたらしい。

 だからこそ、必死に任務を遂行しようとして絶望しながら死んでいった女性たちの凄烈さが際立つ。そして、戦争はやはり弱者にこそ最も強烈な形で襲いかかるとの思いを新たにする。今の社会の趨勢は、むき出しの力を行使することは悪ということになっている。そのことに感謝するとともに、次世代にもその価値観をきちんと伝えていこうと思える一冊。
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ノンフィクション | 2014/04/19(土) 19:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1424冊目 三国志〈第3巻〉
三国志〈第3巻〉 (文春文庫)三国志〈第3巻〉 (文春文庫)
(2009/10/09)
宮城谷 昌光

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評価:☆☆☆☆


 さぁ、いよいよ盛り上がってまいりました!

 前巻の最後で、三国志の幕を開けるあの男が登場する。董卓、が。この男が歴史の表舞台に立つことで、漢王朝の命運は尽きたと言って良いであろう。だが、それは一先ず置こう。董卓が漢都・洛陽に乗り込んで権力を掌握する前からこの巻は始まる。

 暗愚な皇帝が死に、その行状に相応しく悪いイメージを持つ"霊"が諡に選ばれる(中立という説もあるが、春秋戦国時代で霊を冠せられた人物はまず行状が悪いので、悪諡だと判断する)。彼の乱れた政治が死後の混乱を招き、それが漢の滅亡に直結するのを見れば、妥当なところであろう。

 さて、霊帝が死ぬと、問題になるのは後継者だ。当然、皇后の産んだ子が太子であり、彼が即位することになる。当然だろう。皇后は宦官と共に宮廷内で権力を握り、兄の何進は大将軍として軍を統べる。ところが、何進は官僚と組む。ここにややこしさが生じる。

 後漢において、皇帝が統べるべき権力はしばしば外戚と宦官によって壟断されてきた。むしろ、外戚と宦官が権力を競ってきたと言って良い。単なる莫迦みたいに描かれることもある何進だが、名士を招聘し、国家の安泰を図っていたという点は評価すべきであろう。彼によって召された人物の中には荀攸のように歴史に名を残す者もいるのがその証左だ。

 ここから怒涛のように歴史は進む。宦官の誅滅を謀った何進は、逆に皇太后となった妹に会いに行ったところを宦官に殺される。何進麾下の袁紹たちは宮殿に乗り込み、宦官の皆殺しへ至るのだが、彼らは幼帝を引き連れて逃亡する。将にそのタイミングで、董卓が登場するのだ。

 彼の狡さが巧みに表現されている。将軍に任じられておりながら戦いにはむしろ消極的で自分の権勢を保つことに注力していたこと。そして、千載一遇の好機を得るや、巧みに権力を掌握すること。

 董卓は即位したばかりの皇帝を廃立して陳留王に格下げし、異腹の弟を帝位につける。彼こそ、後に献帝と諡される悲劇の人物だ。いや、兄の陳留王も十分に悲惨だ。少帝と諡される彼は、殺害されて僅か17年の人生を閉じるのだ。

 ご存知の通り、董卓に対して諸侯が反旗を翻す。それが曹操であり、袁紹だ。本書が凄いのは、ここでマイナーではあるが、本当はものすごく重要だった人物をきちんと登場させること。その一人が張邈であり、鮑信である。そしてまた、諸侯が動かなかったことの一つに少帝と献帝を巡る微妙な動きがあったことを教えてくれるのも良い。

 対董卓の諸侯連合軍は、ご存知の通りちっとも機能しない。それが、献帝を巡る話なのだが、そこで立ったのが曹操と孫堅。おぉう、ようやく三巻にもなって三国志らしくなってきましたよ!

 劉備なんかは完全脇役で出てこないのも歴史どおり。うんうん、マニアにはたまらないぞ(笑)

 曹操は徐栄に大敗して命からがら逃れ、孫堅は董卓の軍勢を打ち破るが、董卓は孫堅の鋭鋒を避けて洛陽から長安へ遷都する。だが、その孫堅は親分筋に当たる袁術が兵糧を送らないことで撤退を余儀なくされて、斯くして諸侯連合軍は何も得ることもないまま解散してしまうのである。

 この巻では、張邈の後の行動が暗示されているところが面白いかな。本当に歴史に沿った小説になっているので、正史のファンには堪らない感じがする。劉備も端役だけどちょろっと出てくるし。

 知られていないだろうけれど、董卓が中央を握って地方が中央の統制を離れたこの時期、中心に居たのは袁紹と袁術の兄弟だった。この仲の悪い異腹の二人の角逐が、多くの諸侯の運命を決めたのである。合従連衡は人間の知恵と欲望を炙り出すものであるところが、きっとこの時代を面白くさせているのだろう。いよいよ楽しくなってきましたよ。

 グーグル先生のお陰で変換一発で助かります。
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その他小説 | 2014/04/18(金) 23:14 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1423冊目 ゼフィラム CO2ゼロ車を開発せよ
ゼフィラム CO2ゼロ車を開発せよ (朝日文庫)ゼフィラム CO2ゼロ車を開発せよ (朝日文庫)
(2013/05/08)
楡 周平

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評価:☆


 ブクレコのオフ会で課された宿題。昔から課題図書なんて大っっっっっっっ嫌い!だった私らしく、実につまらなく読んだ。余りにもつまらないので流し読み。

 これはですね、サブタイトルにある通り、二酸化炭素を出さない自動車開発に当たる人々の取り組みを描いた小説なのだが、、、

 実際は、登場人物はたった一人。いや、勿論、名前の出てくるキャラは居ますよ?でもね、寄ってたかって同じ目的に向かって延々と説明を繰り広げるだけで、人格の複雑さや思考の深さを感じさせることが絶無。これ、小説にする意味あるのか?

 二酸化炭素を排出しない自動車開発に取り組む理由は、まあお察しの通り二酸化炭素による地球温暖化ですよ(失笑)。しかも、選りにも選って取り上げるのがアル・ゴアの『不都合な真実』。中身が余りにもデタラメであることが指摘されているアレですよ、アレ。ヒマラヤの氷河消失も100倍ほど時間を縮めているような捏造で成り立っている、MMRばりの事実を元にしたフィクションですよ。MMRは面白いところが違うか。

 おまけに、あの人は自家用ジェットを乗り回して、豪邸では平均世帯の20倍ほど電気を使ってる。そんな奴が他人を批判するなどちゃんちゃらおかしい。愛人を何人も囲ってる奴が、たった一回風俗に行った他人を「お前は奥さんを裏切って悪いと思わないのか!」と批判しているような喜劇にしか見えない。

 そもそも、膨大なデータから得られた結論は、二酸化炭素濃度が上がった後で気温上昇が起こったという証拠は存在せず、むしろ気温上昇が先で、その後で二酸化炭素濃度が上昇しているということだ。温暖化は原因で、二酸化炭素の増加は結果なのである。従って二酸化炭素が上昇したから温暖化が起こるは論理的におかしい。

 しかも、森林が二酸化炭素を吸収するとか書いて、莫迦さ加減にうんざり。植物が光合成をするのは自分を成長させるための材料にするためだ。だから、森林として完成されてしまえばもう二酸化炭素は吸収しない。酸素の発生量と消費量がイコールになるのだ。そうじゃなければ、炭素が姿を変えたセルロースはどこに消えるの?

 小説は結構だけどさ、その辺りの想像力は持とうよ。

 なんだこれ。小説にする意味あるのか?と書いたけど、このレベルのものをノンフィクションとして出そうとしても誰一人相手になんかしてくれないだろうね。だから小説なのか。ご苦労なことで。

 著者には猛省を期待したい。私はもう金輪際、この人の本は読まない。幾らなんでももっと勉強している人が好きだ。

 こんな程度の本を読むより、きちんとした事実に基づき、論理的に正しく、しかも読んで面白いノンフィクションなんて幾らでもある。この駄本に付き合って時間を失うより、以下の本を強くお勧めする次第であります。

地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す』…二酸化炭素に寄る地球温暖化は事実だとして、それでも人類にはもっと喫緊の課題があることを示した良書。これは面白い本です!

地球温暖化は止まらない』…温暖化論者のウソを指摘した名著。騙されないように知識を得るには最適。


関連書籍:
地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す
(2008/06/28)
ビョルン・ロンボルグ

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地球温暖化は止まらない地球温暖化は止まらない
(2008/02/29)
デニス・T・エイヴァリー、S・フレッド・シンガー 他

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その他小説 | 2014/04/17(木) 19:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1422冊目 毒性元素 謎の死を追う
毒性元素 謎の死を追う毒性元素 謎の死を追う
(2008/02/29)
John Emsley

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評価:☆☆☆☆


 つい先日、オフ会で上野の科学博物館に行ってきたのですよ。特別展を見たら常設展も見ない訳にはいかない、というわけで、地球館の方を巡ってきました。そこには周期表があって、それぞれの元素が展示されていたのであります。金、銀、プラチナあたりは箔で、ナトリウムはきちんと油に漬かった状態で展示されていて、一見無味乾燥なあの表を見て楽しいものにしていた。

 あぁ、あれを見る前に読んでおけば良かった……!

 本書は、元素の毒性がどのように発現するのか、それらの毒物によってどのような事件が起こってきたか、を眺めた本である。

 まず、ボイルやニュートンと言った、現代科学の祖のように思われている人物が最後の世代の錬金術士であった事実から始まる。ニュートンは不眠症や食欲不振、被害妄想に悩まされていた。それらは水銀中毒の典型的な症状である。実際、ニュートンの遺髪からは大量の水銀が検出されるという。

 続いて、水銀、ヒ素、アンチモン、鉛、タリウムその他と話は進む。

 毒となれば、それを悪用する人もでる。自殺用に用いるならまだ良い。しかし、有名なのはむしろ他人に使った場合だろう。各々の毒で、世間を騒がせた話題が取り上げられている。

 例えば水銀であれば水俣病や作家オーバーベリーの毒殺、ヒ素ではナポレオンの中毒あるいは毒殺(本書でははっきりどちらとは書いていない)、タリウムではフセインの毒殺部隊や有名な毒殺魔グレアム・ヤングと、様々な事件が載っている。あたかも暗殺の歴史を追いかけているようだ。

 通常ルートでの入手は困難だろうから毒殺される可能性は低いとしても、事故は恐ろしい。水銀がこぼれ、蒸気になると危険だ。気づかぬうちに水銀中毒となってしまう。あるいは、井戸がヒ素に汚染されて多くの人びとがヒ素中毒になってしまったもの等。

 猛烈な毒性を持ちながら、一方で必須の元素となっているものがあるのも面白い。少なくても多くても有害と言う事実は、人体が実に微妙なバランスで成り立っていることの証明とも言えよう。

 毒殺の歴史を眺めるには良いと思うのだが、ちょっと寄り道しすぎの感あり。
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その他科学 | 2014/04/16(水) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1421冊目 「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー
「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)
(2014/02/28)
高橋 秀実

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評価:☆☆☆☆


 ブクレコで色々な方がレビューを書かれていて、面白そうなので手に取った本。

 意外だろうが、ワタクシメもご幼少のみぎりは野球少年だったのです。2番センターSkywriterくんは、当時からひょろひょろの体で腕力が足りず、それがうまく働いて内野手の頭を越すような嫌らしいバッティングで4割以上打っていたのですよ。そしてひょろひょろなので足は速かった(今も変わらずひょろひょろだが走力は見る影もない)。そんな私の憧れは、やっぱりクリーンナップでした。

 そう。野球にはセオリーがあるわけですよ。1番に足の速い長打より巧打の打者、2番は前の打者を進塁させるか自分が出塁するか、クリーンナップが走者を返すと、後は守備に重点を置く選手があわよくばと繋いでいく。

 でも、開成高校野球部は、そんな戦術を取らない。いや、取れない。練習は週に1回。ナイター設備もない。おまけに、運動能力の高い選手をかき集めることなんて夢のまた夢。

 試合をやればエラーを連発、ピッチャーの素質は"ストライクが取れること"(ストライクが入らなければ試合にならない)、細かいことなんてどうせできないのだからとにかく大振り。

 もう、セオリー無視。それなのにこの野球部良いなぁと思ってしまうのは、楽しそうだから。その一方で、彼らはきちんと勝つためにやっている。難しい球は打てなくて良い、取れなくて良いというチームがどうやって勝ちを狙うのか?それは、ドサクサに紛れて大量得点を奪い、相手のやる気を喪失させるというものだ。

 ノッカーが空振りするのも、内野がエラーしたボールを外野がトンネルするのも、もしやその深慮遠謀に基いてのものか!?と思ってしまうほど。

 片や授業もろくに受けずに野球三昧というチームと、ほとんどの生徒が東大に行く超進学校で野球もやっているというチームが、同じことをやっても仕方がない。だから、彼らなりに勝てそうなパターンを作るというのが面白い。野球を知っている人ほど、その無茶苦茶さを楽しめると思う。

 尚、それでも開成は東東京大会でベスト16まで進んだことがあるそうな。その快進撃、見てみたかった。
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ノンフィクション | 2014/04/15(火) 19:26 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1420冊目 ヘビ、トカゲ、ヤモリ 嫌われ者たちのララバイ
ヘビ、トカゲ、ヤモリ 嫌われ者たちのララバイヘビ、トカゲ、ヤモリ 嫌われ者たちのララバイ
(2013/12/06)
松橋利光

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評価:☆☆☆


 爬虫類を飼いたいとは思わないのであるが、眺めるのはとても好きだ。多くの人が嫌うヘビも、私には機能美に溢れているように感じられる。進化の過程で手足を無くしながらもスムーズな動きと捕食のための武器をしっかりと研ぎ澄ませてきた姿は格好いいと思う。勿論、襲われるのは勘弁願いたいが。

 本書は、タイトル通り嫌われることの多い、ヘビやトカゲやヤモリの写真集。

 ヘビのウロコの精妙さに感心し、イモリの目の大きさに改めて気付かされ、トカゲのつぶらな瞳の愛らしさを楽しめる。それもそのはず、著者はずっと爬虫類が好きで、水族館の職員から動物相手のフリーカメラマンへと、爬虫類を追いかけて生きてきたような方なので、対象への愛に満ちている。

 なので、毒蛇の体色の毒々しさやデカイトカゲの怖さ(コモドドラゴンはヒトをも襲う)ですら、彼らの身につけた武器を誇る場へと変わる。

 爬虫類の美しさを眺めるにはもってこいだ。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/04/14(月) 19:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1419冊目 シルクロードの民話
シルクロードの民話シルクロードの民話
(1990/10)
小沢俊夫

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評価:☆☆☆☆


 この本、シリーズで分冊ではリンクが無い……

 というわけで、私が読んだのは分冊のうち、パミール高原のものである。なかなかレアな地域だ。図書館でタイトルを適当に眺めながら歩いていたら目に飛び込んできたのがこれ。

 民話、面白いですよね。特に、全然関係がないと勝手に思っていた地域で、同じような話が出てくるところ。それはきっと、どこで暮らしていようとも、民族や歴史や文化が違っていても、ヒトは同じようなことに幸せや怖れを見出してきたのだろう。そして、今のヒトがそうであるのと同じように、面白い話に飢えていたのだろう。

 本書でも、物語の主人公が悪鬼から逃げるとき、走りながら背後にものを投げるとそれが障害物になることが繰り返され、3回めに投げて出来た障害物が悪鬼を倒すというモチーフが何度か出てくる。三枚のお札にそっくりだ。

 正直者な努力家は、苦難には遭うが最後には報われる、というのも共通。苦難のところでハラハラさせて、大団円で盛り上がるのは、手を変え品を変え作られる多くの物語で一致するので不思議はない。

 主人公を陥れようと企んだ者が悲惨な最期を遂げるところも世界中で共通する話。例えばシンデレラの義理の母と姉は、元々の話だとガラスの靴に足が入るように踵や爪先を切り落としては見たが、カラスに目玉を掘り出されるというものだし、日本でもカチカチ山のたぬきやさるかに合戦のサル、舌切雀のおばあさん(古くは妖怪に殺されるというバージョンが語り継がれてきたそうな)というのがある。悪人が成敗されることに溜飲を下げてきたのだろう。

 一方で、違いがある所もまた面白い。書き出しが、"ほんとにあったことだか、なかったことだか、わかりませんが"というのは正直かもしれないけれどどうだろうと思ってしまう(笑)。もっとも、日本の昔話は"むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんが~"と、5W1Hでも最初に出てくる、いつ・どこで・だれがが超絶曖昧なので、他国のことは言えないが(笑)

 というわけで、他国の情緒を感じながらも共通点に驚くうちに楽しく読んだ。また、神話や伝承を読んでみようかな。
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未分類 | 2014/04/13(日) 13:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1418冊目 働かないアリに意義がある
働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)
(2010/12/31)
長谷川 英祐

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評価:☆☆☆☆

 アリとキリギリスに見られるように、アリには勤勉なイメージがある。自分の体よりはるかに大きな獲物を、数匹がかりでえっちらおっちら運んでいる姿を見るとそう思うのも無理は無い。しかし、一方で一部のアリは働かない、という話もある。

 自然界が厳しい競争に曝されている現実を考えると、働かないメンバーを群れに抱えるのは不利なように思える。しかし、アリは世界でも最も成功した生物の一つだ。ということは、一見無駄にも見える働かないメンバーにも、積極的な価値があるのかもしれない。そして、実際に、彼らの存在にはしっかりと意味があるらしい。

 本書は働かないアリが何故生じるのか。どうやら、ワーカーが働き始めるしきい値にバラツキがあることが原因らしい。ちょっとした刺激で働き始めるアリは働き者だし、かなり刺激があってもまだ働き始めないアリは怠け者に見える。しかし、このバラツキがあることによって、アリの群れは緊急時に即応できる遊撃部隊を常に抱えるようになる。

 そのため、例えば大量の餌を見つけたため、運搬にワーカーが必要だとなると、次々にワーカーを繰り出せる。あるいは、幼虫の世話であったり、敵の侵入があった場合も同じ。余剰人員を抱えていなければ、こうした時に物量作戦が使えなくなってしまう。それは、常日頃は遊んでばかりの余剰兵力を抱えるデメリットを打ち消しうるメリットだ、というのはなんとも面白い。

 こういうところが社会性生物の面白いところだ。特にアリは数が多く研究者も多いため、色々と面白いことが分かっている。

 ワーカーが相互監視して女王アリ以外の子供を産ませないようにしているところとか、他のアリの巣に入り込んで乗っ取ってワーカーをひたすら産み続けるアリが居たりとか、タイトル以外のトピックでも意外で楽しい話題が豊富にある。『アリたちとの大冒険: 愛しのスーパーアリを追い求めて』でアリ研究におけるフィールドワークの苛酷さから研究に携わることは絶対にしないと固く誓っているのだが、研究成果にはこれからも注目していこう。



関連書籍:
シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)
(2013/02/07)
松浦 健二

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アリたちとの大冒険: 愛しのスーパーアリを追い求めてアリたちとの大冒険: 愛しのスーパーアリを追い求めて
(2013/12/15)
マーク・W・モフェット

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生物・遺伝・病原体 | 2014/04/11(金) 23:59 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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1417冊目 三国志〈第2巻〉
三国志〈第2巻〉 (文春文庫)三国志〈第2巻〉 (文春文庫)
(2008/10/10)
宮城谷 昌光

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評価:☆☆☆


 迂遠なる宮城谷三国志の2巻は、跋扈将軍と呼ばれた梁冀の跳梁跋扈で始まる。彼の専横を許したのは、間違いなく後漢の皇帝が次々と早死したことである。皇帝権力が定まらず、幼帝が即位することで外戚が権力を握る。皇帝は長じて外戚を疎むが、頼りになるのは宦官しかいない。斯くして、外戚と宦官とが皇帝に集中する権力を壟断することがただ繰り返される。

 恐るべきことに、1巻と2巻のほとんど全てを費やして、皇帝を支軸にした外戚と宦官の血生臭いシーソーゲームが描かれているのだから、後漢の民衆は報われない。

 我らが曹騰(曹操の祖父の宦官)もまた、時代の中を泳いでいく。順帝亡き後、彼は梁冀を桓帝擁立へ向かわせる。桓帝が立たなければ曹騰にも破滅が待っていたと見れば、正当防衛に属する行為と言えなくもない。しかし、暗愚な桓帝を選んだのは失敗であった。

 とは言え、桓帝時代を暗黒のものとしたのは間違いなく梁冀である。この貪婪な男の生涯をこれでもかと描き出す2巻の前半は読んでいてウンザリさせられるのであるが、困ったことに後半も改善が見られない。何故か?梁冀が失脚して族滅となって暫くして、桓帝が崩ずる。その後を継いだのが、これまた暗愚な霊帝だから。

 外戚と宦官に加え、皇帝を輔弼する一翼たる官僚。彼らは鋭く宦官と対立した。しかし、皇帝と皇后に侍り続ける宦官と比べると、官僚の力はいかにも弱い。従って、宦官を排して皇帝権力を中心に政を進めようとする彼らの営みは、手痛い敗北を喫することになる。それは、宦官による官僚の大弾圧という形を取る。史上に悪名高い、党錮の禁がそれだ。

 第一次党錮の禁、第二次党錮の禁を経て、有力な官僚は尽く中央を逐われてしまう。宦官が権力を壟断し、社会には鬱屈した思いが溜まりに溜まっていく。社会に横溢する負の感情が臨界点を越えた時、遂に大動乱が勃発する。黄巾の乱が、それだ。

 ここに至って、ようやく三国志を彩る英雄たちが姿を表すことになる。彼は宦官がのさばる後漢の朝廷にあって、絶好のスタートを切ったと言えなくもない。なにせ、出自は大宦官の曹嵩の孫。彼は息子となった曹嵩を売官で太尉につけてやったのだから(奇妙なことに、宮城谷三国志ではこの事実が描かれない。曹騰の評価を落とすことを嫌ったか?)、出世には最も近いところにあった。

 一方、自らの才覚だけで名を上げてきたのが孫堅。彼の非凡な将器がいたるところで発揮されている。後漢は崩壊の寸前にあるが、こうした猛将はいたのだ。

 劉備もまた、歴史の表舞台というには程遠いが姿を見せる。黄巾賊討滅に向かった盧植の弟子として。もっとも、貧しい家庭に生まれ、叔父に学費を出してもらっているのに賭け事と音楽と服にうつつを抜かすのだから困ったものだ(笑)

 さて、実際の歴史の動きだけを見ると、黄巾の乱は後漢を滅ぼしたわけではない。確かに、その規模は大きかった。しかし、皇甫嵩と朱儁の活躍で、乱自体は程なくして鎮圧されている。むしろ、後漢の滅亡はその後に起こることにある。まるで歴史の転換点ともなったのは、ある野心家が権力を一手に握ったことにあるだろう。その人物が、本書の最後で姿を表す。

 その男の姓名を、董卓、という。
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その他小説 | 2014/04/08(火) 19:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1416冊目 カラシニコフ II
カラシニコフ II (朝日文庫)カラシニコフ II (朝日文庫)
(2008/07/04)
松本 仁一

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評価:☆☆☆☆


 世界で最も出回っている銃火器は、まず間違いなくカラシニコフAK-47であろう。

 設計としては異例なことに部品と部品のクリアランスを0.3mmも取る(通常の銃は0.1mm)ことで、その隙間に異物が入り込んで不具合を起こすことを防ぐ、という逆転の発想の自動小銃である。戦場において、壊れないという特性は何にも代えがたい。しかも、メンテナンスも簡単である。おまけに、この銃は薬莢が詰まるというライフルにありがちな不良に対しても対策を行っていたため、信頼性という点では随一であった。

 開発者の名を戴くこの銃の名前は知っていたが、本書の前作に当たる『カラシニコフ I』で詳細を知った。この傑作ノンフィクションの続編ということで手に取ったのが本書。

 前作はアフリカの失敗国家を舞台にしていたが、今作ではまずコロンビアのメデジンを取り上げる。メデジンといえば、『パブロを殺せ―史上最悪の麻薬王VSコロンビア、アメリカ特殊部隊』で描かれた、麻薬を背景に国とギャングが熾烈な争いを繰り広げていた地である。なぜ、ギャングは政府の介入を拒むだけの強大な力を持っていたのか?そこにもカラシニコフの姿がある。

 本書が解き明かしたのは、このカラシニコフの入手経路だ。中国製のカラシニコフ模造品がアメリカの銃砲店へ収められ、それがコカインと引き換えに南米へ流れる。そして南米は不安定な国になる。銃と麻薬が結びついて、コロンビアに限らず、南米は反政府ゲリラに悩まされることになる。

 問題がややこしいのは、ギャングに入る若者たちの本音だ。彼らは政府のやることに反対だとか、共産主義に賛同して、といった理由でギャングに加わるのではない。他に仕事が無いから、だ。本書で知ったが、ペルーの日本大使公館を占領した反政府組織の若い女の子は、仕事が終わったら家に帰れると言われていたらしく、早く家に帰りたいと啜り泣いていた、という。若者が他に行き場がなくて反政府組織に取り込まれるという、社会が抱える矛盾がもっとも先鋭な形で現れていると言えよう。

 こうして、今作では南米と、アメリカが占領したばかりのアフガニスタンとイラクを取り上げる。どこも、力の論理が横行しており、そこに扱いやすいカラシニコフが入り込んでいる。そして、簡単な解決策など欠片もありはしない。現実の厳しさに暗澹たる想いを抱く。銃がない方が平和じゃないかというのは真理に違いないが、銃が社会を席巻している中にあっては、最初に銃を手放すのは愚か者のやることだ。

 世界の抱える矛盾の今の姿を克明に記しているノンフィクションで、読み応えがある。これら、力が支配する国に平和が訪れるために何が必要か、それを考える一助になりそうだ。道は無限に遠そうだが…… 


関連書籍:
カラシニコフ I (朝日文庫)カラシニコフ I (朝日文庫)
(2008/07/04)
松本 仁一

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パブロを殺せ―史上最悪の麻薬王VSコロンビア、アメリカ特殊部隊パブロを殺せ―史上最悪の麻薬王VSコロンビア、アメリカ特殊部隊
(2002/04)
マーク ボウデン

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ノンフィクション | 2014/04/07(月) 19:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1415冊目 ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて
ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて (新潮新書)ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて (新潮新書)
(2006/03)
松尾 理也

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評価:☆☆☆


 シカゴからサンタモニカを結ぶ、ルート66。南部の、内陸部を結ぶこの国道は8つの州をまたがっている。そこはまた、保守の色彩の強い地域だ。著者は、アメリカの保守とはどのようなものかを知るため、このルート66を辿る。

 アメリカの保守といえば、銃規制に断固反対して進化論を排斥してゴリゴリのキリスト教徒で共和党の支持者、というイメージしか無かった。マイケル・ムーアの『アホでマヌケなアメリカ白人』で描かれる感じの。

 本書を読んでいて、確かにそのイメージはある。学校教育は価値相対的でアメリカの独特さを教えないからとか、進化論を教えるからといった理由で学校へは通わせず、ホームスクールで済ませる人々を見ると薄気味悪い感じしか受けない。

 教会が強い力を持つというのも、アメリカの大統領選のたびに報じられるが、南部は特にその力が強いらしい。宗教は、それを信じる者の内側では団結力を生むので、地方の濃密な人間関係の中で過ごす社会にあっては欠くことのできないものかもしれない。

 しかし、一方でそれは自由のない社会でもある。本書でも"質素さや親密さといった光の部分は、刺激のなさや抑圧的な鬱陶しさといった影と表裏をなしている"と指摘されている通り、自分たちが異端と見なす存在は排除するという寛容性のない社会である。

 銃規制反対にしても同じ匂いがして、彼らとは異なる価値観を持つ身には困惑しか産まない。

 一方で、ブッシュは保守と思っていたが、本書に言わせれば彼はリベラルだ、というのは驚き。リバタリアンは何から何まで国の干渉があってはならないとして国民皆保険制度にまで反対するというのは、突き詰めてしまえばその通りなのかもしれないけれど、これまた共感はできない。しかも、そのくせ妊娠中絶には反対なのだ。それって、自分たちの望むことは国の力を使って他人に押し付けようとしているものではないのか?整合性が気になるところだ。

 狙い通りにアメリカの保守の姿をきちんと紹介してくれているので、彼の国の論理を知るには向いているように思う。もっとも、日本とはかなり異質な国であるという想いを強くするばかりであったのも事実だが……。それでも、知らなければ対処もできないだろうから、こうした本があるのは有難いことだ。大統領選なんかで見られる保守VSリベラルの争いの背景を知る一助になる本だろう。


関連書籍:
アホでマヌケなアメリカ白人アホでマヌケなアメリカ白人
(2002/10)
マイケル ムーア

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ノンフィクション | 2014/04/06(日) 19:53 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1414冊目 ヒトは病気とともに進化した
ヒトは病気とともに進化した (シリーズ認知と文化)ヒトは病気とともに進化した (シリーズ認知と文化)
(2013/12/20)
太田 博樹、長谷川 眞理子 他

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評価:☆☆☆


 病気の中でも、感染症は実に分かり易い。病原体が体内に侵入してめちゃめちゃに増殖し、それを免疫系が抑えこむ。その戦いの過程で発熱や咳があり、勝てば治癒するし、負ければ、その時はもう罹患した人は病気のことなどどうでもよくなっている。

 ところが、病気はそれだけではなく、遺伝病というものがある。例えばフェニルケトン尿症だとか、発病すれば現在のところ治す術のないハンチントン病は、完全にメンデル型の遺伝に従う遺伝子疾患だ。

 進化論では、自然淘汰という概念を教える。それを素朴に信じるならば、こうした不利な遺伝子は淘汰にあって消えていくはずだ。ところが、そうはなっていない。何故だろう?その謎については『迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか』を読んで一気に興味を掻き立てられたものである。本書を手に取ったのも、その時の記憶と編者に長谷川眞理子さんの名前があったから。

 具体的な病気を取り上げて、その遺伝的な影響を語る『迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか』と異なり、本書はどうしてこのような遺伝病がヒトの中に残っているかという背景に切り込んでいる。

 そのために、我々は人類史を紐解かなければならない。アフリカを出たほんの一握りのグループが、アフリカ以外の全ての人類の祖先となったことから、自然淘汰というよりも少数の集団の中で働く遺伝的浮動の影響が強い。人間の遺伝子の変移幅はとても狭く、世界中の人類の多様性は、ランダムに交雑している遺伝集団のたった1万人分しかないらしい。これは驚くほど少ない数値だ。

 (略)この一塩基多型、またはそれと連鎖不平衡にある一塩基多型とBMIとの有意な関連が再現されており、FTO遺伝子多型とBMIとの関連は確立したといえる
(p.80-81)


 とあって、体脂肪を貯めこむかどうかが遺伝子でコントロールされていることが明らかなら、アメリカでデブはセルフコントロールができないからと出世できないのは差別なのじゃないかなぁと思ったり、終章付近で唐突に"古人骨から分かるヒトの病気の歴史"と法人類学が出てきて俄然興味を惹かれたり、『迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか』程ではないがなかなか楽しめた。

 一方で、文章で表現するのはどうやっても限界が有るため、数理学的なところは理解できなかった。特に、中立説は概念としては理解できてもなかなか難しい。もっとも、数式を書かれたら理解できるのかと言われたら困るのではるが。それが分かるようなら、きっともっと楽しめたことだろう。ちょっと残念。



関連書籍:
迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか
(2007/08/25)
シャロン モアレム、ジョナサン プリンス 他

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生物・遺伝・病原体 | 2014/04/05(土) 19:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1413冊目 シャーロック・ホームズ ワトスンの災厄
シャーロック・ホームズ ワトスンの災厄シャーロック・ホームズ ワトスンの災厄
(2003/10)
アン ペリー

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評価:☆☆☆


 純粋にミステリとしての質の高さだけで言うのであれば、きっとホームズよりポアロの方が完成されているだろう。骨相学に参ってしまったドイルがしっかりオカルティックな推理をして、犯人も律儀にホームズの勘違いに付き合ってあげるようなアラを見るとそう思ってしまう。だがしかし、それでも"名探偵"という枕詞に続く固有名詞はポアロでもミス・マープルでも、パーカー・パインでも、ほとんどの途上人物が死んでからようやく犯人を言い当てる金田一(祖父も孫も)でもなく、やっぱりシャーロック・ホームズなのだ。私にとっては。

 クリスティーは、自分の死後にポアロを他人に書かれたくないからと、『カーテン』でポアロを殺してしまったが、ライヘンバッハでホームズを殺し損ねた(母親からまで生き返らせてくれと嘆願されて渋々応じたのは有名)ドイルは、パスティーシュには寛大だったらしい。俳優のジレットから、舞台のシナリオの一環としてホームズを結婚させて良いかとドイルに訪ねたところ、「結婚させようが殺そうが、好きにしてよろしい」と返事したというから凄いものだ。

 そんなわけで、本作はドイル以外の人の手によるホームズ物語である。

 ある日、ワトスンのもとへある女性から手紙が届く。彼女は、アフガニスタンで負傷したワトスンの看護にあたった看護師だった。仲睦まじくなっていた二人は帰国前に逢瀬を重ねるが、実はその時妊娠していたというのだ。養育費を欲しがる彼女の希望にせめてもの誠意を見せようと思うワトスンだったが、彼は絶望のどん底に叩き落されることになる。ある医者から、罹れば確実に死が待つ病気を99%の確率で判定できる試薬を試験的に使ったところ、陽性反応が出てしまったのだ。

 そんなこんなでコンビを解消しようとホームズを訪れたワトソンは、しかしホームズには会えない。代わりに、その晩に開かれる講演会にかならず出るようにというマイクロフトからワトスンに宛てた手紙をハドソン夫人から受け取る。ホームズが居ないため、代理で出席したワトスンは、そこでハレー彗星が衝突する可能性についての公演を聞くのであった。

 一見関係無さそうな話題が一つの共通項で結ばれていることがホームズ兄弟の頭脳で解き明かされる表題作を始めとする短編10作と、評論等のあれこれ3つを集めたもの。

 本家のややくどい冒頭をなぞった書き出しなんかをみると、それだけでニヤリとしてしまうし、ワトスンの婚活について「あれは結婚相手を探すきみの数多い休暇のあいだに起こったに違いない」というホームズの皮肉にもワトスンの複雑な結婚関係(単にストーリー間で矛盾があるだけだが^^;)を想起させてくれて楽しくなる。

 中にはホームズは出てこない話まであって、パスティーシュの範囲の広さも面白い。一方で、作品の出来栄えという点から言えば良い物も有ればお察し下さいなレベルのものもあって、ホームズファンではないのなら敢えて手に取るまでもないかな、というのが正直なところ。それでも、ファンなら楽しめるかも。



関連書籍:
カーテン(クリスティー文庫)カーテン(クリスティー文庫)
(2011/10/07)
アガサ・クリスティー

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推理小説 | 2014/04/04(金) 19:43 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1412冊目 地球は売り物じゃない!―ジャンクフードと闘う農民たち
地球は売り物じゃない!―ジャンクフードと闘う農民たち地球は売り物じゃない!―ジャンクフードと闘う農民たち
(2001/04)
ジョゼ ボヴェ、フランソワ デュフール 他

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評価:☆☆



 "1999年8月12日、農民同盟と市民のデモが「欧州が米国のホルモン肥育牛肉の輸入を禁止したことへの報復として、米国がフランス産のロックフォールチーズに対する制裁関税を課したことへの抗議」として、マクドナルドを「多国籍企業による文化破壊の象徴」に見立てて、ミヨーに建設中だった店舗を破壊"(Wikipediaのジョゼ・ボヴェの項より引用)して逮捕されたことで一躍名を馳せた、ジョゼ・ボヴェとその盟友フランソワ・デュフールへのインタビューをまとめたもの。

 なぜ彼らはマクドナルドの店舗破壊という違法行為に踏み切ったのか?その問いに答えるには、フランスの農業政策やその限界を知らなければならないだろう。

 問題は、本書がインタビュー形式を取っているため、ジョゼらの動機については書かれているとしても、その背景が読者に分かりやすく提示されているわけではないところ。実際、読み始めて暫くしても本書が書かれた背景について理解できなかった。フランス農業を知悉した人なら良いかもしれないが、多分日本の人口の99%位はそんなこと知らないだろうから、そこは翻訳するときに考えて欲しかった。

 また、話題が色々な方向に飛ぶのは、きちんと構成が考えられていたら広い視点を云々と褒められるのだけど、インタビューだととにかくしゃべりまくってやがるなぁと思ってしまうところもやや残念。

 私も、ジャンクフードのあの画一的で何の驚きも感動も無い味には批判的だ。しかし、例えばジャンクフードが地球を破壊する!というような主張を見ると鼻白む。

 遺伝子組み換え作物についても同じで、技術に対して価値中立的な私にすれば、純粋に収量や環境負荷という点でトータル的にメリットが有るなら使えば良いし、無いなら使わなければ良いという私からすれば、なんとしてもダメと言いたげな反対姿勢には共感できない。

 と、色々腐してしまったが、少数の多国籍企業が力を握りすぎることで多くの問題が発生しているという指摘には頷かざるをえない。日本だけではなくフランスでも同じということは、もっと貧しい国でははるかに締め付けが厳しいだろう。

 フランスはヨーロッパを代表する農業国家なので、さぞ農業が強いのだろうと思っていたのだが、補助金じゃぶじゃぶで真の競争力は高くないというのには驚いた。地形的に集約農業ができるだろうから、リソースがきちんと分配されればできるものかと思っていたがそうでもないのか。農業については全くわからないので新たに知識が広がったのは良かった。

 食は文化とも密接な関係がある。集約化だけが優れたあり方ではないし、多様性を失わせるのは問題だ。ただ、多様性をもたせると労働力あたりの収量は下がる。そこをどう折り合いをつけていくかが今後の課題なのであろう。
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ノンフィクション | 2014/04/03(木) 19:41 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1411冊目 盲導犬クイールの一生
盲導犬クイールの一生盲導犬クイールの一生
(2001/04)
石黒 謙吾、秋元 良平 他

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評価:☆☆☆☆


 いやぁ、やっぱり犬は素晴らしい!!

 ゴールデンレトリバーのクイールは、盲導犬となってパートナーが病に倒れるまで2年間働き、その後は盲導犬普及のためのデモンストレーターとして活躍し、12歳で亡くなった犬である。

 本書はそのクイールの一生がどのようなものだったのかを通して、盲導犬とはどのようなものかを伝えてくれる本。

 そうなのではあるが、子犬の頃から晩年まで、多くの写真が載っているため、イヌ好きはその写真にまず目を奪われるだろう。ラブの子犬の表現しようもないほどの可愛さ。特に、まだパピーウォーカーに預けられる前、他の兄弟たちと並んで飼い主を見上げる写真は悶たくなるレベル。危険な本だ。

 トレーニングを積み、パートナーと巡りあうのだが、この人物は元々犬嫌いで、「犬に牽かれるくらいなら死んだほうがましだ」と言い張っていたそうだ。ところが、クイールと共に歩くうちに、「盲導犬はただ道を教えてくれるだけだと思っていましたが、でも違いました。いっしょにいるだけで気持ちを明るくしてれる。友だちなんですね」と意見を180度変えるようになる。

 これが、介助犬の素晴らしいところだろう。群れを守るためには自分のことは犠牲にできるという狼以来引き継いた性格が、人と犬を最高のパートナーにしてくれている。盲導犬は働かされて可哀想という意見もあるが、実際には働くことは好きなようだ。

 働き盛りでパートナーを病で失い、普及協会で働いたあとのクイールを待っていたのは、パピーウォーカーだった。彼らは再びクイールを過ごす道を選んだ。もう老いた犬だ。別れは辛いばかりだろうに、その覚悟には頭がさがる。

 盲導犬の一生と同時に、彼らを育て、支える人々のこともよく伝わってくる本。盲導犬は、日本にはたった850頭しかおらず、希望者に対して全然足りていない。一頭あたり300万ほどかかるという費用も、そもそも教育係の数も全然足りない。国からの助成と募金から資金が出ているということだ。盲導犬の募金がやっていたら積極的に参加することにしよう。

 クイールは、前述のとおり、12歳でその生涯を終えた。盲導犬なので多くの別れを経験しなければならない、人間の都合で色々なことを変えさせられたのは事実だ。しかし、愛情に満ちた生涯だったことは間違いないと写真が語っている。彼らの献身に、人間の側がきちんと報いていくためには、まずは正しい知識を得ることが大切だろう。その点、盲導犬がどのような存在なのかを簡潔に教えてくれる本書は盲導犬理解のための入り口として格好の一冊だ。
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ノンフィクション | 2014/04/02(水) 19:18 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1410冊目 脳に刻まれたモラルの起源――人はなぜ善を求めるのか
脳に刻まれたモラルの起源――人はなぜ善を求めるのか (岩波科学ライブラリー)脳に刻まれたモラルの起源――人はなぜ善を求めるのか (岩波科学ライブラリー)
(2013/06/06)
金井 良太

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評価:☆☆☆


 主な研究テーマは"認知神経科学からのアプローチによる意識研究と、脳科学の現実世界への応用技術"という何やら難しげなことをやっている著者による、より過ごしやすい社会を作るために脳科学が何をできるかというアプローチ。

 性格や能力は、かなり遺伝の影響を受ける。養子に出された双子の研究から、もう明らかにされたことだ。

 であるからには、保守やリベラルといった政治的な好みや、友人との付き合い方、宗教心といったようなことが遺伝で強く規定されているとしても不思議はない。

 本書は、善だとか幸せといった抽象的な概念でありながら重要なことが、脳にしっかり組み込まれているということをMRIを使って示そうとしている意欲的な試みである。

 リベラルと保守とでは、幾つかの質問に関して脳の働く部位のサイズに有為な差があるらしい。脳がモジュール化されている器官であることを考えればそう不思議な話ではないだろう。それが違いを生む原因なのか、違いがあることの結果なのか、そもそも因果関係が存在するのかといった様々な疑問が浮かびはするが、まず入り口としての問題提起であると思えば、興味も湧いてくる。

 "フェイスブックの友人の数と脳の構造との関係を調べたところ、社会的な信号の知覚に関与すると思われる中側頭回と上側頭溝の大きさが、フェイスブック上での友だちが多い人ほど、大きいということがわかった。他にも、扁桃体と嗅内皮質の大小もフェイスブックの友だちの数と相関していた"とあるが、そもそも社交性は遺伝の影響が強いと指摘されていて、であるからにはそれが脳の構造に反映されていてもおかしくない。友人の多さが遺伝であるとしても不思議はないだろう。

 それが脳の機能的な問題であり、働き方が規定されているというのなら、脳科学的に対応することもできるかもしれない。仮にこれが正しいなら、人間関係が上手く行かない人に特定のトレーニングをして脳の特定の機能を強化することで、人が豊かな生活を送る手助けができるようになるかもしれないと思うと面白い。タクシー運転手は空間認知に関する部位が他人より優位に大きいことを考えれば、そうしたトレーニングは必ずしも無駄ではないと思われる。

 脳科学が、より豊かな人生を送るためにどう役に立つか。それを教えてくれるところは面白い。
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医学・脳・精神・心理 | 2014/04/01(火) 19:38 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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