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Author:Skywriter
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BK1書評の鉄人31号。
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1381冊目 エディアカラ紀・カンブリア紀の生物
エディアカラ紀・カンブリア紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))エディアカラ紀・カンブリア紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))
(2013/11/12)
土屋 健

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評価:☆☆☆☆☆


 表紙を飾るアノマロカリスの化石を見てしまったら、もう読まない訳にはいかない。

 地球上に生物が生まれたのが何時なのか。はっきりしたことは分からないが、それは30億年前とも40億年前とも言われる。しかし、その殆どの時代は、多くの人にとって面白く無いものだろう。なにせ、単細胞生物ばかりなのだ。ようやく多細胞生物が現れてくるのが、約6億2000万年前から5億4200万年前のエディアカラ紀である。

 そして、何と言っても面白いのが、エディアカラ紀に続くカンブリア紀。この時代、突如として多様な多細胞生物が一挙に生じたように見える。しかも、それらの生物は、デザインが実に奇抜で、今の生物との連続性を感じさせないものなのだ。碩学スティーブン・ジェイ・グールドは、彼の名を一躍有名にした『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』において、この時代の生物は今の時代の生物とは根底からして違うところがあると主張した。古生物学者でさえそう思ってしまうほど、奇妙な生物群だった。

 例えば、2本の触手で獰猛にあらゆる生物を襲う最大の捕食者アノマロカリス。あるいは、5つの目とゾウの鼻のような奇妙な器官を持つオパビニア。はたまた、背中に大量の刺を生やしたハルキゲニア。世界中の海に広がった三葉虫も、この時代に生まれている。

 これらの生物が、実際にはどのようにして生きていたのか?何をしていたのか?その最新の研究結果がこの一冊に凝縮している。

 かつてグールドが述べたような、カンブリア紀の怪物たちは現生の生物とは関係のないもので、自然界が多様なデザインを実験的に繰り出したものだという考えは、怪物と現生の生物をつなぐ進化のラインが見えてきたことで崩壊した。その点、カンブリア爆発を専門に研究したサイモン・コンウェイ・モリスの『カンブリア紀の怪物たち』の方が正しかったということだ。

 それでも、どうしてカンブリア紀に多彩な生物が生まれたのかという謎は残る。それについては、極めつけに面白く、知的好奇心を刺激してやまない『眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く』が大いに参考になる。この時代、生物は眼を獲得するのだ。眼の誕生がどうして爆発とも形容されるほど急激な生物進化を生んだのか、是非ともこちらを読んでみて欲しい。

 ともあれ、このカンブリア紀は、多細胞生物の世界を方向づけたという点で興味深い。ある生物は眼を得、ある生物は甲冑や刺で重武装し、また別の生き物は逃げる方法を得た。その一つのあり方が、脊椎の誕生だ。不勉強にして知らなかったが、なんと原始的な魚類である無顎類がこの時代に生まれていたという!我々脊椎動物の遥か先祖がこの時代にはしっかり生きていたとは実に面白い!しかも、陸上にも生物が進出していたと聞いて驚きも増すばかり。

 遥か昔のことがこんなにも分かっているということに改めて驚く。生物の多様性と不思議さを実感させてくれる一冊。図版がとても多く、奇妙な生物群がどのような姿だったのかイメージさせてくれるのも嬉しい。古生物ファンの皆様、これは"買い"ですよ!


関連書籍:
オルドビス紀・シルル紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))オルドビス紀・シルル紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))
(2013/11/12)
土屋 健

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眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く
(2006/02/23)
アンドリュー・パーカー

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ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)
(2000/03)
スティーヴン・ジェイ グールド

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カンブリア紀の怪物たち (講談社現代新書)カンブリア紀の怪物たち (講談社現代新書)
(1997/03/20)
モリス.サイモン・コンウェイ

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地球史・古生物・恐竜 | 2014/02/28(金) 19:59 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1380冊目 シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官
シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官
(2013/04/19)
川瀬 七緒

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評価:


 ユングかよ!とツッコミを入れたくなるようなタイトルの、法医昆虫学捜査官シリーズ第二弾。

 前作で、赤堀涼子准教授が難航しかけた事件の解決に大きな影響を与えたため、法医昆虫学の力が認められつつある状況になっていた。そんな中、またもやこの異色の学問が活躍する機会が巡ってきた。つまり、腐敗して大量のウジがわいた死体が発見されたのだ。

 季節は、まだまだ暑さの残る初秋、発見場所はコンテナルーム。そこに全裸の女性の遺体が転がっていた。となると、その状態は想像すらしたくないものである。

 遺体は殺害現場から動かされてきたらしく、遺体の周りに事件を示すような遺留品はない。身元の特定につながるようなものも何もない。だが、その遺体に残された傷跡からは、彼女に対して強い恨みを持った複数の人物が犯人であることを示していた。

 警視庁側でこの犯行を追うのは前作に引き続いての岩楯警部補。そのパートナーとなるのは「だるい」が口癖の月縞刑事である。赤堀を加えたトリオは、どんな手がかりを見つけていくのだろうか?

 まずは、遺体にウジは沸いてもカツオブシムシが居ないという不思議な状況。そして、意外なモノが、思わぬ手がかりを与えてくれる。

 ウンチクが散りばめられているのが良い。例えば、吸血鬼伝説の元になったのは溶血で口や鼻から血が出てくる現象だとか、お茶碗一杯分のウジ虫は約3000匹とか。特に後者は想像しては行けません(笑)で、謎が解けていく楽しみと、ウンチク話を楽しんでいるうちに物語が進んでいくので、楽しく一気に読める。遺体の描かれるシーンが平気でさえ有れば、きっと楽しめるだろう。

 また、法医昆虫学に興味を持たれた方は、本作でも前作でも参考文献のいの一番に挙げられていた『死体につく虫が犯人を告げる』がお勧めです。


 でもね、赤堀センセ、カマキリが積雪量を予想してタマゴを生む高さを変えるというのは、ありゃあ間違いで確定ですよ。
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推理小説 | 2014/02/27(木) 19:46 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1379冊目 147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官
147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官
(2012/07/18)
川瀬 七緒

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評価:☆☆☆


 サブタイトルに燦然と輝く法医昆虫学の文字を見れば『死体につく虫が犯人を告げる』を思い出さずには居られない。ついでに、洋ドラ『BONES』に出てくるイカれた昆虫学者のホッジンズも。となると読まないわけには行かないではないか。

 物語は検死のシーンから始まる。若い女性の死体。死後にガソリンで焼かれた死体からは、彼女が殺された時間すら割り出すことはできなかった。だが、遺体の内部から現れた異様なものが、その謎を解く鍵を握るかもしれなかった。それは、ウジが球状に集まったもの。彼らは、被害者の食道と胃を食い尽くしていた。それがまるで彼らの好物であるかのように。

 いささかショッキングな出だしだ。それが苦手な人は読むのを止めた方がいいだろう。

 もっとも、法医昆虫学というのは、死体につく虫、つまりはウジ虫やその仲間を扱うものだ。である以上、ウジが湧いたりそのウジに寄生するハチが出たり、死肉を食らうカツオブシムシが這いずり廻るようなシーンが出るのは確実だろうが。

 さて、この事件の捜査に、日本で初の試みとして法医昆虫学が導入される。しかも意外なことに、登場するのは赤堀涼子という女性研究者だ。しかもこの人、ウジを固定するために熱湯で殺した後、誤ってこの"ウジ茶"を飲んでしまいそうになるというそそっかしい人物。

 彼女は登場シーンでバッタの群生層化を掴もうとしている。『孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生』みたいではないか。ますます興味がわこうというもの。

 そんな彼女が出した死後からの経過時間には、致命的な矛盾があった。ウジのライフサイクルから割り出した時間は、彼女がまだ確実に生きていた時間だったから。

 なぜこの矛盾が生まれたのか?被害者周辺で起きていた連続放火事件と彼女の死体が焼かれた関連は?おまけに、被害者はどうやらダメ人間と付き合っていたようだ。その彼は事件に絡んでいるのか?

 様々な謎が出てきては、それが上手く本筋につながっていくところは読んでいて面白い。伝統的な警察の捜査と、法医昆虫学の調査が交互に進むことで解決に向けて進んでいくところも。なので、ムシの蠢くシーンが平気でさえあれば、きっと楽しめると思う。

 ただ、どうも表現が唐突な感じがするのが否めなかった。それって文章で表現するんじゃなくて、伏線として出しておくとか登場人物のセリフとか素振りで描くものじゃないか?と何度か思ったものだ。それに女性の喫煙率が高すぎだ。被害者も、被害者が勤めていたクリニックの女医も、事情聴取した水商売の女性も、主人公の奥さんも、法医昆虫学者も、尽くタバコを吸うと言った感じで、2012年統計による女性の喫煙率9%という数値からみると異常に高い。舞台装置として使うのはそれはそれで構わないけど、ちょっと現実味が無いんじゃないかなぁ。

 と、表現面ではまだまだだけど(失礼)、ストーリーは面白い。次作に期待したい。

関連書籍:
死体につく虫が犯人を告げる死体につく虫が犯人を告げる
(2002/07)
マディソン・リー ゴフ

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孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)
(2012/11)
前野 ウルド浩太郎

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推理小説 | 2014/02/26(水) 19:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1378冊目 サイエンスジョーク 笑えたあなたは理系脳
サイエンスジョーク 笑えたあなたは理系脳サイエンスジョーク 笑えたあなたは理系脳
(2013/02/07)
小谷 太郎

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評価:☆☆☆


 ハイゼンベルクは運転しているところを警官に停められた。

 警官が訊いた。「あんた、どんな速さで走っていたかわかってる?」

 ハイゼンベルクは答えた。「いや、わからない。しかし、どこにいたかはわかる」


 ハイゼンベルクが唱えた不確定性原理(ミクロの世界において、位置を知ろうとすれば速度が分からなくなり速度を知ろうとすれば位置が分からなくなる)を知っていないと分らないという、なかなかに敷居の高いジョークだ(笑)

 あるいはこんなジョークもある。

マーフィー版ニュートンの法則

第一法則:静止している物体は、必ずまちがった場所に置かれている。

第二法則:運動している物体は、必ずまちがった方向に向かっている。

第三法則:どんな行為にも、大きさが等しく向きが反対の批判がともなう。


 なるほど、分かるぞ^^

 こんな感じで、科学系のジョークネタを集めているのが本書。笑えるのは理系脳かどうかより、この元ネタになる科学を知っているかどうかだと思うが、知っている人はニヤリとさせられると思う。一方で、全く知らない人はクスリともできないのではないか?というネタが多い。

 ジョークが何をネタにしているのかの解説もあるが、うーん、ジョークの解説ほど寂しい物も無いよね。。。一方で、ジョークから入って科学ネタを拾おうとするには、深みが足りないように思える。

 というわけで、理系ネタをそれなりに知っている人には面白いだろうけど、そうでない人には向かない。というわけで、上記のジョークでニヤリとできた人は手にとって見ては如何だろうか?
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未分類 | 2014/02/24(月) 09:34 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1377冊目 M/世界の、憂鬱な先端
M/世界の、憂鬱な先端 (文春文庫)M/世界の、憂鬱な先端 (文春文庫)
(2003/01)
吉岡 忍

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評価:☆☆☆☆


 子供の頃、親に「知らない人に付いて行っちゃダメだよ」と言われた人は多いだろう。アラフォー世代である私にとっては、親が思い浮かべたのは吉展ちゃん誘拐殺人事件のような身代金目的の誘拐事件だったかもしれない。だが、それよりちょっと後の世代の親がそう言う時、思い浮かべたのは確実にこの男、Mのはずだ。

 1989年7月、幼女を裸にして写真を撮っていたところを父親に取り押さえられた男は、恐るべきことを自供する。それは、東京と埼玉で4人の幼女が次々と行方不明となり、惨殺体で見つかったり、焼かれた骨が自宅に送り届けられたりした異常な犯罪だった。男の名は、宮崎勤。80年代と90年代を画するかのようなこの事件の深層を探ろうと、90年代の10年間を費やした、という著者の集大成とも言えるノンフィクションが本書。

 彼はどう見ても異常者である。4歳から7歳の幼女を、4人も短期間に殺害したこともそうだが、その死体に加えた残虐な仕打ちと、血を飲んだり遺体の一部を喰ったりという異様な関心もそうだ。さらに、遺族に二重三重の苦難を与えようとでもしたかのような、今田勇子名義での犯行声明もまた、そうだ。

 しかし、裁判においては、我々の常識に反する主張が行われた。宮崎勤は正常な人間だとされたのだ。勿論、それは彼を死刑にするための方便である。宮崎の精神鑑定書もまた、検察の主張に沿ったものが出された。そして再鑑定では、更に異なる2つの結論が出された。精神鑑定が科学の仮面を被ったオカルトという面を持つとすべきか、精神鑑定の限界は我々の考えるより遥かに人の本性に迫ることなどできないと諦観すべきか。

 本書は、この3種の鑑定書を何度も何度も読み返し、関係者にインタビューを繰り返すことで、宮崎勤の人生をあぶり出す。究極の問いは、どうしてあのような異常者が生まれたのか、というもの。

 手に障害を抱えていたことが、幼児期からの彼のトラウマだった。家族は機能していなかった。彼を唯一全面的に受け入れていた祖父が亡くなり、彼の精神はタガを失う。その変容が丁寧に描かれているのは、彼を事件へ導いていく流れを知るには良いかもしれない。

 恐ろしいのは、一連の犯行が始まってからだ。そこで行われる事実の連なりは、彼を単なるペドフィリアであるという単純な見方を打ち破る。圧倒的な異常さ。しかし、彼はあの犯行の告白文のように、事件の全体をきちんと理解していたし、それを最大限自分の都合が良いように利用することもできた。責任能力という観点からは、死刑は当然の結論だ。

 著者はこの精神のあり方を、解離性人格障害つまり多重人格であるという鑑定を支持しているようだ。ネズミ人間が現れ、実際に手を下していたなんて供述をそのまま受け取ればそうなるかもしれないが、多重人格なんて所詮は医原病、医師と患者が共同で抱く妄想に過ぎない。だから、彼の異常さに迫ろうとする著者の奮闘は買うが、結論には承服しかねるところもある。

 宮崎勤事件を描いた後に、著者が向かうのは酒鬼薔薇事件。この事件もまた、ひとつの時代を画するようなインパクトを持った事件だった。

 宮崎勤事件と酒鬼薔薇事件を繋ぐ共通した環境を探り、そしてこうした異常な事件は今後も続くという暗澹たる結論に至る。

 しかし、この結論も私の考えとは異なる。確かに、異常な事件は今後も続くはずだ。しかし、それは社会の変容だとか教育の問題というものだけでは済まない問題を内包する。ヒトの存在の根源的なあり方、そして遺伝的な要素も深く絡む問題だ。殺人事件は凶悪化や低年齢化などしていない。昔の事件でも、追いかけてみれば十分に異常で残虐で理解不能だったのだ。昔は経済面の問題があったから事件があっても不思議ではないという思い込みが、現代の事件をより理解不能と思わせているにすぎないだろう。

 そうした観点から、私は著者と結論を同じくしない。しかし、著者の丁寧な取材と、犯罪者を悪として断罪するという正義に酔っていない姿勢、そして流麗な文章には頭がさがる思いだった。知らなかった多くの事実を丁寧にあぶり出し、教えてくれたことには感謝したい。
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ノンフィクション | 2014/02/23(日) 19:28 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1376冊目 生の暴発、死の誘惑―「生きがい」を見失うとき
生の暴発、死の誘惑―「生きがい」を見失うとき (中公新書ラクレ)生の暴発、死の誘惑―「生きがい」を見失うとき (中公新書ラクレ)
(2010/10)
岩波 明

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評価:☆☆☆


 生きていくのは難しい。いや、ただ単に生きていくだけなら、今は人類史上で最も楽な時代と言える。命を賭けた狩りに出かける必要はないし、毎年訪れる冬季の食糧難に悩むこともない。コタツでミカンって最高だよねとか、鍋にはやっぱりビールだよな、なんて言っていれば良い。あとは、その組み合わせを考えるだけだ。

 ところが、食料を手に入れるのが容易になって、自由な時間が増えると、ヒトは無駄なことを考え始める。どう生きるべきかとか本当の自分とはどんなものか。そんな問いに、答えなんかないのだろうけど、それでも世界でたった一人のこの自分がどう生きるかと悩まずに居られない。生きるための諸々の事に追われるのは、ある意味でヒトには幸せな時代だったのかもしれない。

 というわけで、世の中には色々な悩みを抱えた人がいる。本書は、生きづらいこの現代という時代にあって、社会からちょっとはみ出して、そして深く思い悩む人々を描いたノンフィクションである。

 著者は精神科医であるため、中には自分の患者の話もあるし、事件史において顔をだす人物の話もある。社会的には恵まれた立場にあるように見えながら、何のために生きるか深く悩む人物もいれば、アルコール依存もある。無名の人物の生を眺めたかと思えば、フィッツジェラルドとヘミングウェイといった有名人について語られることもある。

 こうした問題に、それは甘えだと一刀両断するのは、単純で小気味の良い感じを受けるかもしれない。だが年間3万人に及ぶ自殺者を出すという今の日本の問題の解決には繋がるまい。それは、自殺するまで苦しんだ人々自身が感じていることだろうから。

 なので、こうした人の弱さを受け止めたうえで、社会として何ができるのかを探っていくのが大切なのだろうと思う。
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未分類 | 2014/02/22(土) 18:27 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1375冊目 嗤う日本の「ナショナリズム」
嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)
(2005/02)
北田 暁大

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評価:☆


 嗤うという言葉には、蔑視が含まれる。その手の嗤いが多いところとして、著者は2チャンネルを挙げる。なんと冒頭で語られるのは"電車男"だ。あのどこか閉鎖的で内輪的でありながら慣れ合いにならない空間を、著者は"内輪的としていながらどこか殺伐としている、殺伐としていながらどこか内輪的"と評している。

 このやや二律背反的な状態を、アイロニーと著者は指摘する。本書はこのアイロニーという切り口で日本社会の色々なことを語ろうとする、意欲的なのか暴挙なのか分からないことに挑む。

 本編に入ってまず取り上げるのが、連合赤軍。左翼運動の退潮を決定づけたあの凄惨な事件は、なぜ起こったのか?個人的には、ゴールを明示しない総括というシステムは、死によってしか逃れ得ないものだったからであり、そこに大塚英志が『「彼女たち」の連合赤軍―サブカルチャーと戦後民主主義』で指摘する女性性との対峙が複雑に絡み合っていたと思う。

 続いて、糸井重里やナンシー関といった、テレビ関係者を取り上げる。勿論、糸井重里は時代の寵児でテレビの内側にあった存在であり、ナンシー関はその外側から痛烈な皮肉を投げかけることを期待されていた人物だ。その立ち位置は全然違う。そうした2人を絡めたのは上手いかもしれないが、問題は私がテレビにはほぼ完全に興味が無いことであろう。

 そうした調子で田中康夫の『なんとなくクリスタル』やお笑いブームや小林よしのりを取り上げるのだが、うーん、興味ないなぁ^^;

 取り上げ方も、如何にも評論と言う感じ。シニフィエとかシニフィアンとか言い出したらもうダメ。表象されるものと表象するものでいいじゃん。哲学は、如何にも小難しそうな単語(それも舶来製なら尚よい)を散りばめて、あたかも自分が高尚なことを言っているように錯覚させるだけでしょ。誰々の言うところのなんちゃらだとか言ったって、そんなものに価値を見出さない人にはそもそもナンセンスなのである。

 興味のある話題は少なく、しかもそれが抽象的な議論に終始しているので、飛ばし読み。そんな日も、ある。
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未分類 | 2014/02/18(火) 19:55 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1374冊目 猫に精神科医は必要か
猫に精神科医は必要か猫に精神科医は必要か
(1996/12)
P. ネヴィル

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評価:☆☆☆☆


 昔、飼っていた兎を猫に殺されて以来、猫が好きではない。言われるまでもなく過度の一般化なのだが、好きじゃないものは好きじゃないのだ。仕方がないのだ。そう。私は断固たる犬派である。もっとも、世界的には兎を捕まえるのは犬の役目なのだが。狡兎死して走狗烹らる、の喩え通り。

 じゃあ何で猫の本を読むかというと、これが故・米原万里さんの絶賛があったから。それに、タイトルも振るっている。猫に精神科医?何を言ってるんだ?と思わせることで、読者に関心を持たせる。鮮やかだ。

 で、結論から言うと、どうやら精神科医は必要なこともある、ということになる。

 本書は、イギリスで動物の行動療法を行う著者が遭遇した様々な猫達を描いたノンフィクション。猫は勝手気ままに生きているように見えて、やはり生物である以上、彼らの行動もまた彼らなりの規範がある。それらの行動規範が飼い主の理解を超えたとき、不幸が起こりうる。

 家中にオシッコを引っ掛けて回る猫もいれば、来客を過度に恐れる猫もいる。あるいは、家族の特定のメンバーをやたらと嫌ったり、布を食べてしまったりする猫もいる。そうした顧客の悩みに対して、どうして猫は問題行動を取るのか、どうすれば平穏な日々を取り戻すことができるかを論じている。

 こう書くと、まるで猫を飼うためのテクニック集のように見えるかもしれないが、面白いのはそれが動物行動学にもとづいているところ。凡百のペットの飼い方辞典みたいなものとは一線を画している。

 語り口がユーモラスなのも良い。飼い猫が夫を避けているという女性からの悩みに対して"たしか"夫を嫌うのはふつうは妻の専売特許のはずというのに笑ってしまった。

 飼い猫の行動に困った飼い主に役立つのは勿論のこと、猫とは縁のない人にも楽しめる。ただ、どうしても形式が読者からの手紙とそれへの回答という流れになっているので、一気に読もうとすると飽きが来るところだろう。なので、項目ごとに分かれているのを良いことに、気が向いたところを適当に拾い読みする方が楽しめると思う。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/02/17(月) 19:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1373冊目 行動経済学―感情に揺れる経済心理
行動経済学―感情に揺れる経済心理 (中公新書)行動経済学―感情に揺れる経済心理 (中公新書)
(2010/02)
依田 高典

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評価:☆☆


 『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』を読んで以来、ちょっと経済学に興味が湧いたのである。もう初手から間違っている気が強くするのではあるが、事実だから仕方ない。

 ともあれ、あの豊富な実例で、人間は目先の利益に弱く合理的とはとても言えない存在であることを徹底して暴いてくれる名著のノリを期待して読んでみたのだが、全然違った。

 経済学は、人間を合理的な存在であるとして扱ってきた。しかし、多くの場合で、とても人間は合理的に振る舞わないことが示されている。だから、感情を組み込んだモデルの確立が必要とされる。それが行動経済学だ。本書は、この行動経済学を支える数理的な側面を解説したもの。

 如何にも真面目な学者が書いたものらしく、ユーモアが感じられないこと、この切り口からはこんな面白い結論が導かれる!という感じを受けないことが残念なところだ。

 感情が合理的な行動を妨げることは実に面白い。もっとも、この場合の合理的というのは、自分の利益を最大化する営みであるので、全員が合理主義であれば社会はもっと殺伐として生きづらいものになっていたに違いない。ということは、恐らく合理性を阻む進化心理学的な要因があったのではなかろうか、などと考えながら読んだ。
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未分類 | 2014/02/16(日) 23:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1372冊目 錯視図鑑 ~脳がだまされる錯覚の世界~
錯視図鑑 ~脳がだまされる錯覚の世界~錯視図鑑 ~脳がだまされる錯覚の世界~
(2012/07/13)
杉原 厚吉

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評価:☆☆☆☆☆


 錯視が好きだ。子供の頃、母が見せてくれたエッシャーの騙し絵の絵本がずっと心に残っている。

 脳は、決して世界をあるがままに見ているだけの存在ではない。物が○○の状態で見えるということは、本当の形は☓☓であるはずだ、という解釈をしてくれていることが如実に分かる。錯視は視覚システムの欠陥ではない。限りある情報から、可能な限り世界をきちんと認識しようとする脳の奮闘を示すものだ。

 そんな錯視好きにとって、この本はたまらない一冊。まず、図鑑を名乗るだけのことはあって、図版が多い!そして、有名ドコロの錯視が揃っている!もうこれだけで読む価値有り!!

 直線が歪んで見えるカフェウォール錯視、平行線が傾いて見えるツェルナー錯視、同じ大きさのものが違う大きさに見えるジャストロー錯視(鉄道模型のカーブ部分を並べて手前と奥に置くと、手前側が大きく見える)や回廊錯視(回廊の手前と奥に同じ大きさのものを置くと手前側が大きく見える)、同じ長さの平行線が違う長さに見えるミュラー・リヤー錯視、他にも同じ色が違う色に見えたり、白地が隣の色を拾って淡く色付けされたように見えたりする色彩の錯視エトセトラエトセトラ。

 もう、見ているだけでも楽しい。

 ところが、更におまけがあるのですよ。それはなんと、騙し絵の立体化!あのエッシャーのどこまでも登れる階段や、ペンローズの三角形が立体化されているのは素敵だ。勿論、あれはどこかに騙しが無ければ立体化はできない。しかし、騙しがどこにあるか分かっていても、それを特定の角度から見るとやっぱり騙し絵になるこの不思議。うん、面白いぞ!

 他にも滑る方向が反対の不思議な滑り台や不可解な立体が沢山あって、見れば見るほど楽しくなる。そして、その錯視がどうして生じるかの解説も丁寧で、読み応えもある。錯視好きの皆様にはお勧めしたい。

 ネット上では北岡明佳の錯視のページがお勧めです。ここの、"ヘビの回転"は見る度に嬉しくなってしまう。
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ノンフィクション | 2014/02/15(土) 19:34 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1371冊目 「最高の授業」を、 世界の果てまで届けよう
「最高の授業」を、 世界の果てまで届けよう「最高の授業」を、 世界の果てまで届けよう
(2013/06/11)
税所篤快

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評価:☆☆☆


 e-Educationという組織をご存知だろうか?発展途上国の、勉強したくても先生が居ないという致命的な欠点を持つ地域で、DVDを使ったe-learningを使った教育支援を行うNGOだ。

 例えば、バングラデシュでは4万人の教師が足りない、という。教師が居ないとは、日本では信じられない話だ。しかし、それが多くの地域では現実であり、どんな優れた素質を持つ生徒であっても教育にアクセスするチャンスすら無いままだ。それは発展途上国の、とりわけ農村部であり、特に教育が高給をもたらす仕事と直結するうな社会にあっては、階級を固定化させるような働きすらしている。

 e-learningは、そうした教育格差を短期間で埋めるための唯一の手段であろう。なにせ、DVDであれば視聴機さえ有れば、そこが教室になる。教師は、極端な話をすれば各教科ごとに優れた1人が居れば良い。

 本書は、そんなe-Educationの代表を務める著者が、その立ち上げから現在に至るまでを振り返ったものだ。

 まず、ワタミのオーナーから支援を打ち切られるという、著者にとって絶体絶命のピンチから話は始まる。おいおい、ワタミは途上国のことよりもまず自分のところの搾取を止めておけよと言いたくなるのではあるが。そこから時を遡り、落ちこぼれだった高校時代(親近感が湧くなぁ)、一念発起して勉強し(こっちには親近感が沸かない^^;)、早稲田大学に入学したは良いが目標が無いまま漫然とした時を過ごした時代を経て、NGOに身を投じる流れが語られる。

 正直、著者の人間性に興味があるわけではないので、私にはちょっと冗長ではあった。

 それにしても、面白い営みだ、先にも書いた通り、途上国の教育格差は本当に大きい。前途有望な若者は、一族が資金を出し合って大学に送り出すということもあるそうだ。まるで三国志の時代のように感じる(例えば劉備は生家が貧乏だったが叔父の援助を受けて盧植に師事している。もっとも、ろくに勉強しなかったらしいが)。

 問題は、e-learningを届けようとしても、それが商売にはならないところ。なにせ、生徒はその教育費すら払えないことが多いのだ。

 著者の目立ちたがりな性分が気に障るところはあるが、それでもこの優れた方策を、どうにかして世界の隅々まで届けようとする姿は良いと思う。自己顕示欲だろうとなんだろうと、その行為は間違いなく発展途上国に進化をもたらす。

 高い教育を受けた人が多いことは、技術に溢れた今の世界において、国や地域を発展させるのに必須のことであろう。それを効果的に行う彼らの営みが成功するように祈りたい。そのためにも、まずは彼らが資金面での安定を目指すのは悪いことではないと思う。残念なことに、そこについての記述は無かった。活動を継続して行うためにも、そこにもっと注力すべきであろうと思われた。
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ノンフィクション | 2014/02/14(金) 21:44 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1370冊目 奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」
奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」奇跡の生還へ導く人―極限状況の「サードマン現象」
(2010/09)
ジョン ガイガー

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評価:☆☆☆☆


 南極横断を目指したイギリスのシャクルトン隊は、その大きな野望は挫折を余儀なくされた。分厚い氷によって、乗船は南極大陸に辿り着く前に破壊されてしまったのだ。無線で救助の飛行機を呼べるような時代ではない。最寄りの陸地は遥かに遠く、彼らにあるのは救命ボートだけ。普通に考えれば、彼らの命運は尽きたはずだ。彼の名を伝説にしたのは、この窮地から全員を生還させたことだ。

 南極大陸周辺の荒れ狂う海をボートで渡り、無人島に着いたシャクルトンは、他のメンバー2名と更に救援を求めるために海に乗り出す。だが、ようやく辿り着いた島は、港とシャクルトン達の漂着したところを2000メートル級の山が画していた。そのため、彼らは山を超え、決死の旅を余儀なくされた。

 その最後の道中、シャクルトンには4人目のメンバーが感じられてならなかったという。

 不思議な経験をしたのはシャクルトン1人ではない。911で貿易センタービル南棟84階から生還したディフランチェスコは何者かの声に導かれるままに炎に包まれた階段を3階分駆け下りた。彼が脱出した直後にビルは崩壊したという。

 ケイブダイビングで便りの命綱を見失った女性が、ボートで海を彷徨い九死に一生を得た冒険家が、高山でパートナーを失いながらも生還したクライマーが、同じような経験をしている。まるで自分を見守り、時には貴重な助言までしてくれるような存在を感じる、という。有名どころでは、シャクルトンの他に大西洋無着陸単独横断飛行に成功したチャールズ・リンドバーグもそうだった。

 このように、極限状態において居るはずのない他者を知覚することを"サードマン現象"と呼ぶ。本書は、このサードマン現象について広くまとめたものだ。

 本書を読むと、驚くほど多くの人がサードマン現象を体験していることがわかる。サードマンの助言を受け入れることで奇跡の生還を遂げた事例からは、あたかも天使のような超自然的な存在が人の命を救ったと感じられてしまうほどだ。

 最も、サードマンの助言を受け入れて死んでしまった人の話は残らないので、論理的な話ではないが。

 特筆すべきは豊富な実例だ。海で、陸で、空で、宇宙で、極限状態に置かれた人はサードマンを感じる。それは、恐らく人の脳に深く刻まれた現象なのだろう。それほどまでに脳は孤独を避けるようにできているという話かもしれない。実際、本書で紹介されているサードマン体験者の中には、自分の体験が脳の生み出したものだと確信している人も居る、という。

 安易にオカルトに流れていないのは素晴らしい。守護天使やら祖先の霊やらに原因を求めるのは簡単だろうが、それでは説得力に欠ける。著者は様々な事例を元にサードマン現象を説明しようとする。その冷静な姿勢には好感が持てる。極限状態においてどのようなことが起こるのか、その不思議な世界に迫ったノンフィクション。極地探検等のノンフィクションが好きな方には是非お勧めしたい。
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ノンフィクション | 2014/02/12(水) 19:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1369冊目 科学捜査の事件簿―証拠物件が語る犯罪の真相
科学捜査の事件簿―証拠物件が語る犯罪の真相 (中公新書)科学捜査の事件簿―証拠物件が語る犯罪の真相 (中公新書)
(2001/12)
瀬田 季茂

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評価:☆☆☆☆


 基本的にテレビは見ないのだが、映像作品を見るなら科学捜査モノが好きだ。それも、1時間くらいで終わるのが良い(読書時間が削られるからね)。そして、主人公が美人であればなお良い。そんなわけで遺骨から犯人を突き止めようとする法人類学者が活躍する『Bones』はお気に入り。

 本書は科学捜査の歴史を扱ったノンフィクション。科学警察研究所 法科学第一部長、科学警察研究所 副所長、法科学研修所長を歴任されたとのことで、その知識の深さと広さはこうした本を書くにはうってつけだ。

 まずは、フランスでユダヤ人差別を背景にして起こったドレフュス事件で注目された筆跡鑑定。社会を二分する論争となった事件となったが、ドレフュス大尉の冤罪を生んだのは科学的な正しさよりも権威を重大視する姿勢があった。ともすれば、きちんと証拠を追いかけるより論者に注目しがちなのはどこも変わらない。

 続いて、ルーヴル美術館から忽然と消え失せたモナリザ失踪事件と指紋鑑定。これも面白いエピソードだ。特に、研究者が自らの権威に拘る余りに指紋鑑定に失敗しているところが。だが、失敗をバネに、そしてコンピューターによる検索を強い味方に、指紋鑑定が強力な武器になる。

 線条痕が揺るがぬ証拠として認められるようになるまでの歴史ではかのアル・カポネが登場するし、法人類学ではスーパーインポーズ法でバッハやモーツァルトの復顔が取り上げられる。そして、太平洋の単独無着陸での横断を史上初めて成し遂げたチャールズ・リンドバーグの愛児が誘拐、殺害された事件の鑑定の実態も。

 科学鑑定の黎明期からエピソードを交えて追いかけることで、当初は大した力を持っていると思われなかったこの技術が、どんどん力を得ていることが分かる。なにせ、今では犯罪捜査において欠くべからざる力となっているのだ。その技術の精緻さ、それを支える科学も面白いし、技術が社会に受け入れられていく進み方にも驚かされる一冊。

 最終章では毒物や生物兵器にも触れているので、犯罪捜査を広く論じていると言える。ノンフィクション読みは勿論、ミステリファンもきっと楽しめるだろう。
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ノンフィクション | 2014/02/11(火) 19:11 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1368冊目 アリたちとの大冒険: 愛しのスーパーアリを追い求めて
アリたちとの大冒険: 愛しのスーパーアリを追い求めてアリたちとの大冒険: 愛しのスーパーアリを追い求めて
(2013/12/15)
マーク・W・モフェット

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評価:☆☆☆☆


 この本も、掲示板でUHIさんにお薦めいただいた本。その前にコメント頂いた『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』はその前から知っていたが、こちらは存在を知らなかったので、きっかけを与えてくださったことに感謝です。

 さて、本書は"昆虫学会のインディ・ジョーンズ"と呼ばれることもあるらしいアリ学者が著した、研究対象への深い関心が詰め込まれた一冊である。amazonの紹介を引用すると、"本書は,いま世界で最も注目を集めている6つのアリが勢揃いする科学探検ルポルタージュである"ということであり、アリに興味がある人は読んでみなければ!な一冊だ。どれだけニッチなんだ(笑)

 手にとって驚いたのは、これが縦も横も高さも大きいこと。ページを開くと、1ページ左右2段組で文章がびっちり。この幅で1段組だったら読むのが大変だろうけど。なので、300ページ弱という数から受ける印象より、遥かに情報が詰め込まれている感じだ。だが、そんなものはどうでも良い。真に驚くべきは、収められた写真の豪華さ。時には見開き2ページになる写真は圧倒的な迫力を誇る。しかも、フルカラー。ミクロの世界が突然目の前に現出したかのような驚きがある。

 取り上げられているアリは、略奪アリ(ヨコヅナアリ)、軍隊アリ(サスライアリ)、ツムギアリ、アマゾンアリ(サムライアリ)、ハキリアリ、アルゼンチンアリの6種がメイン。彼らと、彼らのライバルあるいは被捕食者となるアリの話がてんこ盛りだ。

 サスライアリは、ほとんどのアリが仲間の通った道しか通らないが、たまに列の先頭にはみ出てしまったアリがいると、そこにフェロモンの道が伸びるのでアリの進む道となる、というのは面白い。スティーブン・ジェイ・グールドの言うところのランダム・ウォークが整然とした列をつくるように見える、という話のようだ。

 他のアリのマユをさらって来て、生まれたアリを奴隷にしてしまうサムライアリ(日本人としてはその名付けにはちょっと如何なものかという気もする^^;)の存在は知っていたが、彼らがやるのは奴隷狩りだけだというのは知らなかった。彼らは食料の確保すらできないという。

 劣勢になると自爆して体から噴出する高粘度の液体を相手に浴びせかけ、自分の命と引き換えに敵を殺してしまう自爆アリに、毎晩巣の外に出たアリが出入口を塞いでしまう(外に出たアリは朝までに死んでしまう)ヌスビトアリなんて生き物が居るとは不勉強にして知らなかった。

 生物の不思議は想像を絶している。まして、それが社会性を持った生物ともなると、不思議が詰め込まれていて面白かった。知的好奇心を刺激してやまない一冊。昆虫が平気な方は、きっと楽しめると思う。



 ちなみに、本書を検索しようと思って"アリ 冒険"のキーワードを放り込んだらamazonがトップで返してくれたのはcos1078ジョジョの奇妙な冒険 空条承太郎 コスプレ衣装(女性L)であった。なぜだ(笑)
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生物・遺伝・病原体 | 2014/02/10(月) 19:36 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1367冊目 文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子
文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子 (NHKブックス No.1183)文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子 (NHKブックス No.1183)
(2011/08/26)
酒井 伸雄

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評価:☆☆☆☆


 ブクレコの、Masashi KAWADAさんのレビューを拝見して手に取った本。

 植物は、文明を変える力を持っている。例えば、新大陸由来のものを食卓から追放してみよう。ジャガイモもトマトもトウモロコシもカボチャもチョコレートも唐辛子も無くなってしまう。大ダメージだ。え?和食党だから余りダメージはないって?いやいや、それがあるのです。我々が安価に手に入れることができる肉類は、トウモロコシという栄養に富み、圧倒的な収穫量を誇る穀類が無ければ存在しない。肉は滅多に食べることができないご馳走となるだろう。

 本書は、サブタイトルにある通り、新大陸由来の植物のうち、我々の生活に馴染み深い6種を取り上げ、どれがどれほど深く生活に結びついているかを解き明かしている。その6種とは、ジャガイモ、ゴム、チョコレート、唐辛子、タバコ、トウモロコシである。

 まず、選び方が上手い。ヨーロッパの発展を支えたジャガイモ、自動車文明を支えるゴム、お菓子の王様チョコレート、南米由来の香辛料唐辛子、4大嗜好品の1つタバコ、そして前述の通り肉食文化における縁の下の力持ちトウモロコシ。文明を変えたと名乗るのに相応しいバランス感覚に脱帽だ。

 次に、これらの植物がどれほど歴史と文明を変えてきたか、それが実に分かりやすく描かれているのが良い。もう一つ面白いのが、ジャガイモも唐辛子も、はじめはヨーロッパに受け入れられなかったところ。ジャガイモは悪魔の食べ物と忌み嫌われた。その広まりには、為政者の人間心理を見透かした策謀である、"昼間は兵士が厳重に畑を見張り、夜はわざと兵士を引き上げさせ、人々にジャガイモが価値あるものだと信じこませる大作戦"が一役買うといったエピソードがある。

 そして、ゴム。メソポタミアで生まれた車輪はあっと言う間にユーラシアを席巻した。なんと、当時の戦車はユーラシアの東西でほとんど変わらないという。その恐るべき力が分かろう。しかし、当時の車輪には、クッション材となるゴムが無かった。地面の凹凸をそのまま拾う乗り物は、さぞ乗り心地が悪かっただろう。ゴムタイヤを履いた自動車の誕生によって、町から馬車は追放された。お陰で、我々は毎日馬の糞の匂いに悩まされずに都市生活を送れるのだ。

 と、こうやって見ただけでも植物が文明にも文化にも結びついていることが分かろうというもの。しかも、語り口は平易で、歴史的に興味深いエピソードを織り込んでいるため、読み物として実に面白い。

 個人的には綿花を取り上げても良いかなと思ったが、恐らくそれは工業品としてゴムと被るから選択されなかったのだろう。新大陸に限らないとなれば他にも面白そうなものは沢山ありそうだ。ぱっと思いつくだけでも、茶、砂糖、香辛料、コーヒー、米、小麦、タマネギ、桑等々が挙げられる。物言わぬ植物もまた、興味深い存在だ。この手の本があったら、また読んでみよう。
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その他歴史 | 2014/02/06(木) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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1366冊目 アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン
アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン (講談社文庫)アジア未知動物紀行 ベトナム・奄美・アフガニスタン (講談社文庫)
(2013/09/13)
高野 秀行

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評価:☆☆☆☆


 旅の準備は入念で綿密、出発前には現地の共通語を覚えてからで、関係者に自ら話しを聞いて回るという冷静かつ理性的なものでありながら、その目的たるや未知動物(あるいは怪獣)の捜索、という一般人とちょっとズレた感覚の持ち主、高野秀行さん。文章は情熱に満ちながらも冷静で、その真面目さが不思議な可笑しさを醸し出すのが魅力である。

 本書もやっぱり未知動物を探し求める旅。ベトナムでは猿人"フイハイ"、奄美(ええ、日本の奄美です)の妖怪"ケンモン"、そしてアフタにスタンの凶獣"ペシャクパラング"を求める珍道中が繰り広げられる!

 え?そんなの聞いたこともないって?ネッシーだとかチュパカブラだとかイエティみたいなメジャーどころをどうして狙わないのかって?そこには、著者なりの緻密な計算がある。これらの有名なUMAは、その決定的な証拠を掴もうと膨大な人がチャンスを狙っている。そこに著者が加わっても、自分が発見者になれる可能性は少ない。だから、人が行かないところのUMAを探すのだ。

 このちょっと分らない思考回路が素敵です。

 予定調和というかなんというか、UMAを捕らえることができないのは想像できる(捕まえていたらニュースになっているからね)。想像ができないのはその旅の道中だ。様々なトラブルに遭ったり、重要証人には会えずじまいになったりと、他人ごとなら笑えるという話がひたすら続く。素晴らしい。

 UMAが仮に存在しないとしても、それらがまことしやかに語られるからにはその背景に何かがあるはずだ。著者がユニークなのは、UMAを見つけるために努力を重ねながら、こうした背景を知るための行動もきちんとやっているようにみえるところ。転んでもただでは起きないというべきか。

 というわけで、珍道中を笑っているうちに気がついたら文化について考えているという謎な本。高野節は健在で、ファンはきっと楽しめると思う。
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ノンフィクション | 2014/02/04(火) 19:54 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1365冊目 科学の不思議
科学の不思議科学の不思議
(2012/10/04)
ジャン・アンリ ファーブル

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評価:☆☆☆☆☆


 半分、子供たちのゲーム専用機になりつつある私のタブレットASUS ME173ではあるが、子供たちを寝かしつけるときに貴重な道具としても役に立っている。電気を消した部屋で、子供たちが寝付くまで、これで電子書籍を読むのだ。で、amazonのキンドルストアで本を探していたら、無料のこの本が目に止まった。科学の、それも不思議とあらば読まないわけには行かない。

 まずは著者。ジャン・アンリ・ファーブルと言えば、ファーブル昆虫記のあの人ではありませんか。そして翻訳者の名前にビックリ。伊藤野枝といえば、関東大震災直後、無政府主義者の大杉栄と共に甘粕憲兵大尉に殺害された(諸説はあるが)人物ではないか。大杉栄が日本で初めてファーブル昆虫記を翻訳したことを考えると、その関係で訳者はこの本を知ったのだろうと、妄想を逞しくしてしまう。

 本書は版権切れによってネット上の電子図書館青空文庫にあったもの。同じ青空文庫から、無料で大量の本がキンドルストアにあるので、昔の文学作品なんかは幾らでも入手可能なところは物凄いメリットである。

 肝心の内容は、博識極まりないポオル叔父さんが、子供たちに自然界の不思議を語るというもの。ファーブルらしく、まずは虫の話から物語は始まる。何の虫かというと、蟻だ。彼らが実に働き者で、彼らは雌牛を飼って乳搾りをする、と子供たちに話す。勿論、それは比喩だ。読者には分かるだろうが、こうやって子供の関心を引きつつ、アブラムシと蟻との共生関係を教える。

 年輪から木の樹齢を知ることができることや、動物は何歳まで生きるか、金属とはどのようなものか、毛糸や亜麻や麻の作り方、紙と印刷術、絹、蜘蛛の糸、毒虫や毒キノコや毒蛇や毒サソリ、雷、等々と、本当に広い分野の話が出てくる。こんな博識な人が周りにいたら、きっと子供たちは幸せであろう。身近な不思議を化学で説明し、知を信頼させてくれるのだから。こんな話をしたとして、子供たちが喜ぶかどうかは疑問ではあるが^^;

 神が世界を上手く作り上げたという旨の話が方方で顔を出すのは嬉しくないが、それを除けば、知への深い信頼が根っこにある。世界がどのようにできているか、どうしてこのような姿をしているのか。それを解き明かすのは科学しかない。

 不思議を解き明かす科学の偉大な力を教えてくれる良書。旧仮名使いで読みづらい点はあるが、これが無料で読めるというのは有難い。電子書籍を読める環境にある方は、騙されたと思って読んでみてください。
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その他科学 | 2014/02/03(月) 19:47 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1364冊目 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む
空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫)空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫)
(2012/09/20)
角幡 唯介

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評価:☆☆☆☆☆


 19世紀まで行われていた探検は、もう20世紀にはほぼ時代遅れになっていた。地図の空白を埋める。それは、列強による植民地支配とも密接に結びつくものだった。しかし、命がけで秘境や極地に赴いた探検家たちは、次々と人跡未踏の秘境(と言っても、その実は"白人が行ったことがない場所"だったりしたのだが)を既知の場所へと変えていった。南極点や北極点、難攻不落のエベレスト等々。

 もう、人類が到達していない場所は、地上にはほとんど存在しないと言って過言ではない。そんな時代の探検家は、何を目指せばいいのだろう。そんなことを、冒険とは縁もゆかりも無い私は勝手に思っていたのだが、それは探検家にはより切実な悩みだったようだ。なにせ、もう世界で一番☓☓なところ、というのはみんな制覇されている。それどころか、6大陸の最高峰を全て制覇したとかなんとか、そんな人がぞろぞろ居るのだ。

 だが、そんな時代であっても、探検家を惹きつける、つまり探検に赴く価値のある空白があった。世界最大の峡谷、チベットのツアンポー峡谷がそれだ。勿論、ツアンポー峡谷にも多くの探検家が入っていた。そこへ入り込んだ人からは、巨大な滝があるという証言も出れば、小さな滝しか無いという証言もある。滝は、どうやら無さそうではある。しかし、まだ分らない。過去、名だたる探検家たちの挑戦を尽く退けてきた、5マイルに渡る空白の地が残っていたのだ。そこには、発見されるのを待つばかりの巨大な滝があるのかもしれない。

 著者はそう考えた。そして、無謀としか思えないが、このツアンポー峡谷を単独制覇すべく、準備を始める。そして、2002~2003年と、2009年にツアンポーへ向かう。本書はその壮絶な旅の記録である。

 第一部が2002~2003年にかけての冒険行で、ここで著者自身に冒険に加えてツアンポーの探検史が描かれている。構成が上手く、過去の物語と自分の挑戦をリンクさせることで、どれほど探検が困難なものなのかを教えてくれている。特に、1993年にNHK隊のカヌーイストだった武井義隆さんが遭難し、お亡くなりになった事故についてはご遺族やNHK隊でのパートナーの方にも綿密な聞き取りをされていて、詳細を知るにはうってつけだ。愛惜に満ちた文章からは、同じ探検仲間への敬意が感じ取れる。そこで語られる事故の模様は、私の胸に深く突き刺さるものがあった。

 第二部は、ツアンポーへの立ち入りを中国が制限してからのもの。その事実が、冒険に暗い影を落とす。よく生き残ったなと思ってしまうほど、切迫した状況へと追い詰められていく様を、どこか達観した感じで書いているのが凄い。冒険で死ぬ人が出るのはこういうことなんだと思わされた。

 それにしても、どうしてこんな冒険ができるのだろう。掛かっているのは自分の命だ。それで得られるものは?ほぼ、無い。ほぼ人が踏み入れたことの無いようなところでも、グーグルアースで覗けてしまうような時代には、特に。異国へ進入するためのルートを探るわけでもなく、金銀財宝の眠る秘境に至るのでもない。ただ地図の空白を埋めるために、何週間にも及ぶ不快な旅をする理由はなんだろう?

 究極的には、それが冒険だから、なのだろう。著者は、命がけでなければ冒険ではないという旨のことを語る。それが、多くの人の命を奪っていった。南極点到達を目指し、それを果たしながら帰路で命を失ったスコット隊も、「そこに山があるから」のセリフを後世に残し、エベレストに消えたマロリーも。そして、それが冒険を外側から見る私のような読者にも時に感動をもたらすのだ。なので、今後も冒険モノのノンフィクションは読むのだろうなぁ。
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ノンフィクション | 2014/02/02(日) 19:38 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1363冊目 マグマ科学への招待
マグマ科学への招待 (ポピュラー・サイエンス)マグマ科学への招待 (ポピュラー・サイエンス)
(2001/07)
谷口 宏充

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評価:☆☆☆


 火山で噴き出す溶岩。あれ、不思議ですよね。ドロドロと流れだすタイプのものもあれば、粘性が高く、ドームみたいに盛り上がって重力に負け崩壊するというタイプもある。映像を見るだけで、明らかに異なるタイプがあるのは不思議だ。

 明らかに化学的な組成の違いがあることを伺わせる。地球は核、マントル、地表といったように幾つもの層が積み重なった構造をしているので、マグマは地表に一番近いところにある層として、均一あるいはかなり均一な組成をしていても不思議はないだろうに。

 そんな疑問を持つ方に朗報です。マグマの化学組成について、かなり踏み込んでいるのが本書。

 溶岩のあの動きが、溶岩を構成する酸化ケイ素の結晶構造が崩れ、4員環、5員環(!)、6員環と形を変えることで生み出されるなんて、実に意外である。特に、5員環。不安定とのことで、さもありなんと思わされるが、こうやって形を変えていくというのが素敵だ。

 そして、そこに金属原子が入り込むと、また性質が変わるらしい。

 こうした事実を結晶構造から説明しているので、一般向けとは言い難い。しかし、地表に流れ出て溶岩となったとしても、液状の溶岩を扱うには高温という難しさがあるし、まして高温高圧下におけるマグマの挙動を知るのは相当の困難を伴うだろうに、分かってきたことが実に多いことには驚かされた。

 偏に私の知識不足により、十分に理解した・楽しめたわけではないのが残念。地学関係の知識をもっと得たところで、また類書に挑んでみたい。
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その他科学 | 2014/02/01(土) 19:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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