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Author:Skywriter
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BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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1362冊目 スズメ――つかず・はなれず・二千年
スズメ――つかず・はなれず・二千年 (岩波科学ライブラリー〈生きもの〉)スズメ――つかず・はなれず・二千年 (岩波科学ライブラリー〈生きもの〉)
(2013/10/05)
三上 修

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評価:☆☆☆☆


 ブクレコのレビューで知った本。そういえば、身近な鳥であるカラスについて、『カラスはどれほど賢いか―都市鳥の適応戦略』で面白い発見が色々とあったので、スズメも面白そうだと思った次第である。

 そう思って読んでみたところ、120ページに満たない薄さでボリュームとしてはかなり少ないが、それでもスズメを巡る様々な話題を広く集めていて、軽い読み物あるいはスズメに関する入門書として向いているのではないかと感じた。

 恐竜から鳥への進化から話が始まる。うん、壮大で好みだ。で、長い進化を経て、スズメ属は26種いるらしい。ヨーロッパに多いのはイエスズメ、日本に多いのはスズメ、そしてヨーロッパからアジアにかけての広い範囲でこの2種のスズメが繁殖しているらしい。

 田んぼや町中にいるイメージのスズメだが、森林にもニュウナイスズメというのが居る。日本に居るのはこの2種だが、本書の主役はこのうちのスズメである。なにせ、ニュウナイスズメは森に住むので、めったにお目にかかることが無い、というのだ。

 スズメは何を食べるのか?そして、スズメを食べる者は何か?どうしてこんなにも人間の身近に居るのか?子育てはどうする?巣はどこに構える?何羽くらい居るの?

 穀物を食べるので、農家には害鳥として嫌われることもあるが、子育ての時には虫もエサにするという。そのため、スズメを駆除してしまうと天敵がいなくなってしまうがために害虫が大発生し、トータルのダメージとしてはより酷いこともあるそうだ。食物連鎖は複雑で、思った通りに自然をコントロールすることはできないものだ。

 上記のスズメを取り巻く話題に加えて、スズメと日本人の関係をも語っているのも良い。舌切雀もあれば、小林一茶の読んだ"雀の子そこのけそこのけお馬が通る"の句に見えるスズメへの温かい視線を感じることもある。あるいは、欣喜雀躍や門前雀羅、雀の涙といった、スズメが含まれる言葉も紹介してくれているので、本当にスズメは身近な鳥なのだと思う。

 そのスズメ、かなり数を減らしているとのことだ。周りで考えても、子供の頃はそこら中に畑や田んぼがあったのに、今やほとんどが住宅に姿を変えてしまった。スズメには過ごしにくい環境であろう。確かに、自分の周りでは以前よりスズメを見なくなった。それはそれで寂しいことだ。

 そんな最も身近な鳥、スズメについて興味を持たれた方は手にとって見ては如何だろうか?


関連書籍:
カラスはどれほど賢いか―都市鳥の適応戦略 (中公文庫)カラスはどれほど賢いか―都市鳥の適応戦略 (中公文庫)
(2003/06)
唐沢 孝一

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生物・遺伝・病原体 | 2014/01/31(金) 19:26 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1361冊目 超ヤバい経済学
超ヤバい経済学超ヤバい経済学
(2010/09/23)
スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー 他

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評価:☆☆☆☆


 インセンティブという切り口から、ヤクの売人がどうしてママと一緒に暮らしているのかだとか、相撲の取り組みには八百長があるといった意外な結論を(それも面白おかしい口調で)導き出し、一世を風靡した『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』の続編。

 今作でも、読者の興味を惹く絶妙な語り口と意外な結論という組み合わせは健在です。まず、表紙を捲ると、カバーの裏にはこんな文句が目に飛び込んでくる。

 "ゾウとサメ、どっちが怖い?"、"酔っ払って歩くのと酔っ払い運転、どっちが危険?"、"ポン引きと不動屋さん、どっちが偉い?"、"お医者さんはちゃんと手を洗ってるの?"、"サッカー選手になるには何月に生まれると有利?"、"臓器移植問題は思いやりで解決する?"、"カンガルーを食べると地球は救われるの?"、"性別を変えたらお給料は上がるの?"

 一体何ごと?と思ってしまったら、もう読者の負けだ。そのままページを捲っていくと、第一章のサブタイトルはこれ。"立ちんぼやってる売春婦、デパートのサンタとどうしておんなじ?"

 おいおい、同じじゃないだろ、とツッコミを入れながら読んでいくと、あら不思議。確かに同じだ!少なくとも、ある重要な側面においては。

 そんな調子で、自爆テロを行うなら生命保険に入っておくべきであることが分かるし(やる予定はないけど^^;)、人間の利他主義と身勝手さを知ることができるし、思いもかけないほど大きな問題が安価に解決可能かもしれないことも理解できるし、アル・ゴアの不都合な真実(ヤツは他人に節制を呼びかけるくせに超豪邸に住んで自家用ジェットを乗り回すクソッタレだ)はピナトゥボ山の噴火と同じやり方で解決できるかも知れないと希望を抱くこともできる。

 突拍子もない話題が並んでいるように見えるが、その背後にはきちんとした科学がある。驚くべきことに。そして、心理学の研究成果も。

 カール・セーガンの「突拍子もない主張には突拍子もない証拠が必要だ」に則って言えば、そりゃあもう突拍子もない実験結果が幾つも出てくるので、著者らの主張に賛成しない人でも読んで楽しい読み物になっているのが素晴らしい。

 特に、サルが貨幣経済を理解するかどうかを調べた実験で、サルがきっちり貨幣を使って売春をするシーンには思わず笑ってしまった。サルも売春をするのは知っていたが(食事と引き換えにセックスする)、貨幣を使ってまで売春をするとは驚きではないか(笑)。

 そんなこんなで、楽しく読んでいるうちに読みきってしまった。一冊目ほどのインパクトは感じなかったが、それでも続きがでるのが楽しみだ。


関連書籍:
ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検するヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
(2006/04/28)
スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー 他

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その他科学 | 2014/01/30(木) 19:25 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1360冊目 精神鑑定とは何か―責任能力論を超えて―
精神鑑定とは何か―責任能力論を超えて―精神鑑定とは何か―責任能力論を超えて―
(2010/10/29)
高岡 健

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評価:☆☆☆☆


 幼馴染が精神科医になっている。ヤツは常に私よりちょっと頭が良かったのだが、ここにきて差が一気に開いた感じだ。仕方がないので、「精神科って半分はオカルトだよな」なんて言ってからかっている。

 精神科の仕事の1つ、精神鑑定が客観的なものではないというのが最も劇的な形で露見したのは、まず間違いなく東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人、宮崎勤についてのものだろう。なにせ、鑑定結果が見事に別れてしまったのだ。それも、3通りに。

 多重人格のような単なる医原病を実在する病気と勘違いしてしまう精神科医の存在もまた、同様に精神科がまだまだ主観に頼った(つまり、医者がそれまでの人生で身につけた偏見)で診断されるという現実を示している。脳は複雑過ぎる。脳内の電気信号の遣り取りにすぎない意識を知るには、電気信号の遣り取りそのものを知らなければならない。それは、現実問題として不可能だ。

 それでも、実際に犯罪が起こって、犯人とされた人物が得体のしれないことを言ったり、行動に首尾一貫性が欠けていれば、その人物が責任を負えるのかを調べなければならないし、それは精神科医を置いて他に無いだろう。

 本書はそんな精神科医が、精神鑑定とはどのようなもので、どこに問題が潜むかを述べている。で、私がこれまでつらつらと書いてきたことは、余り本書では取り上げられていない。何故か?私が興味を持っているのは正常と異常の境界の問題で、その領域において安易に異常という判断がなされていると感じられる点だ。

 一方、もう明らかに裁判を理解していない、獄に下されても何故そこに居るのか分からない、極端な場合には『累犯障害者』にあるように自分が刑務所にいることすら理解していない囚人も居る。彼らは、法の背後にある思想から鑑みれば、獄に下されるべきではない。刑務所がセーフティーネットであるというのは間違っていると思う。

 難しいのはその中間領域で、精神に異常があることは分かる。しかし、それが犯罪に影響したかどうかは分からない、という場合。あるいは、責任能力はあったとしても、裁判の当事者となる能力が無い、あるいは受刑者として意味が無いという場合もある。自分が何をしたかも分かっていない人を罰することは究極の無意味だ。

 本書を読んで、思っていた以上に精神鑑定は難しいと思わされた。"情状鑑定を多くすべき"という主張のように、著者と見解が異なる点は多々あるが、問題点を挙げてもらい、そこにどんな問題が潜んでいるかを教えてもらえたのは有難い。責任能力に終始しないのも、視点を広げてもらったような気がする。


関連書籍:
累犯障害者 (新潮文庫)累犯障害者 (新潮文庫)
(2009/03/30)
山本 譲司

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医学・脳・精神・心理 | 2014/01/28(火) 19:59 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1359冊目 隕石コレクター―鉱物学、岩石学、天文学が解き明かす「宇宙からの石」
隕石コレクター―鉱物学、岩石学、天文学が解き明かす「宇宙からの石」隕石コレクター―鉱物学、岩石学、天文学が解き明かす「宇宙からの石」
(2007/06)
リチャード ノートン

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評価:☆☆☆☆☆


 宇宙から多くの情報を携えてやってくる隕石。そのイベントが滅多にない以上、コレクターがいるというのは驚きであった。そう思って読み始めてみたら、隕石は思ったよりもずっと沢山地球に降ってきていると知ってますます驚いた。

 本書は、まず隕石コレクターの話題から始まる。隕石を集め、ある時はそれを加工し、そして隕石を所有したい人に売る。そんな人々がいる、という。そんなに沢山の隕石なんてあるの?と思っていたが、それがあるというのだ。想像していたより、遥かに沢山の隕石が。

 それは、大きな隕石が砕けたものかもしれない。あるいは、小さめの隕石が落ちてきたままの姿を保っているかもしれない。しかし、共通することがある。それは、太陽系の起源や姿を教えてくれる、ということだ。

 サブタイトルにある通り、隕石が運んできたメッセージを読み解くには、様々な学問分野が必要だ。広く知られた隕石の種類、石質隕石(隕石)・鉄質隕石(隕鉄)・石鉄隕石といった区分でさえ、それらがどうしてできたのかを知るためには地質学的な知識が必要となる。

 だから、隕石学は最近の学問らしい。誰も手を出せなかったのだ。さもありなん。隕石コレクターの話題に続き、そんな誕生してまだ歴史の浅い隕石学についての説明が語られる。意外な話が多く、目からウロコが落ちるのが素晴らしい。

 最後には、地球生物に隕石が与えた影響について章が割かれている。誰もが思い浮かべるのが6500万年前に恐竜の覇権を一瞬で破壊したものだろうが、他にも隕石衝突が大絶滅に関与した証拠がある。白亜紀末の大絶滅程の規模ではないが、一部の科学者は2600万年周期でそれが起こっているとしている。私は懐疑的ではあるが、1つの仮説としては面白いし、検証可能なので将に科学の分野である。観測結果がどうなるか、楽しみだ。

 ともあれ、膨大な裾野を持つ隕石学の世界を教えてくれる良書。宇宙に興味がある方は、きっと楽しく読めると思う。
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素粒子・宇宙論 | 2014/01/26(日) 20:18 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1358冊目 死体は悩む―多発する猟奇殺人事件の真実
死体は悩む―多発する猟奇殺人事件の真実 (角川oneテーマ21)死体は悩む―多発する猟奇殺人事件の真実 (角川oneテーマ21)
(2007/09)
上野 正彦

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評価:☆☆☆


 もの言わぬ死体から見えてくる真実とは何か?東京都の監察医として活躍した著者だからこそ語ることができる、死体の声なき声を語ったのが本書。

 と言っても、構えることはない。本書には難しい概念や数式なんかは出てこない。著者が立ち会った検死においてどのようなことが明らかにされてきたか、また、そこから著者が何を感じ取ってきたかをざっくばらんに語っているものだから。

 事実の部分は文句なしに面白い。いや、面白いと言っては不謹慎かもしれないが、死体から驚くほど多くの情報が得られることには純粋に知的好奇心を刺激するものがある。

 常磐線三河島駅で発生した列車の二重衝突事故、いわゆる三河島事故や、ホテルニュージャパン火災といった、時代を画するような事件。あるいは、自殺に偽装された事件を解決するのに法医学が決定的な役割を果たした事件。更には、体裁が悪いからと自殺を自然死に見せようとする見栄をきちんと見破るテクニック。

 例えば、川で溺死した場合と、殺された後で死体を川に遺棄した場合、溺死した方が川を流れ下る間に服が脱げていくという。だから、全裸で見つかった死体はむしろ溺死で、服を着ている方が事件性があるというのは、現場で見聞きした人にしか知らないことだろう。

 どのようにしたら死体が発するメッセージを受け取り、それを他人に伝えられるかが丁寧に語られる。こうした人々の努力があってこそ、犯罪でありながらもそれが見抜かれないという問題を極力小さくしているのだろう。本当に真摯に検死に取り組まれていたことが文章から伝わってきて、頭がさがる思いがする。

 問題は、今の事件は昭和と違って云々と言い始めるところ。事件の様相が違うのは、恐らくは事件に使われるツールが変わったためだ。人の心が変わったためではなかろう。正直、老人の繰り言としか思えないレベルの文章が散見され、その度にがっかりさせられた。

 過去の事件を眺めてみると、自分勝手な犯罪の姿は変わらない。例えば事件史探求のようなところで昔の事件を見てみて欲しい。

 と、残念なところはあるが、検死の重要性について考えさせられる本。法医学に興味がある方は読んで刺激を得ることができるだろう。
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ノンフィクション | 2014/01/24(金) 19:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1357冊目 エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇
エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇
(2011/01/29)
S. C. Kalichman

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評価:☆☆☆☆☆


 HIVはエイズを引き起こすウイルスではない、という説をご存知だろうか?いや、説なんて高いレベルのものではない。単なる疑似科学だ。

 何が問題だろう?

 1つは、エイズ否定論に騙され、感染者が適切な治療を受けないことが挙げられる。それに付随する問題として、HIVに感染している妊婦が出産の際に子にHIVを感染させてしまう可能性がある(適切な治療を受けていれば母子感染の可能性は1%以下とされるが、治療を受けていなければ20%を超える)。あるいは、パートナーにHIVを感染させてしまう可能性がある。

 もう1つは、社会全体がエイズ否定論に流れてしまった場合には、正しい知識を持つ人であっても正しい治療方法へのアクセスが著しく困難になってしまうことだ。例えば、治療薬に保険を使えなくなったらどうなるだろうか?治療を受けられない人が続出するに違いない。

 そんな莫迦なことを信じるのはどこかネジの外れた人だけではないかと思われるかもしれない。だが、残念なことにそうではないのだ。ノーベル賞受賞者を含むかなり大きなグループが、この妄説を声高に唱えているのである。そして、南アフリカは、エイズ否定論に飲まれてしまった。その結果、アフリカで最も裕福なこの国は、アフリカ最大のエイズ禍に見舞われることになったのだ。

 どうしてこんな愚かなことを人々は信じられるのだろう?本書はその謎に迫るノンフィクションである。

 否認という心理メカニズムが悪く働いている可能性が指摘されているのは、その通りだろう。HIV感染が近い将来の死を確約するとする。自分がHIVに感染したとすれば、近い将来に確実に死が訪れることを認めるより、HIVはエイズの原因ではないので近い将来の死も起こらないと信じる方が楽だ、というものだ。

 確かに、そうかも知れない。しかし、彼らは否認によって、正しい治療法を受けないことでより確実に近い将来の死を自らに課している。皮肉なことである。

 本書には、エイズ否定論の問題が丁寧に描かれている。HIVがエイズを引き起こすことには議論の余地がないほど圧倒的な証拠が集められており、否定論にはそれが無い。信念の体系と、論理の破綻があるだけだ。

 それなのに、本書のように否定論を徹底して批判する本が存在しなければならないのは、本当に残念なことだと思う。否定論のやっていることは、間接的な殺人と同じだ。感染者は、自分とパートナーや子を、非感染者は感染者を、早期の死に追いやる。

 加えて、否定論が宗教的な情熱と結びつくと厄介だ。米国もそうだが、HIVの感染防止に効果が証明されているコンドームの配布や麻薬の針の無償交換ではなく、禁欲と貞節を説く。そんなもので感染が防げるなら梅毒はあんなに世界に広まってないよ。それなのに、米国の支援を仰ぐためには、この効果のない禁欲と貞節のためにエイズ対策費の2/3を費やすように要求される。それはナンセンスだ。

 HIVは、根治はできないにしても、エイズ発症をコントロールすることはかなりできるようになってきている。感染を防ぐためにも、きちんとした教育(貞節を求めるのではなく、統計的に意味のある手法を教えなければならない)が行われなくてはならないだろう。

 残念ながら、この点に関しては、日本は他国に誇ることはできない。なにせ、先進国中唯一、HIV感染者が増加していると言われるから。母数が少ないからというのもあるだろうが、感染拡大を防ぐために性について触れないなんてことをせず、効果の見込める手法を何でも取り入れていかねばならないと思う。

 色々と学ぶことが多かった。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/01/23(木) 19:43 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1356冊目 ニッポンのヘンな虫たち
ニッポンのヘンな虫たちニッポンのヘンな虫たち
(2011/03/30)
不明

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評価:☆☆☆☆


 日本には3万種以上の昆虫が居る。人間を3万人も集めたら、そこには相当にヘンな人がいるのだから、種を3万も集めたら、ヘンなのが沢山いるのは当然のことであろう。

 しかし、そんなヘンな虫を知っている人はいるのだろうか?それが、居るのだ。昆虫愛好家は、オタク界において隠然たる勢力を誇っているのである。

 まず、7人の愛好家達が、どの虫を取り上げるべきかを縦横に語る。偏愛を捧げる相手のことを思うがままにしゃべることのできる楽しさが滲み出ているところが素晴らしい。もう、愛がダダ漏れな感じですよ。マニアックな虫の話が次から次へと出てくるのには、虫についての知識など殆ど無いであろう圧倒的大多数の読者は目を白黒させるしかあるまい。

 そんな彼らが選んだ、日本のヘンな虫はこちら。

クギヌキハサミムシ
ヤエヤマツダナナフシ
アリツカコオロギ
ヘビトンボ
シリアゲムシ
ウミアメンボ
アカマダラハナムグリ
ケブカコフキコガネ
ヒメシュモクバエ
カマバエ
ムラサキシャチホコ
ニジュウシトリバ
ミカドアリバチ
セナガアナバチ

 どれを取っても、名前から姿が思い浮かばないマニアックさだ。何故彼らが栄光有るヘンな虫の座に輝いたのか、写真付きで説明してくれているので、こりゃあヘンな虫だと思いながら読み進めることができる。

 例えば、アカマダラハナムグリ。こやつは、なんと猛禽類の巣に住み着くのである。一歩間違えたら雛に食われてしまいそうな危険地帯だというのに。あるいは、ゴキブリを捕まえてタマゴを産み付けてしまうセナガアナバチ。生きたまま貪り食われるゴキブリを思うと、バ☓サンが人道兵器に思えます。

 その他、虫への偏愛を語り合う対談ありインタビューあり写真ありで、昆虫好きなら間違いなく楽しめるだろう。

 実のところ、私はそんなに虫が好きというわけではないのだが、出てくる方々が心の底から楽しそうに好きな昆虫の話をしているところから、嬉しい気持ちを分けてもらった。やっぱり、好きなことをやる時が、人は一番輝くものだから。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/01/21(火) 19:56 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1355冊目 ワニと龍―恐竜になれなかった動物の話
ワニと龍―恐竜になれなかった動物の話 (平凡社新書)ワニと龍―恐竜になれなかった動物の話 (平凡社新書)
(2001/05)
青木 良輔

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評価:☆☆☆☆


 恐竜と最も近縁の爬虫類だったワニは、鳥類以外の恐竜を滅亡させた白亜紀末の大絶滅をもくぐり抜けて、今も生きている。そのワニが、中国で神話ともなっている龍であったと言われたらどうだろう?私は、何を言っておるのかと思ったものだ。しかし、本書の指摘をつぶさに眺めると、その主張は正しいのかもしれないと考えを改めさせられた。

 "龍"は会意文字で、"立"の部分は力を封じ込めるための部位で、残りの月を右回転で横に倒し、右側は左回転で横に倒すと、大きな口で背中に装甲を纏ったような形になる。なるほど。となると、十二支の動物のうち、龍だけが架空の生物だと思っていたが、ワニがその正体だとすれば全てが実在の動物であったことになる。無理矢理感は解消される一方、ちょっと残念な気もするが。

 殷代は黄河にもワニが生息していたのは間違いないらしい。環境の変化か人による捕殺か、いずれが原因か分からぬが、ワニの絶滅後に、漢字が表象する相手が変わっていった、というのが本書の指摘である。で、これが意外と説得力があって驚かされる。

 ところが、このワニについては概説書すら無い状態だと言う。著者は編集部から"児童書を除けば日本で初めてのワニの本である"というのだから驚きだ。

 本書から見えてくるワニの姿は、人を襲う獰猛な爬虫類というイメージからは程遠い。いや、確かにイリエワニのように、大型で、人を襲った記録のあるワニはいる。しかし、ほとんどのワニは人を襲わないというのは意外だ。動物は自分より大きな生き物は積極的に襲おうとしないのを考えれば不思議でもないのだろうが、相手が爬虫類だからとちょっと偏見があったのだろう。

 アリゲーター系とクロコダイル系の見分け方だとか、クロコダイルの先祖は陸生のワニでアリゲーターは水陸だったとか、今まで知らなかったワニの違いを教えてくれるのも嬉しいのだが、白亜紀末のカタストロフで絶滅と生存を分けたものが何かという仮説はもっと面白い。

 恐竜絶滅が隕石衝突によってもたらされたという説は私も支持しているのだが、衝突説が物語る衝突直後の地球の姿は、とてもワニほどのサイズの生き物が生き残れるようには見えなかった。

 しかし、隕石の衝突あるいは火山活動の激化によって大気中に大量に放出されたチリが太陽光線を遮ることで、ビタミンDの体内合成に強いUV照射を必要とした恐竜は滅亡し、彼らの影に隠れて夜の世界に生きていたためにビタミンDの合成にUVを必要としなかった生き物が生き残った、というのは面白いではないか。だとすると、夜行性だった哺乳類が生き残るのも道理だ。

 他にも、ディノニクスは爪を武器にしていた訳ではなく、樹上性の生物だったといいうような驚くべき指摘が幾つかあり、それまでに作り上げてきた偏見を打ち破ってくれた。著者の意見を鵜呑みにするわけではないが、新たな視座を与えてくれたことには素直に感謝したい。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/01/20(月) 19:09 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1354冊目 河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙
河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙
(2011/10/27)
河北新報社

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評価:☆☆☆☆☆


 読もうと思っていても中々手に取れない本がある。本書も、ずっと読もうと思ってきたのだが、どうしても脳裏にあの恐ろしい津波の映像が蘇ってしまい、読み始めることが出来なかった。しかし、読み始めたらページを繰る手が止まらず、一気読みさせられた。

 本書は、津波に襲われた被災地にあって、情報弱者となってしまった被災者へ正確な情報を届けようと、必死の努力を重ねた河北新報の人々の戦いを描いたノンフィクションである。

 印刷用の機器は、震災にも負けずに生き残った。本社が津波の被害を受けなかったことが大きいだろう。だが、他は壊滅状態だった。印刷出来たとして、どうやって読者の元へ新聞を届ければ良いだろう?販売網の情報は?道路は?ガソリンは?印刷に使う紙や水は?

 全てが喪われていた。

 記者が衝撃だったことが、街が壊滅という表現でしか言い表せられないほどの徹底した破壊を受けていたことだという。ロジスティクスの問題はすぐに明らかになる。しかし、そうした物理的な破壊だけが問題ではない。最大の問題は、そこで暮らしていた人々が僅かな時間で命を落としたり、辛うじて生き残りながらも肉親や住居財産を失ってしまったりしたことだ。

 被災地の模様を撮影するための報道者のヘリに向かって必死に助けを求める人々。しかし、報道用のヘリに彼らの希望を叶えられるようなものは何もない。彼らは、ただ写真を撮って、それを社会にしらしめることしか無い。何が正しいのか、悩んだという。当然だと思う。それでも、報道が無ければ、我々は正しい情報を得ることなど出来ない。

 既存のマスメディアを否定し、ネットがどうの、マスゴミがどうのといった勇ましいことを言う人も居るが、実際にはマスメディアからの情報が、我々の得る情報の9割以上を占めるのだ。だから、壊滅した被災地にあって、情報をつなぐ役割を果たした河北新報社は、多くの人に感謝されたという。数少ない新聞は壁に張り出され、そこで大勢の人々が初めて自分たちを襲った未曾有の災害の実態を知った。翌日に起こった福島第一原発の建屋の爆発。誰もが情報を必要としていた。

 本書で、記者たちの奮闘と苦悩が生き生きと描かれる一方で、生々しい被害の惨状もまた記される。報道に関わる者として何ができるのか?その問いかけに、読者に寄り添うという方針とともに、真摯に向かい合った姿勢が胸を熱くする。例えば死者が万単位であることを報じるニュースで、タイトルに"死者"ではなく"犠牲"を選ぶといった類のニュアンスの違いに拘ることに見られるように。

 加えて、記者たちを支えるべく、炊き出しのボランティアに奔走した女性社員たちの姿も描かれているのが良い。彼女たちにも別の仕事があっただろうに、自分たちの業務に加えて他の仕事までこなしていたのだから凄いものだ。全社を上げての奮闘の姿は、復興への希望に満ちているように見えてならない。

 まだまだ震災の爪痕は深く刻まれたままである。しかし、被災された人々が立ち上がろうとする力と、それをバックアップする国の力があれば、復興は早まろう。そんな思いが胸に去来した。
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ノンフィクション | 2014/01/18(土) 19:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1353冊目 バチカン奇跡調査官 サタンの裁き
バチカン奇跡調査官  サタンの裁き (角川ホラー文庫)バチカン奇跡調査官 サタンの裁き (角川ホラー文庫)
(2011/01/25)
藤木 稟

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評価:☆☆


 お前たちのやっていることは、全部全てスリットまるっとお見通しだ!(←またそのネタか!)な感じの、奇跡暴き隊が活躍するシリーズ2冊目。

 今度の奇跡は、アフリカで起こる。ある神父が死亡したのであるが、その体が腐敗しない、というのだ。死後、腐敗しないのには幾つか条件がある。防腐術を施すというのがその1つ。他に、屍蝋化させる方法が挙げられよう。後者については、ルルドの泉で知られる聖ベルナデッタが知られている。今も全く腐敗していないと誤って伝えられる(実際には、緩やかに腐敗が進行していることが明らかになっている)が、これは無酸素状態での微生物の働きによるものだ。

 ところが、温かいところでは、通常なら屍蝋化は起こらない。高湿度であることも相俟って、腐敗が急速に進むのだ。

 おまけに、この死体となった人物、生前には幾つもの予言を行い、恐るべき的中率を誇っていたという。なんと、その率100%!

 こりゃあもう聖人として認めてもらわにゃあなるまいとばかりに現地の教会が申請してきたので、またまた平賀とロベルトの神父コンビが調査に行く。そして、前巻同様、到着した彼らを待っていたのは死体だった。臨月にあったとみられる女性が殺され、胎児と心臓が失われているという凄惨な死体が現れたのである。

 腐らない死体と、刻まれた死体。この2つにはどんな関連があるのだろう?そして、100%当たる予言は、神からの預言なのか、はたまたからくりがあるのか?

 と言った感じで物語は進む。前巻で色々なネタをこれでもかとばかりにてんこ盛りにしていたのとは違い(そりゃあ、あんな勢いでネタを散りばめていたらあっという間にネタ切れだ)、今回のは少々ネタが少な目。仕方ない。

 見え隠れする黒魔術、現地のアニミズム的な呪術世界が、物語に暗い雰囲気を落としている。オカルトネタが好きな方は良いかも。

 一方で、前巻よりも人についての掘り下げが甘くなっているのは残念。これは前から気にはなっていたのだが、ネタを解説するのに、2人共まるでウィキペディアか何かを引き写しているようなセリフになってしまっているのも魅力を損なっている。もっと表現の仕方があるだろうにと、ちょっと思う次第であります。
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推理小説 | 2014/01/16(木) 19:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1352冊目 鳥類学者 無謀にも恐竜を語る
鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)
(2013/03/16)
川上 和人

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評価:☆☆☆☆


 UHIさんにコメント欄でお勧め頂いた本。タイトルは知っていて興味は持っていたのだが、面白いと聞いて必ず読むと決めたのに、こんなに遅くなってしまった^^;

 鳥類学者が恐竜とはどのような生き物だったのかを、鳥類学における知識に豊かな想像力を加え、ユーモラスな文体で綴ったのが本書である。

 本人曰く、"(略)私はあくまでも現生鳥類を真摯に研究する一鳥類学者である。おもむろに鳥を捕まえ、ことごとく計測し、容赦なく糞分析し、美女をこよなく愛する中肉中背の研究者"とのことで、"恐竜学に精通していないと胸を張って公言できる"(いずれもP.5より)という立場だ。

 では、門外漢が外野から頓珍漢なことを放言しているだけかというと、そうはならないのが面白い。その理由は2つあろう。1つは、鳥が恐竜の直系の子孫であるため、鳥類を通して恐竜を考えることが可能であること。そしてもう1つは、時代は違えど、恐竜も鳥も同じ地球に生きる生物であるのだから、同じ制限の中で生きていたので必ず共通点がある、ということ。

 例えば、恐竜にとっても大切なのは、その日を生き延び、配偶者を見つけ、日々の糧を得ることであっただろう。そのために、保護色を発達させたり、捕食のためあるいは逃走のための武器を得なければならなかったはずだ。そうした観点から、恐竜の体色や鳴き声や毒を持っていた可能性(シノルニトサウルスで毒腺らしき構造が見られるらしい)を考察している。

 きちんと現生の鳥と比較しての議論がなされているので、恐竜でもこうしたことはあったのではないかと読者を納得させる力がある。気がつけば、恐竜なんて近くのペットショップで四十雀の隣あたりで売られているような錯覚までしてくるから不思議だ。なによりも、恐竜を身近に感じられるような記載が多いのが嬉しい。

 ユーモラスな文体については、おちゃらけすぎだと思われる向きもあるかもしれない。正直、ちょっとくどいところはある。しかし、専門的になりがちな話を、一般に向けに読みやすくかつ理解しやすい形で書いてくれているのは素直にありがたい。読んで楽しく、恐竜に一層の興味を持てる良書です。

 UHIさん、情報ありがとうございました!
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生物・遺伝・病原体 | 2014/01/15(水) 22:05 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1350冊目 & 1351冊目 
インヘリタンス 果てなき旅 上巻 (ドラゴンライダーBOOK4)インヘリタンス 果てなき旅 上巻 (ドラゴンライダーBOOK4)
(2012/11/15)
クリストファー・パオリーニ

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インヘリタンス 果てなき旅 下巻 (ドラゴンライダーBOOK4)インヘリタンス 果てなき旅 下巻 (ドラゴンライダーBOOK4)
(2012/11/15)
クリストファー・パオリーニ

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評価:☆☆☆☆


 "ドラゴンライダー"シリーズの最終巻。

 アラゲイジア全体を支配下に置こうとする、闇のドラゴンライダーのガルバトリックス。彼は、自分自身で動くことはない。だが、彼の繰り出す軍隊は脅威だ。真名を知り、古代語で誓いを立てさせることで絶対服従とさせられた人々から、更に痛覚を奪って戦争に送り出す。彼らは刺されても突かれても体の一部を切り落とされても、立ち上がれる限りは立ち上がって襲い掛かってくる。

 そして、ガルバトリックスの配下であるエラゴンの同母兄のマータグと、その騎竜であるソーン。彼らはガルバトリックスの魔力でエラゴンとソフィアよりも強力だ。

 一方、エラゴンたちの仲間といえば、人間とドワーフとエルフ、他種族からなる連合体。寄せ集めのため常に分裂の危機を孕む。唯一の味方のドラゴンは前巻で既に殺されている。どうやって勝てば良いというのか?

 その問いに向き合う時間が取れないまま、エラゴンたちは目の前の仕事に忙殺されていた。ガルバトリックスが部下に与えているような護りが無いまま、エラゴンも従兄弟のローランも、危険な任務へと赴くことになる。

 次から次へと襲いかかる脅威。そして、上巻で、シリーズ最大のピンチが訪れる。反ガルバトリックス連合をまとめていたナスアダにまで危機が迫る!息をも付かせぬ勢いで疾走する感じだ。

 そして、いよいよ下巻。

 エラゴンとサフィアは、謎めいた助言に従って、ガルバトリックスとの最終決戦を前に旅に出る。それが、罠かもしれないと知りつつ。そうしなければ、万に一つも勝利の可能性は無いのだ。

 苦労して部族連合をまとめ上げ、ガルバトリックスの居すわるウルバーンを指呼の間に望むところまで攻め上った。自由に振る舞える唯一のドラゴンライダーがいる。この機を逃せば、決して再度のチャンスは訪れないだろう。

 エラゴンは、そこで何を得るのか。

 それにしても、どうやって無敵のガルバトリックスと戦うのだろう?どんな力でこの闇の帝王を打ち破れるのだろう?実は相手は超絶弱くて直接戦ったら楽勝、なんて結末には納得出来ない。

 等と思いながら読んだのであるが、いやはや、見事に決着を付けてくれましたよ。納得。

 もう1つ凄いのが、これまでの色々なところで張ってきた伏線をきっちり回収しているところ。忘れかけていた登場人物についてもきちんと結末が書かれている。それも、決して不幸な形ではなく。これを若造が書いたのかと思うと本当に驚く。著者がもっと経験を積み、知識を深めたらどんな物語を書くのか、それも楽しみである。
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SF・ファンタジー | 2014/01/14(火) 19:05 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1349冊目 この国はなぜ被害者を守らないのか
この国はなぜ被害者を守らないのか (PHP新書)この国はなぜ被害者を守らないのか (PHP新書)
(2013/06/15)
川田 龍平

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評価:☆☆


 龍平くん、悪いけど、この本はマズイよ。情報が少ないし、何よりもタイトルに対する答えがない。あなたの政治に対する立ち位置を知るには良いが、それ以上のものにはなっていない。ちょっと残念だ。

 著者の川田龍平くんは、およそ20年前の1995年、血友病の治療に用いる非加熱製剤のためにHIVに感染したことを公表した。私と誕生日がたった2週間しか違わない青年が、もう10年も前から(当時は不治の、そして致死的な病として怖れられた)HIV感染の事実を知り、事実と向き合わざるを得なかったということに、多くの人が衝撃を受けた。

 国と製薬会社を相手取った裁判は行われていても、どこか顔が見えない裁判だった。19歳の青年が実名公表したことが、この問題に強い光を当てたのは間違いないだろう。それは、劇的な和解となって実を結んだ。その運動の中で、彼は政治を変えないと社会は変わらないと思うようになったようだ。

 そうした原点があるからだろう。本書で熱心に語られるのは、原発被害からの人々の救済だ。そのためには移住にも道を開くべきだし、原発は廃止すべきだ、と彼は説いている。

 しかし、もし仮に命を救いたいなら、原発は廃止すべきではない。

 第一。かなり専門性が高いので読んだ人はほとんど居ないだろうが、『チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書 [最新版]』では、福島を遥かに上回る放射性物質が放出されたチェルノブイリですら、統計的に問題となるような害は出ないと結論づけている。

 因みに、ウィキペディアのチェルノブイリ事故との比較から放出量を引用すると、ヨウ素131はチェルノブイリが最大1760に対して福島は160、セシウム137ではチェルノブイリが最大85に対して福島は15(単位は10^15Bq)。より長期的に環境に残るセシウムで比較しても5分の1未満であり、チェルノブイリでの、害がないという結論はそのまま受け入れることができる。

 では、チェルノブイリで一番の害はなんだったか?実は放射能フォビアによる避難によって共同体が破壊されたことによるストレス起因の病気なのである。つまり、避難の勧告は、人々を慮っている態度を示すことはできるが、実際には多くの人々を早期の死に追いやる愚行なのだ。

 第二に、原発を動かさないことによって、電力を火力で代替すれば年間3000人が大気汚染によって死亡すると見積もられている。

 仮に、第一の理由に反して放射線による死者を、福島県に住む方およそ200万人の10%が放射線濃度の高い地域に住むとして、そのうち1%が50年以内に死亡すると見積もってみる。すると、死者は2000人だ。一方、同じ期間に大気汚染で死亡するのは3000☓50で15万人である。その比率たるや、75倍である。

 脱原発は、本当に命を救うための手法なのだろうか?

 あらゆる死者を減らすのは、素晴らしいことかもしれない。しかし、原発と火力では死者がトレードオフの関係にあって、どちらかを選ばなければならないなら、よりトータルとしての死者が少ない方を選ぶべきではないだろうか。

 311は、新たなる断絶を日本にもたらした。それは、観念的に原発を廃止することが社会のためであるとする層と、客観的な根拠に基づいて議論をする人々だ。残念だが、龍平くんは前者であることが明らかにされてしまった。これが市井のおっさんであれば良い。しかし、国会議員なのであれば、もっと勉強して欲しいと思ってしまう。

 色々な点で残念であった。
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ノンフィクション | 2014/01/12(日) 19:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1348冊目 昆虫食古今東西
昆虫食古今東西昆虫食古今東西
(2012/07/25)
三橋 淳

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評価:☆☆☆


 昨年、国連食糧農業機関(FAO)という耳慣れない機関が発表した報告書が話題を読んだ。何故か?それは、昆虫食を勧めるものだったからだ。それによると、昆虫は栄養価が高く、そして美味である、という。ムシだからといって忌避するのはもったいない。特に、人口増が問題である現代においては。

 実際には、世界の各地で、昆虫は食料として用いられてきた。本書は、そうした記録を集大成したものである。古今東西を名乗るだけのことはあり、日本は勿論、アジア、南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリアと、それこそ世界中の昆虫食を取り上げている。

 実に多くの昆虫が食料として用いられてきたことに驚いた。日本でもよく聞く、イナゴは世界中で食されてきた。"バッタはマダガスカルの先住民にとっては重要な食料であり、そのため、二つの部族が戦闘している最中に、たまたまバッタの群れが飛来したときは、双方戦闘を中止して、バッタ採りに専念したほどだという"(P.116より引用)となると、どれだけ好きなんだと思う。しかし、本書で繰り返し書かれているところによれば、エビやカニの味に近いというのだから無理もないだろう。昆虫が甲殻類から進化してきたことを感じさせる話だ。

 アリをすりつぶした野草に混ぜて食べると酸味が付加されて食べやすくなるという、蟻酸を料理に使う方法も初めて知った。実に合理的である。アリの仲間というのでは、ハチの子も広く知られた食材である。ただ、私はミツバチを使うのだろうと勝手に思い込んでいたので、クロスズメバチであると聞いて驚いた。

 『シロアリ――女王様、その手がありましたか!』でも触れられていたシロアリも、やはり世界中で食料として用いられてきたそうである。

 面白いのは、頭部だけを食べる民族が居るかと思えば、腹部だけを食べる民族もいる、といったところ。食文化というとおり、本当にこれは文化だと感じさせられる。

 チョウやガの幼虫、つまりは芋虫や毛虫も広く食されている。毛虫は毛を焼いてしまえば食べられるというので、狩猟採集においては食べられるものはなんでも利用していると感心させられる。

 イタリアあたりではチーズの中で育ったウジを食べるというのは知っていた。しかし、このウジを生きたまま飲み込むと、蝿蛆症に犯されることがあるというので、体験される方は良く噛んでいただきたい。

 で、この辺りは分かるのだが、セミやカメムシやカブトムシやナナフシの、それも幼虫じゃなくて成虫となると驚く。少なくとも、美味しそうには思えないなぁ(笑)。

 最終章は、薬用昆虫についてまとめている。有名な冬虫夏草のように昆虫そのものではない漢方薬も含まれるが、ゴキブリやナナフシといった昆虫もやはり薬として用いられているそうである。抗癌作用という視点からは、肝臓癌にはワモンゴキブリやチャバネゴキブリといったゴキブリ類が効くらしく、これはもう嫌う一方じゃダメかもとも思ったものである。

 イチゴミルクのあの赤色を出すために使われる色素がコチニールカイガラムシというムシから取ると知っただけで忌避反応を示す人にはとても向いた本だとは言えないだろうが、昆虫の持つ豊かな可能性(昆虫には迷惑だろうけど^^;)を教えてくれる本だと言えよう。


関連書籍:

シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)
(2013/02/07)
松浦 健二

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ノンフィクション | 2014/01/11(土) 19:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1347冊目 半分の月がのぼる空〈6〉
半分の月がのぼる空〈6〉 (電撃文庫)半分の月がのぼる空〈6〉 (電撃文庫)
(2006/02)
橋本 紡

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評価:☆☆☆☆


 4月になった。前巻まで高校2年生だった主人公は、高校2年生になった。あれ?レポートはやったはずだ。あとは、熱意を見るためにやるという試験を受けさえすれば進級できたはずだったのでは?

 そして、退院した秋庭里香は主人公の通う学校へ転入してきた。病院ぐらしだった彼女は、当然高校3年生には編入できない。こうして、年齢通りなら高校3年生になるはずの2人は、1人は2年生、もう1人は1年生となった。

 もうこの設定からして、この巻が本編を名乗りながら外伝であることが分かろう。

 ずっと入院していた里香は、外の世界を知らない。2歳年下の同級生たちと、そして1学年上の同い年の恋人との社会にあって、彼女はどう振る舞うのだろう?

 病院は、そこで働く人々がどれほど善意と好意をもって接してくれていても、少なくともその半分は監禁生活みたいなものだ。完全な自由なんて無いなんて諧謔を笑い飛ばしたくなるくらい、そこは不自由なところだ。

 それは、親元に居るというのも似たところがあるかも知れない。今のこの国においては、多くの子どもたちは18歳ごろを堺に、庇護でもあり拘束でもある関係から抜け出していく。自由を得る喜びと、庇護を失う不安が入り混じる微妙な年齢に差し掛かる少年たちの心を上手く表現していると思う。これで終わりなのはちょっと残念だけど、良い所で終わったかな。
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その他小説 | 2014/01/10(金) 19:18 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1346冊目 半分の月がのぼる空〈5〉 long long walking under the half-moon
半分の月がのぼる空〈5〉 long long walking under the half-moon (電撃文庫)半分の月がのぼる空〈5〉 long long walking under the half-moon (電撃文庫)
(2005/09)
橋本 紡

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評価:☆☆☆☆


 里香の手術は終わったが、それでも主人公は彼女とそうそう逢うことはできなかった。里香の執刀医、夏目が妨害してくるのだ。愛されてるね、主人公。で、ついでに里香のお母さんも主人公を警戒している。入院中に医者と保護者から目をつけられたら、自由に想い人を訪ねることすらできないではないか。

 それでも幾多の艱難辛苦を乗り越えて、二人は逢瀬を重ねる。すっかりデレていた秋庭里香は、手術が終わったらやっぱり性格の悪い女の子に戻っていた。で、時にデレる。このバランスが絶妙だ。

 そして、他の人にははっきり里香を想う気持ちを言える主人公は、秋庭里香本人にはそれを言えない。うん、そうだよね。言えないよね。と言いたいところだが、男子高に通っていて女子には友達すら居なかった私には想像の世界だが(笑)

 だが、時の流れは残酷だった。何がって?A型肝炎で4ヶ月も入院している主人公に、来るべきものが来てしまう。レポートをやらなきゃ、落第。なんと過酷な運命。幼馴染の水谷みゆきがお目付け役として派遣されてくるので、さしもの主人公もレポート漬けの毎日だ。可哀想に。大学に入ったら自動的にそんな運命に遭うのにさ(笑)

 一方、阿呆な友人山西が仕掛けた軽い気持ちの悪戯(行為?)は、思わぬ副作用を生む。世古口司と、水谷みゆきの急接近だ。と言っても世古口司の不器用さは人類を超越しているレベルなので、どうしても笑いに繋がってしまう。ソルデ・レイ・ケブラーダと言い、この登場人物はシリアスな雰囲気を全てぶち壊してくれるところが良い、

 と言う感じで、じれったい、一進一退というか一歩進んで三歩下がる的な雰囲気なのに、何故か物語は進んでいく。ラブコメの王道と言うべきか。主人公はきちんと里香に気持ちを伝えられるのか?

 今作でも、小道具として使われる本は『チボー家の人々』。読んだことは無いし、今後も読むことはないのだろうけど、こうやって本が使われるのは良いな。なかなかオシャレだ。自分もできるだろうかと本棚を見渡してみた。うん、ムリ。というわけで、本を小道具に使うときには殺人の道具(本棚が倒壊したことにすれば完全犯罪だ)にするくらいしかなさそうだった。

 自分のことは良いとして、著者がもともとは5巻で終わりにするつもりだったということが素直に納得できる。里香は、いつ死ぬか分からない。そういう相手と連れ添うのは、きっと覚悟が必要だろう。しかし、それは不幸なだけの話では無いはずだ。というわけで、主人公よ、がんがれよ。
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その他小説 | 2014/01/09(木) 19:46 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1345冊目 バチカン奇跡調査官 黒の学院
バチカン奇跡調査官  黒の学院 (角川ホラー文庫)バチカン奇跡調査官 黒の学院 (角川ホラー文庫)
(2010/12/25)
藤木 稟

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評価:☆☆☆☆


 どう考えても常識では考えられない出来事。それを、人は奇跡と呼ぶ。だが、奇跡などそうそうあるわけがない。その真相は手品や機械じかけ等のトリックであったり、見間違いだったりする。例えば、病の治癒を求めてルルドの泉を訪れる者は引きも切らないが、訪ねた人のガンの治癒率は自然治癒率より低いという統計もある。「なんだ、義足はないのか」と言い放ったアナトール・フランスの懐疑主義は進んで騙される者には無意味なのだろう。

 だから、探偵役が必要なのだ。探偵はびしっと犯人を指さして、「お前たちのやっていることは、全部お見通しだ!」って、それじゃあTRICKですね。

 ただ、基本構図はTRICKと同じだ。どうやら奇跡らしい現象があり、その正体を探るうちに、これは奇跡などではなく大いなる悪の影が見え隠れするという辺り。違いといえば、そう、TRICKで探偵役を務める山田奈緒子は奇跡や超能力を信じていない(モデルがハリー・フーディニだから当然か)のに対し、こちらの主人公は奇跡の存在そのものは信じているが本物を偽物を厳密に見分けようとしているというところ。

 肝心の物語は、バチカンの科学者であり奇跡調査官である主人公、平賀・ヨセフ・庚のところに、キリスト教会にとってのっぴきならない問題が起こったのでその調査へ向かうよう依頼があるところから始まる。どんな問題かというと、処女懐胎である。

 勿論、処女懐胎は後にも先にも聖母マリアがイエス・キリストを身籠った時のみだというのが教会の立場である。処女懐胎の奇跡は、教会の存在基板をすら揺るがしかねない。斯くして、平賀と暗号解読家のロベルト・ニコラスの2人の神父は物語の舞台となるセントロザリオ学園へと赴く。しかし、そこで彼らを待っていたのは殺人だった。

 調べを進めるうちに、次々と怪しい話が出てくる。キーワードだけでも書いておくと、ヨハネの黙示録やらノストラダムスの予言やら、黒ミサ、聖痕、涙を流すマリア像、etc。ちょっとオカルトの世界を覗いたことがある方にはお馴染みの概念だろう。

 ちょっと詰め込みすぎのようにも感じるが、これらの奇怪な現象の裏には何があるのか?そして次々と発生する殺人事件と処女懐胎との関係は?謎は全て解けるのだろうか?

 文章がやや浮いている感が無きにしも非ずだが、ストーリーとしては中々に面白い。バチカンが実は金融大国であるというあたりのマニアックなネタも紛れていたりするのだが、これはシリーズが進むうちに重要になってきそうな感じだ。機会があったら続きも読んでみようかな。
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推理小説 | 2014/01/08(水) 19:45 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1344冊目 アンモナイトは“神の石”―巨大な化石を求めてヒマラヤを行く
アンモナイトは“神の石”―巨大な化石を求めてヒマラヤを行く (ブルーバックス)アンモナイトは“神の石”―巨大な化石を求めてヒマラヤを行く (ブルーバックス)
(1998/03)
三輪 一雄

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評価:☆☆☆☆


 化石研究の分野では、驚くほどアマチュアが活躍している。例えば、She sells sea shells by the sea shore.(彼女は海岸で貝殻を売った)という早口言葉のモデルとなったと言われるメアリー・アニング。彼女が生計を立てるために行っていた化石採集でイクチオサウルスの化石を発見したことは、後の研究に大きな影響を与えた。あるいは、本業である医者の仕事よりも化石に熱中したギデオン・マンテルによってイグアノドンの化石が発見されている。日本で有名なところだと、フタバスズキリュウを発見した鈴木直さんは高校生だった。

 そしてここに、化石に魅せられたアマチュアがいる。

 バブル時代にフリーのイラストレーターとなった著者は、バブル崩壊後に収入源から酒に溺れ、遂には家族と別れまで経験してしまう。そんな彼が、ふとしたきっかけでアンモナイトの化石を探しに行くことになる。それは著者を立ち直らせるきっかけになった。いや、アルコールではなく、別のものに耽溺させただけかもしれない。好奇心という、妖しい魅力に満ちたものに。

 本書は、アンモナイトに魅せられた著者によるアンモナイトの解説と、化石を掘り出すための行動が絶妙にブレンドされている。仲間とともにアンモナイトを掘りだす楽しみだったり、思わぬ出会いだったりを語るかと思えば、アンモナイトの進化の道筋や正常巻きと異常巻きの解説が織り交ぜられているので、読んでいて飽きない。

 何よりも、著者がアンモナイトが好きで、発掘も好きなのが文章からにじみ出ている所が良い。はるばるヒマラヤまで巨大アンモナイトを求めて飛んでしまうというのだから、その行動力には脱帽だ。冒険旅行記としても楽しめるところも良い。やっぱり、熱意のある人の文章は読んでいる側に喜び楽しみが伝わってくるのが良いよね。

 もうちょっと子供が大きくなったら、化石採集へ一緒に行ってみようかな。
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地球史・古生物・恐竜 | 2014/01/07(火) 19:37 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1343冊目 オルドビス紀・シルル紀の生物
オルドビス紀・シルル紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))オルドビス紀・シルル紀の生物 (生物ミステリー (生物ミステリープロ))
(2013/11/12)
土屋 健

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評価:☆☆☆☆☆


 タイトルを見た瞬間に、"これは読まなきゃ!"と思わされる本がある。本書ももちろんそう。だって、オルドビス紀とシルル紀ですよ?

 生物の歴史は30億年以上に及ぶが、我々が生物と聞いて想像するような、多細胞生物が現れたのは、古生代のカンブリア紀。それに続くのが、オルドビス紀。およそ4億8830万年前から4億4370万年前のことだ。

 カンブリア紀で、生物の基本設計が違うとも言える門のレベルで進化が爆発的に起こったなら、オルドビス紀では科のレベルで猛烈に種の数が増えた時代と言える。オルドビス紀の生物大放散事変(GOBE)と呼ばれるそうだ。

 オルドビス紀に栄えた生物はなにか?それは、三葉虫とアンモナイトだった。全長11メートルにも及ぶといわれるカメロケラスが海を支配していた。この時代、まだ陸上は生物が住むのに適した環境ではない。だから、海の支配者は地球の支配者と言って良いだろう。

 このオルドビス紀は大絶滅で終わり、シルル紀が幕を開ける。シルル紀に栄えたのは、ウミサソリの仲間。名前の通り、サソリにしか見えない種もあれば、遊泳に適した体へ進化しサソリの外観から離れた種もある。そしてもう1つ特筆すべきなのは、魚類が大きく進化したことだろう。オルドビス紀は捕食者の地位に甘んじていた魚には、鰭から顎が進化によって現れてくる。それが我々の顎にまで連続している。

 もう1つ、シルル紀で特筆すべきなのは、遂に陸上が生物の住める環境となったこと。ようやく、オゾン層によって有害な紫外線から遺伝子が守られるようになったのだ。そして、植物が地上へ進出を始める。

 多細胞生物の歴史における黎明期に、もう複雑な構造を持つ生物が、食物連鎖という相互作用で進化のスピードを速め、次々に種が分化していったのがこの時代なのだろう。遥か昔の時代について、実に多くのことが分かっていて驚きながら読んだ。全ページ、フルカラーで多くの図版があるので、その姿も知ることができるのも嬉しい。
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地球史・古生物・恐竜 | 2014/01/06(月) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1342冊目 さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)さよならドビュッシー 前奏曲(プレリュード)~要介護探偵の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2012/05/10)
中山 七里

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評価:☆☆☆


 本作の主人公は、なんと『さよならドビュッシー』の冒頭で焼死した、香月玄太郎翁。彼が遭遇した事件を見事に解決するという連作短編集。

 『さよならドビュッシー』ではさっさと退場してしまうのでどんな人なのかよく分からなかったが、本書を読むと呆れるばかりにアクの強い人物であるということが分かる。カネと権力に物を言わせて気に入らないことは何でも排除してしまう。あるいは、不快な人物には自分が要介護であるというような、状況を全く考えずにキレるキレる。

 一代にして成り上がった不動産業者ともなれば、オシが強いのは不思議なことではないかもしれない。しかし、近くに居たらさぞ鬱陶しいだろうなぁ(笑)

 弦太郎が解決するのは、殺人事件もあれば通り魔による暴行事件も、銀行強盗もある。名探偵あるところに事件ありの格言(?)通り、色々な犯罪が起こるので、介護にあたる綴喜みち子さんが可哀想でならない。なにせ、要介護探偵が事件に事件に巻き込まれたら、漏れ無く介護者も事件に絡まざるをえないのだ。しかも、この爺ちゃん、自分から危険にツッコんでいくところもあるし。

 その剣幕にウンザリさせられるところも無いではないが、彼が怒声を上げるのは読者が見てもおかしいと思うことが多いので、溜飲が下がる点はあるし、事件がきちんと解決するところで満足も得られるしではある。香月弦太郎が主人公なだけのことはあり、『さよならドビュッシー』にも出てくる香月遥、片桐ルシア、岬洋介らが顔を出すのもシリーズのファンには嬉しい。

 ただ、これを読んだら、どうしてこんな合理的な考えをする人物がシンナーだらけの部屋で火を扱ってしまうのか、凄まじい疑問を抱いてしまうのだが、それは私の性格が悪いせいでしょうか(笑)
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推理小説 | 2014/01/04(土) 20:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1341冊目 カエル―水辺の隣人
カエル―水辺の隣人 (中公新書)カエル―水辺の隣人 (中公新書)
(2002/06)
松井 正文

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評価:☆☆☆☆


 カエル。ぴょんぴょんと飛び跳ねて、つぶらな瞳でこちらを見つめる姿には愛らしさを感じる。あのゲコゲコと騒がしい鳴き声で入眠を妨害されるのはありがたくはないが(笑)

 そんなカエルが、絶滅の危機に瀕しているというのをご存知だろうか?環境破壊?それは間違いなく大きな要因だ。特にカエルが多く分布する熱帯で、焼き畑が広く行われることはカエルへ多大なダメージを与える。土壌の損失に加え、生物多様性の損失も深刻だ。そしてもう一つは、カエルツボカビ症という感染症である。

 この愛らしい隣人が絶滅する前に、適切な手を打つべきだろう。生物多様性とかなんとかという曖昧模糊とした概念が不満であれば、カエルが特に水田で害虫を食べてくれるという即物的な理由からも。

 本書はまず、カエルがどうやって生まれたか、から始まる。太古の昔、まだカエルが飛び跳ねていない頃からの進化の流れはなかなかに面白い。イクチオステガのあの8本指から今のカエルの4本指への進化もそうだし、両生類全体の進化におけるカエルの位置づけもそう。

 続いて、日本のカエル事情へ移る。意外なことに、日本はむしろサンショウウオ天国とも言えるというのはちょっと驚いた。なんと、サンショウウオは世界の4.8%を擁するのに、カエルはたった0.8%しか居ないというのだ。生息域の違いと進化の違いもあるのだろうが、これには驚いた。日本にもアイフィンガーガエルのように子育てをするカエルがいるというのも知らなかった。知らないことが沢山あると嬉しくなる。

 海外の変わったカエルも取り上げられている。強い毒性で知られるヤドクガエル。彼らはその毒以外に、子育てでも有名だ。親ガエルは、子供のところに足繁く通っては餌である無精卵を与えるのである。あるいはシロアリを好むメキシコジムグリガエル、砂漠に住み状況によっては2年間も地下に潜ることができるコーチスキアシガエル、背中で子育てをするコモリガエル、哺乳類と同じ胎生を進化させたリベリアコモチヒキガエル等々。

 カエルの進化の途に思いを馳せ、その豊かなあり方に感嘆させられた1冊。カエルファンの皆様にはオススメです。
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生物・遺伝・病原体 | 2014/01/03(金) 20:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1340冊目 ミミズの話
ミミズの話ミミズの話
(2010/08/04)
エイミィ・ステュワート

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評価:☆☆☆☆


 先日読んだ『土の文明史』で、すっかりこの地中の生物に興味が湧いてしまった。妻はこの表紙を見ただけでウンザリという顔をしていたが(笑)

 豊かな実りを得るためには、土壌が保持されていなければならない。そこには十分な栄養とミネラルが必要だ。それらを確保するのに、ミミズは実に大きな力を果たしている。彼らの貪欲な胃袋は倦むこと無く腐った葉っぱやらなにやらを土と一緒に飲み込んでは、分解して植物が利用しやすい形で排泄する。

 だから、ミミズが大量にいる農園と、殺虫剤でミミズを排除してしまった農園とでは、土壌に含まれる栄養素の量が異なる。化学肥料を与えれば良いではないかと思うかもしれないが、それは解決策にはならない。なんとなれば、化学肥料は植物が利用しにくい形なため過剰に与えなければならないし、雨が降ったらすぐに水と共に流れていってしまうからだ。

 このミミズの力を最初に認識した人物は、かのダーウィンである。ダーウィンがその晩年にミミズの力を認めてから、多くの研究がされてきた。しかし、その重要さは化学肥料の誕生とグリーン革命の前にすっかり霞んでしまった観がある。しかし、土壌の枯渇とともに、ミミズの力は再評価されつつあるようだ。

 本書ではこのミミズの力があますところなく描かれている。豊かな実りを得るために必要なパートナーとして、そしてまたある時は、自然環境を破壊する脅威として。

 ちっぽけな、のたうち回らるくらいしか出来そうにないミミズがもつ力の大きさには本当に驚かされる。そして、ちっぽけなんかではない、巨大ミミズの存在にもまた。彼らの力が凄いのは認識したが、心構えのないタイミングで巨大ミミズに遭遇するのは避けたいものだ(笑)

 ともあれ、ミミズの大切さはこれからの社会にとってどれほど強調されてもされすぎなことはあるまい。土壌の保存だけではなく、廃棄遺物の処分についても彼らの力を借りることができそうで面白い。今後、更にミミズ研究の重要さが増すことを確信する。一般向けの解説書として、実に優れたものだと思う1冊。




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(1996/04)
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土の文明史土の文明史
(2010/04/07)
デイビッド・モントゴメリー

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生物・遺伝・病原体 | 2014/01/02(木) 21:10 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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