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Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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1316冊目 「若者論」を疑え!
「若者論」を疑え! (宝島社新書 265)「若者論」を疑え! (宝島社新書 265)
(2008/04/09)
後藤 和智

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評価:☆☆☆☆


 全く、最近の若者ときたら呆れるばかりだ。少年犯罪は凶悪化と低年齢化の一途を辿るばかりで、急増する少年犯罪によって安全神話も崩れ去った。一方でやる気のないニートが増え、働き始めたと思ったら辛抱できずに3年で仕事をほっぽり出してしまう。こんなことになったのも、ゲームのやり過ぎや、携帯電話やインターネットと言った安易なテクノロジーが蔓延してしまったから。ヤツラは人間というよりサルだよ、サル。彼らの根性は叩きなおすべきだ。徴兵制なんて向いているんじゃないか?

 こんな類の言説を聞いたことな無いだろうか?世間で少なからぬ支持を集めているにも関わらず、上記の全てがウソである。

 例えば、少年犯罪は激減している。"重大犯罪は"あ定義次第でどうでも変わりうるので、定義がずっと変わっていない殺人で見てみよう。その検挙人員のピークは1951年の438件。一方、2005年は73件である。1/6にまで減ったのを激減と言わずに何と言えば良いのだ?

 では、低年齢化や凶悪化は?若者をバッシングしたい人には残念なことに、そのような傾向は全く見られない。少年犯罪データベースにはかなりのデータが集まっているので、嘘だと思われる方は是非見てみて欲しい。

 ニートの増加というのも、ニートという概念が入ってきたから社会の注目を集めるようになっただけで、実態は変わっていなかったりする。まして、ゲーム脳だとかサル化なんて、単なる悪口雑言の類の、非科学的な妄想以上のものではない。

 本書は、こうした「若者論」が持つ悲惨なまでの誤りを丁寧に指摘していく。

 巷間囁かれる論がどこか説得力を持っているように感じさせながら、その実は相手にするのもバカバカしいものだというのは悲しくなる。莫迦げた妄想を垂れ流す人の程度の低さにも、それを拍手喝采で迎え入れる側にも。

 だから、残念なことに、本書の価値は高い。非正規雇用が増え、結婚したくても経済的な理由でできないという若者が増えるのは、社会にとってリスクだ。そして、上記のような妄説は、このような定収入の若者層を固定化する役にしか立たない。自助努力?精神的な甘え?違う。その前に、政治が解決すべき問題が山ほどある。若年層の貧困が制度的に導かれている現実が、確かにあるのだ。

 まずは、悪意と誤りに満ちた言説を、それと見抜くための武器として、本書は役に立つ。若者を莫迦にして溜飲を下げる一方で、未来を暗いものにしていく誤った若者論は危険だ。その現実を分かりやすく解説してくれる良書。読み易いし、問題は丁寧に纏められている。そして何より、凡百の若者論に見られるデータの欠如(つまり、単なる感情論なのだ)とは無縁であるところが素晴らしい。若者を取り巻く社会の問題を知るにはもってこいの一冊と言えよう。
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ノンフィクション | 2013/11/30(土) 19:48 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1315冊目 モルフェウスの領域
モルフェウスの領域 (角川文庫)モルフェウスの領域 (角川文庫)
(2013/06/21)
海堂 尊

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評価:☆☆


 『ナイチンゲールの沈黙』に出てきた佐々木アツシは、網膜芽細胞腫で右目を摘出済みである。ところが、今度は左目にまで網膜芽細胞腫が見つかる。このままでは、彼は全盲となってしまう。

 幼い彼の視力を救うため、1つの技術が活用される。コールドスリープ。今治療する技術がないなら、技術が出来るまで待てば良い、という悠久の時の流れをものともしない乱暴なやり方だ。幸い、この世界ではコールドスリープが実用化されていた。一応、"凍眠八則"なる論考を背景に法整備もされている。ところが、運用上で問題があった。官僚たちはこの法案をがんじがらめにしてしまい、現実的にはとても使用できないものだったのだ。

 アツシは、たった1人のスリーパーとして、法の認めた5年間の眠りにつく。というか、物語が始まった時点で、彼はもう眠っている。なので、彼は主人公になり得ない。その代わりに主役の座に着くのは、日比野涼子。彼女の仕事は、東城大学医学部から委託された資料の管理と、世界唯一のコールドスリープ被験者・アツシの維持管理を行うこと。

 いつしか涼子は"凍眠八則"に疑問を持つようになる。一見、完璧な論理構成を持っているのだが、どうしても違和感を禁じ得ないのだ。

 読者にとって違和感を禁じ得ないのは、"凍眠八則"がそんな論理的に完璧なように見えないことなんだけどね(笑)

 ともあれ、彼女は"凍眠八則"の提唱者、MIT教授の曾根崎伸一郎とメールで接触を開始する。それは、ギリシア神話に出てくる夢の神の名で渾名されるアツシを、どう変えていくのか。

 『バチスタ』シリーズの登場人物が顔を出すのでファンとしては嬉しいが、涼子にも曾根崎にも、どうにも魅力を感じられず、イマイチ物語には入り込めなかった。SFを持ちだしたのはちょっと失敗なのでは無かろうか。このレベルの話だと分かっていたら、恐らく読まなかった。
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その他小説 | 2013/11/29(金) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1314冊目 ヤバい統計学
ヤバい統計学ヤバい統計学
(2011/02/19)
カイザー・ファング、Kaiser Fung 他

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評価:☆☆☆☆☆


 滅茶苦茶面白くて評判になった『ヤバい経済学』のお陰で、似たタイトルの本が世に出た。本書はその中の一冊。柳の下の何匹目かのどじょうを狙ったってダメだぞ、面白くなくちゃ。と突っ込みながら読んだら、これが面白かったのであります。

 『ヤバい経済学』がインセンティブを切り札に色々な事実の裏に潜む人間心理を暴くのなら、こちらは日常生活にどれほど統計的な手法が用いられているかを教えてくれる。

 例えば、ディズニーランドでどれだけ多くのアトラクションを楽しめるだろうか?本書で取り上げられている人は、なんと13時間で全てのアトラクションを楽しんだ、と言う。どうやって?勿論、統計を活かして、だ。それと全く同じ手法が、交通渋滞を避ける手法に使われる。

 疫病の原因が何かを探ることと、クレジットカードの審査が同じ手法というのも面白いだろう。大学入試試験が公平かどうかと、ハリケーン保険が同列に論じられるというのも。ドーピング検査とテロ対策、飛行機事故と宝くじという組み合わせも。

 本書が面白いのは、こうした意外な組み合わせが統計手法としては同じように扱うことが出来ることを示した点である。加えて、背後にある小難しい数学的なテクニックには触れていないので、読み物として実に面白い。本書で統計への興味を持てば、そこから先に進むことはできるのだから、私としてはそれで十分だと思う。

 文章もユーモラスで、統計学という響きから感じる堅苦しさは微塵もない。楽しく読み進めるうちに、数学こそ社会を上手く動かすために極めて有効な手法であることが分かるというのは素晴らしすぎる。というわけで、ディズニーランドで多くのアトラクションを楽しむためにも、是非是非本書を読んでみてください^^。
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数学 | 2013/11/27(水) 19:18 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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1313冊目 酒が語る日本史
酒が語る日本史 (河出文庫)酒が語る日本史 (河出文庫)
(2013/02/05)
和歌森 太郎

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評価:☆☆☆


 酒は文化だ。洋の東西を問わず、酒は食文化と共に発展してきた。イスラームのように、それを敢えて廃した文化も有りはするが、中東こそビールの発祥の地であることを考えれば、彼の地を除外するわけにも行かないであろう。翻って日本を眺めれば、やはり主役は日本酒だ。醸造酒から蒸留酒が生み出されたことを考えれば当然か。

 日本の歴史も、他国の歴史同様に、一皮むけば酒の話に満ちている。だが、それを丁寧に集める人など、そう居やしない。そんなわけで、著者の存在は貴重であろう。なにせ、広く文献を渉猟して、酒にまつわるエピソードを集めに集めているのが本書なのだから。

 神話期の、素盞鳴尊(スサノオノミコト)による八岐の大蛇退治では酒が効果的に使われる。酔いどれた怪物を、素盞鳴尊は切り捨てるのだ。正々堂々とは縁がないけど知略は尽くしている感じが良い(笑)。そんな神話時代から、明治維新に至るまで、酒はどのように飲まれてきたのかをこの一冊で読めるのは嬉しい。

 恐らくは、米を噛んで醸した酒はいつしか伝統に入り込んでいく。平安期は貴族たちがほぼ独占したが、庶民もハレの場では口にすることが出来た時代から、公家を中心とした貴族文化から武士たちが歴史を動かすようになった鎌倉幕府成立以後、やがて江戸時代が外圧を期に終焉を遂げる。

 貴族たちのルールでガチガチの飲み会から、武士たちのどんちゃん騒ぎへ流れるかといえば、そうでもないのが面白い。東国の田舎武士たちにとっては酒を飲む機会はまだまだ少なかったのだ。当然、幕府成立と共に状況も変わる。源実朝が公家に接近しすぎて身を滅ぼした流れに、酒とのつきあいかたもしっかり軌を一にしているとは興味深いではないか。

 他にも有名ドコロがどのように酒と付き合ってきたか、実に豊富な話題で楽しませてくれる。飲兵衛にも歴史好きにも楽しめる一冊。そして、読み終わると日本酒を飲みたくなるというおまけ付きなのだった^^
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その他歴史 | 2013/11/26(火) 19:53 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1312冊目 組織を強くする技術の伝え方
組織を強くする技術の伝え方 (講談社現代新書)組織を強くする技術の伝え方 (講談社現代新書)
(2006/12/19)
畑村 洋太郎

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評価:☆☆☆


 "やってみせ、いって聞かせて、させてみて、 褒めてやらねば人は動かじ"とは山本五十六の名言である。その通りで、叱ることに教育効果が無いことは様々な動物実験を通じても明らかになっている。そう。貴方が良かれと思って子供や部下や後輩を説教しても、そんなものは全然効果ありません(笑)

 しかし、情報は伝わらないんだと諦めてしまう訳にはいかない。なので、褒めることも含め、どうやって技術を伝えていくかは大きな課題である。

 そんな問題に挑むのが、『失敗学のすすめ (講談社文庫)』で知られる著者である。正直、畑村さんでなければ手に取らなかった(笑)

 さて、技術が伝承されていかなければ行かないことは、納得できると思う。特に、技術が社会の基幹にある現在では、その重要性は増すばかりだ。では、どうやったら技術を伝えることができるか?そのヒントが本書にまとめられている。

 設計図は勿論のこと技術の革新が載っているものだが、それだけではなく、何故他の技術を選択しなかったのかということも残しておいた方が良い、というのは良いヒントになると思う。あるいは、マニュアルに依り掛かるのではなく、時代に合わなくなった標準やマニュアルはどんどん削らないと行けないなんて指摘は耳が痛い人が多いだろう。

 標準と言われるものは、それが生み出される何らかの背景がある。書類を作成した人には、理由も標準が守られない時に何が起こるかも分かっている。しかし、その標準が引き継がれていく間に、背景の知識が失われ、いつしか標準にあるから守る、となってしまう。ありがちな話だ。

 その最悪の例が、東海村JCO放射線臨界事故であろう。

 技術を形骸化させずに伝えていくためには、技術に携わる一人一人が、マニュアル類を墨守するだけではなく、その背景を理解し、古びたものは切り捨て、新たなる技術を見つけていく気概が必要なのだろう。位置エンジニアとして色々と考えさせられた。


関連書籍:
失敗学のすすめ (講談社文庫)失敗学のすすめ (講談社文庫)
(2005/04/15)
畑村 洋太郎

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技術 | 2013/11/24(日) 19:07 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1311冊目 植物はそこまで知っている ---感覚に満ちた世界に生きる植物たち
植物はそこまで知っている ---感覚に満ちた世界に生きる植物たち植物はそこまで知っている ---感覚に満ちた世界に生きる植物たち
(2013/04/17)
ダニエル・チャモヴィッツ

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評価:☆☆☆☆


 "this could be heaven or this could be hell"(ここは天国か、さもなきゃ地獄だな)はイーグルスの名曲ホテル・カリフォルニア(ワタクシめが生まれた年の歌であります)の一節であるが、このタイトルから感じるのはまさにこの歌詞。怪しすぎて、ハズレだったら電波にクラクラさせられるだろうけど、面白かったら意外な事実を知れるのではないかと期待もできる。

 ええい、ダメな本だったら散々にこき下ろしてやれば良かろう!と思って読んだら、面白い方だった。こみ上げてくる嬉しさに、一抹の不満が混ざるのはなんでだろう(笑)

 さて、本書は植物が外界からの刺激をどのように受け止めているかを追ったノンフィクションである。見た目にはただ地面に根を下ろし、そこで風雪に耐えて時を送るだけのような彼らは、意外な程に外界を認識している。

 例えば、植物の葉が成長する速度を測ろうと、毎日定規を当てて葉の長さを測定していると、他の葉はどんどん成長するのにその葉はいつまでも大きくならず、遂には枯れてしまった、という話が紹介されている。触りっぱなしではない。測定の時、ほんの数秒しか触っていないにも関わらず、である。

 何故このようなことが起こるのだろう?それは、彼らが害虫に喰われる被害を最小化しようと進化してきたからだ。

 そう。彼らは様々なことを知らなければ、生き延びて子孫を残すことができないのだ。桜が春に開花するのは、寒い時期を経る必要がある。とすると、彼らは寒い時期が来たことをきちんと覚えておかなければならないわけだ。

 視覚も触覚も、記憶力すらもが進化によって得られていることに驚かされる。

 勿論、これは植物を擬人化し過ぎた言い方だ。彼らには中枢神経系が存在しない。だから、得られた情報を中枢に集め、解析し、末端に指令を送るなんてことは無い。そういう点では、視覚や触覚という言葉を使うのは間違いなのだろう。それでも、彼らは光の波長の違いを知り、触れられていることを認識するのだ。凄いことはないか!残念なことに音楽は認識しないようだが(笑)

 植物の意外な姿を見せてくれるのが何よりの魅力。じっとしているだけではなく、こんなにも世界を認識しているのかと思うと本当に進化の力に驚かされる。そして、対象の凄さに溺れること無く冷静に分析しようとする著者の姿勢も心地よい。タイトルこそ怪しい印象を与えるが、中身は実にまっとうなノンフィクションであった。満足。
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生物・遺伝・病原体 | 2013/11/23(土) 19:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1310冊目 「誤解」の日本史
「誤解」の日本史 (PHP文庫)「誤解」の日本史 (PHP文庫)
(2012/03/03)
井沢 元彦

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評価:☆☆☆☆


 実は日本史についての知識がほとんどない。高校時代は世界史選択だったのだが、そのせいだけではない。社会科という科目に、中学生の時分から全然興味がなかったのだ。それなのに、5科目受験の高校に合格し、国立大学に進んだので、人生というものは分からないものです。

 閑話休題、本書は、日本史において通説とされていることが、どれだけ根拠が薄弱であるが、著者の意見を交えながら論じる書である。本書で提示されている、従来の常識を覆えさんとする意欲的な姿勢が、一石を投じる貴重なものなのか、はたまた単なるトンデモなのか、私のような者には判断するだけの知識はない。しかし、その上で本書はとてもおもしろかった。

 例えば、大友皇子と大海人皇子が皇位を争った壬申の乱。著者は、勝者の大海人皇子が即位するまで天皇位が空白だったとは考えられないと言う。しかし、大友皇子は即位していないことになっている。その差はどうして生じるのか?それは、文献にのみ寄りかかる姿勢があるからだ。

 しかし、歴史は勝者が作るものだ。記紀も、当然そうした来歴を持つ。それだけではなく、公文書も同じ性格にならざるを得ない。では、そうした偏った記述に基づいて、冷静にあるがままの歴史を紡ぐことはでいるか?答えは否、という著者の姿勢は至極まっとうである。

 ついでに、タイトルの付け方が面白い。壬申の乱に関するタイトルは"「あなたは、企業の創業者が身内に書かせた社史を頭から信用しますか?」"だ(笑)

 『源氏物語』は権力から逐われた源氏の怨霊を宥めるためだとか、平安京遷都も同じで奈良の大仏が見捨てられたのはお祓いの効果が上がらなかったからだ、等という主張はなかなか刺激的だ。信長の対宗教戦略が今の日本の宗教観に影響を与えている、という仮説も面白い。

 もちろん、定説にはそれが唱えられるきちんとした背景がある。だから、本書を鵜呑みにするのは正しくないであろう。そうした注意点を念頭に置いて読む分には、本書はとても刺激的で面白い読み物になると思う。
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その他歴史 | 2013/11/21(木) 23:05 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1309冊目 マヨナラ
マヨラナ―消えた天才物理学者を追うマヨラナ―消えた天才物理学者を追う
(2013/05/25)
ジョアオ・マゲイジョ

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評価:☆☆☆


 あれ?どこかで著者の名前を見たぞ?と、必死に記憶を取り戻すべく励むこと幾星霜、遂に思い出したのは、グーグル先生のおかげ。抜群に面白かった『光速より速い光 ~アインシュタインに挑む若き科学者の物語』の著者ということ。絶賛していたのにこの体たらくでございます。ともあれ、著者の書いた本なら面白かろうと手に取った次第。

 マヨラナの名を知る方は、専攻していたのでないならば、相当物理に興味がある人であろう。私はその名を知らなかった。

 1938年3月26日の夜、本書の主人公であるエットーレ・マヨラナは姿を消した。シチリア島のパレルモからナポリに向かう船上から。彼が天才物理学者であったことから、単なる自殺説の他に、行方を眩ましたのだ、外国に拉致されたのだ、という説が飛び出した。もっと、遥かに荒唐無稽な説まで。その真相は、今日に至るも明らかになっていない。

 陰謀説には現実味がないとして、ではマヨラナはどうして自殺にしろ行方を眩ましたにしろ、窮地の人々の前から姿を消すことにしたのか。それには、マヨラナの生涯に迫らなければならない。

 というわけで、本書はエットーレ・マヨラナという稀代の天才が、いかにして才能を育み、何を成し遂げ、そして消えるに至ったかに迫ったノンフィクションである。

 この有名とは言えない人物(有名な概念で彼の名を冠されているのはマヨラナニュートリノくらいだ、という)が、20世紀最高の科学者の1人、エンリコ・フェルミが及びもつかないほどの天才であったと言えば、その凄さが分かるだろうか?

 1900年代の前半は間違いなく物理の時代で、驚くような発見が次々と為されていた。そんな中にあって、マヨラナは時代の最先端を行く発見をし続けた。それなのに、彼はそれを論文に纏めることすらしなかった。彼にとって、それらは簡単な計算に過ぎなかったから。

 そして、物理の世紀はまた、暗い時代へも繋がっていた。1つは、世界を覆った戦争、そしてもう1つは、戦争と密接な関係がある発明、即ち原爆へと。

 物理学者たちは、ウランに中性子をぶつけると、核分裂によって複数の中性子が発生することを知った。核分裂で発生した中性子が、また別のウラン原子を分裂させ、そして新たに発生した中性子が、と、この経路はどこまでも続く。膨大なエネルギーを生み出しながら。それが恐るべき威力を持つ兵器となることを、マヨラナは知っていただろうか。それが、失踪の一因なのだろうか?

 本書でも、その答えは出ない。マヨラナがどうなったのか、また、マヨラナが予想した世界観は正しいのか。前者は永遠に解かれることのない謎であろう。後者はどうか?それは、きっと今後の物理学が解き明かしていくに違いない。つまり、本書で我々が知ることが出来るのは、過去の考えと、未来の理論をつなぐ現在の混沌とした状況を知ることに過ぎない。でも、それが自然科学の面白さであろう。20世紀の物理が成し遂げた偉大な発見の数々に興味が有る方は楽しめるのではないか。


関連書籍:
光速より速い光 ~アインシュタインに挑む若き科学者の物語光速より速い光 ~アインシュタインに挑む若き科学者の物語
(2003/12/26)
ジョアオ・マゲイジョ

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ノンフィクション | 2013/11/20(水) 23:07 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1308冊目 超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか
超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか
(2012/02/11)
リチャード・ワイズマン

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評価:☆☆☆☆☆


 よく当たると評判の占い師がいる。話をした人は、余りにも的確に自分のことを言い当てるので感激し、つい信じてしまう。あるいは、超能力を使えると自称する人がいる。いかがわしい主張だというのに、大量の信者が付いていることがあることはご存知だろう。あるいは体外離脱(しばしば臨死体験時に起きるという)や幽霊、死後の世界との通信といった、人の精神は肉体という物質に捕らわれたものではないと示唆することを信じる人々もいる。

 嘆かわしいことに、科学や技術がこれほどまでに進んでも、少なからぬ人の精神はまだまだ迷妄の中にある。何故か?それは、人の脳が、不十分な情報の中から自分の生存に最大限有利な状況を選択できるように、しばしば論理的な考えをすっ飛ばしたり、関係のないものにでも関連を見出そうとしてきたからなのだろう。つまり、人が愚かだからではなく、人の限界として、これらの問題は問題たり得ているのである。

 本書は、これらのオカルトと言われるものが、どうして正しくないか、どうして人は騙されてしまうのかを、面白おかしく解き明かしてくれている。

 例えば、占い師が客のことを言い当てるのは、意識的か無意識的かは別としてコールドリーディングと呼ばれるテクニックを使っていたり、誰にでも当て嵌まるようなことを言ったり、果ては外れた項目は意識に残りにくく当たったものは記憶に残るという人の身勝手さが根底にあったりする。だから、評判の占い師であっても、客を見るだけでは占いを当てることは出来ない。なぜなら、これらのテクニックが使えないからだ。

 あるいは、ヨーロッパで流行った降霊術。評判になった降霊術に懐疑的な人が混じり、観察すればそこには必ずイカサマがあった。日本で言うところのこっくりさんに相当するウィジャ盤が、霊からのメッセージなどではなく、参加者の無意識の動きによるものだと明らかにしたのはファラデーであった。彼の優れた実験こそ、歴史を超えて語り継ぐ価値がある。

 本書の最終章、カルトによるマインドコントロールは、恐ろしい悲劇を見据えてのものだけに圧巻だ。人民寺院というカルトが、900名メンバーの集団自殺で消滅するその事実は余りにも奇怪である。オウム真理教でも同様のことがあったことを思えば、何故このようなカルトがのさばり得るのかを知っておいて悪いことはなかろう。

 こうした問題それぞれについて、どうして人が過ちを信じるのか、そのメカニズムを丁寧に書いてくれている。しかも、文章が面白くて読み易い。世に蔓延るオカルトをただ弾劾するのではなく、人が誤解しやすいという弱さに踏み込んで、その上で過ちは過ちだとするところには温かみすら感じられる。多くの人に読んでもらいたい。きっと、自分自身の認識の弱さを知り、騙されなくなることに繋がるだろうから。
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反疑似科学・反オカルト | 2013/11/17(日) 19:54 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1307冊目 狼の群れと暮らした男
狼の群れと暮らした男狼の群れと暮らした男
(2012/08/24)
ショーン エリス、ペニー ジューノ 他

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評価:☆☆☆☆☆


"ロッキー山脈の森の中に野生狼の群れとの接触を求め決死的な探検に出かけた英国人が、飢餓、恐怖、孤独感を乗り越え、ついには現代人としてはじめて野生狼の群れに受け入れられ、共棲を成し遂げた稀有な記録を本人が綴る。"


 表紙にこんな文章を持ってくるなんて、もう反則技としか思えない。野生の狼の群れと暮らしただって?そんなの読まないわけに行かないではないか!そんな軽いノリで読み始めたのだが、これが想像以上に重厚なノンフィクションで、ぐいぐいと引き込まれてしまった。

 まず、著者の幼年時代から話が始まる。小さな農村で色々な動物に囲まれて生活してきたこと。犬を愛し、キツネの排除に反対していた子供時代。ひょんなことから所属することになった軍隊生活について。そんな中で、ボランティアとして参加した動物園に居た狼が彼の人生を変える。ここで感じた狼への情熱は止み難く、いよいよロッキーへと向かうのである。

 冗長なようでありながら、こうした経験が無ければ著者が狼に受け入れられることは絶対に無かったことを考えると、必須の過程であることが分かる。

 幾多の辛苦の末、著者はなんとか狼と接触することに成功する。言葉の通じない外国人の中に放り込まれたなんてレベルの話ではない。相手は、我々人類とは生き方も、仲間との接し方も全く異なるルールに支配された存在だ。もちろん、安易な擬人化など役に立たない。むしろ、そんなことをすれば群れに入れてもらえるどころか、胃袋に入れられてしまうだろう。

 狼がどうやって群れを作るか。メンバーはどのような役割を果たすのか。どうやって子育てをするのか。

 こうした問いの答えを、群れの外から探るのは難しい。なにせ、決定的なシーンに居合わせることがそもそも至難の業だ。ところが、著者が選択した、最下層のメンバーとして群れに加わる方式では観察が極めて容易なことが分かろう。

 だからこそ、彼の目を通して語られる狼の姿は実に面白い。

 例えば、攻撃するときに戦闘に立つのがリーダーかと思っていたらそうではないという。むしろ、リーダーは群れを生きた形で残すために自分は戦いに参加しないというのである。攻撃に向かうのはベータと呼ばれる存在で、アルファと呼ばれるリーダーは支持を出すだけなんて、まるで参謀組織のようではないか。また、アルファオスが必ずしもメスとつがいになるわけでもないとは知らなかった。その他のハーレムを作る動物と違うところが実に興味深い。

 群れのありかたや、仲間同士でのやりとりあたりも実に面白いのであるが、とても書ききれるものではないので興味が湧いた方は是非本書にあたってみて欲しい。

 著者による狼論は、専門家の意見とと食い違うことも多いと言う。しかし、野生で2年間、飼育下においてライフワークとして密着し続ける著者の意見が重いことは事実だろう。彼らがそうしようと思えば、著者の命はあっという間に奪われることを考えればその凄さが分かろうというもの。

 狼がどのような生き物かを知れば、彼らの存在と、彼らの子孫である犬が益々凄い生き物だと感じるようになると思う。私としては、増えすぎたシカ対策として、狼を導入するのも悪くはないのかもとちょっと思った。もっとも、ハイキングに行って彼らに遭遇するような事態は避けたいが(笑)
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ノンフィクション | 2013/11/15(金) 19:52 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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1306冊目 アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない
アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (文春文庫)アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (文春文庫)
(2012/10/10)
町山 智浩

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評価:☆☆☆☆☆


 大義のない戦争に自国を引きずり込んで国力を消耗させ、外交関係の悪化と国力の低下を招く大統領。彼は同時に金持ちだけを優遇して、国民の健康も雇用も無視したおかげで中産階級は崩壊、とんでもない格差社会を現出させた。どこからどうみても、ジョージ・W・ブッシュは無能な人物である。ところが、彼は有能な父ですらやり遂げられなかったことをやった。大統領再選という、偉業を。

 外国から莫迦にされまくっているこの人物を再選させたのは何なのか?本書を読めば、その正体がアメリカに蔓延するおぞましい程の反知性主義であることが分かる。ちょっと長くなるが本書から引用しよう。

 例えば、ナショナル・ジオグラフィックが2006年に18~24歳のアメリカ人に対して行った調査によると、88%は世界地図を見てもアフガニスタンの位置がわからず、63%はイラクの場所を知らなかった。
 「アメリカが外国に戦争を仕掛けるのは地理の勉強をするためだ」というジョークがある。パスポートを持っているアメリカ人は国民の2割にすぎない。他の8割は外国に関心がない。彼らが外国の土を踏むのは、銃を持って攻め込む時だけだ。
(P.11より)


 更に、続く調査結果としてタイトルの事実が明かされる。

 こんなレベルの人々が、世界最強の軍事力を持つ国の首長を選ぶとは恐ろしいことではないか。それだけではない。選挙戦略として共和党がキリスト教右派と手を結んだお陰で、共和党の主張はどんどん過激になって行く。国民全員をカバーするような保険制度が存在しないため、病気になることがホームレスへの転落に結びつくリスクまである。

 驚くようなそんな現状を、本書はあるときは対象に密着するように、ある時には俯瞰して眺めるようにしながら上手く紹介してくれている。知識のある人々と、ニュースにすら触れようとしない人々との間の知の断絶は深い。それなのに、彼の国では知の大切さを知らないどころか認めようともしない人々が多いのだ。

 呆れるばかりの現状であるが、それはブッシュが去ってオバマがやってきた今では変わっただろうか?少なくとも、共和党の大反対を押し切って国民に医療を提供しようとするシステムを導入できたのは大きなメリットだろう。後は、アメリカがこの数年間行ってきた愚かな行動を、きちんと国民が認めていくことなのだろうが、それは難しいだろうな。時間を掛けて、少しずつアメリカがより良い社会になって行くことを、部外者からすれば祈るしか無さそうだ。

 それでも、まずはアメリカがどうしてあのような行動に走るのかを知るにはもってこいの書。冷たく突き放す姿勢ではではなく、愚かなところはおかしいと言いながらアメリカのパワーを信じているからこその温かみのある雰囲気が魅力。アメリカを知るためには向いているだろう。
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ノンフィクション | 2013/11/13(水) 19:14 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1305冊目 やし酒飲み
やし酒飲み (岩波文庫)やし酒飲み (岩波文庫)
(2012/10/17)
エイモス・チュツオーラ

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評価:☆☆☆☆


 ブクレコで仲良くさせて頂いているefさんのレビューを拝見して存在を知った本。

 "わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった。わたしの生活は、やし酒を飲むこと以外には何もすることのない毎日でした。"という書き出しで始まるぶっ飛んだ設定。だが、この"わたし"の生活は暗転する。街一番の金持ちだった父が死んでしまい、その後を追うかのように父が雇ってくれた専属のやし酒造りの名人も死んでしまう。やし酒を失った"わたし"からは友だちまで居なくなってしまい、彼は孤独をかこつことになる。

 やし酒を飲むしか能のない男がやし酒を失ったら大変だ。斯くして、彼は親友エンキドゥの魂を追い求めたギルガメッシュよろしく、やし酒造りの名人の魂を求めて旅に出るのである。

 そこで明かされる意外な設定は、なんと彼は"この世のことならなんでもできる、やおよろずの神の<父>"であるということ。おいおい、だったらやし酒くらい自分で作れよ(笑)

 ともあれ、彼は竹取物語でかぐや姫が出すような難題をふっかけられてはジュジュという、一種の呪術を用いたり機転で切り抜けたりしながら冒険を続ける。途中、妻を娶ったり子供に恵まれたり(ところがこの子供がまた変な子で、両親は体よく厄介払いしてしまう^^;)しながら死者の国へ旅を続ける。果たして、彼はやし酒造りの名人に再会することができるか?

 面白いのは、死後の世界に向かうのに、彼が通って行くのは森林であること。日本神話にある黄泉の国のような、地下ではない。天の上でもない。ジャングルだ。そこにアフリカで生まれた物語であることを強く感じさせる。

 そして、森のなかには不思議な生物が大量にいるのだ。住人に生け贄を要求する赤い魚と赤い鳥やら、「腹ぺこだ!腹ぺこだ」と言い続け、なんでも平らげてしまう飢えた生物やら、いつまでも一緒に踊り続けるのを要求する「山の生物」やら。

 幾度か主人公たちは死ぬような目に遭わされるのだが、どことなくユーモラスな怪物の姿に、恐怖感は感じない。解決策だって、唐突に何かを思い出してみたり、偶然のお陰だったりと、全然英雄的ではない。なので、著者の想像力の豊かさを楽しんでいるうちに物語が進んでいくという不思議な感覚があった。文化が違う故か、おいおい、そんなのありかよと思わされる展開があるのもまた面白い。一風変わった小説。
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その他小説 | 2013/11/11(月) 19:06 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1304冊目 それでも私は腐敗と闘う
それでも私は腐敗と闘うそれでも私は腐敗と闘う
(2002/05)
イングリッド ベタンクール

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評価:☆☆☆☆


 コロンビアにどのようなイメージが有るだろうか?コーヒーで有名?確かに、それが一番広く知られたことかもしれない。バラ?確かにそれも知られている。だが、コーヒー農園やバラ園という牧歌的なイメージは、実際のコロンビアを正しく示してはいない。

 コロンビアは、コカインの世界有数の産地である。有力なコカイン密売人たちは、その豊富な資金力を活かして政治に取り入っている。そのためにコロンビアは政界の腐敗に関してもまた有名なのだ。

 彼らの力の大きさは、『パブロを殺せ―史上最悪の麻薬王VSコロンビア、アメリカ特殊部隊』で描かれた麻薬王パブロ・エスコバルの事例を見てみれば分かる。彼は政治的な潮流が変わって軍によって射殺されるまで、数多の殺人を含む凶悪犯罪を犯しても誰からも手出しされなかった。あたかも、中世の封建領主並みの力を持っていたのだ。

 腐敗と闘う気骨のある人物は居ないだろうか?居る。それが著者、イングリッド・ベタンクールである。ナポレオンの麾下にでも居そうな姓を持つこの女性は、大統領にまで至る腐敗を糺そうと立ち上がった。コロンビアでそんなことをやるのがどれほど勇気がいることか分かるだろうか?それを知るには、本書の最初の数ページを読めば良い。彼女は、殺害の予告を受けるのだ。しかも、彼女の幼い子供たちもターゲットだと告げられる。

 恐ろしいのは、彼女が警告を受けた場所である。日本で言えば議員宿舎にでも当たるのだろうか。国会議員の紹介がなければ決して入ることの出来ない場所。そこに、麻薬組織からのメッセンジャーが容易に入り込める。一体、どこまで腐敗が進行しているのだろう。

 それでも私は腐敗と闘う。こうした社会でそう宣言するのは、凄まじい勇気が必要である。それでも彼女は戦い続けた。

 本書は彼女の半生を描いた自伝である。

 政治家の両親の元に生まれ、お嬢様として育った子供時代。両親が政治的な信条の違いもあって離婚した精神的に苦しい時代。そんな彼女はやがてフランスの外交官と結婚し、2人の子供に恵まれる。しかし、何不自由ない外国生活は彼女の心を満たしはしなかった。母国コロンビアに対する愛国心。

 きっと、コロンビアが豊かな国であれば、そんな心情は目覚めなかっただろう。母国が苦しんでいる中で、自分だけが外国で豊かな暮らしを送ることに耐えられなくなったのだ。腐敗と闘う政治家がテロに遭って殺されるような母国を見ていられなくなったのだ。

 そして彼女は政治の世界に飛び込む。無名に過ぎない彼女が取った戦術は、選挙でコンドームを配布すること。腐敗から身を守るためのコンドーム足ろうとのことだというが、その度肝を抜かれるパフォーマンスで一躍彼女は有名になる。そして、そこからは腐敗と戦い続ける真摯な姿で支持を集め続けた。麻薬組織に拉致されるまでは。

 腐敗した議員を名指しで批判し、大統領であろうとも厳しく弾劾する姿には頭がさがる。余りにも腐敗した議員が多く、時に裏切られ、時に失望しながらも希望に向かって進もうとする彼女の姿は眩しい。だからこそ、彼女のようにコロンビアを真に良くしようとした人物が卑劣な犯罪に巻き込まれるのは、彼の国にとって大いなる損失であると思われてならない。

 どのような社会を作るべきなのか、そのためには何が必要なのか。そうしたことを考えさせられるノンフィクション。

 彼女は6年以上にも及ぶ誘拐を経て、無事に解放された。だが、今もコロンビアは変わってはいない。それでも、彼女のように真の意味で勇気を持つ人が出てきているのはきっと一筋の希望の光なのだろう。彼の国がもっと良くなるように、陰ながら応援したくなった。
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ノンフィクション | 2013/11/09(土) 19:14 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1303冊目 フンころがしの生物多様性
フンころがしの生物多様性 自然学の風景フンころがしの生物多様性 自然学の風景
(2010/08/25)
塚本珪一

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評価:☆☆


 古代エジプトで尊崇された昆虫、スカラベ。そう言うと格好良く聞こえるから不思議だが、いわゆるフンころがしである。彼らはあの小さな体が自分よりも大きなフンの塊を転がしていく姿はどことなくユーモラスだ。種類によってはコガネムシのように美しい見た目を誇る。

 そんなフンころがしは、分解者として極めて重要な立場にある。フンを餌にすることで、フンを土に返す役割を果たしているのだ。

 主に哺乳類のフンを利用するため、農場にも多いという。そうした事実は、人間と彼らは酪農という接点で切っても切れない関係にあるのかもしれない。

 本書は、日本に生息するフンころがしについての文章を集めたもの。どことなくエッセイチックで、どこか研究ノートっぽく、またある時は環境保護や生物多様性の重要性を訴える啓蒙活動家らしい。その分、テーマが絞りきれておらず、やや散漫な印象を受けるのは残念。また、やや文章がぶつ切りになっていて、段落の前後の繋がりが分かりにくいのもあって、イマイチ集中して読むことができなかった。

 それでも面白い話はある。

 例えばキツネのしかけるマイトラップ。なんと、自分のフンに集まってくるフンころがしを捕食しているという。捕食を逃れたフンころがしはキツネのフンで次世代を育み、彼らの多くはキツネの餌となって最終的にフンになる。食物連鎖の妙がここにある。

 フンころがしについて知るチャンスは中々無いだろうから、そういった点で貴重な価値を持っているかもしれない。
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生物・遺伝・病原体 | 2013/11/08(金) 23:46 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1302冊目 ブラック・スワン降臨―9・11‐3・11インテリジェンス十年戦争
ブラック・スワン降臨―9・11‐3・11インテリジェンス十年戦争ブラック・スワン降臨―9・11‐3・11インテリジェンス十年戦争
(2011/12)
手嶋 龍一

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評価:☆☆☆☆☆


 2011年5月2日、パキスタン。闇を衝いて、漆黒のヘリコプターがある屋敷を襲撃した。目的は唯1つ。そこに潜む人物を殺害することだけだ。そのターゲットとなった人物こそ、ウサマ・ビンラディン。911以来、アメリカが威信にかけて追い続けた。遂にその日が来たのだ。パキスタンにすら告げない極秘の作戦だった。

 他国の主権を侵してまで作戦開始に踏み込めたのは、それだけ確度の高い情報を、オバマ政権が握っていたからだ。超一級のインテリジェンス。それは、悪名高きグアンタナモからもたらされた。

 本書はウサマ・ビンラディン殺害から時代を遡って911へ、そして再び時計を進めて311へ向かう構成を取っている。そう聞くと分かりにくいように思うのだが、ある事実と別の事実の思わぬ繋がりに目を奪われているうちにどんどん読み進めることが出来る。

 確かに、アメリカはイラクとの戦端を開くに当たってとても言い逃れの出来ないようなミスを犯した。"カーブボール"と呼ばれる、インチキな情報屋に騙され、イラクに大量破壊兵器があると信じ込んでしまったのだ。それはアメリカを大義のない戦争へ向かわせ、そしてアメリカの国力を落とした。

 それでもアメリカのインテリジェンスは、かなりしっかりしている。翻って日本を見ると、インテリジェンスを専門に行う独立した機関は存在しない。つまり、独自の情報すら掴むことが出来ないというお粗末な状態だ。

 また、シンクタンクのような、政府外でのしっかりした政策や外交の研究所が無いのも痛い。学者と政策立案担当がプールされているような、そんな組織は有能な専門家を生むための母体となる。そうした組織がないことが、与野党ともに官僚に頼るしか無い政治家を生んでいるのかもしれない。

 そう嘆くのも、本書の後半で徹底して批判される日本の状態が余りにも酷いからだ。その時代的な面から、主に俎上に載せられているのは民主党政権ではある。普天間基地を巡ってアメリカとの関係を決定的に悪化させ、311でも必要とされるリーダーシップを取ることが出来なかった。それは批判されて然るべきだ。

 311の時、米軍は素早く動いた。もちろん、日本のためだけではない。アメリカの国益がそこにあるから、だ。それでも、その機動力と意志力は、日本を圧倒した。皮肉にも、阪神大震災で何もしなかった日本政府の姿から最も学んだことが多いのは、米軍であるのかもしれない。

 ともあれ、私には311についてもインテリジェンスの問題であるという認識はなかった。蒙を啓いてくれたことに感謝。

 多大な情報を集め、整理し、為政者が利用できる形で届ける。そうした人材はこれからどんどん必要とされるだろうし、されるようにならなければならない。そうした動きには注目していきたい。
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ノンフィクション | 2013/11/06(水) 19:43 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1301冊目 「想定外」の罠―大震災と原発
「想定外」の罠―大震災と原発「想定外」の罠―大震災と原発
(2011/09)
柳田 邦男

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評価:☆☆☆☆☆


 著者の柳田邦夫さんといえば、航空機事故を扱った『マッハの恐怖 (新潮文庫)』や、スリーマイル島事故の経過を克明に追った『恐怖の2時間18分 (文春文庫)』等、災害や事故を多く取り上げてきたことで知られるジャーナリストだ。言わば、事故や災害を熟知した、この分野のプロと言える。そうした立場の方が、311をどう受け止めたのかに興味があって読んだ。

 相変わらず、驚くほど深く調査をされているし、その成果をとても分かりやすく文章に纏められている。本当に頭が良い人だとつくづく思う。そしてもう一つ著者を特徴付けているのは、弱者に寄り添おうとする姿勢であろう。それ故に、どれほど複雑な問題を論じていてもそれを感じさせないのが本当に凄い。

 東日本大震災後の福島第一原発の事故で散々語られた「想定外」。それを、著者は本当に想定できなかったことではないと指摘する。多くは、実際には想定されていたものの、確率が低いからあるいは経済的に割が合わなくなるからという理由で対策をしなかったことに過ぎないと手厳しく批判する。

 そして実際、専門家は警鐘を鳴らしていた。これもまた、本当の意味で「想定外」だったわけでは無かったのだ。

 想定されていたにも関わらず対策が為されなかったが故に発生する問題を、どうやったら防ぐことができるか?本書にはそのために必要となる考えが幾つも提示されている。読めば読むほど、事故につながりかねない構造的な欠陥を放置し続けた東電の責任は重いと感じる。そうして批判しつつも「だから全ての原発をすぐに停止せよ」という結論になっていないところも凄い。著者の思考の深さを感じさせる。

 続いて、広島・スリーマイル・チェルノブイリ・東海村と、幅広く核の絡む問題を取り上げる。そのため、核をエネルギーとして用いることにはどのような危険性が潜んでいるのか、その問題へはどうやって対処していくべきなのか、考えさせられる。

 更には、事故の原因となった地震にどう備えるかにも触れている。特に、阪神大震災についての話には学ぶところも多かった。中でもアメリカのFEMAの紹介は貴重。災害対策のプロを、きちんと政府が持っておくことの重要性は、災害の多い日本にあって幾ら主張してもし足りないくらいだろう。

 「想定外」の事故を無くすためにできることはなにか?これは行政に限らず、我々にも必要とされる考えだろう。本書はそのための絶好のツールとなると思う。


関連書籍:
マッハの恐怖 (新潮文庫)マッハの恐怖 (新潮文庫)
(1986/05)
柳田 邦男

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恐怖の2時間18分 (文春文庫)恐怖の2時間18分 (文春文庫)
(1986/05/11)
柳田 邦男

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ノンフィクション | 2013/11/04(月) 19:22 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1300冊目 チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書 [最新版]
チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書 [最新版] (SANGAKUSHA Vita(産学社ウィタ))チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書 [最新版] (SANGAKUSHA Vita(産学社ウィタ))
(2013/05/10)
ベラルーシ共和国非常事態省チェルノブイリ原発事故被害対策局/編

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評価:☆☆☆☆


 まず書いておくが、本書は決して読み物として楽しいものではない。かなりの部分は無味乾燥な事実の羅列であるから。では、読む価値はないのか?勿論、そんなことはない。

 まず、ベラルーシはかなり徹底した健康管理をやっていることで知られるのであるが、その成果を簡潔にまとめてくれているのが有難い。

 その研究成果を一言で表現したのが以下。

"被災者全体については総じて健康状態の悪化傾向は見られていない"
"事故処理作業員のがんの発生率は、同じ年令・性別グループのベラルーシの住民と比較しても大きな差はないということです。ただし、特定部位について過剰な発生が見られます(皮膚がん、腎臓がん、膀胱がん)"

 これは(分かっていたこととは言え)福島にも朗報になるだろう。チェルノブイリよりも放出された放射性物質が少ない福島で、チェルノブイリ以上の害があるとは考えられないから。

 一方で、チェルノブイリ原発周辺のダメージの状況には暗澹たる思いがする。なにせ、中性子の減速材として使っていた黒鉛が燃えたせいで、原子炉内から大量の超ウラン元素が飛び散っている。こうした元素は半減期が非常に長いため、今後も数百年単位で人が住むことは困難とされる。福島を始めとする日本の原発が同じタイプではないことは本当に有難い。

 次に、放射性物質に汚染された地の有効活用方法や、健康被害を抑えこむために何ができるかを丁寧に解説してくれているところが良い。特に土壌から作物への放射性物質の移行を防ぐための手法については日本でも参考になることは多いのではないだろうか。問題は私が読んでも役に立つわけではないところか^^;

 日本で起きたことは特殊で前例がないことだから予防原則でとか主張する向きもあるが、それは端的に言って、過去に学ばない反知性主義に過ぎない。こうした過去の事例を真摯に受け止め、それを活かさないならばこれまで人類が積み重ねてきた知そのものが無駄になる。

 まずは、適正な対応をしていけば統計的にはっきり分かるような害はないことを認識し、そのためにはどのような対処が必要なのかを学ぶのに調度良いだろう。

 それにしても、事故後のベラルーシでは放射線生物学の専門家を大量に輩出したというが、そうした専門知を身につけたプロフェッショナルをきちんと配置していくことは是非見習って欲しい。そして、子供たちはあらゆる段階で放射線生物学の知識を授けているところは本当に素晴らしい。こうした、知を尊重する姿勢こそ災害に立ち向かうのに必要だと強く感じた。

 読み物として面白みはなくとも、福島の問題に興味を持つ方には是非読んでもらいたい。併せて『人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用』もお勧めです。


関連書籍:
人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)
(1998/12/18)
近藤 宗平

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ノンフィクション | 2013/11/02(土) 19:55 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1299冊目 オーロラ―太陽からのメッセージ
オーロラ―太陽からのメッセージ (ヤマケイ情報箱)オーロラ―太陽からのメッセージ (ヤマケイ情報箱)
(1999/12/01)
上出 洋介

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評価:☆☆☆




 極地の夜空を彩る光の饗宴、オーロラ。太陽を発したプラズマが地球の磁場によって極地方へ導かれ、そこで空気と衝突して蛍光を発する現象。文字にしたら無味乾燥だが、実物は息を呑むほどの迫力だという。

 このオーロラの謎に迫っているのが本書。

 まずは図版が多いことが嬉しい。どうやったって全天を覆う本物のオーロラの迫力は出せっこないのではあるが、それでもイメージを掴めるのと掴めないのとでは全然違う。

 次に、オーロラについての分析的な話に留まらず、極地に住む人々がオーロラをどの様に受け止めてきたか、どう語り継いできたかといった文化的な面や、何時どこに行けばオーロラに遭遇できそうか、写真の撮り方はどのような方法が適しているかといった観光ガイド的な面まで実に幅広く論じているのも良い。

 で、私としてはどうしても分析的な面に興味が向く。

 太陽活動とオーロラの活動の関係(意外なことに黒点周期とは一致しない)、オーロラに強烈な電流が流れていることあたりは、地球の、そして宇宙の神秘を感じさせてくれる。地球以外の惑星のオーロラまで写真で載せてくれているので、太陽系に生まれた兄弟惑星たちに親近感も湧いてくる。

 こうした点に興味が無い人でも、ページを捲って写真を眺めるだけでも楽しいと思うし、地球の面白さを知るにも良いと思う。オーロラに興味が湧いた方は、ちょっと覗いてみては如何ですか?
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その他科学 | 2013/11/01(金) 19:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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