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Author:Skywriter
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お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
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1264冊目 スウェーデンはなぜ強いのか
スウェーデンはなぜ強いのか (PHP新書)スウェーデンはなぜ強いのか (PHP新書)
(2010/07/16)
北岡 孝義

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評価:☆☆☆


 タイトルを見て、なんとなく冬戦争を思い、いやいや、それはフィンランドだろと思い直した次第であります。

 改めてスウェーデンについて知っていることといえば、福祉が充実しているIKEAで有名な北欧の国という他には、せいぜいグスタフ・アドルフ王とノーベル賞の授賞式がスウェーデンのストックホルムで開かれるくらい。それでは話にならないというわけで読んでみた。

 福祉によって国民が手厚く保護されているとなると、どうしてもソ連のような悲惨な失敗を思い浮かべがちだが、スウェーデンは失敗国家からは程遠い。確かに、福祉は物凄く手厚い。本書を読めば、失業した際のセーフティーネット、教育、医療、介護、いずれも日本を遥かに上回っていることが分かる。

 その福祉を確保するために、税金は高い。

 では、その高い税金を忌避すべきなのだろうか?スウェーデンの姿を見れば、そうも思えなくなる。そもそもカネが必要なのは生活のためであるが、そのうちの教育、医療、介護はしっかり国が出してくれるとなったらどうだろう?万が一の事態に対し、個々人が備えるなら、保険やら貯金やらにカネを回すしか無い。一方、国がその面倒を見てくれるという信頼感が有れば、貯められているだけの資金は流動化し、経済を動かすことになる。

 そうなると企業活動はどうなるのだろうと思っていたが、そんなものは解決済みのようだ。企業活動はかなり自由であり、また、セーフティーネットがしっかりしているからリストラも容易であるため、人材の流動性は激しい。それは優秀な人が適材適所に配されることを意味するだろう。

 IKEAやH&Mのように、安価でありながら品質の良い商品を生み出す企業の存在の背後にも、彼らなりの思想があるのが分かる。

 福祉を重視しながら資本主義をしっかり守るというバランス感覚は絶妙と思う。そして、そのバランスは、国民の高い政治意識によってもたらされているという指摘は重い。彼の国では投票率は毎回80%を超えるそうだし、政治活動に使ったカネは1クローネに至るまで領収書が義務付けられている、という。政治の透明性が確保されているところも見習いたい。

 北欧の小国と片付ける訳にはいかない存在感を持った国なのだということを教えてくれた。勝手なイメージを打ち砕いてくれるのが心地よかった。そして、見習うべきことが沢山ありそうなところも良い。政治に携わる方には、是非ともスウェーデンの良い所を学んで欲しい。

 福祉を重視しなくても良い。だが、少なくとも政治への関心の高さはどうやって維持されているのかと、政府の透明性をどのように確保しているか、それは学んで損することは絶対にないと思う。最後に、著者のまとめを引用して終わりにしようと思う。

 われわれ日本人は、スウェーデンから何を学ぶべきであろうか。ここまでくれば、もはや明らかであろう。われわれ日本人が学ぶべきは、スウェーデンの個々の具体的な福祉政策ではなく、福祉政策をうまくワークさせているスウェーデンの国民の制度や政治に対する信頼だ。信頼という無形の社会資本である。そして、その信頼がどのように形成されているかをスウェーデンから学ぶべきだ。(P.184)

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ノンフィクション | 2013/08/30(金) 19:05 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1263冊目 書き替えられた聖書―新しいモーセ像を求めて
書き替えられた聖書―新しいモーセ像を求めて (学術選書)書き替えられた聖書―新しいモーセ像を求めて (学術選書)
(2010/12)
秦 剛平

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評価:☆☆☆


 聖書は、単一の人物が作り上げたものではない。何人もの人が伝説を書き連ねてきたものだ。だから、その時代時代に受け入れられていた物語や常識や偏見が聖書には入り込んでおり、もとの姿を取り戻すことなど不可能になっている。

 どの部分が何時の時代に(可能であれば誰によって)書き加えられたかを探る研究を、聖書学という。で、その聖書学なのかと思ったらちょっと違った。本書は、1世紀のローマに生きたフラウィウス・ヨセフスが記した『ユダヤ古代誌』で語られるモーゼの物語を取り上げ、これがどれほど五書と呼ばれる経典と異なるかを論じたものである。

 本書をよめば、まだキリスト教化していないローマにおいて、キリスト教を説くことがどれほど大変なことであったか、その苦労が偲ばれる。そのために、ヨセフスはモーゼが犯した殺人・死体遺棄・逃亡には触れない等の工夫を行っている。それは、経典は聖なるもので如何なる書き換えも許さないという立場からすれば許されないことかもしれないが、布教活動においては役立つものであっただろう。

 著者はどこが書き換えられているかを丹念に追っていく。テキストを丁寧に読み比べることで、ヨセフスの意図を把握しているのは見事。

 ところどころにキリスト者ではあり得ない冷めた発言があるのも、非キリスト者である読者には面白いかもしれない。なにせ、冒頭からしてモーゼの物語を出来の悪いフィクションであると断じるのだ。その理由を聞けば納得もするが。少々茶々を入れすぎと感じる点もないわけではなかったが、読んでいて楽しかった。

 ただ、どうやら本書は先行する『異教徒ローマ人に語る聖書』の続編らしく、前著でどうのこうのといった話が出てくるのはちょっと不親切である。なにせ、カバーを見ても続編であることなんてわからないから。

 仮にヨセフスや、ローマにおけるキリスト教の立場について興味がなくとも、モーゼが原典ではどの様に描かれているのか、その物語のどこにムリがあるのかを見るには良いであろう。


関連書籍:
捏造された聖書捏造された聖書
(2006/05)
バート・D. アーマン

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その他歴史 | 2013/08/29(木) 19:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1262冊目 モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)
モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣) (このライトノベルがすごい!文庫)モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣) (このライトノベルがすごい!文庫)
(2011/09/10)
谷 春慶

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評価:☆☆☆☆


 うわぁ、なんだこのタイトルは(笑)。私がラノベを良く読んでいた黎明期とはあらゆる点で違うなぁ。そんな感慨は兎も角、これも博識極まりない友人に勧めてもらったもの。驚いたことに、これがどうしてなかなか面白い。

 主人公の望月砕月は、一緒にいるのが♀でさえあれば老若男女は勿論のこと、種の壁を超えてまで口説かずには居られないという特殊な病気に罹っている。常軌を逸した設定だがそうなのだから仕方がない(笑)。その結果、なんと学校でも有数の美少女と交際することに成功していた。2人の。

 栄華が極まった時には、既に破滅の芽が内包されているもの。栄華盛衰はこの世の必定である。詰まるところ、二股がバレて修羅場なところから物語は始まる。どういうことか説明しろと迫る美少女たちに、主人公はこう言うのだ。「初体験は3P以上って昔から決めてましたっ!」

 二股かけて、おまけにこの体質のお陰で作品を通してコヤツは延々と歯の浮くようなセリフを吐き続けるのですよ。それなのに主人公に腹が立たないのは、口説くべきじゃないタイミングでも口説いてしまってむしろ窮地に自らを追いやってしまうところであろう。

 さて、失意の望月の周りで、奇妙なことが起こる。突然世界が歪み、少女が降ってきた!しかも、モンスターまで!

 で、このダメ人間はモンスターまで口説いてしまうわけです。

 なんだかんだで少女とともにバグと戦うことになってしまった主人公。襲いかかる敵を口説いては少女がとどめを刺すという、なんともアレなストーリー。

 設定はぶっ飛んでいるが、きちんと練られたプロットに伏線有りで、、主人公のアレっぷりを笑っている間に読み終わってしまった。お勧めしてくれるだけのことはある。第2回『このライトノベルがすごい!』大賞受賞作というのも頷ける怪作であった。
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SF・ファンタジー | 2013/08/27(火) 19:09 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1261冊目 月の不可思議学
月の不可思議学 (同文新書)月の不可思議学 (同文新書)
(2000/09)
竹内 均

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評価:☆☆☆


 地球に最も近い天体、月。狼男伝説に見られるように、多くの地域で月が人間に大きな影響を与えるという伝説がある。そんな説が生まれるのも無理はあるまい。夜空にあって圧倒的な存在感を誇る月は、潮汐力によって海の満ち干きを起こし、更にはそれは地球の回転速度にまで干渉している。地軸が安定しているのも月のおかげだとも言われれば、月には有り難さまで感じてしまう。

 こんな月の不思議をまとめているのが本書。

 地球と月の距離(38万4400km)、月が常に地球へ同じ面を向けている(残念ながらその理由は説明がなかった)、月に空気がないことがどうしたら分かるかと言った、事実に関する知識から、月にはカエルがいるという伝説、ギリシア神話における月の扱われ方のように、人々が月をどう見てきたかまで幅広いトピックを扱っている。

 特に興味深いのは、月と生き物の関係であろうか。月が地球に及ぼす潮汐力は人間にも働いている。そのためか、人間の活動にも月のサイクルが影響を与えていると考える人々がいる。それが定説になっているわけではないが、地球と比べたら遥かに微弱な重力を生物が感じ取り、ライフサイクルに生かしているなんて面白いではないか。

 ゴカイの仲間であるイソメの一種、パロロという生き物は、10月と12月の満月の頃に集団で繁殖行動を行う、という。この生き物が面白いのは、干潮のときに下半身を切り落としてしまい、繁殖行動に参加するのはなんとこの下半身だけだというのだ。これこそ将に下半身には理性がないというヤツであろう(笑)。生殖行動が終わればこの下半身は死に絶え、生き残った上半身には下半身が生えてくる、という。生物進化の不思議をも感じさせてくれる。

 月は本当に魅力的で面白い天体であると再確認。月の不思議に関しては『月の魔力』以来となるが、こうした面からも面白いなぁと思う。オカルトに走らず、冷静にこの辺りを論じてくれる本を探してみようかな。




関連書籍:
月の魔力 普及版月の魔力 普及版
(2010/12/17)
アーノルド リーバー、Arnold L. Lieber 他

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ノンフィクション | 2013/08/26(月) 19:58 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1260冊目 食べ物としての動物たち―牛、豚、鶏たちが美味しい食材になるまで
食べ物としての動物たち―牛、豚、鶏たちが美味しい食材になるまで (ブルーバックス)食べ物としての動物たち―牛、豚、鶏たちが美味しい食材になるまで (ブルーバックス)
(2001/08/20)
伊藤 宏

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評価:☆☆☆☆


 神が禁じた知恵の実を食べたことで賢くなったことを人類の原罪であるとする主張には究極の愚民思想しか感じないのであるが、肉食について考えると、そこにはどうしても原罪を感じてしまう。

 動物の命を奪い、それを自分たちの命を保ち、世代を紡ぐ糧とする。それは、必要なこと。しかし、ただ殺されて食べられていくためだけに生み出される生き物たちには申し訳なさとありがたさを同時に感じる。

 普段からそんなことを思っていたので、この刺激的なタイトルの本を見て、読まなければと思い手に取った。

 本書は、豚、鳥、牛たちがそもそもどのような生物なのか、畜産の現場ではどのように生まれ、育ち、出荷されていくのかを丁寧に追いかけている。ベルトコンベアで組み立てられる工業製品のように、畜産が効率第一に組み立てられていることが分かる。産業としての状況についても触れられているので、畜産に関わることが一通り覗き見ることができるのは魅力だ。

 こうした事実を知ったからといって、あらゆる動物資源の使用を忌避するヴィーガンになろうとも、ベジタリアンになろうとも思わない。雑食性の生物として進化してきた我々にとって、良質な動物性たんぱく質は美味しく必要なエネルギーを簡単に得ることができる、素晴らしいものであるからだ。

 食べ物は残さないように気をつけてきたし、子供たちもそう教えている。これからは今まで以上に、動物たちへの感謝の気持を持って食事に向かおう。
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ノンフィクション | 2013/08/24(土) 19:25 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1259冊目 神様のパズル
神様のパズル (ハルキ文庫)神様のパズル (ハルキ文庫)
(2006/05)
機本 伸司

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評価:☆☆☆☆


 表紙の萌え絵に騙されてはいけない。この作品にはツンデレ・ツインテール・童顔巨乳なんて類の記号化された読者に都合の良いキャラクターなんて出てこない。本書はキャラクター小説などではなく、凄いSFだ。何が凄いって、そのスケール。なにせ、宇宙を作ろうとしちゃうのだから。

 物理学科で留年寸前の主人公が教授から命じられたのは、16歳にして理論物理学の分野で名を馳せる天才少女・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるというもの。既に色々なルートからアプローチしているにも関わらず、ことごとく拒絶されているという無理難題だ。しかも、2人には面識すら無いのに。

 当然のように、沙羅華はゼミへの参加を拒否する。だが、めげずに再訪した主人公が「宇宙を創ることは出来るか」と質問したことが彼女の心に火をつけた!斯くして彼女はゼミに訪れる。そして、卒論の単位を賭けたディベート、宇宙を創ることが出来るかを行うことになるのだ。

 宇宙を創るということは、宇宙の姿を理解しなければならない。そして、それは物理学のみがなしうることだ。なので、本書にはかなりつっこんだ話が出てくる。

 いやいや、そこで敬遠しては勿体無いですよ。大丈夫。ある設定が生きてきます。主人公が落ちこぼれだ、という。ゼミでの発表などと言いつつ、古典力学や相対性理論、量子力学の美味しいところを上手く取り上げているので、物理学が語る奇妙な世界を覗き見することができるのが魅力。

 さて、宇宙を創ることができるかどうか。そのディベートで、できるという側に立ってしまったのはお約束通り穂瑞沙羅華と主人公のみ。どう見ても無謀なその試みはできるのか?

 ただただ実直に生きてきた農家のおばあちゃん、死ぬまでに宇宙がどうなっているかを知りたいと熱望する老人等、魅力的な脇役に恵まれ、田植えしながら宇宙を作ろうとする主人公に未来はあるか!?宇宙論に興味が有る方は絶対に楽しめると思う。
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SF・ファンタジー | 2013/08/23(金) 19:08 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1258冊目 古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史
古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史 (河出文庫)古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史 (河出文庫)
(2008/06/04)
ブライアン フェイガン

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評価:☆☆☆☆


 『歴史を変えた気候大変動』で、近い過去にも気候は大きく変動していたことを明らかにしたブライアン・フェイガンが、更にスケールアップして帰ってきた。今度は、人類2万年の歴史と気候の変動を追っている。

 2万年前といえば、まだ人類は農耕を始めていない。人々は今ほど土地に結びつけられておらず、環境の変化があれば新たなる希望の土地を目指して彷徨ったことだろう。そして人類は世界中に散らばった。

 本書を読めば、その拡散の過程において地球規模での寒冷化と温暖化のサイクルが重要な役割を果たしたことが良く分かる。例えば、今よりも寒冷化していた時代、アラスカとシベリアは海で隔てられてはおらず、ベーリンジアで結ばれていた。人類はこの陸橋を渡ってアメリカへと向かったのだ。

 先日読んだ魅力的な生物地理学の書『なぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐ』でも環境の変化が生物の拡散をもたらしたとあったが、人類は様々な道具を使った分、より効果的に新たなる地平を切り拓いていった。

 それを、本書では巨大なポンプに例える。気候条件によって人や他の動物が住みやすい時代になることもあれば、とても生活できない過酷な土地へと変貌することも有る。

 何度も繰り返されるサイクルによって、多くの文明が興り、滅んでいった。メソポタミア、エジプト、ローマ、マヤ等々。特に、中世温暖期はヨーロッパには温暖で安定した時代となった一方で、中米には大旱魃をもたらし、マヤ文明を崩壊に追い込んだことは知らなかった。

 本書の魅力はこのスケールの大きさだ。世界各地で大国が興亡を繰り返す背後には環境のダイナミックな変化がある。世界史では英雄や賢者、あるいは愚者たちが縦横に活躍するような印象だが、こうした見えざる力が働いていたのかと思うと年表の見方すら変わりそうだ。

 なにより、今のこの状態が、得難い宝のように思えてくる。

 現代のように気候が極めて安定している状態はむしろ珍しいことが分かる。地球環境は様々な要因で大きく変動し、テムズ川が凍るような寒波が来襲することもあれば、グリーンランドに緑地ができるくらい暖かくなる時期もあった。その不安定なメカニズムは、いまはちょっと一休みをしているだけだ。

 なので、再び地球環境は大きな変動をするだろう。寒冷化するかもしれないし、温暖化するかもしれない。その変化に、恐らく今の技術力は太刀打ち出来ないだろう。グローバル化が吉と出るか凶と出るか。私としては、人類の知恵に希望を持っていたい。



関連書籍:
歴史を変えた気候大変動 (河出文庫)歴史を変えた気候大変動 (河出文庫)
(2009/02/04)
ブライアン フェイガン

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人類の足跡10万年全史人類の足跡10万年全史
(2007/08/31)
スティーヴン オッペンハイマー

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なぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐなぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐ
(2011/08/22)
デニス・マッカーシー

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環境 | 2013/08/21(水) 20:18 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1257冊目 おおコウスケよ、えらべないとはなさけない!
おおコウスケよ、えらべないとはなさけない! (富士見ファンタジア文庫)おおコウスケよ、えらべないとはなさけない! (富士見ファンタジア文庫)
(2011/11/19)
竹岡 葉月

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評価:☆☆☆☆


 これも友人に勧めて貰った本。タイトルは勿論、ドラクエで主人公が死んでしまった時に王様から罵られるセリフからだ。それにしてもあの王様、カネも武器もろくなものを寄越さないで魔王を退治してこいとか、どの口が言ってるんじゃコラ!な感じだったなぁ。あ、ドラクエは2と3が好きです(聞いてない)

 本書はまず主人公の夢で始まる。蛍とデートという何とも爆発しろな感じだが、しかしそれはおもむろに出てきた釘バットで終焉を迎える。蛍は恋愛が苦手なのだ。そして、彼女そっくりな外見の、宮沢彗にシュールストレミング並の異臭を放つナニモノかを食べさせられそうになり、そして現実に戻る。

 肝心の主人公は、軟式野球部をやめたばかりの津賀昂介(中2)。すっかりやる気を無くしたコウスケは、図書室から運動部の女子を覗くという実に生産性の高いことに従事するようになっていた。彼を変えたのは、天野井蛍。

 『抱擁の道程』という本を渡し、読み終わったらこの本のラストシーンを再現してあげる、と主人公を挑発するのだ。下心に後押しされて本を読み始めたコウスケは、しかし気がつけば読書の楽しみにどっぷりハマってしまう。

 ああ、これでハマってしまうとは、君はなんて素直な奴なんだ。私の周りの人々に君の爪の垢を煎じて飲んでもらいたいくらいだ(笑)

 兎も角、妄想パートと現実パートを行き来しながら活字中毒への道を正しく歩んでいくコウスケはいつしか自分を活字中毒という底なし沼に引きずり込んだ蛍に恋をし始めていた。ところが、蛍の方は恋愛を憎悪していたのであった。

 爆発すればいいのにと思いつつ、つい気になって読み進めてしまった。困った。続きが気になるではないか。というわけで、続きも読んでみよう。
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SF・ファンタジー | 2013/08/19(月) 19:33 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1256冊目 翳りゆく楽園 外来種vs.在来種の攻防をたどる
翳りゆく楽園 外来種vs.在来種の攻防をたどる翳りゆく楽園 外来種vs.在来種の攻防をたどる
(2009/09/25)
アラン バーディック

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評価:☆☆☆☆


 ハワイに行ったことはない。しかし、写真を見ると、良いなぁと思う。あの自然に溢れた感じ。海も山も緑もある。なんと山には火山というオマケまで付いている。雄大な楽園。

 しかし、我々がイメージする"ハワイの自然"は、実は真の意味では自然ではない。なにせ、心地よい囀りを聞かせてくれる鳥も、目を楽しませてくれる色とりどりの花も、リラックスさせてくれる植物も、多くは外来種なのだ。

 本書は、人の往来によって新たな移動手段を得た動物たちが、新天地で環境を変えていっている現実を明らかにしている。冒頭、著者が追いかけるのは、ミナミオオガシラヘビである。このヘビはグアムに入り込み、そして生態系を破壊した。グアムで鳥の声を聞くことができないのは、この外来種が原因であるらしい。

 恐ろしい話だ。特に、彼らが飛行機にこっそりと忍び込み、新天地へと旅立っていることを知れば。ミナミオオガシラヘビはハワイでも迷惑な客として見つかったことがあるという。こうして気がつけば、ヘビの居ない南洋の島々は貪欲なヘビの食欲に飲みつくされてしまうかもしれないでは無いか。

 こうした外来種はどれほど脅威になっているか。定量化は難しいらしい。また、どのような生き物が重大な脅威を与える外来種に成るかという予想もできない、という。なにせ、目の前にあるデータは、新天地で成功した(=害を与えた)外来種のみ。その他の、新たな環境に辿り着いたは良いが繁栄することができないまま消えていった多くの事例は、知られずじまいなのだ。

 それでも学者たちはなんとか外来種と在来種の攻防を調べようとする。世界中が画一の姿にならないように。

 本書では、前半を陸、後半を海で起こっていることを述べている。驚いたのは海の部。海洋を渡る船の、バラスト水が外来種の潜む格好の場になっているとは!確かに言われてみれば分かることかもしれないけど、本当に予想外だった。船の外殻にくっついてやってくるとか、積み荷に隠れて密航してくるというのは想像の範囲だったが。

 外来種が蔓延ることの何が問題なのか。正直、新たなところで生態系を破壊するというようなこと以外は、本書を読んでもイマイチ理解できないところはある。しかし、移入された種がどのような影響を与えるかが分からないのであれば、まずはそれを避けた方が良いのかもしれないとは思うようになった。新たな視点を与えてくれたことに感謝。
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生物・遺伝・病原体 | 2013/08/18(日) 19:00 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1255冊目 原発「危険神話」の崩壊
原発「危険神話」の崩壊 (PHP新書)原発「危険神話」の崩壊 (PHP新書)
(2012/02/15)
池田 信夫

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評価:☆☆☆☆


 タイトルからして刺激的だ。なにせ、原発の安全神話の崩壊ではなく、危険神話の崩壊というのだから。本書は、タイトルから分かる通り、東京電力福島第一原子力発電所の事故から得られた教訓と、今後のあるべき姿を硬た本である。

 ページを捲っていくと、タイトルほどの過激さは無いことにすぐ気がつく。最初のページにはっきり"「安全神話」に呪縛されて津波対策に十分なコストをかけなかった東電の過失はきびしく追求されるべきだ"とある。しかし、その一方で、事故の被害がかつて信じられていたのと比較して圧倒的に小さかったことを指摘する。つまり、崩壊したのは2つの神話なのだ。

・安全神話:最悪の事態でも炉心溶融は起こらない
・危険神話:炉心溶融が起こると数万人が死ぬ
(P.4より引用)

 それを指摘した上で、著者は本書の意図をこう語る。"私は原発が安全だとも推進すべきだとも主張していない。原発は危険だが、そのリスクを他の発がん物質や環境汚染と同じ基準で比較し、費用対効果を最適化すべきだと言っているだけである。"

 リスクのない技術は存在しない。原発は危険だから停止すべきだという意見もあるが、では代替技術はどうなのだろう?やはり、冷静に原発とその他の技術でリスクとベネフィットを算定し、経済的に取りうる最適解を求めなければなるまい。それは決して非常識なことではない。自動車事故により、毎年1万人に迫る事故死者が出ているが、我々は自動車文明を捨てないではないか。それは、自動車にそれだけのメリットがあるからである。原発も同じように判断すべきだ。

 ところが、原発にはしばしば100%確実の安全が求められる。原発が技術で生み出されているものである以上、それは見果てぬ夢だ。ではどうする?原発は放棄すべきなのか?私はそうは思わない。著者が延べる"「絶対安全」を求めるヒステリーは、日本社会の病である。"には賛同せざるをえない。

 "世の中は経済と生命のトレードオフで動いているのだ。リスクをゼロにするには、自動車も飛行機も酒もタバコも禁止し、石炭火力も石油火力も止めなければならない。原発をこのまま止め続けたら、毎年数兆円の損害が出て企業は海外逃避する。それによって日本は貧しくなり、若者の負担は大きくなる。"

こういう真っ当な指摘に対して、反原発の人々が理路整然と反論しているのを、残念ながら私は聞いたことがない。電力は足りているというだけ。彼らが政治的に無力であり続けなければ、日本の経済は立ち行かなくなる。企業が海外移転を進めれば、困るのは、いわゆる底辺層と言われる人々だと分かるだろう。我が身に置き換えて考えても、自社が国内工場を閉鎖して海外移転を進めれば、私は海外転勤すれば済むが、現場の人はレイオフされるだろう。

 停電にならなければ良いという訳ではない。

 こうした、経済的な側面をしっかり理解した上で、それでも原発を動かすべきではないというのであれば、クリティカルにどうして原発を動かすべきではないのかを論じるべきだ。それもなしに原発は危険、動かすなというなら、それこそあらゆる技術を放棄すべきであろう。なにせ、どんな技術も危険性0%ではあり得ないから。

 本書は、時に舌鋒鋭く、時に広く情報を得ながらこうした論理を述べていく。今後の原発のあり方を論じるにあたって、本書の指摘は無視し得ないものであろう。また、危険性(あるいは安全性)に用いられている評価が『人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用
人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用』のように妥当であることも評価が高い。そして、『内部被曝の脅威』で批判した肥田 舜太郎医師のデタラメっぷりが明らかにされているのも。

 これまで得てきたリスクに関する知見に合致しているのもあって、一々頷きながら読んだ。原発について考える方は是非とも読んでみて欲しい。


関連書籍:
人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)
(1998/12/18)
近藤 宗平

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「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)
(2012/02/17)
藤沢 数希

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環境リスク学―不安の海の羅針盤環境リスク学―不安の海の羅針盤
(2004/09)
中西 準子

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ノンフィクション | 2013/08/17(土) 18:57 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1254冊目 できそこないの男たち
できそこないの男たち (光文社新書)できそこないの男たち (光文社新書)
(2008/10/20)
福岡 伸一

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評価:☆☆☆☆


 男と女。ユダヤ教の神話によれば、神は自分の姿に似せた男を作り、男の肋骨から女を作った、という。しかし、生物学的には順序が逆だ。最初は雌が生まれ、後に雄が作られた。

 人間が誕生してくる経緯を見れば、それがはっきり分かる。受精卵が分割を始めてから暫くの間、見た目では男の子も女の子も区別が付かない。股間になるところを観察すれば、そこには女性器が見える。男の子になる定めの受精卵は、その後、体を作り変えていくのだ。その結果、膣が消滅し、陰核がペニスへと姿を変えていく。開口部は綴じ合わされ、蟻の塔渡りという形で痕跡を残す。

 本書では、男が生まれる理由や方法を平易な文章で解説してくれている。

 自然界では、雌だけで子孫へと生命を繋ぐのは珍しいことではない。雄と雌とで子を生む生物でも、普段は雌だけの単為生殖で増え、特定の時期だけ雄が生まれることもある。その場合、雄の仕事はただただ雌に精子を注ぐだけ。ハーレムと言え無くもないが、ただそれだけをするというのは虚しそうだ。中にはアンコウのように、雌に寄生して精子を作る器官に成り下がる種も居るのだから、男は人間に生まれたことを感謝せねばなるまい。

 そうしてできた男は、実のところ、女と比べて耐久性が悪い。平均寿命の違いの違いは広く知られているところだろうが、それだけではなく、生まれた時から男は死にやすい。その現実が記されていたり、雄を雄たらしめる遺伝子の在り処を、発見の経緯とともに語ったりと、読者の興味を引く話題を上手く持ってきている。

 生物の不思議、男と女の不可思議な関係を見事に説明してくれる本。

 また、事実の羅列に終始するのではなく、自分の苦労話を随所に織り込むところが読み物としての魅力を高めていると思う。読んでいて楽しい。科学を実践する方で、こうした文章の名手を得たのは本当に幸運の一言に尽きる。他の本もフォローしていこう。



関連書籍:
アダムの呪い (ヴィレッジブックス)アダムの呪い (ヴィレッジブックス)
(2006/12)
ブライアン サイクス

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イヴの乳―動物行動学から見た子育ての進化と変遷イヴの乳―動物行動学から見た子育ての進化と変遷
(2005/01)
小原 嘉明

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生物・遺伝・病原体 | 2013/08/16(金) 18:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1253冊目 フォーチュン・クエスト 1 世にも幸せな冒険者たち

フォーチュン・クエスト 1 世にも幸せな冒険者たち (ポプラポケット文庫 62-1)フォーチュン・クエスト 1 世にも幸せな冒険者たち (ポプラポケット文庫 62-1)
(2007/10)
深沢 美潮

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評価:☆


 ブクレコで親しくして頂いている下田さんとあかつきさんから課題図書として与えられた本。なにやら、私がどういう反応をするか見たいらしい(笑)

 で、読んでみたけど、、、、、、つまらん。

 ヘンな記述がいっぱいあるし、おかしな語尾だけでキャラ付けしようとしているので、はっきり言って底が浅い。

 物語は、駆け出しの冒険者がクエストでドラゴンと出会ったりおかしなモンスターと遭遇したり散々苦労しながらなんとかミッションクリアという、まあありふれた類のファンタジー。

 読んでいるとええぇぇぇぇ~~と唸るような変なのが腐るほど出てくる。

 安く買って高く売るのを資本主義と書いていて、腰が抜けるほど驚いた。ということは、例えば呂不韋は資本主義者だったのか。んな莫迦な。

 狂犬病みたいな、ただ1週間ほど顔が笑ったままになってしまう病気が出てきて、周りの人が感染るんじゃないかと恐れているけど、狂犬病が水平感染した例は存在しないと思うのだがどうだろう?

 蜘蛛に蝶の羽根が生えたのがすごい勢いで大量に飛んで羽音が五月蝿いって、、、蝶の羽根は高速飛行には向いてないんだけどなぁ。揚力を生み出すのには大きく羽ばたかないと行けないし。なんで蚊とか蝿の羽にしなかったんだろう。蜘蛛類が飛べるように進化するのもよく分からないが。

 カラー印刷技術があるというのとその他の道具の発展具合が合わないんだよなぁ。顔料系なのか染料系なのかによっても違うけど、鮮やかな色を出したいなら染料系であろう。染料系は化学そのものだから薬学とも密接に結びついているだろうに、薬は薬草頼みというのはどうなのだろう?

 スネークフライなる怪物は、ええと、なんで腕があるのに翼があるのでせうか。鳥の翼と我々の腕は同じ起源なので、両方は持たないはずなんだが。。。なんというか、中途半端に現実世界を持ち出す(例えばミシュランという名前でタイヤメーカーみたいなんて記述がある)せいで、世界観がグダグダ。

 良いか、ファンタジーってのは、1つの世界をきちんと作らなくちゃなんないんだよ!神だろうと魔法だろうと出すのは結構だけど、その彼らも何らかの理りに従って動くんだよ。そうした深みが無い世界はつまらないんだよ。で、そのつまらなさをキャラクターで誤魔化そうなんてやられると読者は退くんだよ!

 と思いつつ、シリーズ化しているから売れているんだよね。。。

 やっぱりファンタジーは本格派じゃないと読んでいてストレスだなぁ(苦笑)
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SF・ファンタジー | 2013/08/15(木) 18:28 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1252冊目 イヴの乳―動物行動学から見た子育ての進化と変遷
イヴの乳―動物行動学から見た子育ての進化と変遷イヴの乳―動物行動学から見た子育ての進化と変遷
(2005/01)
小原 嘉明

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評価:☆☆☆☆☆


 人間のカップルは、なぜこのような形なのだろうか。このようなというのは、一夫一婦制であったり、結婚後もしばしば見られる浮気であったり、父側が子育てに多大なエネルギーを費やしたり(子どもが生まれたらさっさと次のパートナーを見つけるほうが遺伝子の拡散には有利に見えるのに)、と言った形は、当たり前のこととして捉えられているかもしれないが、自然界を見渡せば必ずしも必然とはいえない。

 では、なぜこうなのか?"本書は人間の家族の起源を、動物の家族についての行動生態学的研究を土台にして追求することを目的として編まれた"(P.297)と宣言する通り、本書では広く自然界でのカップルの振る舞いと、その背後にある理由を考察することで謎に迫ろうとしている。

 本書を読むと、つくづく生物は"自分の"遺伝子を後世に伝えようと涙ぐましい努力をしていると思う。

 本書であげられている例だと、オシドリが夫婦で連れ立って行動するのは仲が良いからではなく、雌の浮気を防ぐための雄の監視であることが格好の例であろう。しかし、監視をなんとかくぐり抜けようと、雄も雌も熾烈な争いを繰り広げる。

 アオガラという鳥ではしばしば浮気が見られるが、"雌は自分の夫の遺伝的資質に満足していない場合、それを満足させてくれる社会的に高位の雄を狙っているらしい"となると、一度作ったペアなんてなんのその、子孫を残すためにより有利な相手とツガイを作ろうとしているわけだ。

 そして、動物界には一夫一婦制以外の組み合わせも沢山ある。雌だけ、あるいは雄だけが子育てする者も居れば、オオカミのように親以外のヘルパーが参加する者もいる。だが、圧倒的多数は、子育てなんかしないというパターンだ。

 どのようなメカニズムがこうした家族のあり方を導いたのか。それは生物のあり方の謎そのものに光を当てていてとても面白い。

 だが、何と言っても関心を強烈に引き付けるのは、我々人間についてのものだ。そこに至るまでに動物界で見られる様々な家族のバリエーションを知っているため、読者にとっても人間についても類推ができるようになっている。ところが、それを知ってもまだ人間には驚くことがいっぱいだ。

 知っての通り、成人女性はほぼいつでも性交可能であるが、それは発情期と同じである。それなのに排卵期が明らかなわけではない。これは動物界では他に見られない。女性は男性より遥かに多く脂肪を蓄積し、それが性的な魅力に繋がっている。胸や腰回りのラインがどうこうというのはしばしば男同士の間で語られるが、それにも生物学的な背景がある。

 こうした特質のうち、幾つかは雌の側が雄を強力なパートナーとして留め置くために進化させたと著者は指摘する。雄は、その罠に嵌って一夫一婦制を余儀なくされているのだ、と。

 だとしたら、なんと見事なメカニズムであろうか。人間も生物進化の生んだ傑作の1つであり、我々の行動を知らず知らずのうちに規定されている。その中で、我々は喜びを得ているのかと思うと、面白いを通り越して感動がある。生物としての人間の面白さに、家族という視点から切り込んだ傑作である。
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生物・遺伝・病原体 | 2013/08/14(水) 19:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1251冊目 内部被曝の脅威
内部被曝の脅威  ちくま新書(541)内部被曝の脅威 ちくま新書(541)
(2005/06/06)
肥田 舜太郎、鎌仲 ひとみ 他

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評価:☆


 ブクレコやFBで交流させて頂いている樽井さん(なんと、レビュー数で私を圧倒する脅威の方だ)にお勧め頂いたので読んでみた本。

 著者は広島で原爆を体験され、その後6,000人もの被爆者の治療に当たられた方である。そして、善意に基いて、内部被曝や低線量被曝の問題を取り上げている。

 しかし、善意を疑うことはないが、中身はかなり疑わしい。

 ヒロシマの惨禍は許されざるものだと思うが、それでも被災直後の広島で救助活動に当たった方が急性の放射線障害で亡くなられたのを内部被曝だと断じる根拠が不明である。残留放射線はかなりのものであり、外部被曝でも同じ事が起こるはずだ。内部被曝の害を訴えたい気持ちは分かっても、こんな露骨な印象操作をやられると一歩引いてしまう。

 2000年台に入ってからの被曝者のガンも同じ。2人に1人がガンになり、3人に1人ががんで死ぬ時代に、ある特定の被曝者がガンで死んだことが、内部被曝によるガン発生の根拠には成り得ない。ガンの影響を知るには統計的な調査をしなければならないが、逆に『人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用』では広島原爆での低線量被曝者ではむしろ寿命が伸びていることが示されており、整合性に欠ける。

 問題意識として、"「広島・長崎の原爆被害はアメリカ軍の機密であり、何びとも被害の実際について見たこと、聞いたこと、知ったことを、話したり、書いたり、絵にしたり、写真に撮ったりしてはならない。違反したものは厳罰に処す」という厚生大臣の通達があった(P.43)"とあるのには敗戦国の舐める苦渋を思って悔しい思いもするが、だが、それと事実関係は違う。原爆による被曝については全然客観的なデータが示されていないので、後追いのしようもない。

 仰天するのは、自然放射線レベルの高いインドのケララ州で住民の健康被害調査が行われて来なかったという言明。実際には行われている(http://www.taishitsu.or.jp/genshiryoku/gen-1/1-ko-shizen-3.html#3.2 インド)。こちらはガンによる死亡ではなく、罹患でのデータが取られている。男性の肺ガン、女性の甲状腺ガンには発生率の上昇が見られるが、ガン全体では有意な発生率の上昇は見られないとされている。

 人工放射性物質は生体濃縮されるために自然放射性物質より危険であるというのは、妥当であると言えよう。なので、無批判に放射性物質の含まれた食品を摂取すべきではない。ではゼロにすべきかというと、そうではあるまい。本書にある通り、人間の体には放射線カリウムが4000ベクレルほど存在する。こちらは濃縮されることはない代わりに、減ることもない(減る分は新たに取り込まれるため)。

 重要なのは被曝量だ。

 では、被曝量についてはどうか?著者はペトカウ効果を引き合いに出す。これは、低線量の被曝でも多大な害を与えるとするものだ。この実験では、なんと毎分0.00001シーベルトの被曝でリン脂質が破壊された、という。これはものすごく微量に感じる。しかし、これは年間に換算すれば5.3Svに該当する量だ。あらゆる常識から言って、低線量ではない。5mSvを1年や2年浴びても大丈夫であろうという推定をしているところに持ってくるような話だろうか?

 ペトカウ効果に対するこの怪しげな根拠で低線量被曝を論じているのであるが、はて、年間5Svという誰もが害を認めるに違いない高線量のデータを元に低線量を危険というのはどうなのだろう。

 そう思いながら読み進めるうち、"癌に低線量の被ばくが大きな役割を果たしている可能性は高く、研究も進んでいる。たとえ数字となって出てこなくともあるはずだと私は考えている"(P.97)という宣言には唖然とした。この人、科学をやってるんだろうか?数字が出る出ないというのは自説を確かめるための唯一の手段ではないか。それが出ようと出まいと構わないから信じるとは、信仰の告白以外の何だろうか?

 こうした偏った書き方をされている中で、コロンビア川上流の放射性物質汚染の浄化に年間2000億ドルを要している(んなわけねーだろ)等とあるのをみると、どんな事実も針小棒大にしようとしているのかと勘繰ってしまう。実際には20億ドルとのことであるが、これは1ドルを100円換算して、2000億円と書こうとしたのを誤ったのだろうか。しかし、恣意的な引用が続く現実を見ると、なんとしてでも危険を煽りたいのだろうかと思えてしまう。

 また、本書の欠陥は、論拠が示されていないことだ。『人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)』ではしっかり論拠が示されていたし、データも載っていた。だから、解釈が異なるにしても議論は可能だった。しかし、本書ではガンが増えた、というような結論しか書かれていない。

 本書が指摘するように低線量でも各種のガンが凄まじく増えるなら、どんなに原子力の導入側が頑張ってもデータの隠蔽なんて出来ないだろう。まずは冷静になるべきだと改めて思った1冊。



 震災後に出版された『内部被曝』でも傾向は同じようだ。こちらの批判を当たって欲しい。私としては、とても著者を信用することは出来ない。

「内部被曝」(肥田舜太郎)の読み方

「内部被曝」肥田本 その2


 ちなみに、本書は改訂後のものだが、前はもっと酷かったそうな。こちらを参照下さい。
乳癌とセシウムのフォールアウト:肥田舜太郎氏は何を間違ったか

 原発を無くしたほうが良いということには賛同する。しかし、こんな論拠には、とても賛同することはできない。批判されないためにも、冷静で客観的な言説が必要なのではなかろうか。

関連書籍:
人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)
(1998/12/18)
近藤 宗平

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ノンフィクション | 2013/08/13(火) 19:45 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1250冊目 武装解除 -紛争屋が見た世界
武装解除  -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)
(2004/12/18)
伊勢崎 賢治

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評価:☆☆☆☆


 内戦や紛争で荒れ果てた国をどうやって立て直すか。産業の育成?民主主義の導入?その前に必要なことがある。それが、武装解除である。なにせ、内戦や紛争の直後には国内に武器が溢れかえっているのだ。その武器を放置すれば、軍閥が台頭し、クーデターが繰り返される。それを防ぐには、武器を無くし、武装グループの構成員を一般人に戻し、彼らの居場所を社会に作って行かなければならない。

 その手法は、DDR(Disarmament , Demobilization , Reintegration;武装解除・動員解除・社会復帰)と呼ばれる。世界の紛争地でこの技術が用いられ、平和の構築に役立ってきた。著者は東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンでDDRに関与してきた。本書はその体験記であり、そしてDDRの重要性・必要性を訴える書である。

 まず冒頭、なぜ著者が紛争屋になったかが語られる。私は普段この手のところは流し読みをするのではあるが、本書は違った。なんとも破天荒な生い立ちに目が釘付けになってしまったのだ。奇縁としか言い様のない経緯で紛争解決のプロへの道を進んでいくのはこちらがハラハラしてしまう。

 そうして著者は東ティモールへ赴くことになる。そこの体験も貴重だが、それよりも著者の心に深く残っているのはシエラレオネのようだ。

 紛争屋となって赴くことになるまで名前も知らなかったという西アフリカの小国。そこは、何時果てるとも知れぬ内戦が続いていた。麻薬で恐怖心を麻痺させられた少年兵の存在や、両腕を切り落とすという非道な拷問が横行したことでも知られる。政府の腐敗が反乱を生んだが、反乱軍とて人道的なグループでは無かったのだ。ダイヤモンドが取れることが事態を更に悪化させる。ダイヤは武器の購入資金となり、全土は麻のように乱れた。

 この地で行われたことの記録は、本当に目を覆いたくなる。人類同士が互い対してどれほど酷いことができるのか。事実は恐るべきものだ。唯一の希望は、DDRが成功したこと。お陰で、今もシエラレオネは紛争から遠ざかっている。

 DDRを担保するものは何か。それは、武装勢力を圧倒する軍事力である。本書では、随所で抑止力としての武力の重要さが語られている。相互に利益の異なる集団を武装解除しようというのだ。双方に対して平等感を与えることが重要なのは前提として、行動を起こさないと行けない気にさせるには軍事力が必須なのだ。

 バランス感覚が絶妙なのは、そうして軍事力の存在の重要さを訴える一方で、力の行使は極力避けようとしているところ。しかも、行政官として関わった経験から語っているので説得力がある。平和を求めるには何が必要か考えさせられた。

 最後に著者はこう語りかける。"自衛隊は意見か否か、もしくは海外派兵は軍事侵略か否かの神学論争のこだわりはもう捨て、日本の軍隊が一般市民を殺すことなく平和利用されるために、日本自身、もしくは同盟国の経済的利益のための海外派兵の道を閉ざす"(P.235)ことがないようにしなければならない、と。この姿勢が、著者が関わったDDRを良い方向に導いてきたと思う。

 武装解除には興味が湧いたので、ちょっと関心を持って眺めてみよう。
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ノンフィクション | 2013/08/12(月) 19:01 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1249冊目 神国日本のトンデモ決戦生活―広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか
神国日本のトンデモ決戦生活―広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか神国日本のトンデモ決戦生活―広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか
(2010/08)
早川 タダノリ

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評価:☆☆☆


 ブクレコであかつきさんが紹介されていたので存在を知った。

 本書は当時の広告や雑誌をただ収集したものでは無い。"「大東亜戦争」下の総動員体制がひきおこした、クダラナイこと・知っていても役に立たないこと・人類の運命にとってはどうでもいいことを厳選して収集しました"と誇るだけのことは有り、現代史を取り扱うノンフィクションでもまず出てこないであろう話題が中心だ。

 戦果が上がっているうちには武勲を誇るものが、敗戦色が濃厚になってきたら士気を鼓舞しようとする広告が増えるのであるが、この後者が面白い。「決戦型ブラウス」やら「必勝防空寝巻」って、おいおいどんなんだよと思わされてしまう。どう見ても負け戦じゃないか。それなのに、文章だけは勇ましくて苦笑を禁じ得ない。

 空襲に負けずに出勤しろだとか、戦争にはカネが必要だから増税するぞと国民に我慢を強いてみたり、工場の労働者を"生産兵"と呼んで労災を防がんとして「生産兵の同志打ちはよせ」と書いてみたり、旅行ですら「決戦旅行体制」なんて描かれてしまう。お菓子ですら「愛国心を打込んで勇士のよろこぶ菓子を作りませう」とか書いてあるんですよ、ホントに。

 これだけ熱心にプロパガンダをしなければ行けなかったということは、国家の指導者層は国民全員がもっと熱心に戦争遂行に腐心すべきだと思っていたのであろうなあ。

 宣言通り、読んでも役に立つ知識は身につきそうもないが、どれほど熱心にプロパガンダが行われていたかはよく分かる。そして、視野の狭い、独善的な言説が世に溢れていたかも。

 しかし、正しい情報を与えず、自分たちを信じろ、艱難辛苦に耐えろと言われてもねぇ。困ったものです。

 本書はそんなトンデモ記事にツッコミを入れる。穿ったことを言おうとしすぎて空回りなところが散見されるが、無駄に勇ましく男臭い広告と一歩も二歩も引いたところからのツッコミとのギャップが面白かった。
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ノンフィクション | 2013/08/10(土) 19:42 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1248冊目 四畳半王国見聞録
四畳半王国見聞録 (新潮文庫)四畳半王国見聞録 (新潮文庫)
(2013/06/26)
森見 登美彦

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評価:☆☆☆☆


 著者には『四畳半神話大系 (角川文庫)』ですっかり参ってしまった。頭は良い(はずの)学生が、無駄に頭を働かせたせいで変なことになるという、下手の考え休むに似たりを地で行く物語だった。まるで私の悪友たち(注:私を除く)を見ているようでなんとも楽しかった。

 本作でも四畳半に居を構えるダメ人間達が、衒学的なことを呟きながらどうでもいい事に血道を上げる。そして、どう仕様もないことをやりながら、それなりに日々を楽しく過ごしているのが良い。

 たった四畳半しかない部屋が散らかってしまうことを言うだけなのにエントロピーの法則を持ちだしてみたり、無駄にシュレーディンガーの猫が出てきたり、かと思うと水玉模様のブリーフを穿いた阿呆神なるヘンテコなものが出てきたりで、もう何だかさっぱり分からない世界が展開されている。

 神が出るなら超能力が出ても不思議はあるまい。というわけで、今作では桃色映像を収めたDVDからモザイクだけを抜き取ってしまう阿呆が居たり、マンドリンを引きながら人生相談に載る(ただし、演奏も出鱈目なら人生相談の回答も何の役にも立たない代物)阿呆が居たりと阿呆だらけだ。

 この阿呆どもが四畳半でおかしな物語を繰り広げるというヘンテコな物語で、何かを成し遂げる喜びのような前向きな姿勢が完全に欠如している。推理小説のように最後に犯人が明らかになるわけでもなく、ましてや彼らが真人間になることもない(笑)。

 頭の良いダメ人間がダメに過ごす日常をそのまま書いてしまったのであろう、恐怖の1冊。こうならないようにしたいものだ(注:もうなっているというツッコミは不要です)。

 というわけで、暑いから何もやる気がでない夏の夜に、1人でアルコールなど嗜みながら読むのが宜しいでありましょう。そうしないと変な人だとバレ、、、、じゃなくて、思われてしまうかも知れませんよ。


関連書籍:
四畳半神話大系 (角川文庫)四畳半神話大系 (角川文庫)
(2008/03/25)
森見 登美彦

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その他小説 | 2013/08/08(木) 19:00 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1247冊目 漢字雑談
漢字雑談 (講談社現代新書)漢字雑談 (講談社現代新書)
(2013/03/15)
高島 俊男

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評価:☆☆☆☆


 博覧強記の著者が、漢字について縦横に語っている本。

 漢字にどのような成り立ちがあって、それ故にどのような意味が含まれているか?というところまで掘り下げて論じているので、なるほど、そういう視点からすると今の表現は出鱈目なモノが多いなぁと思わされてしまう。

 例えば、『がれき』。変換すると瓦礫となるが、瓦とは何なのか?そこから、瓦礫の焼却の話題へと進んでいく。何を迂遠なと思うかもしれないが、本義から見れば変な表現なのだから仕方あるまい。

 驚くのは、何と言っても著者がこうした漢字の誤用やら怪しげな表現に逐一気がつくこと。普通の人なら見落としてますよ、というようなものであっても著者の慧眼から逃れることはできない。あっという間に舌鋒鋭い批判のターゲットとなってしまう。読んでいる方は楽しいのですが(笑)

 とりわけ批判しているのが、国語政策。常用漢字の選び方が実に適当で、音が同じだからと適当な字を使わせるおかげで本来の意味が損なわれているとご立腹です。挙げられた例を読むと仰るとおりなのだが、何分、浅学非才な我が身では、間違っていることに気がつくことすらできないのでありました。

 なので、読んでいて凄いなぁと感嘆はするものの、では自分が著者の指摘をきちんと守って、例えば膨張なんて書かずにきちんと膨脹と書けるかというと、それはムリっぽい気がするわけです(なぜ膨脹が正しいかは本書に当たって下さい;笑)。

 漢字についてのエッセイだと思うと実に面白く、著者のコダワリが伝わってくる良い本だと思う。一方で、我が身を省みるのに使おうと思うと、きっと疲れ果てるであろうから、今後もエッセイを読む感覚で類書を読んでみようかな。
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エッセイ | 2013/08/06(火) 20:43 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1246冊目 理系の子―高校生科学オリンピックの青春
理系の子―高校生科学オリンピックの青春理系の子―高校生科学オリンピックの青春
(2012/03)
ジュディ ダットン

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評価:☆☆☆☆☆


 高校生科学オリンピック。それは、高校生たちが自分たち自身で行った研究をプレゼンする場である。それだけ聞くと夏休みの自由研究をイメージされるかもしれないが、そんなレベルのものではない。最大の大会にもなると賞金総額400万ドル(!)にもなり、出場者の少なからずが発見を特許に結びつける、科学者顔負けの場だ。

 本書は、インテル国際学生科学フェア(ISEF)の2009年大会に出場した6組の出場者と、それまでに伝説的な成果をあげた人々の姿を追ったノンフィクション。

 中には世間のステロタイプ通りの"研究オタク"的な人もいるし、本業はモデルでたまたま科学に手を出しただけという人もいる。苦しい生活から抜け出すために奨学金を得ようとする人もいれば、荒れた生徒を正道に戻すために科学オリンピックという場を与える教師もいる。

 どの人のストーリーもドラマティックで、いつしか全員の栄光を祈りながら読んでしまった。

 同時に、その研究内容の高度さと面白さには圧倒された。自閉症の子どもへの教育プログラム。あるいはハチの大量死の謎を解こうとする研究。ハンセン病に罹患した少女は自分の体験を元に病気の実態と治療法をまとめた。私がとりわけ気に入ったのは、子供の頃から自分でロボットを組み立ててきた少年のストーリー。彼は善き師に巡り会い、彼自身と師匠の人生を大きく変えた。陳腐な言い方になってしまうが、本当に感動のストーリーだった。

 子どもたちが主役の科学オリンピックが毎年全米各地で行われ、優勝者には奨学金や賞金といったメリットが有る。こうした活動は日本ではほぼ見られないことを考えると、アメリカの科学研究の強さが那辺にあるか感じられるのが良い。こんなにも研究を社会が後押ししているのは素直に羨ましい。

 でも、一方でまともな進化論教育も受けられず、ID説のような阿呆らしい妄想を叩きこまれても居るんだよなぁ、との複雑な思いにも襲われるが……

 大変面白かった『ロケットボーイズ』の雰囲気もあり、とても興奮しながら楽しく読んだ。理科教育について考えさせてくれるのも素晴らしい。科学に興味が有る方は是非読んでみて下さい。


関連書籍:
ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)
(2011/07/08)
ローワン ジェイコブセン、福岡 伸一 他

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ロケットボーイズ〈上〉ロケットボーイズ〈上〉
(1999/12)
ホーマー ヒッカム・ジュニア

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ノンフィクション | 2013/08/05(月) 19:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1245冊目 邪悪な虫
邪悪な虫邪悪な虫
(2012/09/27)
エイミー スチュワート

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評価:☆☆☆


 小さな姿で空を飛び回ったり、地面を這いまわったりする虫。その様に魅せられる少数の人と、無関心なこれまた少数の人以外の人にはマイナスのイメージをもたらす彼らだが、本書を読めば少数派も多数派に転向するのではあるまいか。彼らの振る舞いへは、蠢くという言葉が相応しい。

 例えば、蚊。奴らは不快な羽音で睡眠を妨害するだけではない。刺された跡は痒みを伴う腫れをもたらす。しかし、それすら蚊の本当の害から見れば些細なものだ。彼らの脅威は、感染症を媒介するという厄介な性質にある。マラリア、黄熱病、デング熱、日本脳炎等々が彼らによって広まるのだ。

 或いは、蝿。彼らは何にでも止まって、その貪欲な食欲を満たさんとする。問題は、奴らの食事方法だ。なんと、胃から消化液を吐き出し、溶けた部分を吸い取るのであるが、胃液と一緒に未消化の中身も一緒に吐き出す。その吐き出されたものの中に、道端に転がる小動物の死体やら糞が混ざっているかどうか、誰も分からない。しかも、蝿の一部は蚊と同様に動物の血を吸って生きる。ツェツェバエが媒介する致死的な眠り病のように厄介なものだってあるのである。

 読書家の天敵、本のノリを食ってしまうムシも居れば、毎年のように死者を出すスズメバチも居れば、植物を枯らしてしまうミミズも居る。ヨーロッパの人口の3分の1を殺したといわれる黒死病の病原体ペスト菌を媒介したノミも忘れてはならない。

 本書には、こうした厄介な虫が大量に取り上げられている。ついでに博愛主義を発揮したものか、昆虫以外にも一般の人々が"ムシ"と総称するものも排除していない。ドクグモ、ヤスデ、ムカデ、おまけとばかりに住血吸虫のような寄生虫までをも記載している。

 普段は生物の進化に驚嘆しているばかりの私ではあるが、本書を読むと流石にその気持が萎れてしまう。いや、確かに彼らがこうした生き方をしているのは進化の妙ではあるのだろうが、見事なまでの生存戦略は同時に人間には厄介極まりないものとなっている。

 文明社会の、それも都市に生きる人々には本書で取り上げる害虫はそれほど脅威ではない。しかし、世界ではまだまだ昆虫による害が大きいことを考えると、それらを適切に排除することが必要と思われてならない。敵を知り己を知れば百戦危うからずの言葉通り、彼らに打ち勝つには彼らのライフサイクルを知らなければならず、そういう点で本書の価値は高い。

 まあ、そんな難しいことを考えず、まずは暑苦しい夜をちょっと涼しくする怪談代わりに読むのも良いかも知れない(笑)



関連書籍:
蚊はなぜ人の血が好きなのか蚊はなぜ人の血が好きなのか
(2002/09)
アンドリュー スピールマン、マイケル ド・アントニオ 他

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ウイルスの脅威―人類の長い戦いウイルスの脅威―人類の長い戦い
(1999/12/16)
マイケル・B・A・オールドストーン

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(2002/07)
マディソン・リー ゴフ

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1244冊目 モノの世界史―刻み込まれた人類の歩み
モノの世界史―刻み込まれた人類の歩みモノの世界史―刻み込まれた人類の歩み
(2002/07)
宮崎 正勝

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評価:☆☆☆☆


 人は弱い。ライオンやらトラのような鋭い牙や爪も無ければ、狼のような強力な群れによる噛み付き波状攻撃で獲物を打ち倒すこともできない。タカのように遥か上空から狙いすました一撃を食らわせることも出来ないし、毒蛇やコモドドラゴンのように一噛みで相手を打ち倒すこともできない。それなのに、地上の覇者は人間である。その覇権には、人がより強い獣を従わせることを可能とさせてきた「モノ」が大いに関わっている。

 本書はそうした「モノ」がどのようにして人類社会を発展させてきたかを語っている。

 まず取り上げられるのは、土器。穀物生産が意味あるものになるためには土器が必要と言われて目からウロコがポロポロと落ちてきた。確かに、穀物はそれをそのまま焼いて食べるのは難しく、何らかの工夫が必要だ。土器を用いることで簡単に消化に適した形に変えることができるのだから、「料理革命」といわれるのも納得である。

 灌漑のための畑や水路はやがて都市を生み、都市では文明がどんどん発達していった。文字が作られ、暦が生み出された。知を蓄積できるようになってからの最大級のトピックは、やはり紙の発明と活版印刷だろう。

 また、食品も進化した。ビールやワインが生まれ、オリーブが食されるようになり、チーズや豆腐が食卓に登るようになった。ナポレオン戦争では瓶詰めや缶詰が生まれた。皮肉なのは、この時に缶切りが生まれなかったことだろうか(笑)

 大航海時代からはやはり圧巻。現代の物質文明に繋がるという意味でも、作られたものの精巧さ、巨大さ、そして影響力の大きさでも。

 また、技術と文化を上手く結びつけている試みが面白かった。例えば、"大「道路網」がなければ世界帝国は成立しない"という項では、中国やローマ、ペルシアといった各地の帝国で道路網が建設されていた。ここは情報のハイウェイであり、同時に帝国を1つの集団に纏めるためのツールでもあった。モノを語りながら文化や歴史を紐解くのはなかなかに楽しい。

 一方で、決して歓迎されないものもある。ペストだったり、オゾン層の破壊であったり。ジャレド・ダイアモンドの『文庫 銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』では病原菌もユーラシアの文明発達をもたらした原因に組み入れていたので、長期的に見ればメリットもあったかもしれないが、それでもやはり死者の多さには圧倒される。

 モノから語っているので人類の通史にはなっていないはずなのに、気がついたら世界史を辿ったような気になるところが素敵だ。そして、取り上げるもののジャンルの広さがまた良い。次々と意外な話が出てくるので、トリビア的にも面白い。歴史好きな方にはお勧めです。

 これまで興味を持って読んできた多くの本と絶妙に重なるのも嬉しかった。『世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史』、『保存食品開発物語』のように強烈な印象を残してくれた本を思い出させてくれた。



関連書籍:
世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史
(2007/05)
トム・スタンデージ

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コーヒーが廻り世界史が廻る―近代市民社会の黒い血液 (中公新書)コーヒーが廻り世界史が廻る―近代市民社会の黒い血液 (中公新書)
(1992/10)
臼井 隆一郎

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保存食品開発物語 (文春文庫)保存食品開発物語 (文春文庫)
(2001/11)
スー シェパード

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誰が本当の発明者か―発明をめぐる栄光と挫折の物語 (ブルーバックス)誰が本当の発明者か―発明をめぐる栄光と挫折の物語 (ブルーバックス)
(2006/08/18)
志村 幸雄

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文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
(2012/02/02)
ジャレド・ダイアモンド

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