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Skywriter

Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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1243冊目 謎解きはディナーのあとで
謎解きはディナーのあとで謎解きはディナーのあとで
(2010/09/02)
東川 篤哉

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評価:☆☆☆


 名探偵たるものには、決め台詞というものがある。ホームズは「簡単な推理だよ、ワトソンくん」と言って事件の全貌を把握したことを告げ、ポアロは口ひげを撫でながら「灰色の脳細胞」がどうこうと言う。Trickでは「お前たちのやっていることは全部全てお見通しだ!」とヒロインが叫び、眠りの小五郎は「バーロー」と呟く。やはりそうじゃなきゃ。

 本書においても名探偵は決め台詞を発する。それも、およそ決まらない形で。

 「失礼ながらお嬢様――この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」

 日本有数の大企業『宝生グループ』総裁の一人娘であり警察官として事件解決に飛び回る宝生麗子が、事件についての話を説明した執事にそんなことを言われてしまうのだ。他のシーンでは常に丁寧な口調を崩さないというのに、事件が絡むと途端に毒舌が飛び出す。麗子は腹を立てるが(そりゃそうだ)、しかし推理はついつい聞いてしまうのであった。という形の安楽椅子探偵物。

 著者はユーモアミステリをものとしている。ユーモアとなればもう読む人の好みに凄まじく左右されてしまうので、安楽椅子探偵者が好きかどうか、突然の毒舌で笑えるかどうかが評価の基準になってくる。個人的には好きな感じのユーモア。反則感を与えないのもポイントが高い。一方で、どうにも説明的な文章で、物語に没入することはできなかったのがちと残念。

 取り敢えず、シークレットシューズを履いて女性を口説くのはやめようと思った次第であります(そんなことしたことないけど;笑)
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推理小説 | 2013/07/30(火) 19:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1241冊目 深海のとっても変わった生きもの
深海のとっても変わった生きもの深海のとっても変わった生きもの
(2010/06/23)
藤原義弘

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評価:☆☆☆☆


 ちょっと前までこの手の写真集には余り興味がなかったのだが、一度見始めると病みつきになってしまった。スタッドレスタイヤのように、外から見えるところに機能が隠れているところが良い。

 本書で取り上げられているのは、タイトル通り深海の生き物だ。類書と異なるのは、取り上げられている生き物が滅多に見られないこと。深海に住むのだから当然だろう。しかし、生きているところを撮影したものとなったら俄然不思議になるのではないか?

 そもそも、深海となれば猛烈な水圧がかかっている。それを撮影しようというのだ。深海の探査船で奇跡のような機会を狙うか?それは光量不足やらなにやらで難しい。タイミングが合うとも限らない。一方で、地上に引き上げてしまえば撮影は容易になるものの、圧力差で死んでしまうものも少なくない。

 本書はそんな困難をくぐり抜け、地上付近の圧力でも生きていける深海の生物の写真集である。

 深海魚のうち、浮き袋を持つものは圧力差で浮き袋が破裂してしまうので死んでしまう。しかし、それ以外の魚や貝、エビ等の生き物は生きていける。それを素晴らしく美しい写真で紹介してくれているのが魅力。

 本当に、物凄い迫力がある。そして、名前が美しい生き物が多いのも嬉しい。ベニシボリ(紅絞り)、ツリガネムシ、サツマハオリムシ(薩摩羽織虫)、コトクラゲ(琴海月)、オオナミカザリダマ(大波飾玉)、カイコウオトヒメハマグリ(海溝乙姫蛤)、ダイオウグソクムシ等々。

 それらの姿を実に見事な写真で見られるのはとても嬉しい。どうしてこんな美しい名前が付けられたのかも分かる。そして、解説の文章でこの不思議な生き物達が、驚くべき進化を遂げていることも知ることができる。もう、1冊で何度も美味しい素晴らしい写真集。深海生物が好きなら是非。

 併せて『深海のパイロット (光文社新書)』もお勧めです。



関連書籍:
深海のパイロット (光文社新書)深海のパイロット (光文社新書)
(2003/07/17)
藤崎 慎吾、田代 省三 他

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生物・遺伝・病原体 | 2013/07/27(土) 22:15 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1240冊目 涼宮ハルヒの消失
涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)
(2004/07)
谷川 流

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評価:☆☆☆☆


 私よりも遥かに博識で、そして私よりも遥かに痩せているという脅威の友人に、ハルヒの1巻はそこそこSFしていて良かったが2巻は劣化が酷く続きを読む気がしないと言ったところ、『消失』は読んでおけとの助言を頂いたので読んでみた。3巻を飛ばしているのは仕様です(笑)

 さて、クリスマスも近づいたある日、世界は唐突に変わってしまっていた。なんと、ハルヒが学校から姿を消してしまったのである。消してしまったというより、最初から居なかったことになっていたのである。クラスメートは誰もハルヒなんてクラスメートは居ないと口を揃える。どうやらハルヒを覚えているのはキョンだけらしい。

 慌てたキョンは、宇宙人と未来人と超能力少年であり、ハルヒの取り巻きである友人たちの元へ向かうが、宇宙人と未来人はごく普通の人になってしまってキョンのことすら忘れており、加えて超能力少年はその力を活かしたのか、所属するクラスごと消えてしまうという有様。

 一体、何が起こったのか?ハルヒはどうなったのか?

 うん、中々SFしてます。登場人物のキャラクターを上手く使っている感じ。

 ようやく発見したハルヒは、確かにパワフルでちょっと変わった女の子ではあったが、ただそれだけの存在になっていた。この不思議な世界、パラレルワールドから抜けて元の変わったハルヒの待つ世界を探るべきか、こちらの穏やかな日々が続く世界に残るべきか。

 キョンは、なんとしても元の世界に戻ろうとあがくことになる。1巻と2巻では完全な傍観者だったキョンが、ハルヒの居る退屈しない世界を求めて奔走するのは中々新鮮だった。ついでに、ハルヒがほとんど姿を表さないのも斬新(笑)。このくらいのレベルだったら続きも読んでみようかなと思った1冊。
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SF・ファンタジー | 2013/07/25(木) 19:57 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1239冊目 またやぶけの夕焼け
またやぶけの夕焼けまたやぶけの夕焼け
(2012/07/05)
高野 秀行

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評価:☆☆☆


 1970年台後半の八王子。そこでは少年たちは本当に元気だった。有り余るエネルギーを尽く無駄なことに費やすほどに。

 知る人ぞ知る変人、カッチャンが軍団を結成し、主人公の「僕」はそこに組み込まれてしまう。なんたる悲劇。ところが、カッチャンをリーダーに冒険を続けるうちに、「僕」はその楽しさに病みつきになってしまう。

 とは言っても、所詮は小学生のやることだ。コンゴやトルコに怪獣を探しに行くわけじゃないし、ゴールデン・トライアングルに潜入してアヘン中毒になるわけでもない。近隣を巡ってはワイワイと騒ぐだけだ。だけど、同じような時代に少年時代を過ごした人間には、ああ、そうだよなと思わせる変な力がある。

 『プロゴルファー猿』のような懐かしいマンガが出てきたり、ドブ川を遡って行ったり、秘密基地が出てきたり莫迦にしまくっていた少女漫画に嵌ってしまったりと、あるよね、そういうこと(笑)というネタが満載。

 まだゲームなんてあまり出まわって無かった子供時代が懐かしく思い返された。

 ただ、私は高野さんのファンではあるのだが、どうも私は彼の理性と打算に満ちた奇行(?)が好きなんだなぁ。なので、次は彼のノンフィクションを読もう。
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その他小説 | 2013/07/24(水) 19:21 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1238冊目 ウイルス・プラネット
ウイルス・プラネット (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)ウイルス・プラネット (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)
(2013/02/14)
カール・ジンマー

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評価:☆☆☆☆


 興味をひくタイトルに惹かれてちょっと見てみたら、著者はカール・ジンマーさんではありませんか。これはもう読まないわけには行かない。

 ページをめくると、目に飛び込んでくるのはウイルスの電子顕微鏡写真。タバコモザイクウイルスは細長い板状、ライノウイルスは真ん丸、と単純な形状が続くかと思いきや、バクテリオファージのまるで月着陸船みたいな複雑なものが現れる。かと思えば、HIV、ウエストナイルウイルス、エボラウイルス、天然痘ウイルスといった、人類に大きなダメージを与えてきた病原体が姿を見せる。どれも、肉眼では見えないサイズだ。だが、彼らが一度体内に侵入すると、恐るべき脅威となる。

 戦慄すべき疫病を思い浮かべると、ウイルスなど、全て排除したくなる。しかし、それは不可能だ。人類が生息できるところならどこでも、いや、地球上であればどこでも、ウイルスは居る。それも、信じられないくらい大量に。

 居ると書いたが、それも誤った言い方かもしれない。なにせ、ウイルスには生命が持つ特徴を殆ど持っていない。遺伝子と同じ種類のタンパク質から出来てはいるが。だから、ウイルスは生物とは見做されない。

 病気ばかりが注目されるが、役に立つこともある。ウイルスの中には、細菌を殺すものがある。抗生物質が耐性菌のせいで効果を失いつつある現在、ファージの利用は細菌と戦う強力な武器になるかもしれない。

 あるいは、ヒトの遺伝子にはウイルスが起源と思われるものもある。ウイルスのお下がりなんて気に入らないと思われるかもしれないが、こうした遺伝子の水平移動は生物進化に大きな影響を与えてきただろうから(ウイルス進化説と呼ばれる)、忌み嫌うだけではウイルスを正しく理解することにはならない。

 本書は広く浅く、ウイルスがどのようなもので、騒がれているものにはどのような種類があって何故騒がれるかを分かりやすく書いている。この物質と生命の間の奇妙な存在について知るにはうってつけかもしれない。

 そんなウイルスの語源は、本書によるとこうだ。

 「ウイルス」は、ローマ帝国で用いられていた言葉、ラテン語に由来しますが、ラテン語の「ウイルス」には「蛇の毒液」と「人間の精液」という2つの意味がありました。1つの言葉の中に、創造と破壊とが同居していたわけです。
(P.7より)


 ウイルスの名付け親の慧眼に感服です。
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生物・遺伝・病原体 | 2013/07/22(月) 20:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1237冊目 戦場で心が壊れて―元海兵隊員の証言
戦場で心が壊れて―元海兵隊員の証言戦場で心が壊れて―元海兵隊員の証言
(2006/09)
アレン ネルソン

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評価:☆☆☆☆


 ベトナム戦争へ赴き、帰国後にPTSDを発症、ホームレスを経て自分の体験を語り継ぐことをライフワークとする著者が、自分の半生を振り返って書いた本。

 記憶は自分に都合が良いように改竄されるので、どこまでが客観的な事実かは分からない。しかし、多少の自己正当化が入っているとしても、語られることは空恐ろしいことだ。

 ベトナムでは、密林でのゲリラ戦が主な戦いだった。それは、前線と後方の区分のない世界。昼間は友好的に振る舞う人々が、夜には地の利を生かして襲い掛かってくる。誰が敵で、誰が味方かすら分からない。その疑心暗鬼があるから、住民の虐殺が起こる。重武装の兵士が現地の村に入って、そこに男が居なければ、それは敵対する村である証拠だ。だから、彼らをおびき寄せるために、村に残った老人が、女性が、子どもが殺される。いや、著者は、殺したと明言するのである。

 この辺りの体験談は、本当に読めば読むほど気が滅入る。こんなことに、普通の人は耐えられない。だから多くの兵士が帰国後にPTSDを発症することになった。

 彼の苦しみを理解できるとは思えないが、少なくともそういう存在を、生み出したくなんか無いと強く思う。戦争を無くさなければならないのは、まさに兵士が過酷な最前線で人間性を失っていくからだ。

 隣国との軋轢が報じられるニュースが流れる度に戦争だ!と勇ましいコメントをする人にこそ是非読んで欲しい。なんとなれば、いざ戦争となれば、同じ目に会うのは私やあなた方と同世代の人々だからだ。

 しかし、南京事件に対して"中国軍民の犠牲者は少なくとも一〇万人以上といわれる"としてみたり、従軍慰安婦を"侵略戦争中、日本軍が拉致・監禁し、「慰安所」で兵士の性暴力の対象とされた女性たち"と欠かれると鼻白む。南京事件は、私は中間派の意見に与しているので、敗残兵の違法な処刑を中心に数万の犠牲者(最大でも5万人)が出たと認識しているが、10万は多すぎる。

 慰安婦にしても同じで、白馬事件という例外的な拉致事例はあっても、慰安婦全体としてみればそれは商行為であった。遥か昔から、戦場にはそうした女性たちがいたのは戦史を紐解けば出てくる話だ。この辺りは、南京事件―「虐殺」の構造』や『慰安婦と戦場の性』が信頼出来る。

 さて、どのようにして彼が救われていったかは、本書にあたって欲しい。彼の鎮魂の旅が、満足いくものになることを願う。


関連書籍:
南京事件―「虐殺」の構造 (中公新書)南京事件―「虐殺」の構造 (中公新書)
(2007/07)
秦 郁彦

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慰安婦と戦場の性 (新潮選書)慰安婦と戦場の性 (新潮選書)
(1999/06)
秦 郁彦

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ノンフィクション | 2013/07/21(日) 20:07 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1236冊目 刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記
刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記
(2011/04)
アヴィ スタインバーグ

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評価:☆☆☆☆☆


 タイトルを見て刑務所に図書館だって?と思った時には何故か手に握られていた本。サブタイトルにも驚く。ハーバードを出て刑務所図書館に入るなんて、普通のコースじゃない。そう思って読み始めたら、想像以上に普通じゃなかった。

 それは、魅力的で意外な書き出しから伺える。

 受刑者の中で、いちばん司書に向いているのが風俗の男<ピンプ>。逆にまったく向いていないのがサイコキラーと詐欺師。ギャング、銃器密輸人、銀行強盗は群衆整理がうあく、少人数の協力者と手を組んで、慎重に練った計画を抑え気味のテンションで実行するのが得意。ということは、司書の基本的技能に長けているといっていい。ダフ屋や高利貸も悪くない。(略)


 挙げられているリストで図書館向きと思われる集団が全く理解できない(笑)。サイコキラーが向いてないのは分かるけど(笑)

 著者は、ハーバードを出たことから想像できる通り、元々はエリートコースを歩んでいた。敬虔なユダヤ教徒である両親の元で、熱心にユダヤ教を学んでいた著者は、しかし大学で落ちこぼれる。信仰も失い、死亡記事を書いて糊口を凌ぐ日々だった。それがある時、刑務所図書館の司書職の募集を見て応募してしまう。そして、彼は2年程、そこで働くことになる。本書はその間の模様を綴ったエッセイである。

 場所が場所だけに、利用者のほとんど全てが受刑者。そして、その多くは読書から何かを得ようなんてことは思わない(いや、私もそんなことは思っちゃいないのだけど)。

 それでも、やはり印象に残る受刑者は多い。

 著者の開いた作文教室でずっと窓の外を眺めている女性。恐るべきことに、彼女のクラスには全部で5人の受刑者が居たが、"(略)とます・ホッブズは、強力な君主のいない恐ろしい世界(略)で暮らす人々の人生は「孤独で、貧しく、不快で、粗暴で、短い」だろうと述べた。そのホッブズの言葉を体現しているような五人がひとつの部屋に会し、ぼくのまん前に座っていた。"というのだから恐ろしい。孤独<ソリタリー>と著者が仇名する彼女は、まだ自身が若かった頃に捨てた息子が中庭でバスケットボールをしてるのを見ていたのだ。

 他にも、自分の半生を本に綴ろうとする風俗の男やら、テレビの料理番組のホストになることを夢見る元ギャング、大法螺吹きで法律に詳しい人物等々、これが小説ならそれぞれ主役を張れそうなキャラが続々と出てくる。

 男女の受刑者は直接顔を合わせることは出来ないが、代わりに本にメッセージを挟んだり(どうやってその本を的確に見つけるのだろう)、窓に向かってスカイライティングをしていたり、受刑者の中でさらなるマイノリティを見つけて差別をしていたりする。

 そんな、どこまでも現実の世界でありながら、どこか非現実的な世界を、ある時はシニカルに、ある時には悲しみを込めて、そしてある時にはジョークとして眺めている。アメリカの刑務所はこんなところなのかと驚かされた。日本の、建前だけの教育刑とは違う理念が、そこにはある。もっとも、前述のとおり、殆どの囚人は真面目に本を読むわけではないが……。

 こうした刑務所の中のことと、著者が辿ってきた来歴や、刑務所外での出来事が交互に織り合わせられ、独特の雰囲気が醸しだされている。なんとも不思議な雰囲気で、登場人物たちの人生をきにしながら一気に読んでしまった。ノンフィクションでありながら、小説のような面白さも併せ持つ、不思議な作品。本好きにはお勧めです。
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ノンフィクション | 2013/07/19(金) 19:16 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1235冊目 オーラル・ヒストリー―現代史のための口述記録
オーラル・ヒストリー―現代史のための口述記録 (中公新書)オーラル・ヒストリー―現代史のための口述記録 (中公新書)
(2002/04)
御厨 貴

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評価:☆☆☆


 紙に書かれたことばかりが歴史ではない。しかし、口伝は信用ならない。記憶違いが幾らでも起こる。証拠はやっぱり必要だ。それでもわざわざ書いて残すのはその労力に見合っていると書く人が思うことだけで、後世の人が必要と思うことではない。ここでもやっぱり限界が現れる。

 そんな葛藤の末に生まれてきたのがオーラル・ヒストリー。従来の、紙に書かれた形で残る史料を補完する、口述の歴史だ。

 著者はまず、オーラル・ヒストリーの存在意義を"公人の、専門家による、万人のための口述記録"と定義する。その背後には、"デモクラシーの発展に伴って、そのデモクラシーに参与、参加するあらゆる人間に対して情報が公開されていかなければならない(P.6)"との思いがある。

 確かに、公人の行動とその結果からは、後世の人間が幾らでも汲むだけの何かがあるだろう。であるからには、彼らが決断をなすに当たって何を考え、どう対処したか。他の人がどう動き、それがどのような影響を与えたか。これらの情報は役に立つに違いない。

 本書はこのオーラル・ヒストリーの試みがどのようなもので、自分たちがどのようなことに取り組み、そして何が得られてきたのかを論じた書である。

 オーラル・ヒストリーだけで何かが見えてくるわけではない。最初に書いたとおり、それは文字記録を補完するものだ。しかし、一方で紙には決して書かれることのないダイナミズムがあるのは感じた。その効果を知らしめるべく広く話題を扱っているため、やや散漫な印象はあるが、これまで知らなかったこの営みの存在価値を教えてもらえたのは収穫。
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ノンフィクション | 2013/07/17(水) 23:27 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1234冊目 低温「ふしぎ現象」小事典―0℃〜絶対零度で何が起こるか?
低温「ふしぎ現象」小事典―0℃〜絶対零度で何が起こるか? (ブルーバックス)低温「ふしぎ現象」小事典―0℃〜絶対零度で何が起こるか? (ブルーバックス)
(2011/12/21)
低温工学・超電導学会

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評価:☆☆☆


 低温では様々な不思議な現象が起こる。例えば、超電導。電気抵抗によるロスがゼロになるこの現象は、原子の振動が抑えられることで振る舞いが大きく変わることで発現する不思議な現象だ。

 本書は、氷点下から絶対零度までの、幅にして273.15℃の間に見られる"ふしぎ現象"を紹介している本である。高温(と言っても我々から見れば十分低温だが)な方から見ると、南極海の氷点下になる海(※)で生きる魚がどうやって体内に氷を生じさせずに生きていけるのかという謎がある。しかも、この魚は釣り上げるとカバー写真のようにたちまち凍ってしまうのだ。

 南極での、-40℃以下の世界でしか見られない現象も面白い。お湯をコップに入れて空中に放つと、たちどころに凍りついて、まるで花火でもあるかのような多数の美しい放物線ができる。


 更に温度を下げていくと、まるで常識から反したかのような現象が起こるようになってくる。超電導もその1つだが、やはり不思議でたまらないのは液体ヘリウムが粘性を失って超流体となること。なんと、素焼きの容器から染み出してくるのは序の口で、壁を這い上がって失われてしまうのだ。

 低温になると原子の振る舞いが変わる。それがこうした"ふしぎ現象"を出現させる。どのような面白い現象があるのか、それは何故起こるのかを広く集めた本書は、低温の面白さを知るにはうってつけであろう。超低温技術の中には、宇宙開発にあたって必要となるものもあり、それにもきちんと触れられているのが嬉しい。





※海水に溶け込んだ塩分のために凝固点降下が起こるので、海水は0℃ではなく-1.8℃で凍る
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その他科学 | 2013/07/16(火) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1233冊目 切ってはいけません! 日本人が知らない包茎の真実
切ってはいけません! 日本人が知らない包茎の真実切ってはいけません! 日本人が知らない包茎の真実
(2005/09/21)
石川 英二

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評価:☆☆☆☆☆


 ブクレコの富屋大介さんのレビューで存在を知り、これは読まねば!と手に取りました。

 仮性は虎よりも猛なり、を座右の銘にしてきた(※)。しかしどうだろう。世の中に出てくるニュースといえば、先日ナショナルジオグラフィックで報じられた女性の好みが男性器の進化に影響?のような、夢も希望も無くすようなものばかりだ。文明化した後に生まれたことを感謝である。

 それどころか、歴史書ですら絶望を与えてくれる。史記の始皇帝の項では、始皇帝の母親が嫪毐<ろうあい>という男が見せた"宴会の余興として自らの一物を軸に馬車の車輪を回(ウィキペディアより引用)"すのに眩んで、こっそりと弟を2人もこさえちゃった挙句に始皇帝(当時は秦王政)が邪魔になって殺そうとしちゃうのだから、始皇帝の性格が歪んでしまうのも仕方があるまい。

 ともあれ、そんな暗いニュースばかりの中にあって自信を持たせてくれるのが本書。

 そもそも、日本人のほとんどを占める仮性包茎は、外国では包茎にカウントされないと聞くとパンチ力抜群である。おまけに、包皮の先端には神経が多数通っており、どうやら性感帯としても働いているというのだ。うん、これはタイトルに偽りなし。知らないことばかりだ!これには痴的好奇心が刺激されてやまぬ。

 また、生誕時に先端をカットする手術が自動的に組み込まれてしまうようなアメリカでは、むしろ包皮再生を行う男性がいるというのも驚きであった。そして、包皮がある男性、ない男性と行為を持った女性からの声ではある男性のほうが評価が高いというのも驚き。

 中々真面目には語られないこうした話をきちんと語ってくれていることに感激。そして、タイトル通りに知らない話が満載なのがまた嬉しかった。やはり、包皮にも自然選択が働いており、不要な器官ではないことを感じた次第です。

 また、サイズについても触れられている。銭湯などで同性のを見てコンプレッコスになりがちではあるが、しかし、その使用における最重要なシーンは、"いざ鎌倉!"という時だし、そうなった時にはビッグバン宇宙論的な、いや、インフレーション宇宙論的な急激なる膨張が起こっているわけで(注:誇大広告にご注意下さい)、気にするほどのことも無いのかもしれない。

 ともあれ、中々語られない話題をきちんと根拠を持って語っていることに好感を覚えた。コンプレックスを持っている人も、息子のそこが気になる母親も、そしてこれから悩む時期に入る若者も、この新たなる知識を身につけて欲しい。そして、不要な手術によって、無意味な不幸を生み出さないで欲しいと思った次第です。



※この分かりにくいボケを飽きもせずに何度も繰り出してきたが、「仮性じゃないから!"苛政は虎よりも猛なり"(礼記)だから!」とツッコミを入れてもらったことは過去の人生で一度しかありません(笑)。阿呆だから懲りません(笑)
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ノンフィクション | 2013/07/15(月) 19:01 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1232冊目 「食べもの神話」の落とし穴―巷にはびこるフードファディズム
「食べもの神話」の落とし穴―巷にはびこるフードファディズム (ブルーバックス)「食べもの神話」の落とし穴―巷にはびこるフードファディズム (ブルーバックス)
(2003/09/21)
高橋 久仁子

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評価:☆☆☆


 サブタイトルにあるフードファディズムとは、特定の食べ物さえ食べていれば健康になれると言わんばかりの誤った考えのことである。テレビ番組で○○が体に良いと放送すると翌日スーパーの棚からその商品が消えるような風潮を思ってくれれば良い。

 本書は、こうしたフードファディズムがどれほど根拠のないものなのかについて、怒りに満ちた告発をしている。

 考えるまでもない話で、何か特定のものばかり食べればどうやっても栄養が偏るので、長期的には良くないに決まっているではないか。結局は、バランスの取れた食事を、適量摂ることしか無い。いや、その適量というのが難しいのだけどね。

 閑話休題、本書を読むと、巷間囁かれる健康話がどれほど胡散臭いか分かる。例えばダイエットとして糖質を制限すると、脳はエネルギー不足に陥るため、まずは肝臓のグリコーゲンが、次いで筋肉のタンパク質が分解されてしまう。コレステロールだって代謝に大きな役割を果たしており、無闇に減らすのが良いわけではない。

 あるいは、白砂糖は体に悪いという話もある。黒砂糖は自然で体にいいのですと。または、アルカリ食品が体に良いというのもある。でも、血液はもともとアルカリ性で、それも許容されるphは極めて狭い。だから、ちょっと何か食べただけで血液が酸性になったりあるいはアルカリ性を高めたりされては困るのだ。

 とにかく、色々な話題を取り上げては、栄養学的な観点から斬って捨てる。理屈は丁寧にかつ読み易く書きながら、いざ妄言を斬って捨てるときにはバッサリとやっているので読んでいて爽快感がある。

 私は単に好みとして赤ワインを飲むが、ネタとして健康と幸福のために赤ワインを一杯などと称している(そして一杯では済まないこともしばしばである)が、それはネタ以上のものではないし、飲み過ぎたらむしろ有害であることは分かっている。だから、分かって楽しむのは良いと思う。納豆、好きだから毎日食べるというなら何を批判することがあろうか。

 問題は、誤った健康情報に踊らされて、テレビでお勧めのなんちゃらを食べて健康になったつもりの人が多いことだ。まず、情報を提供する側が誤解を誘うような言い方・書き方をしていること。厳しく言えば、それは詐欺だ。そして、視聴者が無批判にそれを受け入れること。自然食品礼賛なんてその最たるものだ。科学、技術に囲まれて、それがないと生活できない世の中に生きながら、その成果を否定することが格好良いように思うのはどこかがおかしいのだ。

 そんなわけで、世に蔓延る誤った知識を正してくれるという点で、本書の価値は高い。問題は、ホイホイと騙される人たちはこの手のまともな本は読まないことなのだろうな。
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その他科学 | 2013/07/14(日) 19:34 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1231冊目 私たちは、性犯罪被害者です―実名で告白する、「レイプ・性虐待の恐怖」と「克服する勇気」
私たちは、性犯罪被害者です―実名で告白する、「レイプ・性虐待の恐怖」と「克服する勇気」私たちは、性犯罪被害者です―実名で告白する、「レイプ・性虐待の恐怖」と「克服する勇気」
(2009/02/20)
キャロライン リーマン

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評価:☆☆☆


 性犯罪。泣き寝入りする被害者も多いため、公表されている数字は氷山の一角とも言われる。

 性の難しいところは、同じ事を同じようにやっても合法な場合と違法な場合があること。殺人のような事件なら、殺してくれと頼んできた人を殺しても死刑になるが、セックスなら、合意があれば違法ではない。ところが、むりやりすれば違法となる。

 本書にある事例はどれも合意など存在しないものばかりで、憤りを感じながら読んだ。デートレイプもあれば、レイプ未遂もあれば、痴漢的な行為まで、様々な態様であるが、被害者が深く傷ついているのはいずれも変わらない。

 そして、幼い頃に被害に遭った方は、その後の人生にも大きな影響を受けてしまったようだ。

 性は、基本的には楽しいものだ。なにせ、子孫を残すという生物の目的に直結するものだから、我々の脳では報酬系と呼ばれる、快楽をもたらすところと性は密着している。一方で、誰彼かまわず、という風には人は進化して来なかった。そうした進化の道筋が、性犯罪の加害者と被害者を生み、被害者の心に傷をつけるのだろう。

 本書を読んでも、性犯罪を無くすための手法は見つけることは出来ない。しかし、まずは軽はずみな行為が相手にどんな思いをさせるのかを知るには向いているかもしれない。
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ノンフィクション | 2013/07/13(土) 20:32 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1230冊目 暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う
暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う (新潮文庫)暗殺国家ロシア: 消されたジャーナリストを追う (新潮文庫)
(2013/05/27)
福田 ますみ

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評価:☆☆☆☆


 ロシアの中小クラスの新聞社、"ノーバヤガゼータ"("新しい新聞"の意)。ここは、次々と記者が亡くなったことで知られる。いや亡くなったではなく、殺された、というべきか。なぜそんな中小の新聞社の記者が次々と殺されなければならないのか。そこには、ロシアの闇が広がっている。

 話はソ連崩壊にまで遡る。ゴルバチョフの改革によって、ソ連には自由な雰囲気が溢れた。しかし、それも反対派のクーデターによって潰えていくことになる。

 エリツィンが熾烈な権力闘争の末にかろうじて権力の座に留まり、大統領選で再選を果たすと、締め付けが始まる。当局に都合の悪いことは報道が許されなくなっていく。報道に対する管制は、プーチンで完成したと言って良い。詳細は本書に譲るが、あらゆる手練手管を使って自由な報道をさせないようにしている。

 また、国民もエリツィン時代の経済崩壊を経験しているので、ロシアを再び強国に蘇らせたプーチンを支持している。

 そんな中にあって、"ノーバヤガゼータ"は歯に衣着せぬ政権批判を繰り返してきた。そして、それが幾人もの死を招いた。特に、チェチェンに関する報道で。

 本書を読むと、ロシアでは古い独裁政治が蘇っているように見えてしまう。なにせ、権力者の意志1つで、人の命すら簡単に奪われてしまう。マフィアのような連中も、政府と癒着することによって同様な力を手にしている。だから、彼らの逆鱗に触れれば、簡単に殺されてしまうのだ。

 そんな世界で、客観報道に徹しようとするのは自殺行為なのかもしれない。本書を読めば、チェチェンの独立派を叩き潰すために、ロシアは常軌を逸した行動まで取っている。テロとの戦いに名を借りた反対派の圧殺が行われているのだ。そして、権力を恐れる者は、誰もあるがままの事実など口にしない。いや、できない。日本に暮らしている身には信じられない現実が有る。

 "ノーバヤガゼータ"の報道を目の敵にする者が少なくないのは分かるだろう。権力に連なる者。そして、偏狭な愛国者。彼らにとっては、自国の軍隊が非合法の兵器まで使って、人質救出よりテロリスト殺害に力を注いだなんて報道は見たくないだろうから。

 ともあれ、既に6人の仲間を喪った"ノーバヤガゼータ"だが、記者達は堂々としたものだ。とりわけ心を打ったのは、このセリフ。「もし私が殺されても、『ノーバヤガゼータ』の同僚達がそのあとを引き継ぐでしょう

 こうした人々の力は、今は弱くとも、やがてロシアの宝となっていくに違いない。やがてプーチンは権力の座から遠ざかる。それと同時に強権的な体質がすぐに無くなるかどうかは分からない。しかし、いずれはそんなことできなくなる世の中が来るはずだ。自由をもたらすのに、きっと彼らの力は役立つに違いない。不幸な政府があっても、堂々と渡り合う気概を持ったジャーナリズムがあることは、その不幸を僅かなりとも薄めているように思えてならなかった。



関連書籍:
自壊する帝国 (新潮文庫)自壊する帝国 (新潮文庫)
(2008/10/28)
佐藤 優

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ノンフィクション | 2013/07/12(金) 19:13 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1229冊目 ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物
ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物 (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物 (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)
(2012/04/19)
バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン 他

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評価:☆☆☆☆☆


 著者名を見て仰天。社会生物学の泰斗、E・O・ウィルソンではありませんか!で、ハキリアリだって?これは読まずには居られない!興奮して読み始めた期待を裏切らない、いや、むしろ上回る面白さ。

 タイトルにもある通り、ハキリアリは農業を営む。葉っぱを切り落として巣に運び入れ、そこで菌の苗床にする。ハキリアリはその菌を食べている。菌を介することで、自分たちだけでは消化できない植物を食べられるようにしているのだから、それはもう農業としか言い様がない。

 しかも、彼らの農業の歴史は1,000万年以上。人類の農耕の始まりはざっくり1万年前なのだから、彼らはその1000倍も先輩なのだ。

 彼らの生は本当に驚きに満ちている。

 ハキリアリが葉を運ぶ時、その葉っぱの上に乗っかっている仲間がいる。歩くのをサボるわけではない。一番無防備な状態な仲間を天敵から守っているのだ。頑張って作った菌は、子どもたちの栄養とはなるが、大人はそれだけでは生きていけないので樹液に頼る方が多いというのも意外。

 そして、菌類との共進化が見られるのも面白い。菌の天敵相手には抗生物質まで駆使しているというのだから、彼らの賢さはフレミングによるペニシリン発見以後の人間に比することすらできるかもしれない(笑)

 棲家の複雑さと巨大さも特筆モノだ。セメントで巣穴の型を取ると、大きいものだと"全部の型をとるのに六・三トンのセメントと八二〇〇リットルの水を混ぜたものが必要だった"というから驚く。しかも、この巣が空調されているのだからますます凄い。

 本書は、このハキリアリの凄さを余すところ無く伝えている。上述の通り、社会生物学の泰斗が描くだけあって、彼らの生活環を詳しく追っている。加えて読みやすくて面白い文章なのが素晴らしい。

 『シロアリ――女王様、その手がありましたか!』でシロアリの見事な社会に感嘆したものだけど、こちらは農業を営む分だけ更に進化している感じだ。社会性昆虫の奥深さを感じさせてくれた。


関連書籍:
シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)
(2013/02/07)
松浦 健二

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生物・遺伝・病原体 | 2013/07/11(木) 19:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1228冊目 宗教常識の嘘
宗教常識の嘘宗教常識の嘘
(2005/10/13)
島田 裕巳

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評価:☆☆☆


 『教養としての世界宗教事件史』が面白かったので、もう一冊と思って手を出してみた。本書は、タイトル通りに宗教について常識と思われていることが、実はそうではないことを指摘しているもの。

 例えば、世界三大宗教。そんな区切りをしているのは日本だけだし、そもそも信者の数から言えば仏教徒よりもヒンズー教徒の方が多い。あるいは、ユダヤ教は元々は多神教だったこと。はじめに光りあれと言ったのはエロヒムであるが、それは日本語にすると"神々"に当たる単語である。

 多くの日本人には宗教が身近なものとして存在しているわけではない。イスラームのように生活規範として入り込んでいるわけではないし、毎週のように教会に通うという習慣をほとんどの人は持っていない。困ったときの神頼みというが、多くの日本人はその程度の信仰心しか持っていないのではなかろうか。

 と思ったら、実は本当に苦しい時代には信者の数は増えないと書いてあって仰天。むしろ信者が増えたのは高度成長期で、つまりは現世での利益を求める国民性に、信じても信じても我が暮らし楽にならざり、ではダメなのだというのは面白い。

 日本の七福神とインドの神々との関連も知らなければ驚きだろう。私としては、隠れキリシタンの血脈を継ぐ人々が、すっかりひらがな化した聖歌を歌っていたのが、きちんとルーツを辿れるところ。それなのに、キリスト教信仰の肝心なポイントが失われているというのは面白い。宗教は集団を纏める力なので、その集団が孤立すると、集団内でだけ通じる論理で固まっていってしまうのだろう。生物進化の類似性が感じられてならない。

 なかなか面白い企画だったかもしれないが、残念ながら知っていることが多かったのと仏教について触れる件で"中国のチベット"と書いてしまっているので☆1つ減。チベットは中国が不当に占領しているところでしょ。だからダライ・ラマは亡命せざるを得ないわけで。

 最後にちょっと腐してしまったが、信仰心の無い人には、宗教ってそうなのかと驚くことがあって面白いだろうと思う。


関連書籍:
教養としての世界宗教事件史 (河出ブックス)教養としての世界宗教事件史 (河出ブックス)
(2010/10/09)
島田 裕巳

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ノンフィクション | 2013/07/09(火) 21:05 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1227冊目 誰が本当の発明者か―発明をめぐる栄光と挫折の物語
誰が本当の発明者か―発明をめぐる栄光と挫折の物語 (ブルーバックス)誰が本当の発明者か―発明をめぐる栄光と挫折の物語 (ブルーバックス)
(2006/08/18)
志村 幸雄

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評価:☆☆☆


 時代を画するような大発明をした伝説中の人物が多々存在する。彼らの名は、発明したものの価値と共に永遠に語り継がれるであろう。例えば電球の発明者といえばエジソンだし、蒸気機関ならジェームズ・ワット、無線といえばマルコーニだろうし、飛行機ならば誰もがライト兄弟を思い浮かべるであろう。

 しかし、そう簡単には行かない。何故なら、技術も科学も唐突に現れるわけではなく、膨大な先駆的研究から生まれてくるものだから。それは即ち、彼らの前に既にアイディアがあった場合すらあることを示している。あるいは、幸運や、相手を出しぬいたことによって今の栄光を得ている人々すら存在するのだ。

 本書はそうした発明家たちが歴史に果たした役割を見つめようとする書である。

 ある人物の発明に対し、先行する知見にはどのようなものがあったのか。それを踏まえた上で、彼らが何を成し、なぜ彼らの名が知られているのかを明らかにしているので、歴史的な流れが分かるのが良いし、イメージと違うと思うことがあるのが面白い。

 日本人の発明あるいは改善も多く取り上げられているのも嬉しい。アメリカで生まれ、日本で開花した炭素繊維、八木アンテナの名で知られる指向性アンテナ、高峰譲吉が発見したアドレナリン、磁力材料に革命をもたらしたフェライト、そして青色発光ダイオード。ある者は時代という不運に泣き、ある者は栄光を手に入れた。その姿はまさにドラマである。

 発明にはやはり時代の影響が否めないので、色々な地域で同時多発的に同じ技術が発明されるのも良い。天才は時代を彩り、科学史や技術史をドラマにしてくれるが、きっと彼らが居なくとも、人類はその技術を手にしていたことであろう。早いか遅いかの違いはあるだろうが。そんなことを思わされた。
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技術 | 2013/07/08(月) 20:16 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1226冊目 昭和史の秘話を追う
昭和史の秘話を追う昭和史の秘話を追う
(2012/03/16)
秦郁彦

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評価:☆☆☆


 歴史家の秦郁彦さんが『諸君!』、『新潮45』、『文蔵』に発表した文章を集めたもの。現代史の流れを追いかける視線からは外れてくる、しかし、乱世にあって懸命に生きた人間の業績としては耳目を集める話題を集めている。

 その内容は、章ごとのタイトルを見れば雰囲気を感じ取れよう。

玉砕の島ペリリューの女兵伝説
「炎のランナー」たちの勝利と失速
インパール戦・山守大尉、死の突撃
司馬遼太郎と戦車
作家・堀辰雄の周辺
秘密兵器・「チビ」弾の喜劇風生涯
ベトナム残留日本兵の春秋
ディエゴスアレスの月
毛沢東暗殺未遂事件の怪
スマランのオランダ人慰安婦たち

 玉砕の島~では、日本へ帰るのを拒否してペリリューで想いを寄せた人物と共に戦死した女性の伝説を追っている。なんと、機関銃で海兵隊(あの精強をもって知られる海兵隊)86人をなぎ倒したとも言われる人物だ。玉砕に至る最後の戦いの模様も詳述されおり、その悲惨さには暗然としてしまう。

 それにしても、玉砕せずに捕虜となっていれば、捕虜の管理にリソースが取られるので、連合軍にはより負担になっただろうに。また、降伏するなと教えられた日本兵は、いざ降伏してしまうと軍の機密事項でもなんでもペラペラと喋ったと言われる。降伏しないことを前提にしていたから、捕らえられた時の対応を教えられていなかったのだ。

 どこかで聞いたことがあるような話だ。そう。原発の事故など起こらないことになっていたから、いざ地震で津波が襲ってきたら何も対応できなかったフクシマと。日本人は何も学んでいないのかと思うと、またまた暗然とする。

 おまけに、震災から学んだのが原発は停止すべきだなんてレベルの人を見るともう絶望する。違うんだよ。本当に学ぶべきなのは、望まないことは必ず起こるので、起こってしまった時に被害をどれほど小さくできるかを冷徹に見詰めることなんだよ。

 話が逸れた。

 心に残ったのは、"インパール戦・山守大尉、死の突撃"。牟田口廉也が最後までインパールを現地の将兵がだらしないからだと言っていた件には腸が煮えくり返る。その中にあって、現場指揮官たる自分は死を賭して任務を遂行するが部下はこっそり生かそうとした山守大尉の行動には胸が熱くなる。

 あるいは、"秘密兵器・「チビ」弾の喜劇風生涯"では、日本軍が小規模ながら毒ガス戦を仕掛けており、マルタと呼ばれた人々を使って人体実験も行なっていたという件には人間の残酷さを思わざるを得なかったし、"スマランのオランダ人慰安婦たち"では組織的な性の暴力の身の毛もよだつ思いをさせられる。

 こうした事実の数々を見るにつけ、戦争という極限状態に人々を追い込むわけには行かないと強く思う。歴史上、世界のどこででも、何度でも繰り返されてきた情景なのだろうけど。

 一方で、"「炎のランナー」たちの勝利と失速"と『風立ちぬ』で名を残す"作家・堀辰雄の周辺"は、血生臭さをほとんど感じさせない。

 取り上げた10の話題がそれぞれ実に深く調べられているし、どの章も冷静なところが迫力を感じさせてくれる。昭和の時代の、歴史の影に埋もれた人物たちに光を当てる評伝として興味深く読むことが出来た。
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ノンフィクション | 2013/07/07(日) 19:43 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1225冊目 昆虫変身3D図鑑―変態の決定的瞬間
昆虫変身3D図鑑―変態の決定的瞬間昆虫変身3D図鑑―変態の決定的瞬間
(2001/07)
海野 和男

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評価:☆☆☆


 先日、昆虫の擬態写真集を紹介したばかりの海野和男さんの本。こちらはタイトル通り、変態の姿を見せてくれる。擬態だと、見つけた昆虫をそのままカメラに収めれば良いだろうが、変態のほんの僅かな時間を切り取る苦労はいかほどであったか。

 "いつ変身するかわからない幼虫や繭と何日もにらめっこになることも多い(P.155)"と言うのだから、その苦労が偲ばれる。そもそも、脱皮や変態は、それまで身を守っていた鎧が小さくなったので脱ぎ捨て、新たな体を作る意味合いがある。だから、脱皮・変態の間や直後は虫達にとって一番弱点を晒す時間でもある。であるからには、極力人目の付かないところで、短く済ませようとするはずだ。

 本書にはそんな貴重な瞬間が多数収められている。チョウ、ハチ、セミ、カマキリ、トンボ、バッタなどが孵化し、脱皮して大きくなり、そして変態で大きく姿を変える。

 変態には2種類ある。幼虫、繭、成虫となるのが完全変態。この方法を取る虫は、幼虫と成虫で全く異なる姿を取るのが面白い。繭の中で体は溶け、そして成虫の体が再構築される。イモムシがチョウに変わるなんて、自然界の不思議を実によく表しているように思う。

 一方、繭を介さず、脱皮によって大きくなるだけのものを不完全変態という。カマキリあたりが代表だろうが、その生まれたばかりの子の小さいこと。これがきちんと独り立ちして餌を自力で取るのかと思うと感心する。

 いやはや、生物には不思議がいっぱいだ。

 昔拾ってきたカマキリの卵が庭で無事に孵り、おかげでたまに家の中に小さな、本当に小さな闖入者が出没したのを懐かしく思い出した。

 本書の後半では、3D写真も載っている。立体メガネの作り方も解説されているが、交差法等が出来る方は不要です。飛び出る昆虫を堪能下さい。

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生物・遺伝・病原体 | 2013/07/05(金) 20:11 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1224冊目 なぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐ
なぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐなぜシロクマは南極にいないのか: 生命進化と大陸移動説をつなぐ
(2011/08/22)
デニス・マッカーシー

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評価:☆☆☆☆☆


 生物地理学をご存じだろうか?なぜ生物がいま見られるような分布をしているのかを問う学問で、地球史が生物とその進化にどのような影響を及ぼしてきたかを論じる壮大な営みである。

 生物はどのように進化してきたのか。遺伝子の変異がどうこうというのは確かに一つの答えだ。しかし、生物地理学はもうちょっと先の疑問に答えようとしている。それは即ち、なぜこのような生物が進化によって生まれてきたのか、だ。この学問が答えようとする問いの1つこそ、タイトルにもなっている"なぜシロクマは南極にいないのか"である。

 この分野の有名人は、それこそ超弩級の人物である。まず、分類学の父カール・フォン・リンネ、進化論の生みの親であるチャールズ・ダーウィンとラッセル・ウォレス、大陸移動説を唱えたウェゲナー、社会生物学の父E・O・ウィルソン、『銃・病原菌・鉄』で一世を風靡したジャレド・ダイアモンド。


 彼らの行跡を追う中で、読者は自然とどのようにして進化が起こってきたかを地球規模で知ることが出来る。

 ダーウィンフィンチはなぜ分化したか。イグアナの進化の謎(イグアナが分化したのはガラパゴス諸島が出来る前なのだ)。南北アメリカが接したことによる南米の悲劇。そして何より、人類が世界中に広がった果てしのない道のり。

 単に進化の物語として面白いだけではない。地球規模での変化がその背景にあるが故のダイナミックさが面白いのだ。変わりゆく地球の上で命を繋いでいくためには、我々は変わり続けなければならないのである。

 ダイナミックさを感じさせるために、意外な事実を多数取り上げているのも嬉しい。例えば、アマゾン川は昔太平洋に注いでいた、という。アンデス山脈が隆起したために流れがせき止められてやがて逆流し、大西洋に注ぐ今の姿になったのだ。それは、カワイルカの寄生虫を調べれば分かる。

 人類の伝播についても同じように興味深い話題が山盛りである。ポリネシアのサツマイモは南米原産な一方で、南米で発見されたニワトリの骨はポリネシアのものと遺伝的に一致する。古代の人々の航海術に驚くばかりだ。

 こうした読者の興味を惹く興味深いエピソードが多数あるため、読んでいて実に楽しかった。生物地理学には今後も注目していこう。
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地球史・古生物・恐竜 | 2013/07/04(木) 20:17 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1223冊目 細菌が世界を支配する―バクテリアは敵か?味方か?
細菌が世界を支配する―バクテリアは敵か?味方か?細菌が世界を支配する―バクテリアは敵か?味方か?
(2012/09)
アン マクズラック

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評価:☆☆☆☆


 細菌にはどのようなイメージを持たれているだろうか?え?汚い?不潔?臭い?病気のもと?そう思われても不思議はない。実際、それらの原因の少なからずは細菌のせいだ。しかし、一方で、細菌が無けれな我々は生きることすらできないのである。

 信じられない?

 確かに、中世ヨーロッパで数多の死を運んできたのは腺ペスト(黒死病)であった。無症候性キャリアとして少なからぬ人にチフスを感染させてしまった"チフスのメアリー"も居る。

 パスツールやコッホといった有名人たちの奮闘(日本人としては、不遇の扱いを受けている北里柴三郎さんが取り上げられているのは嬉しい)、かのペニシリンの発見など、細菌との戦いの歴史を見れば、そう思われても仕方がないかもしれない。

 しかし、一方で、生まれたばかりの無菌の赤ん坊はすぐに細菌に感染し始める。細菌の感染がなければ、我々は必要な栄養を得ることすらできない。尾籠な話で申し訳ないが、排泄物のうち大きい方の乾燥重量では細菌が最多だったりするのだ。

 これほどまでに数が多いからには、彼らにも興味深い事実がそれこそ数えきれないほど存在する。

 梅毒が新大陸由来ではないという説は聞いたことがあったが、コロンブスのライバルが、新大陸発見後すぐに梅毒で死んでいる(通常、梅毒で死ぬには感染から10年ほどが必要)と聞くと納得する。ただ、梅毒は、ヨーロッパで猖獗を振るうようになった直後は物凄い破壊力を持っていたというので、現在の毒性から判断するのは危険かもしれないが。この辺りの話は『王様も文豪もみな苦しんだ性病の世界史』が詳しいので参照されたい。

 疫学のきっかけとなったジョン・スノウによるロンドンのコレラの原因追求も興味深い話題だし、どこにでも居る細菌ながら深刻な病をもたらしうる在郷軍人病のようなものも取り上げられている。細菌に抗生物質が効く理由も、抗生物質がやがて効かなくなってしまう理由も明示されているのが嬉しい。

 こうした事実を知れば、身の回りを清潔に保たなければならないように思うのも無理は無い。

 しかし一方で、細菌がいなければ我々の生活は実に侘しいものになる。発酵食品は細菌を上手に利用したものだ。つまり、醤油も味噌もチーズもバターもビールも日本酒もワインも、細菌がいなければ存在しない。人間が利用するようになってからだと、遺伝子組み込みを利用したテクニックによってインシュリン等の薬剤が生産されている。

 更に、本書では細菌を使った夢の技術も紹介されている。その全容は是非とも本書を参照して欲しい。兎に角、地球の生物の主人公とも言える細菌の生態と、彼らが持つ無限の可能性を紹介している本書は、レアな存在でなおかつ読んで面白いものでもある。ミクロの世界の生物学にちょっとでも興味を持ってしまった方には、是非とも本書をお勧めしたい。面白いトピックが山盛りなので、入門書としてかなり優れた本だと思う。


関連書籍:
王様も文豪もみな苦しんだ性病の世界史王様も文豪もみな苦しんだ性病の世界史
(2003/01)
ビルギット アダム

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生物・遺伝・病原体 | 2013/07/02(火) 23:40 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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