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Author:Skywriter
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鉄人


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1222冊目 昆虫擬態の観察日記
海野和男 昆虫擬態の観察日記 (知りたい!サイエンス)海野和男 昆虫擬態の観察日記 (知りたい!サイエンス)
(2007/06/27)
海野 和男

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評価:☆☆☆☆


 どんな生き物にも、それを食い物にする生き物がいる。天敵と言われる存在だ。だが、被捕食者だって黙って食べられるだけの存在ではない。なんとかして食べられないよう、それこそ必死の努力を払ってきた。主に、払わなかったものが食われて死んだという意味合いだが。

 自然の妙は、捕食者から逃れるために2つの方向で進化を遂げさせたことにある。1つは、目立たないようにすること。もう1つは、正反対に目立つようにすることで。

 本書は、前半をこの目立たないようにする保護色と呼ばれる技術について、後半では逆に目立たせることで威嚇あるいはカモフラージュする技術について、多くの昆虫の実例を挙げながら説明している。

 勿論、説明だけされたって、とても分かるものではない。例えば、有名なナナフシが枝にそっくりだと言われれば、ナナフシの姿を知っているからこそ納得行くだろう。しかし、例えばサルオガセギスが植物そっくりと言われてもさっぱり見当もつかないに違いない。少なくとも、多くの読者は。

 そんなわけで、親切設計な本書は、まず2ページの見開きでどのような昆虫が何に似せているか、どのようなライフサイクルを持つかを簡単に説明した後、次の2ページはカラー写真で実際の擬態の様子を載せている。本書の表紙にもカマキリが隠れているのだが、あれを更に巧妙にした感じ。言われなければ分からないような写真が沢山ある。本当に見事なものです。ここまでは虫が苦手な人にも大丈夫。むしろ間違い探しの感覚で楽しめます。

 後半の、目立つことで捕食から逃れるというのはどういうことか。それは、"自分は毒を持っていますよ、不味いから食べないほうが良いですよ"というアピールだ。だとしたら、目立たないでいるべき理由はない。

 そこからが面白いのだが、毒を持つ虫にそっくりな、毒を持たない虫がいる。毒虫の威嚇に、言わばタダ乗りしている存在だ。これをベーツ型擬態という。更に面白いのは、毒を持つ虫同士が互いに似ていること。何故か?それは、彼らの主要な天敵である鳥が視覚に頼って餌を採ることを利用している。100種類の虫が100種類の模様をしていたら、鳥は100種類アタックするだろう。しかし、100種類が全てそっくりであれば、鳥はそのうちの1種類を食べただけで残りの99種類には手を出さなくなる。これを、ミューラー型擬態という。

 写真を見れば見るほど、擬態が驚くべき見事さであることに惚れ惚れする。

 他にも、ハチやアリに似せたり、目の文様を体に刻んだりと、彼らの払ってきた努力を窺わせる実例が沢山ある。進化の妙を目で確かめることができる、嬉しい一冊。虫が苦手な人も、前半をちょろっと覗いてみてください^^。




関連書籍:
似せてだます擬態の不思議な世界 (DOJIN選書 2)似せてだます擬態の不思議な世界 (DOJIN選書 2)
(2007/01/20)
藤原 晴彦

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生物・遺伝・病原体 | 2013/06/30(日) 20:09 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1221冊目 動乱のインテリジェンス
動乱のインテリジェンス (新潮新書)動乱のインテリジェンス (新潮新書)
(2012/10/26)
佐藤 優、手嶋 龍一 他

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評価:☆☆☆☆


 2人の存在は、『インテリジェンス 武器なき戦争』で私の意識に入ってきた。それから、それぞれの本を読み、深く広い学識に感心してきた。本書は、その2人が再び日本を取り巻く状況について縦横に語っている。

 テーマは本当に広い。竹島、尖閣といった隣国とのゴタゴタを論じたと思えば、返す刀で沖縄や北海道を論じる。中国やイランの情報戦、北朝鮮の核、そしてアメリカの戦略。

 品格を落とすと言って話しだすのがロシア・パブにウクライナ女性が多い理由。それもきっちりインテリジェンスに絡んでいるのだから、品格が全然落ちてない(笑)

 あるいは、何かと話題のTPP。これも、単に経済的な枠組みであるとしたら読み誤る、という。TPPは、安全保障の枠組みであると同時に、アメリカがどこに軸足を置こうとしているのかを読み解くキーである、という。経済の枠組みは、同時に安全保障の枠組みでもあろう。

 これらを、単に意外な事実の集積として読んでも面白くはある。それよりもむしろ、情報の裏に何があるのかを考える切っ掛けにするのが良いように思えてならない。何気なく聞き流してしまっているニュースの裏に、どれほど熾烈な情報戦が隠れているか。あるいは、政治的な意図が潜んでいるか。

 一朝にして情報リテラシーが身につくわけではないので、この手の本で鍛えていこう。本書は新書らしく読みやすくて理解しやすいので、考えるヒントを得るにはうってつけの1冊かもしれない。



関連書籍:
インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)
(2006/11)
手嶋 龍一、佐藤 優 他

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ノンフィクション | 2013/06/28(金) 19:01 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1220冊目 アジア史論
アジア史論 (中公クラシックス)アジア史論 (中公クラシックス)
(2002/03)
宮崎 市定

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評価:☆☆☆☆


 大学時代、今に劣らず雑食性だったワタクシは、理系学生だったにも関わらず、卒業単位には全く関係のない文系の授業を受けまくっていた。なにせ、開いているコマは文系で埋めていたのだから相当にアレな話だ。そうしてお邪魔していた中に、東洋史の授業があった。そこで、著者を知った。授業を受け持っていた助教授曰く、"東洋史のヘビー級チャンピオン"こそが著者だという。

 本書は著者の1950年代の論考を集めたもの。ええ?60年くらい前だって?そうです。でも、不思議なことに古さを感じさせないのですよ。

 アジア史と言われれば何を想像するだろうか?秦漢帝国?唐?朝鮮-日本関係?

 いやいや、本書の扱う範囲は遥かに広い。時間的にも、空間的にも。

 アジアというからには、西アジア、つまりヨーロッパとの境界から、我らが日本まで、西アジアでヒッタイト帝国が勢力を誇った頃から近代日本がなぜこのような発展を遂げたかまで、本当に広く論じている。しかも、これ以上ないくらいにざっくばらんに、飾りっけなく。

 本書を読めば、人類史において専攻していたのは西アジアであったという事実がはっきり分かる。先進的な西アジアに貴金属が流れていったことが東洋の経済的な負の連鎖を生んでいた。それはヨーロッパも同じ。

 今の世の中に生きていると、欧米というかヨーロッパで起こった産業革命が人類史に計り知れない影響を与えたことを認識せざるを得ない。それは同時に、ヨーロッパが人類史上に置いてヨーロッパが常に先進的な地域ででもあったかのような錯覚を与える。しかし、それは間違いだ。ヨーロッパは、文化的にも政治的にもルネッサンスまでは西アジアの後塵を拝する立場だった。

 本書は、世界史における地理的な中心であったアジア(他の地域は、地政学的な点で中心にはなり得なかった)を扱っている。従って、強勢であった西アジアを論じたかと思えば、辺境の田舎国家に過ぎない中国・日本に触れたりと、縦横無尽に論じているところが心地良い。

 例えば、中国では青銅器文明時代が短く、より進んだ鉄器文明が早くに入ってきたために、青銅器文明につきものの都市文化及び都市型民主主義制が成り立たなかったなんて纏められると、その意外な姿にドッキリする。まぃて、日本には青銅器文明と鉄器文明が同時に訪れたとなると、その影響力は計り知れないものがある。

 こうした意外な事実の提示を、物凄くざっくばらんな言い方で行なってくれるのが凄い。ふと気がつくと、宮崎ワールドに引きこまれている。そして、西アジアこそ世界史の中心であった歴史時代に思いを馳せている自分気付くくことになる。中国が好きな人でも、目から相当量の鱗が落ちることが確実な1冊。

 三国志とか史記が好きな方が陥りがちな、英雄の行跡を後追いするというよりは、歴史の流れにおいて各時代がどのような意味を持っていたのかに注目する、意外な本。中世が何故古代とも原題とも明らかに違う時代なのか、近代はそれをどのように超克したかを感じさせてくれる1冊。
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中国史 | 2013/06/26(水) 23:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1219冊目 アジア新聞屋台村
アジア新聞屋台村 (集英社文庫)アジア新聞屋台村 (集英社文庫)
(2009/03/19)
高野 秀行

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評価:☆☆☆☆


 辺境作家である高野さんがまだ全然売れてない時代のある日、エイリアンのレックと名乗る人物からコンタクトがあった。その宇宙人はどういうわけか知らないが、高野さんにタイについてのコラムを書いて欲しい、と言う。どれだけ書けば良いのか聞き出そうにもちっとも埒が明かない。エイリアンを名乗るだけのことはある。そんなわけで、直接会って話を聞こうと思って出かけた先は、"エイジアン"という、外国と日本を結ぶための情報を提供する新聞社だった。

 ここで、高野さんは驚愕することになる。なにせ、怪著『間違う力 オンリーワンの10か条』で初手から遥か斜め上を歩むことを明らかにした著者をして"埒があかない"、"なんていい加減な"と嘆かせてしまう新聞社なのだ。

 まず、その発行する新聞の種類の多さ。タイ、台湾、ミャンマー、インドネシア、マレーシア。それぞれ読者が求める、中国語、タイ語、ビルマ語、インドネシア語に加えて日本語の記事がある。え?普通は現地語だけじゃないの?と思うが、ここではそんなことはない。日本人で現地の情報を欲しい人とか、外国人と日本人のカップルにも訴求力を持つ雑誌ということなのだ。

 うーん、一理ある。かな?

 いや、驚くべきはそれだけじゃない。なにせ、編集らしきものが全然行われていない。その余りのいい加減さに驚きつつもすっかり参ってしまった高野さん、ここで働くことになる。

 こうして国際色豊かな同僚が出来るわけだが、彼ら・彼女らが揃って濃い人々。世界中から高野さんのような人が集まってきたような、そんな感じ。もう、その段階で抱腹絶倒は約束されたも同じだ。

 3カ国の苗字を操る謎の夫婦、美人で有能ながら自信のない美女、困ったら現れる経理の助っ人。変わった人々のところに事件に次ぐ事件の連続で、これがありきたりなストーリーになるわけがない。読者の腹筋は耐久性を問われることに。

 外国人美女との淡い恋模様のことなどちょっとしんみりさせられるエピソードもあるが、一度雰囲気を沈めることで更に笑いを高めようとする配慮なのかと思えてしまうほど。

 世界は広い。面白い人は沢山いるんだと思わせてくれた本。相変わらず、奇妙な人たちの中にいて不思議なことをやっているのに、どこか周りを冷静に眺めている理性を感じさせる、謎な雰囲気は変わらない。高野ワールドの魅力はこの本でも健在だった。


関連書籍
間違う力 オンリーワンの10か条 (Base Camp)間違う力 オンリーワンの10か条 (Base Camp)
(2010/03/17)
高野秀行

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ノンフィクション | 2013/06/25(火) 19:45 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1218冊目 自己組織化で生まれる秩序: シロアリ・量子ドット・人間社会
自己組織化で生まれる秩序: シロアリ・量子ドット・人間社会自己組織化で生まれる秩序: シロアリ・量子ドット・人間社会
(2012/09/14)
荒川 泰彦、松本 忠夫 他

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評価:☆☆☆


 雪の結晶のあの綺麗な六角形は、今でも見る度に美しさを感じさせてやまない。あの形は、誰かが作り出しているわけではない。氷の結晶が雲の中で育つとき、自然とあの形になるのだ。こういう、誰かがグランドデザインを描いて残りがそれに従うというわけではないのに秩序が現れてくる現象を、自己組織化という。

 本書はこの自己組織化についてのシンポジウムを纏めたもの。そのため、一冊の本に纏めるにはちょっと散漫に思えてしまうほど異なる分野である、シロアリや量子ドットや人間社会に見られる自己組織化を語っている。

 シロアリについては『シロアリ――女王様、その手がありましたか!』が詳しいが、彼らの驚くべき巣は、全体を設計するものなどいない。単純な信号に従うだけで、物によっては数メートルの高さで内部の換気まで完璧なものができてくる。

 あるいは量子ドット。これを使えば、例えば太陽光発電の発電効率は飛躍的に高まることが実証されているが、これも自己組織化で出来てしまう。

 人間社会については、まあそう言う風に言おうと思えば言えないこともないよね的な感じでイマイチではあったが(社会は複雑すぎるのでどんなことでも言えてしまうから、常に一歩引いた視線が大切と思う)、それでも画一的な社会は変化に弱いことの指摘は重要であると感じた。

 
関連書籍:
シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)
(2013/02/07)
松浦 健二

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その他科学 | 2013/06/23(日) 20:07 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1217冊目 誰も知らなかったココ・シャネル
誰も知らなかったココ・シャネル誰も知らなかったココ・シャネル
(2012/08/30)
ハル ヴォーン

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評価:☆☆☆☆


 ファッションには全く興味が無い。生活空間は無臭であることが好きなので、香水はむしろ苦手だ。だから、シャネルには関心など欠片も持っていなかった。そのままであれば、本書を手に取ることなど、決して無かったはずだ。ブクレコ今永麻由子さんのレビューを目にすることが無ければ。

 彼女は、貧乏に生まれ、母とは早くに死別し、父には捨てられた。そんな彼女が燃えるような野心と持ち前の頭の良さ、そしてなにより器量を武器にのし上がる様は爽快である。しかし、本書はその光の部分を眺めようとするものではない。むしろ、光が覆い隠してきた、影を見詰めようとするものだ。

 コードネーム、ウェストミンスター。それは、ナチスがスパイとしての彼女に付けた名前である。シャネルの愛人の名を使ったのは、ジョークか嫌がらせか。ともあれ、強烈な反共主義者で反ユダヤ主義者であった彼女は、ナチスへの親和性は極めて高かったといえる。彼女がどれほどナチスに親和性が高かったかは、原題を見れば分かるだろう。"Sleeping with the Enemy"。勿論、Sleepingはあちらの意味です。

 戦後、ナチスに協力的だった人々へ、社会は苛烈な報いを与えた。裁判も無しに殺害された人も万をもって数え、女性は"水平協力者"と蔑まれて丸刈りにされた上に裸で街を引き回された。しかし、シャネルは違った。彼女は、どの時代も上手く立ちまわることに成功したのである。

 彼女の成功は何に由来するのか。本書は様々な史料を駆使してその謎に迫っていく。金持ちに囲われていた時代からその複雑で豪華な人間関係が築かれていく。芸術家、政治家、実業家、そして軍人。彼女の生涯を語ることは、そのままヨーロッパの現代史を語ることに繋がるのではないかというほどの豪華さだ。ジャン・コクトー、パブロ・ピカソ、ストラヴィンスキー、"王冠を賭けた恋"で知られるエドワード8世、チャーチル、エトセトラエトセトラ。

 結論から言ってしまえば、この豪華な人脈が、彼女を救った。そのうち最大級の皮肉は、彼女が忌み嫌ったユダヤ人、ヴェルテメール一族こそが彼女と彼女のブランドを守ったことであろう。巡り合わせの妙を感じさせる。

 彼女の成し遂げたことには素直に敬意を払いたい。しかし、人格を見ると、どうしても好意を持つことは出来なかった。やはり、差別意識を露骨に表明する人には、どうしても一歩引いた感覚を持ってしまう。こうした人が多かったから、ユダヤ人を過酷な運命が見舞ったのだと思われてならなかった。

 ともあれ、人物伝としても立志伝としても現代史の1ページとしても読むことの出来る、重厚なノンフィクションであったことは間違いない。
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ノンフィクション | 2013/06/21(金) 22:13 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1216冊目 昨日
昨日 (ハヤカワepi文庫)昨日 (ハヤカワepi文庫)
(2006/05)
アゴタ クリストフ

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評価:☆☆☆☆


 1956年、ハンガリー。ソ連の圧政に立ち向かった人々は、首都ブダペストで一斉に蜂起した。所謂ハンガリー動乱である。アメリカはハンガリーを援助する素振りを見せたが実行に移すことはせず、放棄はソ連軍の圧倒的な武力の前に鎮圧され、ナジ・イムレ首相が処刑される等、多くの犠牲者を出した。国外へ脱出した難民は20万人以上。

 その難民の中に、アゴタ・クリストフという若い女性が居た。その遥か後に、『悪童日記』で世界的な注目を浴びることになる人物である。大学時代に読書家の友人に勧められて読み、圧倒的なパワーに参ってしまったことを思い出して本書を手に取った。

 本書は、そのアゴタ・クリストフの半自伝的な小説である。

 主人公のサンドールは、工場での単調な仕事で細々と暮らす亡命者。カネは無く、学もなく、そして、語れるような過去もない。むしろ、過去は自分の中で封印し続けなければならない類のものだ。そして、いつか自分の前に現れるはずのリーネという女性を夢に見ながら、夜は文章を書き綴る。

 夢や希望が遥か彼方にある、泥沼のような毎日。付き合っている女性は居る。亡命者仲間で話しをする相手はいる。それなのに、全く満たされることのない日々。全ては、彼が国を捨てることになった過去にあるのかもしれない。

 重く、やや狂気を感じさせる。それなのに、どこか現実にしっかり立脚しているような文章に迫力を感じてしまう。著者が同じような生活を送っていたからこそ持ち得る力だろう。

 『悪童日記』程の圧倒的な印象は無かったが、それでも人と社会の繋がりについて考えさせられる作品だった。


関連書籍:
悪童日記 (ハヤカワepi文庫)悪童日記 (ハヤカワepi文庫)
(2001/05)
アゴタ クリストフ

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その他小説 | 2013/06/19(水) 19:19 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1215冊目 ヒトラーの秘密図書館
ヒトラーの秘密図書館 (文春文庫)ヒトラーの秘密図書館 (文春文庫)
(2012/12/04)
ティモシー ライバック

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評価:☆☆☆


 読書は人を成長させる等という妄言を吐く人が居る。それは往々にして読書家を自称する人である。私なんかは、そんな"俺はこんなに本を読む立派な人間なんだぞ"みたいな自己満足は他所でやれと思う。読書なんて、数ある人類の悪癖の1つに過ぎないのだ。そんな寝言を抜かす奴には、歴史上の有名な読書家を3人教えてあげる事にしている。スターリンと毛沢東と、本書の主人公たるヒトラー。併せて億に迫ろうかという人々の死に責任を持つ、最悪の独裁者たちだ。

 本書は、ヒトラーの16,000冊を超える蔵書のうち、彼が確実に目を通したと判断できる本を取り上げ、それらがヒトラーにどのような影響を与えていたかを読み解いている。

 伝令兵として、無私の人物と思われ周囲の尊敬を集めいていた時代。政治に踏み出し、党内で失脚しかけたり(失脚していれば良かったのに……)、クーデターに失敗したりといった不遇の時代。そして、いつしか権力を掌握していく時代。いつも彼の傍には本があった。

 「本を!常に、もっと本を! だった。本を手にしていないアドルフを私は思い出すことができない。本は彼の世界だった」と語る当時の親友の言葉が、彼がどれほど読書家だったかを物語る。それは後も変わらず、毎日1冊は本を読んでいた、と言うのだ。

 では、彼はどのような本を読んでいたのか。

 本書が明らかにする事実の数々は、ナチスの蛮行が決して1人の狂人によって生み出されたものではないことを物語る。例えばT型フォード等で今も名を残すヘンリー・フォードは『国際ユダヤ人』という、ユダヤ人への差別と排撃をあからさまにした本を著し、それはヒトラーに大きな影響を与えている。

 妄想体系に過ぎない、北方人種の優越性とやらがどれほど社会に根を下ろしていたか。余りにも現実は恐ろしい。ヒトラーは、他人から称賛される程の優れた記憶力を、そんな無駄なことに費やしてしまった。そう思うと、ヒトラーという存在は、時代が生んだある種の必然かもしれない。

 やがて、彼は自らの愚かさにより、戦争指導を誤って、第三帝国と共に終焉を迎える。麾下の将軍たちを信じず、オカルトに助けを求めるような指導者には相応しい末路だ。そんな愚かな指導者を持たないためにも、普段から選挙の時には人をきちんと見て、しっかり判断しなければならないのだろう。

 蔵書から見られるヒトラーの姿と、彼の栄光から破滅までの幾つかの時期に焦点が当てられているので、ヒトラーの時代を体系的に知りたいと思われる方には向いていないだろうが、何があの狂気を生んだかを知りたいという方にはお勧めできる。

 残念なのは、ヒトラーはパーキンソン病を患っていた可能性を指摘される(例えば『ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足―神経内科からみた20世紀』)が、それには触れられていないところ。独裁制が危険なのは、権力者が病んだ時に悪影響を排除するシステムを体制内に持たないからだ。興味を持たれた方にはこちらもお勧めしたい。


関連書籍:
ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足―神経内科からみた20世紀 (中公新書)ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足―神経内科からみた20世紀 (中公新書)
(1999/05)
小長谷 正明

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ノンフィクション | 2013/06/18(火) 19:00 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1214冊目 ナノ・スケール 生物の世界
ナノ・スケール 生物の世界ナノ・スケール 生物の世界
(2010/11/26)
リチャード・ジョーンズ

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評価:☆☆☆☆☆


 17世紀、アントニ・ファン・レーウェンフックは池の水を顕微鏡で覗き、数多の微生物が蠢いていることを発見する。肉眼では見えない世界に生物が隠れていることが示されたのだ。さらなる研究で微生物も自然発生はしないことが明らかにされた。

 人間の目からは隠されたミクロの世界を明らかにする試みは、顕微鏡の能力に依存していた。幸い、今の我々には強力な武器がある。走査型電子顕微鏡(SEM)という。

 本書は、このSEMで撮影した生物の写真集。本を開くと、左右のページで一組となっている。それほど拡大していない左のページと、その中の興味深いところを拡大した右のページ。それらが4組現れると、次に写真についての解説ページが来る繰り返し。

 生物がそこに居るのではないかと思わせるほどの圧倒的な表現にまずは驚く。次いで、生物が作り上げてきた器官が、人間が科学技術の粋を凝らして作り上げたものとそっくりなことに。いや、それは間違いだろう。生物の方が、機械より遥かに精巧で機能的である。

 例えば、珪藻。シリカから成る骨格は均質で精密で、生物らしさを感じさせない。あるいは放散虫の骨格は、フローレンのようだ。シロクマの毛は中空構造になっていて、防寒の役割を果たす。ヤモリが天井に貼りついていられるのは、指にある超微細構造のお陰だ。マジックテープはこれがヒントになっているというけど、こうやって見ると感激する。

 取り上げられるのは上記の他にサメ、チョウ、カ、ミツバチ、アリ、住血吸虫、サナダムシ、花等。前半はナノ・スケールの形を、後半はナノ・スケールの機能を取り上げている。生物の驚嘆すべき姿や能力がミクロの世界に隠されていることを実感できるだろう。蚊の口吻とかミツバチの毒針とかカブトムシの足とか、ヒルの口とか、その機能にはそれに相応しい構造があると納得。

 極微の世界でこそ見ることができる、動物たちの脅威の能力を知るのにうってつけ。どのページも美しいのが良い。

 尚、虫の写真がいっぱい出てくるので虫嫌いのヒトは避けるのが吉、です。


関連書籍:
ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジーヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー
(2007/03)
ピーター フォーブズ

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ミクロな化石、地球を語る ~微化石に刻まれた絶滅と再生~ (知りたい!サイエンス)ミクロな化石、地球を語る ~微化石に刻まれた絶滅と再生~ (知りたい!サイエンス)
(2010/10/21)
谷村 好洋

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生物・遺伝・病原体 | 2013/06/16(日) 21:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1213冊目 ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る
ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る (中公新書)ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る (中公新書)
(2000/07)
山口 恒夫

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評価:☆☆☆☆


 子供の頃の記憶といえば、悪友たちとそこら中を駆けずり回っていたことばかりが思い浮かぶが、その中に、ザリガニ釣りがある。家の周りには田んぼが沢山あったので、釣る相手は幾らでもいる。友人のお母さんからスルメを分けてもらって、タコ糸の先に括りつけては釣りに励んだものだ。

 昔は男の子だったという人の多くが、この甘酸っぱいと言うよりもむしろ泥臭くて懐かしい思い出を持っていることでありましょう。そんな少年の心を残す私の目にこんなタイトルが飛び込んできたら、読まざるを得ないではないですか。

 この本は凄い。何がって、一冊丸々ザリガニなところが。

 まず、ダーウィンのブルドッグと仇名され、生まれたての進化論を強力に擁護したトマス・ヘンリー・ハクスリーから話が始まる。何故かって?なんと、ハクスリーはザリガニを研究していたという。

 ザリガニがどのように食されているかというネタで読者の心を鷲掴み。え?ザリガニなんか食べたくない?実はですね、ロブスターはザリガニ下目に属するので、立派にザリガニです。広くご馳走として食べられているというが、エビの近縁であることを考えれば不思議はない。それにザリガニの語源や、研究に当たった有名人(その中には、かのフロイトの名も!)の話で更に興味を引いてくれる。

 ハクスリーの名言を引用して曰く、「明晰な人の眼には、最小の事実でもそれを通して無限が見られる窓となるといわれているが、実際にそうである」。その言葉通り、ザリガニ研究からは多くの知見が得られていると言う。なんとGABAの名で知られる神経伝達物質もザリガニ研究から発見されたとか。

 本書を読めば、本当に意外なほど多くのことが分かっていると思わされる。特に著者が関わった、ザリガニの視覚については面白かった。3000にも及ぶ単眼がズラリと並んだ目で眺める世界は、我々のものとは全く違うというところが良い。視覚システムは本当に様々な形をとっているものだ。

 そのライフサイクルも面白い。なんと向かい合ってする交尾(しかも、長い種だと10時間もですって!)。オスがメスのハサミを抱えて等と描かれると、相手の手を抑えたまま揺れ合うと大きく揺れる膨らみをついつい思い浮かべ……って、なにやら暴走してしまいました。ともあれ、視覚刺激は無くてもザリガニは頑張っているようです。立派なものです(笑)

 ビビるとオシッコを漏らしてしまうのは人間に似ているようで、化学信号を使った信号の伝達でもあるから種の生存に有利と思わせるところなど、上手くできているなぁと思う。

 期待していたよりずっと広く深くザリガニの魅力を教えてくれたことに感謝です。
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生物・遺伝・病原体 | 2013/06/15(土) 19:46 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1212冊目 江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実
江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実 (講談社プラスアルファ新書)江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実 (講談社プラスアルファ新書)
(2008/01/24)
古川 愛哲

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評価:☆☆☆


 君は江戸時代をユートピアか何かだとでも思っているのかね。幕府はかつて江戸にあり、日本中を監視下に置いていた、恐怖の存在だったのだ。そんなものが今も続いていたとして見給え。自由にとってどれだけ脅威か、君にだって分かるだろう。(※寺田農さんの声で再生下さい)

 江戸時代は、今と違って義理人情の世界で、識字率が高い、ユートピア的なところだったといった類の話を聞くことがある。しかし、本書を読めば、そんなイメージは吹き飛んでしまう。冒頭で述べた通り、監視のキツい、不自由で不平等な社会だった。

 本書は、変に美化されていない、本当の江戸時代に迫ったノンフィクションであるが、それ故に当時を時代劇等で垣間見たつもりになっている私のような人間には驚くことが多かった。

 享保年間まで、江戸の男女比は3:1で、カネやら食べ物の利子代わりに奥さんを差し出すことなんて日常茶飯事という。浮世絵が当時のポルノであるというのは知っていたが、なるほど、道理であろう。なにせ、普通にしていれば男はまずあぶれるのだ。最も、色恋沙汰は女房相手にするようなものではなく、そういうのは吉原で楽しむものだったとなると、それも有りかも知れない。

 糞尿のリサイクル、生類憐れみの令の背景にあった動物虐待(馬を捨てるときは腱を切って病獣として放置とか)やら野犬増大による被害があったこと、大奥の維持費は現在の貨幣価値にして年間600億円(!)程だった、等々、興味深い話題が満載である。

 こうした話を見ると、時代劇というのは結局のところ、現代劇なんだなぁと思う。当時には当時の社会が有り、社会を維持する上でのルールがあった。後出しジャンケンでそれをどうこう言っても仕方ないかもしれないが、取り敢えず、今の世に生まれて良かったとつくづく思う。特に、本書の最後、外国人とのハーフを無理やり人柱にしてしまった現実を見て。
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その他歴史 | 2013/06/14(金) 19:43 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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1211冊目 生命の起源をさぐる―宇宙からよみとく生物進化
生命の起源をさぐる―宇宙からよみとく生物進化生命の起源をさぐる―宇宙からよみとく生物進化
(2010/12)
奥野 誠、 他

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評価:☆☆☆☆☆



 生物はどうやって誕生したのか。この疑問は人類最古の、そして最大の謎と言っても良いのではなかろうか。ええ?気になるあの娘がどうして自分を相手にしてくれないのかという方が気になる?まあまあ、「どうせ彼女は腐女子なんだ」とでも思って、今は欲望に満ちた問題は置いておいて下され。

 ちょっと前の先祖を辿ろうとすれば、話は簡単かもしれない。しかし、家系図を追いかけて行っても、せいぜい1,000年単位であろう。では、100万年単位で遡ろうと思ったら?化石という手段がある。実際、数百年前の我々の先祖の姿は、かなり分かるようになった。しかし、地球生命の歴史は38億年以上にも及ぶ。

 問題なのは、38億年前には既に生物がいた事だけはしっかり分かっているということまでしか分からない、ということだ。ところが、化石で見つかっている最古の生物は既に十分複雑な構造を持っている。とてもこんな複雑なものが湧いて出てきたとは思えない。つまり、この問いが難しいのは証拠が存在しないためだ。

 そんなわけで、多くの学者たちが生命の起源を探る知的冒険に打って出てきた。本書は、その最前線の姿を紹介してくれている。それだけでもう知的興奮は間違いない。

 生物進化の前には、生命を宿すことのない化学物質が、複雑化し、自己複製を行うようになったと想定されている。それを化学進化と言い、ユーリー・ミラーの実験以降は太古の地球環境を模した実験室で、複雑な化学物質ができることが分かってきたり、宇宙空間にアミノ酸やアルデヒドと言った、生体を作るための材料が大量に存在することも分かっている。

 しかし、それでもまだ材料レベルに過ぎないのだ。材料だけでは生命は出来ない。部品だけを集めても自動車が出来るわけでは無いのと同じように。

 私の理解はそこで止まっていたのだが、本書を読んで仰天した。細胞のような構造のものが自己複製するところまでは既に実験室レベルで出来ている、というのだ。

 この驚くべき情報に始まり、次々と明かされる最新の情報に、感嘆しっぱなしだった。中でもとりわけ驚いたのは、生物誕生の場所として推測される有力な候補地の1つ、熱水噴出孔。ここで、条件さえ整っていればPCR法と同じことが起こるのではないかという指摘。これには頭を棍棒で殴られたかのような衝撃を受けた。その環境の特殊性も、PCR法の原理も知っていたのに、その可能性は考えたこともなかった。

 もしかしたら、まだ生命となる前、断片的なDNA鎖は自己複製可能な袋状の物質の中で、PCRで非生物反応的にDNAを増やしていったのかもしれない。まだ修復酵素が無いので次々とコピーミスが起こる中で、自己複製により有利な反応が起こったのかもしれない。うーん、面白い!

 生物が誕生してからの歴史もまた面白い。スノーボールアースや共生説が与えた影響も分かりやすく整理されている。個人的には、マラリア原虫に葉緑素の退化したのがあると知って驚きだった。だったら人体に寄生しないで光合成していれば良かったのにとも思うが、寄生という生き方の有利さも感じてしまう。

 タイトルに偽りなく、生命の起源を様々な観点から探っていく知的興奮の書。生命の起源や進化に興味がある方は、興奮しながら楽しく読めるに違いない。文句なしにお勧めです!


関連書籍:
スノーボール・アーススノーボール・アース
(2004/02/26)
ガブリエル・ウォーカー

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共生生命体の30億年 (サイエンス・マスターズ)共生生命体の30億年 (サイエンス・マスターズ)
(2000/08)
リン マーギュリス

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カンブリア紀の怪物たち (講談社現代新書)カンブリア紀の怪物たち (講談社現代新書)
(1997/03/19)
モリス.サイモン・コンウェイ

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生物・遺伝・病原体 | 2013/06/12(水) 22:11 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1210冊目 分子膜ってなんだろう―シャボン玉から細胞膜まで
分子膜ってなんだろう―シャボン玉から細胞膜まで (ポピュラー・サイエンス)分子膜ってなんだろう―シャボン玉から細胞膜まで (ポピュラー・サイエンス)
(2003/10)
斎藤 勝裕

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評価:☆☆☆☆


 分子膜。それは、分子がぎっしりと詰まった膜のこと。と言われても、イメージが湧きづらい。というわけで、マッチ棒を想像してみて下さい。棒は疎水性で水に溶けず、頭の着火部は親水性で水に溶ける。そんな分子があるのかと言われたら、それがあるんです。石鹸は、まさにそういう構造。

 さて、これを水にゆっくり垂らしていくと、マッチが頭を下にして垂直に立ち上がる。これがぎっしりならんでいるのが分子膜。サブタイトル通り、シャボン玉や細胞膜がそれに当たる。分子1つ分の厚さのを単分子膜と言い、複数枚積層されるとLB膜(研究に大きな功績を残したLangmuirさんとBlodgettさんの頭文字から名付けられた)と言う。

 シャボン玉のあの美しい光具合は、この分子膜で説明できる。光が各層で反射するのだが、シャボン分子とシャボン分子の間に封じられた水の層の厚さが均一ではないことから、複雑な干渉模様が得られるのだ。

 ええ?面白さを感じられない?

 そうしたら細胞膜はどうだろう。細胞は細胞膜で外界と仕切られているのだが、それがシャボン玉と同じ構造なんて、面白いではないか。シャボン玉の表面に、色々な機能を持ったタンパク質が埋め込まれているのが細胞と思えば、そう外れたものではない。

 本書は、この分子膜の魅力を教えてくれる。科学に馴染みのない方にも分かりやすいようにと、専門的な話には踏み込んでいないので、分かりやすい。加えて、興味深いトピックが多くて、読んでいて面白い。

 味覚や嗅覚も、膜に浮かんだ感知用素子が反応しているとなると、膜の偉大さを思わずには居られない。尚、味覚に関しては、人工的な分子膜で人間の味覚をかなりトレースできるところまで来ている。その辺りは、『旨いメシには理由(わけ)がある―味覚に関する科学的検証』が詳しい。こちらの本では、プリンに醤油をかけるとウニの味になることの科学的根拠が書かれていたりして面白いですよ^^

 後半では、分子膜を使った新しい取り組み、例えば副作用の少ない抗癌剤の開発のような話題にページが割かれている。まだまだ未来のテクノロジーだろうけど、もしかしたら、自分がガンに罹る頃には実用化されているのかもしれない。膜、凄いぜ。そんな凄さを簡潔に教えてくれることに感謝。


関連書籍:
旨いメシには理由(わけ)がある―味覚に関する科学的検証 (角川oneテーマ21)旨いメシには理由(わけ)がある―味覚に関する科学的検証 (角川oneテーマ21)
(2001/03/09)
都甲 潔

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その他科学 | 2013/06/09(日) 21:21 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1209冊目 図説世界史を変えた50の動物
図説世界史を変えた50の動物図説世界史を変えた50の動物
(2012/09/18)
エリック シャリーン

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評価:☆☆☆☆


 ブクレコにて、あかつきさんの素晴らしいレビューを拝見して読みたくなった本。

 タイトル通り、多くの図説を用いながら、人類に大きな影響を与えてきた50の動物を語っている。

 家畜化された動物、即ち牛、馬、羊、豚、犬、猫や、自然界にあって人間が利用してきた鯨やラクダが取り上げられているであろうことは予期できたのであるが、本書の最初の項目は、なんと蚊である。それには驚いた。

 歴史的な影響を考えると、蚊を無視することなど出来ない。夏の夜、ただでさえ寝苦しい夜を更に不快にするだけではない。多くの伝染病を媒介することで、大勢の人々を死に追いやってきたのだ。今も世界の人々を殺しているのは、まずはマラリアであるが、これは蚊が広めている。野口英世が追い詰めようとして逆に命を奪われた黄熱もまた同じ。

 蚊の次はもっと親しみのある、要するに哺乳類なのかと思わせつつ、なんとミツバチ。ミツバチに受粉を受け持ってもらう虫媒花が、食卓に欠かせない多くの食品を提供してくれているのだから、その順位も納得である。

 こうした昆虫類、家畜化された動物達、魚介類、恐竜とその子孫である鳥類など、陸海空バランス良く目配りされているのが魅力だ。

 ある動物は食用として、ある動物は染料をくれることで、また別の動物は恐るべき病原体であったり病原体を媒介することで人類に苦難を与えることで、そしてまた、愛玩動物として心を和ませてくれることで、人類に多くの影響を与えてきた。動物あっての人類なのだと思わせてくれるのが良い。人間だけでは生きていくことなど出来ないのだ。

 図版は、写真は勿論、絵も多用されているのも雰囲気を出している。写真は確かに写実的ではあるが、特徴を上手く捉えた絵は同じくらいに魅力的であるし、また、人々がその動物をどのようなものだと受け止めてきたのかも語ってくれる。文も絵も楽しい、素敵な本。

 個人的には、過去に読んできたいろいろな本、例えば『蚊はなぜ人の血が好きなのか』、『ウイルスの脅威―人類の長い戦い』、『鱈―世界を変えた魚の歴史』、『ハチはなぜ大量死したのか』等々を思い出させてくれたのも良かった。こうやって、これまで得てきた知識と絡みあう本は読みやすく頭に入りやすく、そして楽しい。この手の本があったらまた読んでみようかな。


関連書籍:
蚊はなぜ人の血が好きなのか蚊はなぜ人の血が好きなのか
(2002/09)
アンドリュー スピールマン、マイケル ド・アントニオ 他

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ウイルスの脅威―人類の長い戦いウイルスの脅威―人類の長い戦い
(1999/12/16)
マイケル・B・A・オールドストーン

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鱈―世界を変えた魚の歴史鱈―世界を変えた魚の歴史
(1999/03)
マーク カーランスキー

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ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)
(2011/07/08)
ローワン ジェイコブセン、福岡 伸一 他

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その他歴史 | 2013/06/08(土) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1208冊目 地中海の覇者ガレー船
地中海の覇者ガレー船 (「知の再発見」双書)地中海の覇者ガレー船 (「知の再発見」双書)
(1999/11)
アンドレ ジスベール、ルネ ビュルレ 他

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評価:☆☆☆


 中世の地中海で活躍したガレー船。櫂で漕ぐという、極めて原始的な方法で動くこの船は、軍艦として隆盛を誇った。

 地中海は風の方向が安定しない海であり、そのためにコントロールの効く人力に頼った船が生み出された。結局、代替となる技術が得られるまで、ガレー船は活躍し続けた。オスマン帝国の西進を食い止める形になったレパントの海戦が、ガレー船同士の最後の大合戦となったのである。

 本書は、「知の再発見」双書らしく、図版を大量に用いてガレー船の歴史を追っている。船の特徴や戦いの様子、特にレパントの戦いの絵は眺めるのも楽しい。カラー図版が多いのがこのシリーズの魅力。

 ガレー船の漕手は、映画"ベン・ハー"で見た奴隷が漕ぐイメージがあったのだが、当初は自由民が担当していたというのは驚き。経済が豊かになるにつれ、このような過酷な労働に就きたがるものが居なくなり、徒刑囚が中心になったと聞くと、日本の所謂3K職場から日本人が居なくなったというのと被るものがある。

 一方で、徒刑囚の過酷な生活についてもかなりのページが割かれている。各地の監獄から移送の段階で多くの者が死んでいったこと、重労働に加えて十分な栄養も取れないこと。その一端を紹介しているだけなのに目を背けたくなる。しかも、それがほんの微罪であることを知れば、なおさら。

 一将功成りて万骨枯ると言う言葉通り、歴史を眺めると華々しい合戦の模様や、名士や将軍の動きに目が行ってしまうが、その裏で数多の名の知られていない人々の犠牲があったのだと改めて思った。この手の過酷な刑罰が無くなった世の中であることは、素直に喜びたい。

 ガレー船がどのようなものだったのか、取っ掛かりとしては非常に良い本なのではないか。
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その他歴史 | 2013/06/06(木) 23:17 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1207冊目 徳の起源―他人をおもいやる遺伝子
徳の起源―他人をおもいやる遺伝子徳の起源―他人をおもいやる遺伝子
(2000/06)
マット リドレー

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評価:☆☆☆☆☆


 著者の名前を見ただけで安心して手を出せる。私にとってのそんな書き手の1人が、本書の著者、マット・リドレー。『ゲノムが語る23の物語』や『やわらかな遺伝子』で、遺伝子の力の大きさを語りながらも遺伝子決定論に陥らない絶妙なバランス感覚に惚れ込んだライターである。

 今回著者が取り組むのは、"徳"。となると、性善説と性悪説が思い浮かぶ。しかし、どちらも世の中を上手く説明できているとは思えない。唾棄すべき悪人も居れば、その生きる姿に感動を禁じ得ないほど献身的に生きる人もいる。

 それでも、大雑把に言えば、人の一般的な性質としては、少なくとも社会を崩壊させない程度には善人であるといえる。考えれ見れば当たり前の話だろうが、人間は他の人との繋がり(=社会)がなければ生きていけない。

 例えば、立って歩くまでにかかる時間を観てみれば良い。人間は1年立っても満足に歩くことは出来ないが、そんな生物は他に居ない。その間、子は親に保護してもらわなければならない。長じてからも状況は似たようなもので、同じ社会の他のメンバーとの共同生活が必要になる。だとしたら、社会生活を送るべく進化するのは当然のことだ。

 ところが、ここからが面白いところ。もし、全員が他人の言葉を疑いもしない正直者ばかりだとしたら、そこに生まれた1人の自分勝手な人間は、無敵の力を誇る。なにせ、周りば莫迦正直ばかりだ。口八丁手八丁で、多くの人からカネを巻き上げたり、手当たり次第に女性に手を出したりと、やりたい放題ができるだろう。すると、彼の特性を受け継ぐ子孫が増える。

 では、自己中心的な人間ばかりになったら?

 これが疑問なのだ。ゲームの理論という、人間の関係性を数学的に研究する手法では、人間は自己中心的に振る舞うほうが合理的になるのだ。ところが、周りを見渡しても、そうはなっていない。人々は、反目することもあるが、概ね力を合わせて何かを成し遂げているではないか。

 本書は、こうした人間の特性がどこからやってきたのかを論じている。

 その面白さは、ある政治犯の脱獄から始まる冒頭から明らかである。その人物は、監獄内外の多くの人の力を借りて脱獄に成功する。彼は終生、自分を命がけで救ってくれた友人たちへの感謝を忘れなかった。そして、人間のみならず、生物世界の常として、生物は利他的であると唱えるようになるのだ。その人物の名を、クロポトキンと言う。

 利己的な遺伝子、分業による効率化、囚人のジレンマ等々の、興味深い議論をかき分けながら、著者は徳の起源へ迫る。一貫して示されるのは、人間社会が実に上手く回るものだということ。意外だったのは、資源管理について、人々に任せるのと国が規制するのでは、人々に任せたほうが良いという示唆が得られるところ。人に任せたからそれぞれ勝手なことをしそうなものだが、一方で、その状態では監視の目が働く。周りに住む人々の。ところが、国の規制ではそんなことは出来ない。だから、皆が他人にとられる前に自分が、と動いてしまう。

 徳行は、社会を円滑にしようという方向では作用するが、全体を良くしようという方向には行かないのだ、それが、人の限界なのかもしれない。

 インディアンの贈り物合戦、イルカがコンビを組む理由(イルカ好きなら読まないほうが絶対に良い!)砂漠趣旨収穫アリ、大型哺乳類絶滅の理由など、とにかく面白い話題が続く。読み始めたら止まらない本。

 徳には興味がなくとも、意外なトリビア満載なので、雑学好きにも堪らないと思う。そして、本書を気に入ったら、是非とも著者の他の本にも手を出してみて欲しい。とても面白いので心の底からお勧めです。



関連書籍:
ゲノムが語る23の物語ゲノムが語る23の物語
(2000/12)
マット リドレー

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やわらかな遺伝子やわらかな遺伝子
(2004/04/28)
マット・リドレー、中村 桂子 他

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生物・遺伝・病原体 | 2013/06/04(火) 23:52 | Trackback:(0) | Comments:(1)

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1206冊目 教養としての世界宗教事件史
教養としての世界宗教事件史 (河出ブックス)教養としての世界宗教事件史 (河出ブックス)
(2010/10/09)
島田 裕巳

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評価:☆☆☆☆


 世界を理解するのに、宗教の存在を欠くわけには行かない。あなたは神を信じていないかもしれないが、世界にはFSMを始め、多数の信者を獲得している宗教がある。そして、信者の人数を背景にして、宗教は社会を、ひいては世界を動かす力を持つのだ。

 そういう意味で、宗教を知っておくことは悪いことではない。世界の宗教を、それも歴史的に知るなら、特に。
本書はそんなニーズに答える一冊である。

 本書は、"世界宗教事件史"を名乗ってはいるが、事件の数々を追っただけのものではない。その始まりが、"人類はいったいいつ宗教をもったのか"であり、次章が"壁画が物語る宗教の発生"であることから明らかだろう。つまり、宗教とはどのようなものかから説き起こしているのだ。

 そこから、ピラミッド建設、ゾロアスター教成立、一神教の誕生、老子の思想、仏教の始まり、パウロとアウグスティヌスの回心によるキリスト教の成立(パウロのそれは側頭葉癲癇が原因とも言われる)、ムハンマドのメディナへの移動、ダライ・ラマの亡命等々、それぞれの宗教にとって大きな影響を与えた"事件"が語られている。

 事件を語る中で、それが後世から見てどのようなものであったのかを説明してくれているのが魅力。また、事件の影響を知るためには、それまでの歴史も知らなければならないので、結局は各宗教を概説しているところも良い。ダライ・ラマを取り上げた章では、中国の弾圧に触れながらもチベットは中国侵略以前の姿に戻るべきではないことも語られ、バランスが取れているのも良い。

 ルルドの泉も取り上げられているが、かつてそこには松葉杖が大量に置かれていたらしい。奇蹟によって歩くことができるようになった人々が不要になった杖を置いていったものだ。それを見て、アナトール・フランスは、「なんだ、義足はないのか」と言ったと伝えられる。見習うべき懐疑的な姿勢というべきであろう。

 何はともあれ、宗教が世界に与えた影響を知るための入門書としては優れた本である。一神教と善悪二元論の違い等、考えさせられるところもある。進行するという意味合いではなく宗教に興味がある方には向いていると思う。


 ただ、残念なことに我らがFSMは取り上げられていなかった。残念だ。ラーメン。
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ノンフィクション | 2013/06/03(月) 19:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1205冊目 ペローの昔ばなし
ペローの昔ばなし (白水uブックス)ペローの昔ばなし (白水uブックス)
(2007/07)
シャルル ペロー、ギュスターヴ ドレ 他

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評価:☆☆☆☆


 各地で語り継がれてきた昔ばなしを集め、世に広めた人は少なくない。イソップ然り、グリム兄弟しかり。本邦では宇治拾遺物語今昔物語集がそれに当たるだろう。

 本作、ペローの昔ばなしも同じ。眠れる森の美女、赤ずきん、青ひげ、長靴をはいた猫、サンドリヨン(シンデレラ)日本においてもほとんど全ての人が知る物語が収められている。特に赤ずきんはペローより前に書いた人は居ないらしい。余談ながら、本作では赤ずきんが狼に食べられてしまうところで物語は終わる。

 これらの物語は、教訓話となっていて、各話の最期に教訓が述べられている。それを見ると、赤ずきんなどは明らかに甘言を弄して女性に手を出す者への警戒である。自由恋愛社会との温度差を感じなくもないが、子どもへの教訓としては的外れではなさそうだ。ちなみに、こんな感じである。

  オオカミと言いましたが、オオカミにも、
  いろんな種類のやつがいるんです。
  静かにしていて、どなったりおこったりしないで、
  じょうずに人にとりいるようなオオカミもいて、
  なれなれしく、ねこなで声でやさしいことを言いながら、
  若いお嬢さんのあとについて、
  家の仲間で、部屋のなかまではいってきます。
  ところで、だれでも知っているように、そういうねこかぶりのオオカミこそ、
  どんなオオカミよりも危険なやつなんです。
 (p.61より引用)


 ええと、世のお嬢さん方、わたくしめはとっても安全な♂ですのでご安心を。

 本書を手に取ったのは、息子が幼稚園の年長さんのときにやった長靴をはいた猫(息子は「全てタラバ公爵のものです」くらいのセリフしか無い、超☆脇役の農民役でした)で懐かしくなったから。

 たまにはこうした本を読むのも楽しい。最近の子供向け絵本のように、お子様向けに骨抜きにされた物語ではないところが面白かった。
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未分類 | 2013/06/02(日) 19:27 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1204冊目 ツチヤ教授の哲学講義
ツチヤ教授の哲学講義ツチヤ教授の哲学講義
(2005/12/08)
土屋 賢二

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評価:☆☆☆☆


 私は、敢えて難しく書かないと哲学書は売れないということ、ファインマンさんが頭を掻きむしってなんとか難解な文章を読み解いたらなんと"人は本を読む"程度だったこと、『「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用』で余りにも情けない哲学の姿を見たこと、そして哲学が何かを明らかにする上では非力なこと等から、もはや哲学には何ら期待をしていない。

 シニフィエとかシニフィアンって御存知ですか?知らない?当然です。これは、記号内容と記号表現を表している、哲学者とやらが自信たっぷりで操りながら現実世界を何一つ説明し得ない情けない概念である。言い始めたのがソシュールだが、なんてことはない、モノとそれを指す言葉に過ぎない。それをわざわざ小難しい専門用語にして自分たちだけは何かマシなことを考えている積りになっている。勉強はできたとしても、こんなヤツらはただの阿呆である。

 私が求める知の姿は、考えを頭のなかでこねくり回して複雑化することではなく、定性的あるいは定量的な解析によって、誰にでも示すことができるものだ。それは科学であり、歴史学である。

 それなのに哲学に関する本を久々に手に取ったのは、著者の名前を見たから。ちょっとお莫迦なエッセイで世の人々に笑いを与えてくれるツチヤ教授は、お笑い芸人ではなくて哲学の教授である。忘れがちではあるが。

 本書はツチヤ教授の講義録なのであるが、私のように哲学を莫迦にしている人間にも楽しく読むことができる。何故か?それは、ツチヤ教授は私が貶したことと同じ事を、哲学者の立場からきちんと論じてくれているから。そして、哲学の限界を語っているから。

 例えば、プラトンのイデア論は間違いなのではないかと言ってしまう。それは、哲学者としてはかなり勇気のいる発言ではなかろうか。なにせ、プラトンは世界中に信者のいる巨大な存在で、ツチヤ教授は日本のお笑い界でしか知られていない存在である(失礼!)。

 哲学は、新しく事実を発見することによって問題を解く学問ではありません。哲学の研究は、頭のなかで考えるしか無いんですね。頭のなかで考えて、ことばとことばの関係だとか、論理的な関係とか、そういうことを分析することしかできない、とぼくは思うんですね。(略)だから哲学というのは、この世界がなぜこうなっているのかを説明できるようなものではないんです。ぼくはそう思います。


 いつものおちゃらけた文章からは程遠い、思索を重ねた末に得られた結論は、重いものがある。

 意識なんて、所詮生物が生き残る上で役に立つから生み出されたものに過ぎず、それを司る脳が巨大化した結果、自我だのなんだのが生まれては来たが、そんなものの存在は巨視的に見れば意味のあることではない。人間という種を生き延びさせるのに役に立っている、ただそれだけ。そして、脳はその有り余るエネルギーを妄想に使う。それが哲学的な問いではないか。知的好奇心と言われるものも全てそこに入るかも知れない。

 だから、そんなものに答えは出せないと言うツチヤ教授の考えには感服する。哲学への興味は更に失せたが、ツチヤ教授の話なら聞いてみたい。そんな気にさせられてしまった。
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未分類 | 2013/06/01(土) 20:53 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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