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Skywriter

Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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1183冊目 孫の力

孫の力―誰もしたことのない観察の記録 (中公新書)孫の力―誰もしたことのない観察の記録 (中公新書)
(2010/01)
島 泰三

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評価:☆☆☆


 霊長類の研究が専門の著者に、孫ができた。そこで、猿の研究で培った観察力を、孫相手に発揮してしまったのが本書。その視点には、科学者としてのものと、初孫を溺愛する祖父のものの両方があって、本書をとてもほんわかした雰囲気にしている。

 生まれた時。初めて笑みを浮かべた時。弱々しいだけの存在は、やがて這い、立ち、やがて歩くようになる。それと並行して、言葉に反応し、自らも言葉を発するようになる。そうした変化点のそれぞれに対して、他の類人猿との違いを感じるのは学者の面目躍如といったところだ。

 例えば、孫を可愛がるのは人間特有のことだという。猿は孫や曾孫に恵まれることは珍しくない。しかし彼らは、その頃には自分の子の面倒を見るのに忙しく、孫以下の存在の面倒を見ることはない、というのだ。

 話は飛躍してしまうかもしれないが、おばあさん仮説を思い出した。閉経は子孫を残す点からは不利な特性であるはずなのにそれが進化の道筋で排除されなかった理由を説明するために編み出された仮説であるが、祖父母が孫の面倒を見ることが、人間の進化において欠くことのできないものだった可能性は面白い。そして、孫との関係をめぐる類人猿とのハッキリした違いは、この仮説を一層面白くするのではないだろうか。

 孫との遊びを記述する中に成長を見守る喜びが溢れ、合間合間にその行動がどのような生物的な意味を持つのかを考えるところが良い。

 最後、自転車を教えるシーンは感動的だ。孫娘は、いつか祖父母のもとを飛び立ち、社会に出て行く。その象徴として、徒歩の補助者と自転車に乗った人の対比を選んだのは慧眼であると感じられてならない。

 今の子供達を見る時にちょっとした観察を加えようと思うのと、いつか孫に恵まれることがあればその観察を楽しもうと思った。
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未分類 | 2013/04/30(火) 20:08 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1182冊目 今夜もひとり居酒屋

今夜もひとり居酒屋 (中公新書)今夜もひとり居酒屋 (中公新書)
(2011/06/24)
池内 紀

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評価:☆☆☆



 ドイツ文学者として知られる池内紀さんの、居酒屋についてのエッセイ。酒についてではない。勿論、その性格上、酒のことも含まれるけど、もっぱら居酒屋について書かれているという異色のエッセイである。

 文章から、居心地の良い居酒屋で一杯楽しむ悦びが溢れているのが良い。これほどまでに愛に溢れた文章を読んでいると、こちらまで楽しくなってくるから不思議だ。

 語られるのは、店の雰囲気、客、酒、食べ物、女将や主人等々、もう兎に角居酒屋に関することなら何でも。とりわけ、酒を語るなら外せない肴に話題が及ぶことが多くて、食欲まで刺激されてしまった。

 日本の居酒屋に飽きたらず、外国に行ってまで現地の居酒屋(観光客向けの店などではない)を探して飲みに行ってしまうというのだから筋金入りだ。そして、料亭ではちっとも酔えない、というのも良い。この人、心底"居酒屋を"愛しているんだなぁと思う。

 確かに、酔っ払うのが目的だったら家で強い酒を飲めば良い。

 それではダメだ、居酒屋が良いのだ、というなら、居酒屋そのものに魅力がなければならぬ。地方の名産を生かした料理。あるいは、女将の郷土料理。珍味。

 おっさんになってくると、こういうのが本当に美味しそうに見えるんだよなぁ。

 ひとり居酒屋はやったことがないので、著者が語る愛情の一部しか理解できなかったが、無性に飲みに行きたくなってしまった。

 私は居酒屋では、本の話やらウンチクを語りまくるのが好き。なので、何でも気兼ねなく話せる友人と一緒に、ゆっくりできる雰囲気の店で飲むのが好きだ。みなさんはどうですか?好きな居酒屋、ありますか?
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エッセイ | 2013/04/29(月) 20:12 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1181冊目 フィリッピーナを愛した男たち

フィリッピーナを愛した男たち (文春文庫)フィリッピーナを愛した男たち (文春文庫)
(1992/10)
久田 恵

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評価:☆☆☆☆


 
 国が変われば文化も変わるとは、知ってはいても、目の当たりにすると凄いものだ。私も外国に出張に行って、つくづく実感した。それが、結婚となるとどうだろう。きっと、様々な違いがあるに違いない。楽しいこともあるだろうけど、それだけでは済まない。もっとも、それはどんな相手と結婚しても避けられないものではあるが。

 本書は、何組かのフィリピン人女性と日本人男性の組み合わせの夫婦を追ったノンフィクション。どことなく、経済的に豊かな日本の男が、カネで若いフィリピン女性をモノにする、という感じがする組み合わせだ。しかし、そんな浅薄な考えは、読み始めてすぐに打ち破られることになる。

 共に生きる異性を得たいとあがいて伴侶を得た者もいれば、マニラで有り金全て失った男が、献身的な女性に出会ったケースも有る。人の生き方が多様であるように、彼らの姿もまた多様であった。

 確かに、彼らの出会いには日本の水商売の影があった。マニラで出会ったカップルにしても同じ。もし女性が元ジャパゆきさんじゃなければ、彼らが結ばれることは決してあり得なかった。

 互いの文化や生き方の違いに時には揉めながらも楽しく暮らしているところは、ごく普通の夫婦にしか見えない。

 それにしても里帰りは大変そうだ。全く文化が違う。食べ物も、人との接し方も、家族との関係も。常識が砕かれ、違いを受け入れなければやっていけない。それを乗り越えている人々の姿に、時に微笑ましく思い、時に驚きながら読んだ。

 日本はどんどんこういう女性の入国に厳しくなっている、という。

 同僚に連れられて、フィリピンパブ、それも大分場末な感じなところに連れて行かれたことがある。それが女性が同伴する類の店に関する私の全ての体験だったりするのだが、(払う分の金銭に釣り合うだけのものだとしても)女性にチヤホヤしてもらうのが楽しいと思う気持ちは分からないでもなかった。でも、やっぱり、安物のグラスワインを傾けながら本を読むほうが好みだなぁ。

 自分の意志で行くことは無いだろうけど、彼女たちが満足の行く生活を送れると良いなとは感じた。
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ノンフィクション | 2013/04/28(日) 19:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1180冊目 人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用
人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)人は放射線になぜ弱いか 第3版―少しの放射線は心配無用 (ブルーバックス)
(1998/12/18)
近藤 宗平

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評価:☆☆☆☆☆


 昔覗いた放射線生物学の授業では、放射線被曝の悪影響は、それがどんなに微量になってもゼロにはならないと教えていた。このモデルを、直線しきい値なし仮説と呼ぶ。健康に責任を負う機関は、概ねこの仮説に従っていると言って良い。

 一方で、低線量になると、害がはっきりしなくなることも知られている。過去に紹介した、『世界の放射線被曝地調査―自ら測定した渾身のレポート』において、自然放射線レベルの高い地域において、ガンの発生率が見られないことは紹介されていたのではあるが、それは何故か。それは、ガンのような病気は放射線被曝が無くても罹患してしまうものなので、膨大な数字に埋もれてしまうのが原因と言われてきた。

 こうした事実を知っていたので、私もしきい値なしモデルを正しいと思ってきた。本書を読むまでは。

 本書には、広島、チェルノブイリ、そして自然放射線レベルの高い地域から集められた膨大な量のデータを元に、しきい値なしモデルにはそれを指示するだけの証拠がない、つまり仮説は誤りであるということを示している。

 それどころか、低線量の放射線を浴びた人は、統計的に有意に寿命が伸びている、という調査まであるという。原爆でも、低線量の被曝者は男女共に被曝しなかった人より長生きするというのだ。その原因は、放射線への防護策として生物が編み出した、抗酸化作用であるとしている。放射線が害を与える原理を考えると頷ける。

 等と書くと、チェルノブイリの甲状腺ガンはどうなのだと言われる向きもあるだろう。しかし、甲状腺ガンのほとんどは良性であり、発見数の増加は、受診者の増加に伴うものであって、健康被害として悪化が見られるわけではないことも示されている。

 小児白血病にしても、しきい値なしモデルが予言する微増傾向を示すことはない。ベラルーシでは徹底した調査が行われたが、増加は見られなかったのだ。本書はこう結論づける。

チェルノブイリ事故後10年間の追跡調査の結果はつぎのことを証明した。
  原発事故の放射能を被曝しても
    子どもの白血病の危険は心配無用!


 これは低線量に限っての話であるとしても、福島を経験した我々には本当に貴重な結論ではないか。それなのに、しきい値なしモデルのために健康被害を気に病みすぎ、そのストレスで病気になる方も少なくない、という。それを著者はこう喝破する。

 放射能恐怖症をおこさせたデマ情報のほうが、実際の死の灰よりも、比較にならないほど有害であることが実証された。(略)
 恐怖症の第一の原因は、「放射線はどんなに微量でも毒である」という考えが、世間一般の常識になっていることである。この考えは放射線防護専門学者の基本的信念である。(略)この考えには科学的根拠がないことや、低線量被ばくの実際の情報を、被ばくした住民にわかりやすく、正確に知らせる努力を、放射線専門家がおこたっている。原因の第二は、住民が、たくさんの情報の中から、正しい情報を冷静により分ける努力を十分にしないことである。(略)


 では、どうしてこれほどに放射線は危険だと思われているのだろうか。それは、放射線を浴びると危険な時期がある、危険な量がある、ということだ。本書では、放射線の影響がどうしてこうも複雑なのか、その理由を追って分子生物学の分野に踏み込んでいる。しっかり読み込めば、なぜ著者がそれまで信奉していたしきい値なしモデルを捨て、放射線は少しなら心配無用と断言するのか、その理由を追いかけることができる。

 如何なる毒物であろうと、定性的な議論では不十分であって、定量的な議論が必要不可欠である。それを怠れば、水でさえ危険な薬品であるということになってしまう(一度に30リットル飲めば水中毒で死亡する)。

 広島、長崎で犠牲になった方々に報いる一番の方法は、そこから正しい教訓を汲み取ることではなかろうか。その点で、本書の価値は極めて高い。本当に、終章などは全部を引用したいくらいだ。健康への影響を知りたい方は、そこだけで良いので目を通されることを強くお勧めしたい。福島の事故を懸念する全ての方にも。

 本書が役に立つという状況は、不幸なものである。しかし、本書を得たことは、その不幸の中に光明を見出すものではないかと感じた。根拠も出典含めて明示されているのも良い。


関連書籍:
世界の放射線被曝地調査―自ら測定した渾身のレポート (ブルーバックス)世界の放射線被曝地調査―自ら測定した渾身のレポート (ブルーバックス)
(2002/01/18)
高田 純

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医学・脳・精神・心理 | 2013/04/27(土) 20:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1179冊目 メタボの常識・非常識―健康な人を「異常」にする日本だけのシステム
メタボの常識・非常識―健康な人を「異常」にする日本だけのシステム (ブルーバックス)メタボの常識・非常識―健康な人を「異常」にする日本だけのシステム (ブルーバックス)
(2010/05/21)
田中 秀一

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評価:☆☆☆☆


 メタボ検診が始まって、毎年の健康診断が憂鬱な人も少なくないであろう。ボディ・マス・インデックス(BMI;体重[kg]/身長[m]/身長[m] 20~25が標準とされる)についても知った人が多いのではないか。

 「BMIが25を超えたあなた、肥満です。生活習慣を改めて下さい」等と言われれば不安に感じてしまうのも無理はない。しかし、本当に健康にリスクが現れるのは、BMIが27を越えてから、特に30オーバーだったりする。彼らはなんと、痩せた人と同じくらい早死するのだ。

 あれ?痩せろって指導されるのでは???

 実は、メタボ検診にはハッキリした根拠はない。

 福島県郡山市と神奈川県伊勢原市の住民検診で、「ちょいメタ」「非メタ」の項目に該当した男性約2000人、女性約4100人を平均5年余り追跡調査して死亡率を調べたところ、「ちょいメタ」の死亡率は、「非メタ」に比べ、男性では0.54倍、女性では0.81となった。男女とも「ちょいメタ」のほうが死亡率は低く、長生きする、という結果だったのだ。(略)
P.50より


 メタボ検診によって人々が早死する方向に追いやられているとしたら、それはとんでもない問題ではないか?

 本書では、メタボ検診がどれほどナンセンスか、様々な点から述べている。本書を読めば、検診結果に一喜一憂するのは大間違いであることが分かるだろう。

 実は、メタボ検診だけではない。健康診断ですら、効果があるとはっきりしている項目は殆ど無い。厚生労働省の研究班が下した結論では、強く推奨できるのは喫煙、血圧の2項目しか無い。レントゲン検査?あれは有効性が無い一方で被曝リスクを高める無駄な行為です。低線量の被曝はほぼ害をもたらさないから良いものの。

 ただ、当たり前だが、明確な太り過ぎは害となる。BMIで30オーバーは早死のリスクが非常に高くなる。メタボ検診がナンセンスだとしても、明らかな異常であっても問題ないとするわけではないのだ。

 コレステロールについても述べられている。なんと、長生きするのはコレステロールが高めの人なのだ。日本の診断基準には不可解なことが多いことが分かる。

 異常を指摘されたら、病院に駆け込んで薬を処方して貰う前に、こうした本をじっくり読んで、数値の意味をしっかり考え、自分の体は自分で守る気概が必要だ。なにせ、少なくとも製薬会社にとっては、人々が薬を飲む程度に不健康であることはメリットなのだから。(『精神疾患はつくられる―DSM診断の罠』のような指摘を忘れるべきではない)

 そうした誤った情報に踊らされた結果か、なんと今の日本人の摂取カロリーは、戦後直後と変わらないレベルだという。飽食の時代を過ぎた後は、健康に気を使う余りに不健康な食生活になっているのはなんとも皮肉。

 医者を信用するなということではない。国民の半分が異常と判断されるような、狂った基準が存在することを理解して、数値の意味をしっかり理解することが大切なのだ。不安に付けこむ商法は、何も霊感商法だけではないということを知っておきたい。

 等と書くと、自分がメタボなのをなんとか認めないようにしようとしているんだろうと思われるかもしれないが、当方は身長180cm、体重65kgで、油断するとBMIが20を切る身。おまけにいつも低コレステロールと低中性脂肪を指摘される。これ、早死まっしぐらなコースだったりする。取り敢えず、健康と幸福のために赤ワインとナッツを楽しむことにしよう(自己正当化)。



関連書籍:
精神疾患はつくられる―DSM診断の罠精神疾患はつくられる―DSM診断の罠
(2002/10)
ハーブ カチンス、スチュワート・A. カーク 他

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治療は大成功、でも患者さんは早死にした―長生きするための医学とは (講談社プラスアルファ新書)治療は大成功、でも患者さんは早死にした―長生きするための医学とは (講談社プラスアルファ新書)
(2001/03)
岡田 正彦

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医学・脳・精神・心理 | 2013/04/26(金) 21:08 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1178冊目 太陽に何が起きているか

太陽に何が起きているか (文春新書)太陽に何が起きているか (文春新書)
(2013/01/20)
常田 佐久

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評価:☆☆☆☆☆


 今、太陽に異変が起きている。

 太陽の活動状況は、黒点の数の推移から知ることができる。その推移には11年の周期があることが知られていたのだが、その周期が伸びていて、黒点が観測できない日も予想より大幅に増えている。

 黒点の数が少ないのが問題なのかって?残念なことに大きな問題である可能性が高い。

 17世紀後半~18世紀初めにおいて、地球は寒冷期を迎えていた。イギリスのテムズ川が凍っていたというのだから、その厳しさが分かろう。この頃、黒点は異常に少なく、今ではそれをマウンダー極小期と呼んでいる。太陽活動の低下が寒冷化をもたらした可能性が高いのだ。だとすると、今回の異常も寒冷化を示す証拠になるかもしれない。

 地球環境に与える影響という点で、太陽はずば抜けている(奇妙なことに気象学者は無視するが)。太陽活動を注視すべきだということは分かるだろう。本書は、その太陽研究に30年間従事した研究者による、太陽の姿を知るための入門書である。

 その大きなテーマに太陽で進行中の気がかりな変化があるが、もう一つ、太陽がどれほど不思議な星なのかという知的好奇心をくすぐるテーマもある。そう。これほど身近な天体で、世界中から観測されてきたにも関わらず、太陽にはまだまだ謎が多いのだ。

 例えばコロナ加熱。太陽表面は6000℃にしか過ぎないのに、コロナは100万℃を超える。熱の供給源である核に近い太陽表面より、その上空の温度が桁違いに高い理由は何だろうか。そもそも温度をどうやって知るのかというところに始まり、これまでの観測から見えてきたその姿を活写している。謎解きの一つ一つが推理小説のように面白い。

 そしてまた、日本の技術や科学者たちの貢献もきちんと書かれているのが嬉しい。著者の貢献も含め、この分野で日本が世界でもトップクラスの貢献をしていることは知っていて損はない。私も、これを知ったからには(これまで以上に)科学分野への予算確保を支持することにしたい。

 閑話休題。

 太陽の謎にとどまらず、地球環境の謎にも迫る。太陽活動と気候の関係など、需要なテーマを考える土台を与えてくれるのが良い。はっきり言って、二酸化炭素濃度だけでは地球の環境変動の歴史は全く説明できないのだ。今後の地球の姿、ひいては我々の未来を知る上でも、本書は役に立つと思う。

 加えて、暗い太陽のパラドックス(恒星の一生から考えると太古の太陽は暗かったはずだが、地球史から見ると太古も十分に地球は暖かかったことの間に矛盾がある)にも面白い解決法を示しているのも良い。ここでは記さないので、気になった方はぜひ本書を手にとって見て欲しい。

 身近な星がまだまだ謎を秘めた、大切で不思議で面白いものだと思わせてくれた良書。
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素粒子・宇宙論 | 2013/04/25(木) 20:17 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1177冊目 数学は世界を解明できるか―カオスと予定調和
数学は世界を解明できるか―カオスと予定調和 (中公新書)数学は世界を解明できるか―カオスと予定調和 (中公新書)
(1999/05)
丹羽 敏雄

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評価:☆☆☆


 数学は、世界を解き明かすための言語である。

 人が宇宙を理解する上で決定的な役割を果たしたのは万有引力の法則であろう。以後、宇宙論は長足の進歩を遂げてきたわけだが、その全ては数学のテクニックに追っている。つまり、科学の世界においては、世界を記述するのは数学、ということになる。

 本書は、では数学は世界を解明できるのか?という問いに答えようとする意欲作である。

 答えは、今のところはできていない、というところであろう。というのは、単純な法則であっても、多くの要素が絡むと計算が飛躍的に複雑になってしまうからだ。

 指定された都市を全て巡らなければならない時、その経路を最短にするにはどうするか。2つなら簡単である。都市と都市を直線で結べば良い。3つでも簡単。4つでも解ける。でも、それが100になったら?幾何級数的に複雑になってしまうのだ。これは巡回セールスマン問題として知られる。

 これと同じ事が、万有引力の法則でも起こる。地球から宇宙の遥か彼方を目指す探査機(宇宙戦艦でも構わないが)の軌道計算を行う時、地球や太陽や月や木星といった天体の重力の影響は時々刻々と変化していく。ある一瞬を切り出すなら、計算は理論上可能であろう。しかし、現実には膨大な計算が必要となるため、できない。従って、重力圏という概念を使って、地球の重力圏を出るまでは地球と探査機の2体だけの問題として扱うのだ。


 原理的には、この問題は解決することができない。

 それでも数学は世界を解明する道具で在り続ける。本書は、どうやって数学は世界を記述しようとしているかを述べ、カオスのように、未来を解こうとするには厄介な性質を持ちながらも魅力的な領域へ話を進める。真摯にわからないところは分からないのも、魅力を伝えようとしているのも良い。

 数学がどうやって世界を説明しているのかに興味が有る方にはお勧めです。
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数学 | 2013/04/24(水) 20:21 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1176冊目 マリコ

マリコ (新潮文庫)マリコ (新潮文庫)
(1983/11)
柳田 邦男

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評価:☆☆☆☆


 太平洋戦争前のアメリカと日本を結ぶ回線に、マリコという女性の名前が何度も現れていた。もっとも、ここで言われるマリコは、人間の名前ではない。アメリカ側の態度を示す符牒であった。「マリコは病気だ」と言えば、それは即ち、アメリカの態度は思わしくないということを示していた。

 なぜアメリカの態度を示す符牒にマリコという呼び方が冠されたのか。そこには、日米和平を懸命に追求した外交官の影響があった。

 その人物の名は、寺崎英成。彼はアメリカに赴任中に見初めたアメリカ人女性であるグエンと結婚する。外交官が外国人と結婚するのは極めて異例であったが、彼は自分の意志を曲げなかった。そして、グエンも彼の思いに応えたのである。

 2人の間に生まれた娘は、重光葵により、マリ子と名付けられる。とりわけ父の英成は、娘が風雲急を告げる日米の架け橋になることを願ったようだ。こうした経緯を見れば、その名が日米交渉で使われたことも理解できよう。

 互いの母国が敵国同士になってしまった中にあって、希望を失わず、互いへの愛情を維持し続けた寺崎夫妻の姿には胸が熱くなる。特に、グエン。彼女は、寺崎が日本に送還される際、アメリカに残らず、夫の側に寄り添うことを選択した。差別あるいは生活の苦労にも音を上げず、日本の文化に溶け込もうと努力を重ねた。彼女のような存在が、きっと戦後の日米関係が改善に向かうにあたっては草の根的な役割を果たしたのだと思う。

 その娘、マリ子の生き方も堂々としたものだ。著者がいつしか彼女の物語をしたためようと思うようになった気持ちが分かる。

 日米が辿った激動の運命は、マリ子に大きな影を落とす。戦時下の日本にあって、差別もあれば、もう一つの母国であるアメリカの軍隊による空襲を受けたこともある。その全てを糧として、彼女はいつしかアメリカで政治に希望を夢見、深く関わる生活を送るようになる。

 将に激動の人生にあって、たゆまず歩んだ1人の女性の姿を活き活きと描き出している。ご両親の理想に満ちた姿と彼女の強い生き方がとても印象に残る。

 彼女本人は歴史に名を残す存在にはならなかったにしても、平和を求めて最後の最後まで死力を尽くした人々として寺崎家の方を記憶しておきたくなった。
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ノンフィクション | 2013/04/23(火) 20:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1175冊目 折る紙の数学―辺の1/7、面積1/7はどう折るのか

折る紙の数学―辺の1/7、面積1/7はどう折るのか (ブルーバックス)折る紙の数学―辺の1/7、面積1/7はどう折るのか (ブルーバックス)
(2000/09)
渡部 勝

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評価:☆☆☆


 サブタイトルがなんとも凄い。辺の1/7、面積1/7をどう折るか。そう問われて考えてみたが、全然分からなかった。

 それどころではない。入門編である、辺や面積の1/3ですら分からなかった。答えを見たら、ああ、こうやるのねと分かるのだけど、正解なしで考えようとすると、途端に分からなくなってしまう。

 ページを捲る度に現れる解法の見事さに思わず唸ってしまった。1/5、1/7なんて、こんな本でも見なければできることすら知らないままだったに違いない。

 等分になっていることをどうやって確認するか。それは、懐かしの三角形の合同や相似の証明を用いる。こういう知的ゲーム、以前は好きだったのだけど、疲れているせいかあまり楽しめなかったのは残念。勉強するのは若いうちのほうが良いね、本当に。

 折り紙も、突き詰めて考えれば数学になる。辺や面積の等分や正多面体は、こんな風にやればできるんだと驚きながら読んだ。

 今度は元気なときに、考えながら読まなければ意味がわからない本に挑戦してみよう。
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数学 | 2013/04/22(月) 22:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1174冊目 「砂糖は太る」の誤解―科学で見る砂糖の素顔
「砂糖は太る」の誤解―科学で見る砂糖の素顔 (ブルーバックス)「砂糖は太る」の誤解―科学で見る砂糖の素顔 (ブルーバックス)
(2001/05/18)
高田 明和

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評価:☆☆☆☆


 砂糖には、どこか悪いイメージが有る。高カロリーで太りやすい。虫歯になる。骨を脆くする。ああそれなのに、あの味わいは人類を魅了してやまないのだ。呪いの食品といっても過言ではあるまい。

 ところが、そのイメージが全て誤っているとしたら、どうだろうか。

 例えばカロリー。砂糖のカロリーは、同じ重さの炭水化物と変わりがない。ええ?だったら米もパンも蕎麦もウドンもスパゲッティもピザもラザニアもラーメンも食べないって?いや、それは誤った姿勢である。

 脳が栄養として使うことができるのは、糖分だけなのである。そして、脳は大食漢だったりする。なんと、人間が摂取するエネルギーの20%を脳が使っているというのだ。だから、脳を健康に保つためには、十分な炭水化物の摂取が必要にして不可欠である。

 炭水化物を摂取してから、それが糖分に分解されるまでには4時間程度の時間がかかる。一方、砂糖はすぐに溶け、栄養として使われる。であるからには、必要なシーンに応じて適度に砂糖を摂取することは、頭脳の明晰な働きにも寄与するのだ。

 こうした事実のほか、砂糖に与えられた誤ったイメージを払拭する事実が色々と記されていて大変に興味深い。本書を読めば、3度の食事の合間におやつの時間を挟むのは、脳の働きを保つために人類が生み出した叡智であるかのようにも感じられて来るのが不思議だ。

 ついでに、太り過ぎは健康に害があるのは間違いないが、太り気味であることは健康に害を与えることは無かったりする。コレステロールも同じ。多すぎるのは問題だが、あれも体を作る材料なのだから、減らせば良いというものでもない。

 健康を保つのに本当に必要な物は何なのかを考えさせてくれる。そうでありながら、語り口は平易で、トピックも読者の興味を掻き立てるものが多いので、読み物としても面白い。砂糖と上手く付き合うために、ついでにおやつを心苦しい思いをせずに食べるために、読んでおいて損は無さそう。
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その他科学 | 2013/04/21(日) 19:09 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1173冊目 チキンの骨で恐竜を作ってみよう
チキンの骨で恐竜を作ってみようチキンの骨で恐竜を作ってみよう
(1998/08)
クリス マクゴーワン、ジュリアン マロック 他

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評価:☆☆☆


 恐竜は絶滅したわけではない。なぜなら、その一部が鳥類であり、彼らは今も世界の空を制覇しているから。進化の痕跡はとりわけ骨に残されている(骨しか残っていない場合も多いし)。骨の変化を追うことは即ち進化の経緯を追うことに他ならない。そんな訳で、古生物学者たちは今日も化石を組み立てるわけだ。

 著者は自らの研究で得られたそんな技術を、もっと風変わりなことに使って見ることにした。その成果が、本書。

 鳥が恐竜の子孫であるからには、鳥の骨を使えば恐竜を復元できる、ということだ。勿論、形はぜんぜん違う。それでも、鳥と恐竜は、その構成する骨が一対一で対応するという利点がある。そんなわけで、まずはチキンから骨を得る方法に始まって、骨を綺麗に洗浄し、それを恐竜に組み立てなおしてしまおうという、壮大にして面白い試みである。

それでもやはり、形がぜんぜん違うというのは厄介なもので、使える骨もあれば、実際には使えない骨もある。著者の逃げ道は、3羽分のチキンの骨を加工してしまうというもの。

 ここまでやってしまえば、何でもありのような気がしてきてしまうのがちょっと残念。まあ、本書がターゲットとしているのが竜脚類であるアパトサウルス(異名のブロントサウルスで知られているかも)であり、鳥が獣脚類であることを考えれば、それくらいのことは必要だろう。

※ナントカ類とか言われても分からんという方、獣脚類はティラノサウルスみたいなやつで、竜脚類は首の長いブロントサウルスの仲間だと思ってもらえれば良いです

 面白いのは、骨を取り除いた後に残る肉(買い物するときにはこちらがメインだろうけど)の調理法まで乗っているところ。いやあ、無駄がない。

 面白そうではあるが手間のかかり方が半端ではないので、自分でも作ってみようとは思えなかったが、夏休みの自由研究なんかで子どもと一緒にやってみるのは良いかもしれない。進化について話をしながら、関節の仕組みなどを勉強できる機会になるだろう。
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その他科学 | 2013/04/19(金) 19:31 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1172冊目 "図解 古代・中世の超技術38―「神殿の自動ドア」から「聖水の自動販売機」まで
図解 古代・中世の超技術38―「神殿の自動ドア」から「聖水の自動販売機」まで (ブルーバックス)図解 古代・中世の超技術38―「神殿の自動ドア」から「聖水の自動販売機」まで (ブルーバックス)
(1999/08)
小峯 龍男

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評価:☆☆☆☆


 ”図面は真実を語る”を信条にする著者が、古代から中世までに見出された技術の数々を活き活きと語っている。

 取り上げられている38ものトピックを見れば、少しでも歴史に興味がある人なら飛びついてしまいたくなるであろうものが必ずある。

 ピラミッドモアイ像、紀元前3世紀のアルキメデスの揚水機、紀元前1世紀の古代ギリシアで作られた神殿の自動ドアや聖水の自動販売機、ヘロンの噴水、紀元前後のローマのスパ、後漢時代に張衡によって作られた初の地震計である地動儀、エトセトラエトセトラ。

 勿論、日本の技術もある。鍛造による製鉄技術、橋脚を持たない甲斐の猿橋、プレハブ工法によって工期わずか3ヶ月で築かれた錦帯橋、弥生時代にあった吹子。

 図解とあるだけあって、こうした技術の肝を簡単な図で示してくれている。それを見ると、古代や中世に作られたものとはとても思えない。技術を支えるだけの動力源があれば、近代の到来はもっと早かったに違いないと思わせる。

 改めて、技術の力で人類が生み出した諸々のものに感心してしまう。

 天才が見出した技術もあるだろうし、技術者が不断の改善努力を重ねる中で完成した技術もあろう。そして、彼らの活躍があって、今の我々の生活がある。そういう点からも面白く読んだ。技術に興味が無いという方でも、歴史が好きならきっと読んで損することはないと思う。
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技術 | 2013/04/17(水) 19:20 | Trackback:(0) | Comments:(4)

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1171冊目 先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学
先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学
(2007/03)
小林 朋道

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評価:☆☆☆☆


 著者の本を読むのは『先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!』に次いで2冊目。今回もまた軽妙なエッセイにクスクス笑いながら読んだ。

 タイトルになったのは、オヒキコウモリという珍種のコウモリが大学の廊下に迷い込んでしまった事件。コウモリを捕まえ、再び野に放つまでの経緯を語る中に、生き生きとした好奇心が見える。

 蛇やハムスターが飼育ケージから逃げ出してしまった話。どちらかが逃げたのなら良い。いや、蛇が逃げ出した挙句に別の人の部屋に亡命していたらちょっと宜しくない話かもしれないけど、毒蛇ではないからビックリはしても害にはなるまい。問題は、両者が同時に逃げ出してしまったことにある。そこから弱肉強食に話が脱線するのだが、この脱線もまた楽しい。

 ヤツメウナギ、アナグマ、イモリ、シカ、アリ、タヌキ、ハト、ヤギ等々、色々な種類の動物と接する中で感じたことを、彼らへの愛情あふれる筆致で書きながら、学問的な視点も忘れない。軽い読み物で楽しみながら考えさせられる、素晴らしいエッセイ。

 こんな先生の生物学の授業、受けてみたかった。



関連書籍:
先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!
(2010/04/17)
小林朋道

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生物・遺伝・病原体 | 2013/04/15(月) 23:19 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1170冊目 日韓がタブーにする半島の歴史
日韓がタブーにする半島の歴史 (新潮新書)日韓がタブーにする半島の歴史 (新潮新書)
(2010/04)
室谷 克実

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評価:☆☆☆


 なるほど、これは韓国ではタブーにされるわ。と思った一方で、何で日本でもタブーなの?という疑問が湧いてしまった。

 中国古代史やヨーロッパ史には興味を持ってきたのだが、それ以外の地域についての歴史は、出版点数が少なくなることも相まって、あまり読んで来なかった。従って、朝鮮半島の歴史に触れるのは、日本か中国と関係のあるところばかりだった。

 さて、本書はタイトルを見れば分かる通り、半島の歴史を通して眺める類のものではない。日本あるいは韓国で信じられている歴史が、実態とはどれほど違うかについて論じているものだ。

 まず驚いたのが、古代朝鮮にあった新羅の基礎を作るのに倭種、つまり日本人が大きな役割を果たしていたということ。いい加減な民間伝承に言われているわけではない。『三国史記』という、半島最古の歴史書に記されたことだ。

 倭式の墳墓があったり(半島の墳墓が日本のものより新しいことから、半島から日本に伝えられたものではないことは確実)、鉄の加工も半島は鋳鉄時代に日本では鍛造だったりと、日本の文化の進み方は一歩先んじていた。

 こうした記述を丁寧に追いかければ、華夷秩序的な世界観、即ち中国が文明の中心で、そこから離れるに連れて文化・文明レベルが落ちる(だから、中国-半島-日本の順に文化レベルは落ちる)という思想はこの時代にも当たっていなかった、ということだ。

 新羅の4代目の王は倭種であった、という。そして、後半は4代王の血筋を引く人物が王位に登っている。つまり、新羅の王の少なからずは日系であったのだ。

 こうした事実が完全に無視されているというのは驚くべきことであろう。なにせ、国家公認の歴史書に記されたことを認めず、根拠のないことを信じているのだから。それは事実に対して誠実に向かい合う姿勢ではない。

 半島が自尊心から事実を無視すれば、日本側は皇国史観を廃するために、過剰に半島に阿った”学説”を奉じていたのが、歴史的事実を闇に葬る事になった。しかし、それでは、イデオロギーの表明にはなっても学問にはなり得ない。歴史が学問を名乗るには、自分の信念には都合の悪いことにも向き合うこともまた、必要であると強く感じた。


 稲作なんかはコメのDNA解析によって中国からの南方ルートで入ってきていたことは知っていたが、こうやってみると、実は中国-半島-日本というルートではなく、中国-日本というルートで伝わってきた文物、文化もあるだろうし、日本が独自に生み出したものも多々あるのだろうと改めて感じた次第です。

 三国史記等の文献に広く当たっている点で、嫌韓に乗じただけの本ではないように感じられる。ただ、少々著者が想像の翼を広げすぎている感もあり、もうちょっと冷静に歴史分析に徹してくれていればもっと面白かったかもとも思った。
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その他歴史 | 2013/04/13(土) 22:22 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1169冊目 空白の天気図―核と災害1945・8・6/9・17
空白の天気図―核と災害1945・8・6/9・17 (文春文庫)空白の天気図―核と災害1945・8・6/9・17 (文春文庫)
(2011/09/02)
柳田 邦男

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評価:☆☆☆☆☆


 1945年9月17日、敗戦の衝撃冷めやらぬ日本に、台風が上陸。各地に多大な被害をもたらした。上陸地点の名を取って、枕崎台風と呼ばれこの台風は九州に上陸して縦断したにも関わらず、最大の犠牲者数を記録したのは広島だった。

 核の炎に焼かれた都市は、その痛手から立ち直る暇すら与えられないまま、大型台風の襲撃を受け、死者行方不明者2000名を超える犠牲者を出してしまった。

 何故、これほどに被害が広がったのか。その原因の1つに、原爆によって気象観測の体勢が壊滅しており、人々が必要な警告を受け取っていなかった、というものもある。観測員たちはそれこそ苦難に満ちた状況でも観測を続けていたのに、情報伝達する手段が無かったのだ。

 本書は、原爆から枕崎台風のおよそ1.5ヶ月を中心に、広島管区気象台の人々の奮闘を追ったノンフィクションである。

 軍による情報の統制によって台風が来ても警報すら発されることがなかったという事実には、今との差が余りにも大きく、絶句してしまう。今なら秘密にしようと思っても気象衛星に力によって交戦国であろうと筒抜けだ。そして、当時ですら、日本政府がひた隠しにしようと図った天候の情報も、B29で直接観測する米軍には無意味なものだった。その観測結果として、広島への原爆投下があった。

 改めて原爆のもたらした惨禍を見て、その苦しみを味わった人々への痛切な思いを感じるのと同時に、アメリカへの憤りを感じざるを得なかった。戦中、日本は彼らを鬼畜米英と蔑み、彼らは我々を野蛮な猿と罵った。他人種を、自分たちと同じ人間と見ない真理が生んだ残虐さなのかもしれない。アメリカでは交戦国の中で日系人だけがゲットーに収容されたことを思いだしてしまう。

 そして、その地獄絵図の中にあって、なお科学的な思考・行動を失わなかった気象台の人々に感謝したい。彼らのような、歴史に名を残すことはなくとも地道にインフラを築きあげようと努力した人たちが、本当の意味で社会を動かしていると思う。

 枕崎台風のせいで、原爆の調査に訪れていた京大の教授たちが少なからず殉職されたことを知った。彼らは、調査に行くという話がでたら、危険も顧みずに二つ返事で引き受けた人々だった。広島でも多くの医療関係者、軍人たちが観測員たちに負けず劣らず必死に働き、そして放射線と台風に倒れていった。彼らに感謝を。自分の持ち場を守ることが、社会を守ることにつながるのだろう。だから、自分は自分のできることをやろうと思った次第です。

 1975年に出版された、ある意味で古い本が2011年に再出版されるのもむべなるかなと思わされた一冊。
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ノンフィクション | 2013/04/11(木) 19:19 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1168冊目 ブラックホーク・ダウン〈下〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録

ブラックホーク・ダウン〈下〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)ブラックホーク・ダウン〈下〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)
(2002/03)
マーク ボウデン

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評価:☆☆☆☆☆


 上巻において、既に2機のブラックホークは撃墜されている。そのうち、最初に墜落したブラックホーク61号には地上兵力が集結しつつあったが、64号では2人の生き残りにようやくデルタフォースの2名が加わっただけだった。

 総勢99人のアメリカ兵に、100万都市の民兵が大挙して押し寄せる。

 いくら訓練を積み、最先端の武器を持ってもしても、この数の暴力には対抗することは、不可能である。じりじりと彼らは追い詰められていき、そして、遂には64号側は撃破されてしまう。副機長とデルタフォース2名の計3名は殺され、機長は囚われの身となる。

 そして、世界を震撼させる、例のシーンが繰り広げられる。

 墜落の際に死亡した乗組員と戦死した3人の遺体を、民衆は切り刻み、引きずり回したのだ。歓喜に満ちた表情で。

 そのショックはやがてアメリカを撤退させ、兵装の思想は遠隔攻撃中心への流れを加速する。この観点からすれば、勝ったのはソマリア側だ。例え、死傷者の比率では圧倒的に負けていても。

 だが、あれが、ソマリアを失敗国家とさせた。30万人の餓死者と大量の難民を生み出し、飢餓を無くすためにやってきた軍を、私欲によって排撃することで。

 世界史的な意味合いは兎も角、ブラックホーク64号周辺が制圧された後も、まだ彼らは戦い続けている。大勢が戦死し、ほぼ全員が負傷し、補給に不安を抱えながら。遂に、彼らを救うために正規軍が投入される。

 どんなに苦しい状況でも、仲間のためにと苦闘する姿、遺体をなんとしてでも家族の元へ返そうとする必死の活動には、こちらの胸が熱くなる。地獄のような戦場に、3度も出撃した者もいれば、仲間を守るために命を顧みず戦い続ける男もいる。そして、苦しい中でもユーモアを失わない戦士も。死に物狂いの戦闘に一息ついてタバコを吸う際に、警告文をジョークにして笑うその胆力には感服する。

 戦いの野蛮さと、それが究極の状況であるが故の美談の落差に圧倒されつつ読みきった。

 難を言えば、この戦いがソマリア派兵の全体像においてどのようなピースになっているかが分かりにくいこと。戦いの細部と、それがもたらした影響は知ることができるので、戦いに至るまでの全体的な流れがあればなお良かった。


 誰が勝ったのだろう。きっと、勝者は存在しない。戦闘では勝ったアメリカは撤兵して目的を達成できなかった。アメリカを追い出したソマリアは勝者なのか?いや、悲惨な内戦が延々と続く失敗国家に誰も見向きもしない状況を作っただけ。彼らが最大の敗者だと感じられてならない。いつの日か彼らが戦いに倦み、和平を目指そうとなったとき。その時、周りが彼らを助けようと思えるだろうか。そもそもその日はやってくるのだろうか。色々なことを考えさせられた。
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ノンフィクション | 2013/04/09(火) 19:48 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1167冊目 ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録
ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)
(2002/03)
マーク ボウデン

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評価:☆☆☆☆☆


 1993年、ソマリア。独裁者モハメド・シアド・バーレが、自分の属する氏族に偏重した資源配分を行うことに反発した反乱軍と政府軍の戦いは、反政府軍がほぼ全土を掌握する形で最終局面を迎えていた。いや、迎えていたはずだった。しかし、反政府軍内部での主導権争いが激化。モハメッド・ファッラ・アイディード将軍派は、暫定政権との戦いに入る。アイディード将軍派は、国連にまで宣戦布告した。

 戦いが続くことで、国家としてのインフラ等は全て喪われる。そうなれば、待っているのは飢餓である。事実、多くの難民が生まれ、大勢の人々が飢えに苦しむ。しかし、力を持つ人々は、自らの勢力を伸ばすことにのみ注力、難民支援の食料すらそれに利用する有様だった。

 そんな中で、米軍は特殊部隊(レンジャー部隊デルタフォース)を使ってアイディードの側近2人を捕らえる作戦を立案する。作戦は、1時間程度で終わるはずだった。そして、アイディード将軍派は有力な幹部を失い、弱体化するはずだった。

 順調に進んでいた作戦は、ある出来事をきっかけに暗転する。そう。中型多目的ヘリコプター、ブラックホークRPGにより撃墜されるのである。

 斯くして、何千という敵対する人々の中に特殊部隊は孤立してしまう。

 ヘリコプターが墜落するときの機長のセリフをタイトルに持つ本書は、このモガディシュの戦いの詳細に迫るノンフィクションである。アメリカ側・ソマリア側双方の立場から取材しているところは特筆すべき点である。但し、その難易度の問題で、アメリカ寄りの記述になっていることは否めない。

 私はやはりかつて西側と言われた思想にこそ、共感を持てる。援助物資を手中に収めて自分の勢力を保つために利用する人々には厳しい目を向けざるを得ない。自分の氏族が利益を得ていることに安住し、資源を独占する体勢に安住して独裁者に与する人々にも批判を下したい。

 一方で、彼らにも彼らの人生があり、生活がある。そして、それは凄まじく貧しい。資源を独占していても。

 そこへ外国が乗り込んできて、指導者を放逐しようとしても、反発があるのはある意味で当然かもしれない。彼らの本当の敵は、安定した社会を作ることが出来ない自分たちのリーダー達であることも、彼らは理解していないのだから。

 戦いは熾烈だった。世界最強の武装に守られ、最高の訓練を受けた戦士たちが何人も斃れていくのだ。ソマリアに平和をもたらすはずの活動なのに、肝心のソマリ人の民兵と戦って。

 一人ひとりの兵士の普段の姿をも深堀りしているので、兵士たちに感情移入しながら読むとかなりしんどい。世界に溢れる武器の多さに暗澹となる。

 上巻では、ブラックホークが2機撃墜され、孤立した兵士たちがなんとかヘリの乗員を救出しようともがく所で終わっている。その悲惨さと細かな描写は舞台が丸っきり異なるにも関わらず『レイテ戦記』を彷彿させる。圧倒的な描写に、目を離すことができなかった。

 それにしても、これが冷戦が終わった後の世界を待っていた現実というのが悲しくなる。

 結局、先進国は、アフリカのことはアフリカに任せる、殺しあいたければ勝手にやれ、というところに落ち着いてしまう。自助努力も自浄作用も期待できないのだから、仕方がないだろう。今も、ソマリアは内戦を続けている。彼らの上に平和が訪れるのは何時なのだろうか。
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ノンフィクション | 2013/04/07(日) 20:33 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1166冊目 局地戦闘機「雷電」
局地戦闘機「雷電」 (文春文庫)局地戦闘機「雷電」 (文春文庫)
(2005/07/08)
渡辺 洋二

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評価:☆☆☆


 艦上零式戦闘機を設計した堀越二郎の元へ次に持ち込まれたのは、局地戦闘機の設計だった。

 万能型の戦闘機である零戦は、戦場に投入されて既に長き年月を経、既に空での圧倒的な優位を失っていた。その中で戦況は悪化、日本側は爆撃を受けるようになっていく。そこで必要とされたのが、敵方の爆撃機を撃ち落とすための技術である。これは、言うは易く行うは難い話だった。アメリカは強力な発動機を持っていたため、防御にも充分な力を注ぐことが出来たためである。

 高速でありながら、防御力も高い。そうした敵に零戦は対抗すら出来なかった。そこで、上昇力と武装を突出させた戦闘機が必要とされたのである。

 こうした経緯により生み出されたのが、本書の主役雷電である。

 雷電は、不幸なことにやはり発動機にまつわる問題からは解放されなかった。確かに零戦よりも上昇力は上がった。しかし、機体の形状は零戦とは打って変わったものとなる。ズングリムックリで、離着陸時に滑走路を視認することが困難。そして、零戦ほど融通のきく操作が出来ない。零戦乗りの多くは雷電を苦手としたようだ。

 結局、雷電は敗色の濃い戦況を立て直すことは出来ず、少数しか生産されないままに役割を終えていった。

 その辺りの流れをかなり詳細に追いかけているので、航空ファンはたまらないかもしれない。

 一方で、簡にして要を得た文章とは言いづらいし、零戦と比べて云々という話が随所に顔を出すなど、構成が優れているとも思えない。読んでいて、どこに主眼が置かれているのかが分かりづらかった。ちょっと前に読んだばかりの柳田邦男さんの『零式戦闘機』が読みやすかったのでそれと比べてしまうと、ちょっと残念な感じだった。
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ノンフィクション | 2013/04/05(金) 19:36 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1165冊目 恐怖の2時間18分
恐怖の2時間18分 (文春文庫)恐怖の2時間18分 (文春文庫)
(1986/05/11)
柳田 邦男

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評価:☆☆☆☆☆


 ペンシルベニア州の州都ハリスバーグの郊外に位置するスリーマイル島。この周囲3マイルの小さな島の名は、原子力発電所の存在によって世界中に知られることになる。1979年3月28日に発生したスリーマイル島原子力発電所事故によって。

 二次冷却水の循環が停止してしまったことに始まった事故は、瞬く間に規模を拡大、一次冷却水が沸騰して失われてしまう。様々なデータをトータルで判断するなら早急に一次冷却水を補給しなければならないことは明らかだったが、人間工学を無視した設計は、技術者たちに誤った対応を取らせるばかりだった。

 結局、一次冷却水が漏れ出している加圧器の弁が開いたままで固着していることに気づくまで2時間18分が経過してしまい、炉心が一次冷却水から顔を出して空焚き状態となる。そして、放射性を帯びた一次冷却水が環境中に放出されてしまったのだ。

 本書はこの間の経緯を克明に追ったノンフィクションである。巨大システムの事故を多く追ってきた著者ならではの、かなりつっこんだ技術的なところまで踏み込んだ解説によって、問題がどこにあったかが分かりやすくなっている。

 愕然とするのは、この大きな事故をもたらした要因は、一つ一つを突き詰めていくと実に些細とも言える欠陥であること。それらが累積され、臨界点を超えた所で大事故が発生したように見られることだ。

 例えば、原因系としては肝心の加圧器の弁は、実際の開閉状態を示しているのではなく、指示された内容を示していることだったことである。あるいは、拡大させた要因としては一度異常が起こるや、30秒で85回も次々に警報が鳴り響いたり警告灯が137個も大量に点灯したりしたことで真の原因が何か分かりにくく成ってしまったことである。

 加えて、技術者がこの巨大システムを扱う上において真に必要とされる、原子炉内の状態を読み取るにはデータをどう判断すべきかを深く理解しては居なかったことも挙げておくべきだろう。

 巨大システムと付き合わなければならない近代文明の中で生きていくためには、技術やシステムに対する理解が必要不可欠であり、この事故事例は我々の意識に強く呼びかける点で貴重なものであると思えてならない。

 事故についての詳細が第一部なら、第二部は、事故が社会に与えた影響を追っている。

 錯綜する情報によって冷静さが失われる恐ろしさ。本書においては、環境中に放出された放射性物質は極めて微量であるにも関わらず、5マイル以内の住人に避難が呼びかけられてしまうことでその頂点を迎える。

 数値の持つ意味をきちんと理解することも、説明することも、結果的には出来なかった。不十分なデータと曖昧な根拠による実態に即さない判断が混乱を招いてしまったのである。福島での原発事故で我々も体験してしまったことと、重なる。

 曖昧な情報しか得られなくても何らかの決断を下さざるを得ないことが政治には付き纏う。それでも、判断を下すには、それまでに得られている情報の精度を高める努力と、客観的な判断基準が必要とされるはずだ。

 情報の取り扱いと、それを受け止める側の姿勢についてまで考えさせる、深い本である。
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技術 | 2013/04/03(水) 19:30 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1164冊目 もうひとつの青春―同性愛者たち
もうひとつの青春―同性愛者たち (文春文庫)もうひとつの青春―同性愛者たち (文春文庫)
(1997/12)
井田 真木子

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評価:☆☆☆☆


 同性愛は、生物の目的を「子孫を残すこと」とすれば、合理的な存在ではないように感じさせる。それなのに、どうやらゲイには遺伝の影響が大きい、と言われる(但し、単一の”ゲイ遺伝子”があるというわけではない)。それも、母方からの遺伝であることが強く示唆されている。環境の影響という点では、妊娠中のストレスが大きい。大きな戦争の最中に生まれた子供は同性愛になる可能性が高いことからそれが示唆される。

 性的な指向は、個人の選択ではない。また、倫理の問題でもない。誰もが自然と同性あるいは異性を好むようになる。その多様性は、人間の存在の不思議さ・面白さを表しているし、同性愛者が生み出した素晴らしい芸術作品を見れば、彼ら・彼女らの存在は、人類社会を豊かにしてくれたとも見える。

 いずれにせよ、同性愛は太古の昔から一定の割合で存在したし、今も少なからぬ人が同性愛者として生きている。

 ところが、時代によって、社会によって、彼らの置かれる立場は大きく異なる。

 プラトニックラブの語源になったプラトンの生きた時代は同性愛に寛容だった。プラトンが言うには、天上界では2人分の魂がセットになっていて、男女の組み合わせもあれば男男、女女の組み合わせもある。そして、魂が地上に降りた後は、離れ離れになってしまったもう一つの魂を求めると主張した。恐らくは自分の同性愛指向を説明するためであっただろう。だから、本義から言えば、プラトニックラブは同性愛を指すのではなかろうか。

 日本でも戦国武将や僧侶たちががお小姓を可愛がっていたことがあるし、中国でも王様が男色に嵌っていたことがある。

 一方で、ユダヤ教は同性愛に不寛容だった。レビ記にこうある。”「男がもし、女と寝るように男と寝るなら、ふたりは忌みきらうべきことをしたのである。彼らは必ず殺されなければならない。その血の責任は彼らにある。」”

 この非寛容な教えがユダヤ教を起源に持つキリスト教やイスラーム教に引き継がれたことで、不幸なことに、同性愛に対しては生きづらい時代が長く続いている。その影響は、今も残るのであろう。

 多様性に対する寛容さを失った日本でも、状況は変わらない。同性愛者は偏見により、少なからぬ社会的な不利益を被っている。

 今ではNPO法人となっている、同性愛者の古参団体であるアカー/動くゲイとレズビアンの会(Occur:アカー)が、青年の家を使用しようとして拒否されたことに端を発する裁判。その主役は、決して芸能人やら新宿二丁目のオカマバーの人々のような特別な人ではない。どこにでも居る、市井の人々である。

 そんな彼らの姿を追い、共にゲイパレードを体験したり、国債エイズデーに参加したりした記録が本書。

 まだインターネットが無く、同性愛者が互いの情報を知り合うことが出来なかった時代。その中で、正しい情報のやり取りを目指す互助会的な組織としてアカーは生まれた。ホモフォビア(同性愛嫌悪)に対抗して異性愛者を憎む人もいたこともあれば、裁判に疲れきってしまう人もいた。純情な青年もいれば、大勢との人との性交渉によってHIVに感染した男性もいる。

 多様な人々の来歴を追い、彼らがどんな人々なのか、見れば見るほど、どこにでもいる普通の人でしかない。彼らが性的な指向が同性に向いているという、そのたった一点のみで排撃されるのは、好ましいことではないと思う。政治的な思想であれ、性的な好みであれ、多様なありようを認め合うことが豊かな社会をもたらすと思うからだ。

 その思いは、私の性的な指向とは無関係なので、自身のことを述べるのは控える。

 ゲイであろうとストレートであろうと関係なく、互いを個人として認め合えるのが成熟した大人の態度というものではなかろうか。

 尚、今ではどうか知らないが、1990年代のゲイパレードでは、ゲイの中にも白人男性を頂点とする階層があって、厳然たる差別があったという。有色人種のレズビアンは、最下層。そこに人間の業の深さが見られる気がしてならない。


 それにしても、1993年にHIV感染をカミングアウトした大石敏寛さんが今もご存命で、著者の井田真木子さんがお亡くなりになっていることに、人生の先の見えなさを実感する。大石さんのさらなる活躍と、著者への哀悼を祈念しつつ更新としたいと思う。


関連書籍:
神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く (新潮文庫)神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く (新潮文庫)
(2010/04/24)
石井 光太

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ノンフィクション | 2013/04/01(月) 20:39 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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