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Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
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2012年 私的ベストテン
 歳を取ると1年が経つのが早い。昨年のベストテンからあっという間に1年が過ぎてしまった。今年は120冊超の本が読めて、そして幸いなことに今年も良書に巡り会う事ができた。

 早速、2012年のベストを。


10位  ぼくと1ルピーの神様

ぼくと1ルピーの神様 (RHブックス・プラス)ぼくと1ルピーの神様 (RHブックス・プラス)
(2009/02/20)
ヴィカス スワラップ、ヴィカース スワループ 他

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 クイズミリオネアで全ての問題を解いた少年は、しかし賞金を得るどころか警察に捕まり、不正を糾弾される。そこから始まる物語は、少年の楽ではなかった人生を辿るものになる。インド社会が今も抱える暗さに光を当てながら、強く生きる少年の姿が格好良い。ちょっとしたご都合主義もあるけど、それも気にならない出来。映画化も頷ける。


9位  「反原発」の不都合な真実

「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)
(2012/02/17)
藤沢 数希

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 震災に続く福島原発事故は、「原発安全神話を崩壊させた」等と言われることが多いが、本当だろうか?トータルとしてメリットとリスクを見ると、実は原発の害は他の発電方式と比べて圧倒的に優れている。その根底にあるのはエネルギー密度という物理。本書は、どれほど原発に代わる発電方式が原発と比べて"危険"で、しかも"高く付く"かを明らかにしている。

 原発は危険なこともあるという当然のことを、これまでは論じることすらできなかった。それこそが不幸の始まりだったと思う。だから、今後は原発をできる限り安全に運行するためには何が必要か?を論じていかなければならないだろう。電源車が給電できませんでした、なんてお粗末なことになったのも、大掛かりな訓練が出来なかったことが根底にあるだろうから。

※不幸にして生まれ育ち、愛着のある土地に住めなくなってしまった方がいらっしゃるのは事実で、行政の支援が今後も必要だとも思う。なので、そのために税金なりなんなりの負担が必要というなら応じるつもり。


8位  レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり

レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまりレッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり
(2009/01)
マシュー ブレジンスキー

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 イギリス侵攻を企んだヒトラーは、バトル・オブ・ブリテンの敗北で野望を挫かれると、イギリスへ報復を遂げんと狙う。制空権のないドイツには、卓越した科学が、技術が必要だった。それを叶えたのが、かの天才フォン・ブラウン。ロンドンを襲ったV2から宇宙開発の歴史を説き起こし、スプートニク(赤(=ソ連)の衛星、レッド・ムーン)開発の経緯とその後の宇宙開発の歴史を語っている。宇宙開発史に興味が有る方には幾つもの発見と興奮があるだろう。


7位  生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
(2007/05/18)
福岡 伸一

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 前評判の高さを裏切らない傑作。周囲の人からは、まだ読んでなかったのかとの呆れ声が聞こえそうなのに読んでいなかったのは、ベストセラーに合わない自分の天邪鬼があったわけだが、いやあ、これは傑作です。生物とは何なのか?という究極的な問いを筆頭に、普段の生活ではなかなか考えないディープなことが簡単に説明されているのに脱帽。『プリオン説はほんとうか?』も面白かった。今後の著作活動にも注目したい。


6位  打ちのめされるようなすごい本

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)
(2009/05/08)
米原 万里

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 ご存じ、ロシア語の同時通訳者として活躍され、独自の視点と鋭い文章、シモネタをも織り交ぜて読者の心を掴んで離さない米原万里さんが亡くなられる直前まで読み続けた、素敵な本についてのレビュー集。時に笑え、時にホロリとさせられ、そして読書量に舌を巻く。

 読書家なら手に取るべきだけど、十分な時間とお金が無い人は読んではいけない本。読んでしまったばっかりに、読みたい本が次から次へと……。困ったものです。そして、この方を喪ってしまったのは本当に残念です。


5位  ヘッピリムシの屁―動植物の化学戦略 & ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー 

ヘッピリムシの屁―動植物の化学戦略ヘッピリムシの屁―動植物の化学戦略
(1997/09)
ウイリアム アゴスタ

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ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジーヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー
(2007/03)
ピーター フォーブズ

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 化学を学んだ私のこころの奥底にまで面白さを届けてくれるヘッピリムシの屁。生物現象は化学現象であるわけだけど、生物の化学の奥深さには本当に驚くばかり。こういう驚きを教えてくれる本、好きだなあ。

 『ヤモリの指』も同工異曲。こちらは、生物が生き残るためにミクロの世界へ織り込んだテクノロジーを教えてくれている。進化とは、本当に凄いものだ。


 どうしても10冊に絞るのは難しく、2冊併置となりました。優柔不断を嗤って下さい。。。
 


4位  累犯障害者

累犯障害者 (新潮文庫)累犯障害者 (新潮文庫)
(2009/03)
山本 譲司

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 面白い、というのとは違う。その現実の過酷さに圧倒された本。自分が今まで抱いていた、"障害者の犯罪"が如何にほんの僅かな面しか見ていなかったかを痛感した。新たな気づきに感謝したい。犯罪への対処のみならず、福祉に興味がある方にも是非読んで貰いたいと思わされた。


3位  歌う生物学

歌う生物学歌う生物学
(1993/05)
本川 達雄

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 なんで歌わなくちゃ行けないんだよと、タイトルに釣られて買ったのに積読してた俺の莫迦。迂闊にも気づかなかったがかの傑作『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学』の著者の人ではないか。


2位  怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史 

怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史 (講談社学術文庫)怪帝ナポレオン三世 第二帝政全史 (講談社学術文庫)
(2010/10/13)
鹿島 茂

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 ナポレオン三世は、ナポレオンの名を借りただけの無能なおっさん、というイメージを払拭した挙句に、この人物・この時代への関心を掻き立ててくれた。声を大にして言いたい。ナポレオン三世は只者ではない、恐るべき人物なのですよ、と。本当に面白い評伝にして歴史絵巻。鹿島茂さんには来年もお世話になることだろう。


1位  歴史は「べき乗則」で動く

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
(2009/08/30)
マーク・ブキャナン

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 読み始めてすぐに今まで読まなかったことを後悔した一冊。歴史を法則で語るなんて無理だろ、という当方の勝手な思い込みは、ちょっとタイトルに騙されていたようだ。話題の広がりと以外な結論に目からウロコがポロポロ落ちる。知的好奇心の刺激と、様々な事象の間で見られる思いも寄らない類似性に圧倒されるのが楽しかった。
 




 完全自己満足のこのコーナー、今年出会った素晴らしい本の数々を思い返す絶好の機会になっています。皆様は如何でしたか?もし皆様が拙blogをきっかけに素敵な本と巡り会えたのでしたら望外の喜びです。

 多くの方にご訪問頂き、またコメントを頂けたことは更新の励みにもなりました。もしお時間がありましたら、来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 また、今年からはブクレコに参加しました。基本的にはblogの記事の転送ではありますが、過去に読んだ分などはブクレコのみに投稿することもありますので、もし少しでも興味があれば参加してみては如何でしょうか。素晴らしいレビュアーが大勢いらっしゃるので、読みたい本がたまる問題もありますが。ついでに私のレビューで"イイネ"を押しまくってくれたら嬉しいです(笑)。

 それでは、来年が皆様にとって良い年になるよう願いつつ筆を置くことと致します。皆様、良いお年を。
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雑記 | 2012/12/31(月) 20:00 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1126冊目 日本語通の日本語知らず―広辞苑よ、おまえもか
日本語通の日本語知らず―広辞苑よ、おまえもか日本語通の日本語知らず―広辞苑よ、おまえもか
(2006/03/01)
川本 信幹

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評価:☆☆☆☆


 日本語ブームに乗っかって出版されたと思しきタイトルである。ユリウス・カエサルが最期に放った、心のそこからの悲痛な叫びをモチーフにしたかのようなサブタイトルが良い。

 私は、言葉は相手に自分の意図を伝えるための道具であると思っているので、極力単純で明快で読み易い言い回しをするよう心がけている(能力不足のためできていないことが多々あるとは思いますが。。。)。なので、美しい表現とは無縁だと思っているため、こういう美しさを求める文章がちょっと眩しかったりする。

 著者は国語教科書の編纂委員を務められたこともあるだけあって、言葉へのこだわりが深い。

 雰囲気としては、高島俊男さんの『お言葉ですが…』に近い感じ。恐らく、表現を辛辣にして広い知識を加えたら『お言葉ですが』に向かい、軽く笑える方向へ行けば『日本人の知らない日本語』になる、といった感じ。

 自分が美しい、将来に残したいと思う言葉についてのエッセイなので、美学と拘りが出ているのが良い。ただ古い言葉を称揚するだけではなく、ら抜き言葉の合理性についても認めているので、若い読者としても納得しやすいと思う。

 もうちょっと、普段使う言葉に神経を使ってみようかと思わされた一冊。


関連書籍:
お言葉ですが… (文春文庫)お言葉ですが… (文春文庫)
(1999/10)
高島 俊男

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日本人の知らない日本語日本人の知らない日本語
(2009/02/18)
蛇蔵、海野 凪子 他

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未分類 | 2012/12/30(日) 23:21 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1125冊目 インセスト幻想―人類最後のタブー
インセスト幻想―人類最後のタブーインセスト幻想―人類最後のタブー
(2001/11)
原田 武

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評価:☆☆☆


 もう10年くらい前、たまたま開いたお兄ちゃんとの大切な想い出が気に入って、一気に読んだ挙句にチャットに入り浸っていたことがある。私も博識を謳われるが(これだけノンフィクションを読みまくって博識と言われなかったら記憶力が絶望的に低いということだ)、そこには舌を巻くほどの博覧強記な人が居たのもあって、とても楽しかった。

 話が逸れたが、そこの影響があって購入はしたのであるが、延々と積読に埋もれていたのを発掘したのが本書。

 インセスト・タブーは世界中の民族で見られる。時代や場所によっては、その罪は死にも値するものとされた。一方で、インセスト・タブーが破られることは多々ある。行為のほとんどが密室で行われるし、実態も明らかにならないながらも、それなりに広く行われていることは明らかだ。

 なぜインセスト・タブーがあるのか。かつてプトレマイオス朝エジプトでは兄妹婚が為されていたという。かのクレオパトラも、弟と結婚していた。なぜこのような例外が発生するのか。インセスト・タブーの姿に挑む過程で明かされる事実の数々は、意外な話も多くて面白い。

 しかし、著者がやたらとフロイト派の言葉で説明をしようとするのは気になる。前世紀の前半に生きた人ならともかく、現在ではフロイトなど、学問的には歯牙にも掛けられていない。そのため、エディプス・コンプレックスの存在が云々などと言われると、それはあんたの勝手な解釈だろ?という疑問が鎌首を静止衛星軌道くらいまで持ち上げるくらいの勢いで立ち上がってくるのが玉に瑕。第一宇宙速度は7.9km/sなんですよ。

 アメリカの実験では、いろいろな異性が着たシャツの臭いを嗅いで、どの異性が好ましいかを聞くと、免疫タイプが最も離れた異性を好ましいとする実験結果がある。これは、自分とは異なる免疫タイプを持つ異性と結びつくことで子孫の免疫を強めようとする行為なのだろう。

 また、幼い頃に共に過ごした相手とは、結婚生活が上手くいかないことが多いという統計結果もある。これも、幼い頃に共に過ごす相手は家族であることが多く、それは即ち自分と免疫タイプが近い相手であることが背景だと思われる。

 フロイトなんかよりもこうした事実に触れて欲しかった。

 こうした欠点はあるが、歴史を探り文学作品を漁るかと思えば、近親者同士の子とそうではないカップルの子の致死率や奇形率を出すなど、話題が広いのは魅力。インセスト・タブーが成立した背景を考えるのには十分にヒントになっていると思う。

 正直、他人同士がどうしようと知ったことではないので、やりたい人はどうぞご随意に、但し、無理矢理はダメくらいにしか思っていないので、著者の問題意識には賛同できなかったが、祖母-孫間の、というのには大分びっくりした。世界は広い。。。

関連書籍:
精神分析に別れを告げよう―フロイト帝国の衰退と没落精神分析に別れを告げよう―フロイト帝国の衰退と没落
(1998/05)
H.J. アイゼンク、H.J.Eysenck 他

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フロイト先生のウソ (文春文庫)フロイト先生のウソ (文春文庫)
(2003/01)
ロルフ デーゲン

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ノンフィクション | 2012/12/27(木) 20:57 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1123冊目 & 1124冊目 突撃お宝発掘部1、2  付 ザンヤルマの剣士
深く静に掘りかえせ!―突撃お宝発掘部 (角川スニーカー文庫)深く静に掘りかえせ!―突撃お宝発掘部 (角川スニーカー文庫)
(2001/10)
麻生 俊平

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レイズthe宝船―突撃お宝発掘部〈2〉 (角川スニーカー文庫)レイズthe宝船―突撃お宝発掘部〈2〉 (角川スニーカー文庫)
(2002/03)
麻生 俊平

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評価:☆☆☆


 系列の幼稚園から大学までを同じ敷地に擁する真輝島学園。学生の総数に応じて、敷地は驚くほど広い。そりゃあもうファンタジーかと言うほど広い。学園内に電車が走る『コータローまかりとおる!』にも匹敵するくらいといえば分かる人には分かるであろう。

 その高等部には、沢山の部活がある。部活動は必修で単位にもなるのだが、生徒の自主性を重んじるため、正当な理由さえあればどんな部活でも設立が認められてしまう。勢い、妙な部活が乱立することになり、そうとなればまともに活動しないのに単位だけは貰おうとする不届きな部も存在する。

 風紀委員が実態調査に乗り出したため、ヒロイン(なのか?)も幾つかの部活を視察することになる。その1つが、どこからどう見てもいかがわしい、"お宝発掘部"。生徒会長のお褒めの言葉(と好意)を目当てに鼻息も荒く捜査に乗り出した彼女が遭遇したのは、無愛想で穴を掘るのが生きがいのマッチョと、何を企んでいるか分からない料理上手の優男。

 このたった2人の部活に潜入した(といってもバレバレなのだが)ヒロインの前で、折よく1つの依頼が舞い込む。友達と一緒に裏山にタイムカプセルを埋めたのだが、場所が分からなくなってしまったので探して欲しい、というもの。

 噂を辿り献に当たり候補地を絞り込むと、あとはひたすら掘るだけ。その間、ヒロインは料理を美味しく片づけたり穴掘りに参加させられたりと、監視活動に抜かりなく従事していたのが、気が付けば暴走族に襲われていたり、スコップで助けられたりと事件に巻き込まれていた。

 誰が邪魔をしようとしているのか。

 事件の内容も、規模も、大げさにならなすぎるのが良い。なにせ、探偵物だと一介の高校生が何件もの殺人事件に巻き込まれたりするから。殺人だとか宝物だとかを期待する方には拍子抜けかもしれない。むしろ、著者お得意の登場人物の思いに光を当てるドラマだと思えば良い。そこに宝探しとなると、ロマンを感じるか莫迦莫迦しいと思うか。そこで評価も分かれるものと思う。私は好きです。



 2巻では、故人となってしまった売れっ子作家の遺作原稿が、湖に沈むヨットに遺されているのではないかと娘に相談を持ちかけられるところから話が始まる。

 調査完了とはなっていないことからヒロインはお宝発掘部に仮入部どころか本格的に入部せざるをえなくなってしまう。なにせ、こんなにも怪しいのだから不正は眠っているはず。お宝発掘部の暗部を探ろうとする彼女の前に現れたのは、陰謀研究部(総員1名)の部長。湖探索はネッシーのようなUMAがターゲットだとか、宇宙人との密約がとか、頭が痛くなるような陰謀論をとっかえひっかえ持ちだしては、別の観点から不正を糾弾する。

 事態は収拾よりも混沌に向かうわけだが、そんな外野の妨害にも負けずに発掘部は今日も征く。果たして、ヨットを見つけることはできるのか。そして、湖底探索でスコップの出番はあるのか。

 それぞれの活躍するシーンの出し方が上手いな、と思う。ちょっとクサイ台詞を言ってしまうのが、また青臭くて良い。やっぱ、斜に構えるようでありながらロマンを追っている、というのが高校生くらいの男の子ですよ。

 こちらも楽しく読めた。

 本書に手を出したのは、昔大好きだった『ザンヤルマの剣士』の著者だから。というわけで、懐かしくなって再読したのでそのレビューもおまけで。

ザンヤルマの剣士 (富士見ファンタジア文庫)ザンヤルマの剣士 (富士見ファンタジア文庫)
(1993/03)
麻生 俊平

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 気が昂って、死ねと思ってしまった相手が本当に死んでしまったら?それも、1度や2度ではなく。

 主人公、鵬翔学院高校2年生の矢神遼は、従兄弟の朝霞万里絵が10年ぶりに帰国して同じ学校に通うと告げられ、憂鬱で眠れなかった。人付き合いが苦手だから。授業中に寝不足が祟って頭痛を起こした矢神は保健室へ向かう。そこには密かに想いを寄せる、養護教諭の片桐朝子がいるので、少し楽しみだった矢神だが、セクハラ魔神の柴本教頭が朝子にちょっかいを出すのが不快で保健室を飛び出してしまう。柴本死んでしまえと思いながら。

 その帰り、奇妙な紳士から不思議な剣を受け取る。30cmほどの、波打つ形の鞘に収められた短剣は、物理的に抜けるとは思えない形だ。夜になって、剣を抜くようにしたところ、そこに1m程の長剣が現れる。あり得ない。あり得ないながらも鞘に収める動作をすると、鞘が再び現れ、剣は収められた。次の瞬間、意識が暗転する。気づけば幽体離脱状態となっていることに気づく矢神。

 気づけば朝だった。登校した矢神を待っていたのは、柴本教頭の訃報だった。しかも、噂では寝室で斬殺されたらしい。死体は鋭利な刃物でバラバラにされていた、という。

 呪った人間が、自分が貰ったばかりのものと関連のありそうな状況で死んでしまう。矢神は焦るが、どうすべきなのかも分からない。なにせ、自分が犯人なのかどうか、はっきりしたことすらわからないのだから。

 剣を受け取ったのをきっかけに日常がガラリと変わってしまった矢神は、再会した万里絵と事件の真相を探るべく、行動を開始する。

 内省的な矢神の揺れ動く心と、サバイバルスクールで学んだ万里絵の決断と行動力が光る。理由も分からないまま殺されそうになるハプニングも経ながら、彼らは何を見るのか―――。

 舞台が現代のファンタジー。魔法のような技術と、その結晶である剣は出てくるが、どちらかというと主人公の成長を描く物語だと思う。

 殺人があったり、因縁の戦いがあったりするわけだが、誰も絶対の正義を信じてなどいないところが良い。地に足のついた世界観も。超絶的に博識な高校生が出てくるわけじゃなく、皆が自分の限界を見つめながら、無力さに悩まされながら、なんとかしようともがく。

 当時主人公たちと同世代だったからこそ面白かったのではと思っていたが、ダブルスコアのおっさんになっても十分に楽しかった。ファンタジーが好きな方は、手に入りにくいだろうが、もし見かけたら、読んでみても良いと思いますです。
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SF・ファンタジー | 2012/12/25(火) 21:46 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1122冊目 地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」
(2007/12/07)
細谷 功

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評価:☆☆☆


 日本に電柱は何本あるか?いきなりそう聞かれて、答えを出せますか?

 Google先生に聞こうとつい別ページでブラウザを立ち上げてしまった人、あなたの行動はハズレです。この問題は、フェルミ推定として知られるもの。正解のない(あるいはすぐには正解の得られない)問いに対し、大雑把で良いので大外れしない答えを出そうというものだから。(ちなみに、約3300万本です)

 フェルミ推定は、20世紀の大物理学者、エンリコ・フェルミが得意とした演算。彼が良く問うたのは、シカゴにピアノ調律師は何人いるか?というものだった。シカゴの人口をa人として、b人に1人がピアノを持っているとする。ピアノ1台は1年に1回調律されるとして、1回あたりに掛かる調律の時間がc分とするし、調律師が1日8時間年間250日働くとすれば、答えは下の式で与えられる。

(a[人]÷b[人/台]×c[分])÷(8[時間/人/日]×60[分]×250[日])

 正確さを競うものではない。どれほど、妥当と思われる前提を考えられるかだ。

 こうした、推論によって答えを求めていく頭の働きを著者は地頭力と定義する。その定義に賛同するかは措いておくとして、正解の得られない、例えば新商品開発などには大きな威力を発揮するのはその通りだろうと思う。

 つまり、考え方のヒントとして、フェルミ推定は大いに役に立つ。ネットの検索エンジンにキーワードを放り込めば一瞬で知識は得られる昨今、考える力が必要だ、との主張も一理ある。

 知識(それも、主に無駄な知識ばかり)詰め込み型の私にも頷ける点は多くあった。しかし、検索に使うキーワードも、広い知識があって初めて力を発揮する面もある。知識と知識が脳内で結びついた時に、新たな発見があったりもする。そんなわけで、広い知識を持っておくのは、私は無駄ではないと思うわけです。自己弁護、乙であります。

 ともあれ、こうした技能があると無いとでは大違いなのも事実であろう。興味が湧いた方は読んで見ては如何だろうか。きっと、仕事や趣味に活用できると思う。


関連書籍:
広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス
(2004/06)
スティーヴン ウェッブ

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ノンフィクション | 2012/12/23(日) 22:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1121冊目 沈黙の壁―語られることのなかった医療ミスの実像

沈黙の壁―語られることのなかった医療ミスの実像沈黙の壁―語られることのなかった医療ミスの実像
(2005/09)
ローズマリー ギブソン、ジャナルダン・プラサド シン 他

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評価:☆☆☆☆


 『新たな疫病「医療過誤」』から引用から始めよう。

 インスティチュート・オブ・メディシン、アメリカ医学研究所による1999年の報告書は、医師ならとうの昔から知っている、「病院は危険なところでもある」という事実を明らかにした。この報告書では、アメリカでは医療過誤によって亡くなる人が毎年四万四千人から九万八千人にのぼることが強調された。(略)その後五年を経た今日の状況は、誰の目にも、どう贔屓目に見てもよくなっているとは到底映らない。
(p.23より)


 本書でも、同じ調査を元に、医療ミスで死亡する人の数を年間10万人と見積もっている。何故この引用の最大値を取るのか?それは、この数字が病院で起こっているものだけだからだ。つまり、医療ミスが起こった後、ケアセンターに放り込まれてそのまま亡くなるような方は、統計から漏れている。

 10年間で100万人が死ぬような産業が、他に許されるだろうか?

 著者たちは何度も何度もそう問いかける。なにせ、自動車事故とHIVによる事故と殺人の被害者を足してもまだ医療ミスの死の方が多いのを見れば当然だろう。

 事故が生まれる背景は、本当に些細な事だったりする。似た名前の患者の取り違え、指示書に書かれた文字が汚くて判別しづらい、桁の間違い、etc。インターンの過酷な状況(週80時間の勤務!)、看護師不足もまた事故の原因だ。

 ITの遅れには本当に驚いた。

 検索や照合は人間がやったら必ずミスが起こるが、コンピューターなら迅速かつ精確にできるのだから、これを活用しない手はない。そうすれば、人間は機械になどとても出来ない判断するという高度な活動に注力できる。投薬の指示などには絶大な力を発揮するのは間違いないと思う。それなのに、アメリカでは大病院ですらろくにIT化が行われていない。指示書が読み難いならと綺麗な字を書くために講師を雇って勉強会を開いたなんて聞くと空いた口が塞がらない。

 流石に、本書が記されたのは10年以上前のことなので、今では状況は違うのだろうが……。

 本書は、医療ミスが引き起こしてしまった悲惨な事故を幾つも取り上げ、システムとしてどこに欠陥があったのかに光を当てている。それによって問題の在り処をはっきりさせ、悲惨な事故を繰り返さないためのヒントが沢山得られていると思う。ミスを犯してしまったら、責任を認めて正直に被害者に詫びることも含め。なんと、それによって医療訴訟を起こされるリスクは半減するというのだし。

 ミスを防ごうと思う全ての人にとっては改善に向けたヒントが山ほど散りばめられた素晴らしい本になっていると感じた。悲劇を悲劇で終わらせないために、システムの改善を行う必要があろう。

 日本のことも気になる。和田移植を描いた『凍れる心臓』では、同僚を守るために和田移植は問題なかったとの見解を発表した医師の姿があった。日本の医療ミスにももっと光が当てられるべきだろう。その時、できれば犯人探しに堕さないようにして欲しい。それは事故を隠す動機になる上、再発防止にも繋がらないから。

 そういうのも、私の妻が、医療ミスに遭遇しているから。帝王切開で長女を産んだ際、出血が酷く、妻は看護師にそう訴えたのだが、術後はそんなものよ~と聞き流されていた。「余りにも血が出すぎるからおかしい」と夜になってまた訴えたところ、傷が塞がっておらず出血が続いていたのが判明したのだ。もし妻がなんでもないという看護師の言葉を信じて、術後の疲れで眠ってしまっていたら。最悪、妻は死んで居たかもしれない。そうなれば、妻の訴えなど無かったことにされて不可避の死とされてしまった可能性が高い。同様な医療ミスは、本書に沢山載っている。

 医療に携わる側も、お世話になる側も、十分に注意をしていかなければならないのだろう。ミスは必ず起こる。それを防ぐための障壁は、多ければ多いほど良いのだから。


関連書籍:
新たな疫病「医療過誤」新たな疫病「医療過誤」
(2007/03)
ロバート・M. ワクター、ケイヴェ・G. ショジャニア 他

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凍れる心臓凍れる心臓
(1998/04)
共同通信社社会部移植取材班

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ミスをしない人間はいない―ヒューマン・エラーの研究ミスをしない人間はいない―ヒューマン・エラーの研究
(2001/11)
芳賀 繁

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ノンフィクション | 2012/12/21(金) 22:36 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1120冊目 改善のススメ―戦争から学ぶ勝利の秘訣24条
改善のススメ―戦争から学ぶ勝利の秘訣24条 (新潮OH!文庫)改善のススメ―戦争から学ぶ勝利の秘訣24条 (新潮OH!文庫)
(2000/10)
三野 正洋

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評価:☆☆☆☆


 戦争、特に近代以降の戦争は、『戦争の科学―古代投石器からハイテク・軍事革命にいたる兵器と戦争の歴史』で見られる通り、極めて科学・技術・工学的なものである。エルナン・コルテスフランシスコ・ピサロらコンキスタドーレスと呼ばれた征服者たちがどれほど容易に南アメリカの文明を打ち破り、破壊したかを知れば、近代戦ではその重要性が欠くべからざるものであることは分かる。技術の差は、戦争の帰趨を決するのだ。

 本書は、第2次世界大戦において、各国がどのような改善を行ったか(あるいは行わなかったか)を明らかにすることで、改善・改革の重要さを説いている。

 革新的な技術としては、レーダーがある。『太平洋戦争 日本の敗因〈3〉電子兵器「カミカゼ」を制す』に詳しいのだが、日本はこの革新的な技術を、遂に決戦兵器であるとは認識できなかった。日本軍の開発する装備は、その殆どが武器に向かい、防御を固めようとはならなかった。防御兵器に頼るなどといった軟弱なことはできない。そんな精神論が大手を振ってまかり通っていたのだ。日本が負けた理由が良く分かる。

 一方で、戦闘機については様々な機体が開発された。かのゼロ戦を筆頭に、隼、疾風、雷電、紫電改エトセトラ。これは、実のところ褒められたところではない。制式化し、大量生産するのが良い。

 例として、10種の飛行機が各1機ずつある状況と1種の飛行機が10機ある状況を想定してみる。前者だと、メンテナンスようの治工具を10種類、予備品も10種類持たなければならない。ついでに、メカニックは10種類の飛行機に精通するか、メカニックも10人揃えなくちゃならない。当然、熟練には時間がかかる。1機が動かなくなったら、そのパイロットは慣れない機体で飛ばなければならない。後者なら、こうしたデメリットは無い。しかも量産効果でコストも下がる。

 自称愛国者が称揚して止まない特攻も、実は戦術的にはナンセンスだ。急降下爆撃に頼るから練度を上げて命中率を高める必要があった。しかし、度重なる出撃でベテランは次々と戦士、命中率が極端に下がった。苦肉の策で特攻となったが、そもそも練度の低いのを無理やり突っ込ませても、殆どは敵艦にたどり着くことすら出来なかった。

 それよりも、本書で紹介されているスキップボミングのような、熟練を要さずにかつ高い命中率を実現できる手法を、敵からでも学ぶべきだった。味方に「命が惜しいのか」等と恫喝する前に。生きる可能性があればこそ、モチベーションも上がって、戦果もまた得られたかもしれない。

 他にも寝不足のもたらす悪影響としてレイテ海戦が挙げられていたりと、戦史の興味深い話題が沢山ある。事実を楽しむのもよし、他山の石として活かすもよしで、読んでいて面白かった。特に開発畑の人にはヒントが沢山あるのではないだろうか。


関連書籍:
戦争の科学―古代投石器からハイテク・軍事革命にいたる兵器と戦争の歴史戦争の科学―古代投石器からハイテク・軍事革命にいたる兵器と戦争の歴史
(2003/08/09)
アーネスト・ヴォルクマン、茂木 健 他

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へんな兵器―びっくり仰天WW2戦争の道具 (光人社NF文庫)へんな兵器―びっくり仰天WW2戦争の道具 (光人社NF文庫)
(2009/12/30)
広田 厚司

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太平洋戦争 日本の敗因〈3〉電子兵器「カミカゼ」を制す (角川文庫)太平洋戦争 日本の敗因〈3〉電子兵器「カミカゼ」を制す (角川文庫)
(1995/07)
NHK取材班

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ノンフィクション | 2012/12/19(水) 21:47 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1119冊目 10月1日では遅すぎる

10月1日では遅すぎる (ハヤカワ文庫 SF 194)10月1日では遅すぎる (ハヤカワ文庫 SF 194)
(1976/05)
フレッド・ホイル

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評価:☆☆☆


 著者の名を見て、「おっ!」と思った方は、まず間違いなく天文ファンである。そう。かのビッグバン宇宙論の名付けの親、サー・フレッド・ホイルその人。ホイルと言えば、恒星内部の元素合成に多大な功績を残した人物だが、ビッグバン宇宙論を否定した(莫迦にする意図で発された言葉が由来)し、生物の化学進化も認めなかった。有能でありながら、いや、有能であるがゆえに、自説の正しさにこだわってしまったのだろう。

 さて、そのホイルはSF作家としても知られている。本書はその6作目の長編に当たる。

 作品の舞台は1966年。音楽家である主人公のリチャードは、ケンブリッジ時代からの友人、ジョン・シンクレアとイギリス北部へ旅行に出かけた時から、リチャードたちは奇妙な事件に巻き込まれることになる。

 その謎も解けないまま、太陽から信じられないほどの情報密度を持った通信が行わている証拠がはっきりする。ジョンに誘われるままにリチャードは科学者の会合に顔を出すことにしてハワイに向かうのだが、そこで世界が変転する。地球上の様々な場所に、様々な時代が顔を出しているのだ。

 核戦争後の世界のようにチリ一つなくガラス化したソ連。紀元前500年ほどのギリシア。一次大戦時のヨーロッパ。そして有史以前に見えるアメリカ。

 この奇妙な現象は何なのか。

 著者の時間に対する考えをおもいっきり詰め込んだハードSF。SFはやっぱり世界の作り込みですよね。その点がしっかりしてるのは物理学者たる著者の面目躍如たるものがある。謎が全て解けるのも魅力。SF好きなら、古い作品ではあるけれど、読んでみても良いと思う。
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SF・ファンタジー | 2012/12/17(月) 21:51 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1118冊目 匂える園

匂える園匂える園
(1994/11)
マホメッド・エル ネフザウィ

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評価:☆☆☆☆


 インドの『カーマ・スートラ』、中国の『房中教典』と並んで、世界三大性典と称されるのが本書、匂える園。多くの艶笑譚を収めている他、とても実用に向けたとは思えない体位の紹介、性器の異名や性医術と、将に性を広く扱った性典の名に恥じない傑作。

 称賛に値する男子は、女子に接するや、その持ち物は傍聴し、逞しく、荒々しく、固くなる。射精に至るまでの時間は長く、射精の後には、再びすぐに奮い立つものである。
 女性は閨事を通してしか男子を理解しないものであるから、そのような男子こそ、女性に愛され、尊敬されるのである。従って、男子たるもの、快楽を与えるためには、持ち物が大きく立派で、長くなければならない。(以下略)
(P.13)


 などと言われると、取り敢えずは謝らなくちゃ行けない気になる。何故かとは聞かないで下さい。しくしく。

 ともあれ、こうした枕の文章に艶笑譚が続く。千一夜物語のように趣向を凝らした千変万化の物語で、可笑しいやら楽しいやら。中で歌われる詩をちょっとだけ引用してみる。

 わが身の愚かさ故に、私は二人の女と結婚した。
 それなのに、何を嘆く。二人の女の亭主なのに?
 私は心で呟いた。「幸せなあの羊のように、二人の間を行き来するつもりが。
 二匹の雌羊を従えて、その乳房に触れて、はしゃぎまくるつもりが」
 いまや、二匹の雌ジャッカルの中にいる雌羊が、私だ。
 (中略)
 もしごく当たり前の生活を望むなら、何かに執着せず、
 何かを得ようとせず、独り身を通すことだ。
 それができなければ、一人の女だけ選ぶこと。
 何となれば、女は一人で、二個大隊を満足させることができるから。


 ハーレムも大変だなあ(笑)。この詩を詠んだ道化師が、総理大臣邸の美しい姫君との間で繰り広げる知恵比べ(間に肉弾戦を挟む)が面白い。

 男性器の呼び方は男性器だとかペニスという当たり前のものの間に、”一徹者”だとか”連れ込み屋”だとか”探検家”なんてものもある。笑ったのは”軟弱者”。ガンダムのカイさんですか(笑)。一方の女性器には、”粉砕機”だとか”深淵”だとか”諦観者”なんてものがある。人間の、類否の才能は本当に無限だなあ、と思う。

 性医学のコーナーは、今の常識から見れば怪しげなものが満載で、媚薬だとか回春剤といったものの需要は昔からあったのだなあとつくづく感じたものである。民間伝承なので本書を読んでも止めておいた方が良いと思う。試そうという人は居ないだろうけど。

 性を楽しいものとして、笑いのネタにしているところが良かった。日本語でも、歓びを交わす(交歓)という単語がある。性には間違いなくそうした側面がある。生物が子孫を残すための手段に過ぎないとしても、性行為に伴って快楽中枢を刺激するように進化してきたことに感謝を。そして、人間に笑いが進化してきたことにも。お陰でとても楽しかった。
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未分類 | 2012/12/15(土) 22:47 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1117冊目 戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか
戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)
(2009/10/16)
菊澤研宗

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評価:☆☆☆☆


 戦略のミスによる敗北は、伸るか反るかの勝負に出たばかりの敗北ばかりではない。合理的な推論を積み重ねたものであっても、見るも無残な、完膚なきまでの敗北を喫することがある。何故か。

 こう著者は指摘する。

 本書では、我々を取り巻く環境を「物理的世界」と「心理的世界」と「知性的世界」とに分け、それらに立体的なアプローチをしていくことが大切だ、と述べる。

 なぜそう言えるのか。まずは戦略論を追っている。孫子、クラウゼヴィッツ、リデル・ハート、そしてカール・ポパー。歴史に名を残す戦略思想家のエッセンスが、上記の立体的アプローチ、即ち立体的大戦略(キュービック・グランド・ストラテジー;CGS)である。

 ”特定の世界ではきわめて適合的な生存行動が他の世界では不適合となって淘汰されてしまうような事態を避けるためには、これら3つの世界の実在性を明確に認識し、それぞれの世界を対象として1つの直接アプローチと2つの間接アプローチを立体的に展開していく必要があります。”

 持論に持っていくまでの戦史が魅力的。ローマを一度は滅亡の淵にまで追い込んだハンニバル・バルカス、ヨーロッパを席巻したナポレオン、連合軍から砂漠の狐と恐れられたロンメル。

 こうやって見てくると、実は不合理と知れ渡っている日本軍の戦略も、精神力という心理的世界ただ1つのアプローチに特化してしまったがために失敗したのであって、決して合理性の欠片も無かったわけではない、ということになる。

 私としては、心理だの知性だのといった高次の活動は物理的世界、即ち物質的な裏づけがあって始めて成り立ちうる(倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る、という奴)ものであり、拠って経つ基盤を無視した日本軍は愚かであると思うが。

 ともあれ、戦いにも企業戦略にも等しく戦略が重要であることは分かるし、多元的なアプローチが必須であることもすんなり理解できる。歴史として読んでも、ビジネス書として読んでも面白いと思う。



関連書籍:
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
(1991/08)
戸部 良一、寺本 義也 他

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戦略の本質 (日経ビジネス人文庫)戦略の本質 (日経ビジネス人文庫)
(2008/07/29)
野中 郁次郎、戸部 良一 他

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アレクサンドロス大王 その戦略と戦術アレクサンドロス大王 その戦略と戦術
(2004/01/26)
パーサ・ボース

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その他歴史 | 2012/12/13(木) 21:42 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1116冊目 「失敗学」事件簿 あの失敗から何を学ぶか
「失敗学」事件簿 あの失敗から何を学ぶか (小学館文庫)「失敗学」事件簿 あの失敗から何を学ぶか (小学館文庫)
(2007/06/06)
畑村 洋太郎

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評価:☆☆☆☆☆


 事故や事件が起きるたび、犯人探しが行われ、どのようなミスがあったのかが明らかにされる。歴史に残る大事故、例えばチェルノブイリやスリーマイル島の原発事故、日航機123便の墜落事故等にも少なからぬミスがあったことが知られている。

 しかし、ミスを明らかにして注意を呼びかけるだけでは、次のミスを防ぐことは出来ない。ミスが発生しないような仕組みがなければ。失敗は失敗として受け止め、そこから教訓を引き出してやろう、というのが本書のタイトルになっている「失敗学」の目指すところだ。

 本書が取り上げている事件は数多い。その一部には、JR福知山線脱線事故、三菱自動車クレーム隠し、スペースシャトルコロンビア・チャレンジャー事故、韓国の地下鉄大火災、SARS騒動、六本木ヒルズの回転ドア事件がある。どれも世間を騒がせたものだ。

 事故を防ぐためには、個人の注意に頼ってもダメだ。巨大システムには大勢の人が絡むもので、ミスが忍び寄る予知が有り余るほどある。それを防ぐには、システムの改善が必要なのだ。本書にそのヒントは沢山ある。技術に関わる人には、自分の仕事がどんな影響を与えうるのか考える良いチャンスにもなるので、是非とも読んで欲しい。私も何かできることがあるか、今一度見なおしてみようと思った。



関連書籍:
失敗学のすすめ失敗学のすすめ
(2000/11/20)
畑村 洋太郎

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技術 | 2012/12/11(火) 22:00 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1115冊目 歴史の教訓―アメリカ外交はどう作られたか
歴史の教訓―アメリカ外交はどう作られたか (岩波現代文庫)歴史の教訓―アメリカ外交はどう作られたか (岩波現代文庫)
(2004/04/16)
アーネスト・R. メイ

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評価:☆☆☆


 西ドイツの大統領だったヴァイツゼッカーは演説で「過去に目をつむる者は、現在も盲目であり、未来も同じ過ちを犯すだろう」と述べた。一方でヘーゲルは「人間が歴史を学んで分かることは、人間は歴史から何も学ばないということだけだ」と言ったという。

 では、過去から人はどれくらい学べるものなのか。アメリカ外交が作られるにあたって、外交政策を組み立てる人々がどのような過去の事例を参考にしていたかを説いているのが本書。

 本書を読めば、人々は確かに過去に学んでいた。2次大戦の時には1次大戦の、朝鮮戦争の時には2次大戦の、ベトナム戦争の時には朝鮮戦争が影響を与えていた、と著者は指摘する。いずれもすぐ前の戦争であり、戦争を体験した人々が自分の経験に依拠していたことが分かる。これでは歴史に学んでいると胸を張る訳にはいかないだろう。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」なる箴言を思い返してしまう。

 結局、歴史を学ぶといっても、直近の過去ほど大きな影響を与えてしまうのは避けられないのだろうか。

 一方で、情報機関は歴史にも基づいた確度の高い情報を持っていたそうだ。例えば、ベトナム戦争では諜報機関から上がる情報は常に悲観的だった。政治という日々の変化への対応に追いまくられることに携わる人には、膨大な情報を集めて過去を再構築するような時間はないだろうから、専門の部局がないと行けないのかもしれないと思った。

 後半、歴史家はどうすれば未来を予想することができるかについては、長々と書いてあるが、乱暴にまとめてしまえば、考えるべきことは一杯あって確実な未来予想なんてできないよ、といったところ。別に教えてもらわないと分からないようなことでもあるまい。

 最初の訳が出たのが1977年と古いが、30年を経てもまだ役立つところはありそう。政策や戦略に興味が有る方は読んでみても良いかもしれない。
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ノンフィクション | 2012/12/09(日) 20:36 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1114冊目 イラスト図解ニュースの地図帳―なぜ「そこで」おきるのか

イラスト図解ニュースの地図帳―なぜ「そこで」おきるのか (PEARL BOOK)イラスト図解ニュースの地図帳―なぜ「そこで」おきるのか (PEARL BOOK)
(2002/12)
池上 彰

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評価:☆☆☆☆


 ノンフィクションで、しかも世界の今の姿を描くというコンセプトのノンフィクションで10年前というのはちと古い。だが、古いから役に立たないとも言い切れないだろう。どんどん変わっていくこともあれば、変わらないこともあるから。

 本書はニュースに取り上げられることの多い地域の地図と、何が問題になっているのかを簡潔に記した解説文から成っている。章ごとの内容は下記の通り。

1.世界の紛争・戦争
2.国際政治・軍事
3.国際経済・金融
4.世界の文化・社会・生活
5.大逆転の世界地図
6.ニュース発信の主要都市

 ニュースの殆どをカバーする豪華ラインナップである。まだイラク侵攻も起きていない頃の本なので、古さは感じるが、4.世界の文化・社会・生活などは特に大きな変化があるわけでもないことを考えれば、まだまだ役に立つことが多そうだ。

 最大のメリットは、やはり地図があるとイメージが沸くこと。国際関係は相互の距離を無視しては成り立たないので、こうやって地図を見ながら文章を読めるのは貴重な経験だ。

 地図にかなりの割合を割いているので、事実の掘り下げとしては物足りない点があるにはあるが、入門書としては極めて優れた本と感じる。やっぱり、分かりやすい入門書が無くてはいけないから。そうした点で、本書の価値はまだまだ高そうだ。
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ノンフィクション | 2012/12/06(木) 22:53 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1113冊目 三国志の世界

中国の歴史04 三国志の世界(後漢 三国時代)中国の歴史04 三国志の世界(後漢 三国時代)
(2005/01/15)
金文京

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評価:☆☆☆☆


 後漢の中盤において若死する皇帝が相次いでしまったため、その末期は皇帝権力が形骸化、外戚と宦官と士大夫が権力を争うこととなる。

 このうち、まず権力を握ったのは外戚。特に梁冀という人物は、自分を跋扈将軍と呼んだ皇帝(質帝)を暗殺する等、天下を我が物とした。梁冀を排除するのに皇帝(桓帝)が頼ったのは、宦官。この時の功績で、今度は宦官が権力を一手に握ることになる。外戚が消えているので、対抗するのは士大夫階級、つまりは知識人である。と言っても、皇帝のベッドを管理する宦官の強さは伊達ではない。自分たちに歯向かう知識人たちを派手に弾圧してしまうのである。この弾圧事件を党錮の禁と呼ぶ。

 支配階級が権力争いにのみ汲々とするところに、寒冷化が襲う。もともと不安を抱えていた社会には、一気に不満が蓄積する。

 これが三国前夜の状態。この一触即発の時期に黄巾賊の叛乱が勃発、王朝崩壊への最後の一押しとなるのだ。あとはご存知、曹操、劉備、孫堅らが縦横に活躍する三国志の時代へと雪崩れ込んでいくことになる。

 本書は正史に基づいて、三国志までの流れと、三国鼎立から蜀、魏、呉の滅亡までを大まかに眺めることに加え、歴史の流れにおいて、三国時代とはどのような時代であったのかを解説してる。

 このうち、多くの読者に興味がある、英雄たちの活躍については、本書はあまり細かく触れては居ない。歴史の中に位置づける目的を果たすために必要なことと、三国志演義との違いは解説されてはいるのではあるが、少なくとも三国志演義を一通り知っていないことには分かりづらいのではなかろうか。

 しかし、演義を読んで正史へ一歩踏み出したい、という方には心強い味方になる。

 三国志は戦争の時代だけではない。後の中国文化に大きな影響を与えた時代でもある。有名なのは詩。それまでは不定形だったものが、五言あるいは七言へと系統だてられていくのは、曹操、曹丕、曹植の三曹。他にも宗教としては仏教が本格的に中国へ入ってくる。また、後々まで大きな影響を与える五斗米道もこの時代だ。劉備が蜀に入るにあたって口実としたのは五斗米道のリーダー張魯を討つためだったことをご存じの方も多かろう。

 国際関係も大きく変わらざるを得なかった。主に魏と呉が窓口となって、他国との遣り取りがあった。そのうち1つが邪馬台国の卑弥呼の話しであり、本書でもかなり詳しく解説されている。

 本書を読めば三国志以降の分裂の時代がどうして出来したかが分かりやすいのは利点。小説やマンガで英雄たちを追いかけるだけではもったいない!奥深い世界への水先案内人として向いていると思う。


関連書籍:

西晉の武帝 司馬炎 (中国歴史人物選)西晉の武帝 司馬炎 (中国歴史人物選)
(1995/05)
福原 啓郎

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三国志―演義から正史、そして史実へ (中公新書)三国志―演義から正史、そして史実へ (中公新書)
(2011/03)
渡邉 義浩

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もう一つの『三國志』  ―「演義が語らない異民族との戦い―もう一つの『三國志』 ―「演義が語らない異民族との戦い―
(2007/08/12)
坂口 和澄

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中国史 | 2012/12/04(火) 22:50 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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1112冊目 左翼はどこへ行ったのか
左翼はどこへ行ったのか (宝島SUGOI文庫)左翼はどこへ行ったのか (宝島SUGOI文庫)
(2009/03/05)
別冊宝島編集部

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評価:☆☆☆☆


 ワーキングプアやブラック企業のような言葉に示される、若者が幾ら働いても暮らしていくのに十分な賃金が与えられない、あるいは長時間の労働。これらは、社会的に大きな問題だし、是正が不要だと思う人など居ないだろう。

 しかし、これらの圧倒的な不平等を解消しようとする社会運動は、広がりを見せない。平等を希求する、極端に言ってしまえば左翼的な言説が力を持っていないのだ。

 左翼という響きが人々の警戒心を呼び覚ますようになったのは、幾つかの歴史の流れが原因であろう。1つは、ソ連と東欧の社会体制の崩壊や、今では明らかになっている中国や北朝鮮の抑圧的な体勢と、共産主義を標榜した国々で権力に引き起こされた大量殺戮。そしてもう1つは、連合赤軍が引き起こした悲惨な事件、そして中核派と革マル派との凄惨な内ゲバ。

 これらの事件が左翼への強烈な反発を生んだのは間違いない。問題は、同時に左派的な主張まで、特に根拠もなく信頼を失ったことだ。弱者の言い分を取り上げようとする政治勢力は、事実上力を持っていない。

 そして、革命という手法が魅力を失ったことも大きい。こちらにも要因が2つあり、1つは日本社会が豊かになってきて、絶対的貧困層が減ったこと。もう1つは、社会人口学的なもので、少子化が進んだ結果、好戦的なユースバルジが萎んだこと(『自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来』が詳しいので、是非読んでみて欲しい)。

 左翼・右翼というレッテル貼りは古いし、そんな単一の切り口で人を判断することもできなくなっていることを加えてもよいだろう。実際、本書でも全学連のリーダーが自分を左翼だとは思わないと理由をつけて述べているところからも明らかだ。

 本書は、かつて一大勢力でもあった左翼はいったいどこへ消えてしまったのかを、今尚左派的な主張を唱える人々へのインタビューを中心に探ろうとしている。インタビューを受けているのが幾つかの極左系組織のリーダーだったり、沖縄で基地問題を訴える人々、あるいはノンキャリア組ながらソ連崩壊時にインテリジェントで大活躍した佐藤優さんだったりと、実に豪華。

 項ごとに全然レベルが違う。未だにこんな莫迦なこと言ってんのかよ、と嘆きたくなるものもあれば、その真剣な言葉に耳を傾けなければならないと思うこともある。過去のレビューでも散々書いてきた通り、私は世界で1億人を殺した最悪の思想である共産主義を奉じるなんて御免被るし、革命だって起こされては困る。

 それでも、こうした場があることは評価されて良い。社会に深みを与えるのは、多様な意見が正しさを競うことのみだと思うからだ。レッテル貼りによる議論の拒絶や、異がなる思想の持ち主の排除が生むのは全体主義社会でしか無い。右の全体主義も左の全体主義も20世紀を不幸な世紀にしてしまったではないか。

 思想的な立場は超え、読んで損はないと思う。特に、佐藤優さんの論文と、沖縄からの声は読み応えがあった。おかしいことを言っていると思われる章があれば、なぜそれをおかしいと思うのかを筋道建てて考えれば、論理的思考の訓練にもなる。そんなわけで、怖いもの見たさで手に取ったにしては、予想外に色々と考えさせられた。社会問題を捉え直す良い機会になったことに、素直に感謝したい。
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ノンフィクション | 2012/12/02(日) 19:40 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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