生きもの上陸大作戦 (PHPサイエンス・ワールド新書) (2010/07/21) 中村 桂子、板橋 涼子 他 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
生命は海で誕生した。遥かな太古、地球上には強烈な紫外線が降り注いでいたため、陸上や、海の表層では生命が誕生し得なかったためだ。
こうして誕生した生命は活動範囲を海中に留めることはなかった。見てのとおり、地上においても生物は活動の場を見出している。だが、そのためには、生物は上陸を遂げる必要があった。長い時間の果てに、まず植物が、続いて節足動物が、そして魚類が、それぞれ独立に上陸を果たすことになる。
彼らがどのような戦略で上陸に挑んだか。DNAの分析など、最新の科学が明らかにするその大まかな道筋は、生物がどれほど適応力に優れているのかを示している。期が熟したとなるや、すぐに生命圏は拡大していく。
進化はランダムウォークでしかありえないのに、前適応という形で上陸に向けた準備が着々と進められていたように見えるのは、生物の不思議さを物語るようで面白い。例えば、魚が陸に上がるために必要なものは何か。それは、陸上でも動けるための手足であるが、これが上陸より遥かに先立って生まれている。その結果、陸に上がれるようになるとすぐに魚は陸に上がり、やがて両生類、爬虫類、哺乳類を生み出すことになるのだ。
大雑把に流れを見ることで、進化の凄みが分かりやすく紹介されている。加えて、生命の進化に絶大な影響を与えた全球凍結”スノーボール・アース”や、5回あったことが知られる大絶滅にも触れることで、生命の強さと今も地球に生命が溢れている不思議に接することができると思う。上陸作戦を通して生物の魅力を描き出すことに成功している優れた新書である。
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不完全犯罪ファイル (2000/09/04) コリン エヴァンス 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
この100年における犯罪捜査の進化は目を見張るものがある。それ故、かつてなら完全犯罪になったであろう事件が、犯行の経緯や凶器等を詳細に突き止められるようになり、それによって犯人を捕まえることができるようになっている。
本書には、完全犯罪になりかけた事件を科学捜査が見事に解決に導いた100ものケースが集められている。
銃の線条痕、指紋、声紋、DNA、繊維、法医学、etc。これらの技術が、どのような事件で使われ、どうやって犯人を追い詰めたのか。事件が痛ましく。読者の憤りを誘うたび、それが見事に解決されていくのに救われる。なにせ、科学技術が駆使されるのは、殺人を中心にした凶悪犯罪だから。
科学捜査技術の進歩の記録のため、今となっては古い事件、古い技術のように思われるものもある。しかし、科学捜査が長足の進歩を遂げた今でも指紋や線条痕等の捜査は基本として行われるものであり、それらがどうのように地歩を築いてきたのかを知るのにはうってつけだと思う。科学捜査が好きな方だけではなく、推理小説ファンにもお勧めしたい。
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脳を支配する前頭葉 (ブルーバックス) (2007/12/21) エルコノン・ゴールドバーグ 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
脳が意識の宿る座、つまりは活動の全てをコントロールするところであるということは、もう疑う余地はない。しかし、脳の中ではどこが意識を生み出しているのか、というのには、まだまだ謎が残されている。
著者はソ連生まれのユダヤ人で、まだ共産党の一党独裁が続いていた頃にアメリカへ亡命した科学者である。本書の冒頭では、その時の模様が綴られているが、それはスパイ小説さながらの脱出行で、思わず手に汗を握りそうになる。
アメリカに渡ってからは、一転して脳の研究に従事することになる。脳が様々な機能がモジュール的に持つ役割を分担しているとの説に対し、著者らは完全なモジュール型にはなっていないとして勾配説を唱える。
また、脳の中核的な役割を果たしているのは前頭葉であることは多くの証拠から明らかになっているが、著者らは前頭葉に目立った損傷が無くとも、あたかも前頭葉に傷を負ったのと同様な現象が起こることを発見、前頭葉と他を結ぶ経路の重要差を説くなど、脳の不思議さを余すところ無く描き出している。
脳にはまだまだ分かっていないことが多いと改めて感じさせてくれる。そして、脳の研究からは、今後も驚くような知見が続出するであろうことも。ブルーバックスらしく、科学の面白さを上手く伝える、バランスの良い本に仕上がっていると思う。
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捏造された聖書 (2006/05) バート・D. アーマン 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
まずタイトルを見て驚く人が多いのではないか。捏造された聖書?一体どういうことだ?
聖書に書かれていることは神の言葉であり、一言一句たりとも誤りは存在しない。そう信じるファンダメンタリスト(キリスト教原理主義者)は憤慨するかもしれない、聖書の研究者の間では、聖書には多くの矛盾が存在し、数え切れないほどの変更が加えられてきたことが明らかになっている。
その少なからずは、古代において本を複製する時の問題である。印刷術など存在しなかった時代、本を複製するには一字一字、全ての文字を書き写していかなければならない。そうなると、単純なスペルミスが生じる。書き写す行をすっ飛ばしてしまうこともある。内容が同じであれば構わないとばかりに、より単純な文章に改変されたり、語句が省略されたりもする。
上記のことは、しかしまだ可愛いものだ。より深刻になると、意図的に内容が書き換えられ、書き加えられ、そして削除されることになる。それは、神学的な理由だったり、書記の立場だったりする。例えば、イエスは磔にされるにあたり、動揺して神に助けを求めたのが真相のようだが、ルカは静謐に死に挑むようにその姿を書き換えている。ルカが残そうとしたのは明らかに、客観的な事実ではなく、彼が信じたイエスの姿であり、その後のキリスト教徒たちの範となるべき(とルカが考えた)イエスの姿だった。
著者だけではない。聖書を写す中で後代に書き加えられたエピソードとして、姦通の現場を押さえられ、イエスの元に引き立てられた女性の話が挙げられる、というのには驚いた。キリスト教徒ならずとも知っている、とても有名な話だ。
掻い摘んで書けば、律法では石打の刑で殺されることになっている女性を、イエスが「あなたがたの中で罪を犯したことが無いものが石を投げなさい」と言ったところ、一人二人と人々は去り、イエスと女性だけが残された。イエスはただ一人残った女性の罪を許す、といったという。イエスの慈悲を表す、大変有名なこの話が、捏造された話とは。
では、オリジナルの聖書、著者が書いたままの聖書にめぐり合うことはできるのだろうか。それは、不可能である。現在の我々が手に入れられるのは、複製の複製の複製の……と、意図の有無には関わらず改竄に改竄を重ねたものしかない。
本書では、なぜこれらの問題が起こるのかを丁寧に説明している。そしてオリジナルの文書の姿を探る幾つかの方法を説明した上で、最後に著者はこう述べる。
(略)新約聖書の著者たちだって、後代にそれを伝えた書記たちと同じだと考えるようになった。著者たちだってやはり人間であり、自分なりの欲求、信仰、世界観、意見、愛と憎しみ、熱望、欲望、立場、問題などを抱えている―――そして間違いなく、それは彼らが書く内容に影響を及ぼしている。(略)すべての著者が、自分の受け継いだ伝統を異なる言語で後代に伝えているということが判る。
(P.268 強調は原著者による)
古代に著された本の全てに言えることだが、聖書も、人間の営みの結果として伝えられた以上、こうしたことが起こるのは避けられないことなのだろう。聖書にいくつもの過ちがあるということを一般人に分かり易く説明してる本は、実に珍しいと思う。そうした点で、本書は大変な価値を持つと思う。何といっても、聖書は世界で一番多く刷られた本なのだから。
本の来歴を探る、という異色の歴史書になっていると思った。
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「無駄な抵抗はよせ」はよせ (WAC BUNKO) (2009/06/19) 日垣 隆 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
徹底した取材で定評のある著者が10年以上続けているTBSラジオ「サイエンス・サイトーク」。その模様については過去にも書籍化されている。
以前のものでは、対談相手として各分野の先駆者といった立場の方がいらっしゃっていたが、ネタ切れなのか方向転換なのか、本書では経験者の話を聞く、というパターンも増えている。
第一話 脳の再生に記者が挑む
第二話 ジャンボ機長の健康管理
第三話 よく眠るための科学
第四話 誰でも足が速くなる
第五話 ストレスと人間のつきあい
第六話 無駄な不安を抱えない
第七話 元気になるトレーニング
第八話 究極のダイエット
このうち、よく眠るための科学の井上昌次郎さんや誰でも足が速くなるというスポーツ科学の小林寛道さんは各界の第一人者と言える。特に小林さんは、2003年世界陸上で短距離で銅メダルを取った末次慎吾選手の育成にも携わったことで陸上スポーツのファンには広く知られているだろう。というか、多分知られていると思う。私は知らなかったが。。。
こうした第一人者との対談で、著者のインタビュアーとしてのセンスは実に生きている。読者が知りたいと思うことを過不足無く聞き出すその腕は、綿密な事前調査に基づいているのだろう。どの対談も面白い。
特に、個人でも簡単にできることにも焦点が当てられているのがうれしい。機長の体調管理として老眼を克服したときのトレーニング方法を聞き出したり、誰でも足が速くなるとしてなんば走り(右手と右足が同時に出るような動き)が有効という意外な話を紹介したり。
意外な話を引き出す、というのが本シリーズの面白さを醸し出している。過去、このブログでも『いのちを守る安全学』と『常識はウソだらけ』を紹介しているが、まだまだ興味は尽きないので、今後も機会があれば読んでいこうと思う。
関連書籍:
サイエンス・サイトーク いのちを守る安全学 (新潮OH!文庫) (2001/03) 日垣 隆広井 脩 商品詳細を見る |
常識はウソだらけ (WAC BUNKO 73) (2007/10) 日垣 隆 商品詳細を見る |
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四字熟語で愉しむ中国史 (PHP新書) (2010/07/16) 塚本 青史 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
中国の歴史書や詩からは多くの故事成語が生まれ、今も生きている。四面楚歌、五里霧中、鼓腹撃壌、etc,...
私としては、やはり古代の故事から生まれた四字熟語が好き。具体的には、史記に描かれる時代だ。三国志も面白いが、四字熟語としてはあまりネタが無い。
なぜ史記の四字熟語が面白いのかというと、史記が司馬遷の強烈な主観の下に生まれたといういきさつがあるのではないか。例えば、刺客列伝は文字通り暗殺者を書いたものだが、そこに登場するのは凶悪なテロリストといったイメージではなく、魅力を備えた任侠といった風だ。
その刺客の一人が、友人といるときには実に感情を豊かに表し、まるで傍らに人がいないかのごとくだった、という。その模様を、傍若無人(傍らに人の無きが若し)といった。
漢の功臣、韓信は国に並ぶ者無き勇者と讃えられた。それが、国士無双。呉と越が争った時代からは、呉越同舟や臥薪嘗胆といった、今に至るも生きた諺が生まれている。
こうした故事成語が生まれた背景と元々の意味を大まかに解説してくれている。一つ一つの時代や四字熟語に深入りしているわけではなく、古代から現代に至るまでを通しているため、中国史の流れを概観できるというのが利点。また、魅力的な四字熟語が広く集められているのも魅力である。
四字熟語を楽しみながら学べる、とてもうれしい一冊。
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共感する女脳、システム化する男脳 (2005/04/28) サイモン・バロン=コーエン 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
男と女では脳の作りが違う。それ故、行動や性格、能力も異なる。そうした、脳科学から見たら当然のことが広く知られるようになってきた。ただ、その違いを表現するのは難しい。男女の特性は完全に被らないわけでは無く、そこにあるのは程度の違いでしかないのだから。
本書が安心できるのは、違いを違いとして指摘しながら、その違いは個人の性格を説明することに用いることはできない、と明言しているところ。
例えば、平均すると男は女より背が高いが、特定の男と特定の女の組み合わせでは女の方が背が高いことなど幾らでもある。それと同じように、性格や能力で男女に違いがあるとしても、それは特定の個人を性別から判断できる、ということにはならない。
この手の、男女の違いは先天的な脳の違いにある、という本は『話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く』あたりから多く見るようになったと思う。本書が類書と異なるのは、この違いについて、かなり冷静なところ。男と女があたかも別の生物であるかのような扱いをすることはなく、バラツキの程度であることをくどいほどに述べている。
男女に差があっても、その傾向は個人を説明できないのであれば、例えば男は(女は)××という生き方をすべきだとか、○○という職業には向いていない、などといった決め付けは誤っていることになる。男女の能力差を指摘する人々が陥りがちな罠に嵌っていないのが良い。
その上で、男と女では、統計的に違いがあり、さらに自閉症は男の特徴を更に高めたものだ、ということが示されている。この結論に賛同するかどうかは意見が分かれるかもしれないが、この傾向は自閉症などの精神疾患が男性に偏って発症することの説明にもなっており、今後も注意を払う価値があるように思う。
かなり専門的なことまで素人にわかりやすく説明してくれているのもうれしい。脳の研究に、更に興味が沸いた。
関連書籍:
話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く (2002/09/01) アラン ピーズバーバラ ピーズ 商品詳細を見る |
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このブログも、実に色々な本を紹介してきたし、色々なネタを取り上げてきたので、そりゃあもう実に色々なキーワードで辿り着く人が居ます。
アクセス解析を始めて暫くは、どういう訳か収容所群島で辿り着く人が多くて訝しい思いをしたものだったのですが、最近はどうでしょうか。
というわけで、まずはベスト5。
1 無秩序と混沌の趣味がモロバレ書評集
2 地政学入門
3 人間の本性を考える
4 恐るべき旅路
4 私は障害者向けのデリヘル嬢
何とも意外。このブログの(旧)タイトルが一位。2,3位も、過去そんなに順位が高かった項目じゃなかったのだけど。『恐るべき旅路 新版―火星探査機「のぞみ」のたどった12年』は、はやぶさ帰還から急上昇のキーワード。
youtubeではこんな映像もあったりするので、はやぶさファンの方はどうぞ。
で、ベスト5よりも1件だけのキーワードの方が面白かったりする。
1型糖尿病 SEXできるか
ええと、できると思いますですよ。
nana通信 写真
一昔前、ムーによく成写真かCGによる突飛な画像がnana通信からという触れ込みで載っていた。あれを探すとは、中々の兵とお見受けいたしますです。
セーラー服で縛り
な、な、な、なにか良いネタがあったらおしえてくださいっ!!!
・・・・・・それにしても、業の深いヒトと見た。
悲劇の皇子ベストテン
世の中には想像も付かないランキングがあるものです。
世界史 ホモの人物 サイト
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
がんがってください。
こんなキーワードでいらした方も、折角の縁、今後ともよろしくお願いします。
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収容所群島 1―1918-1956文学的考察 (新潮文庫 ソ 2-7) (1975/02) アレクサンドル・ソルジェニーツィン 商品詳細を見る |
恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年― (2005/05/21) 松浦 晋也 商品詳細を見る |
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知識の灯台―古代アレクサンドリア図書館の物語 (2003/03) デレク フラワー 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
今もしばしば畏敬の念を込めて語られる歴史の一コマが、アレクサンドリア図書館である。古代にあって、膨大な書物を蓄えた知の中心地であるだけでなく、綺羅星の如く輝く秀才たちを輩出したことで、その名は伝説の域にまで達している。
この図書館を建てたのは、アレクサンドロスの部将の一人であり、プトレマイオス朝を興したプトレマイオス一世。彼から3代に渡り文化を保護する王が続いたことで、図書館は発展を遂げる。その名声は、幾たびかの混乱を越え、イスラムによって破壊されるまで続いた。
本書は、このアレクサンドリア図書館の成立から崩壊まで、そして図書館を蘇らせた現在の取り組みまで、図書館にまつわる主なトピックを網羅した、大変マニアックな歴史書となっている。
建設に至るまでの歴史や、プトレマイオス朝滅亡に至る、カエサルとクレオパトラの時代も面白いのだが、なんと言っても図書館で知識の灯台として活躍した人々の素顔が興味深い。
エウクレイデス(ユークリッド)を筆頭に、天動説を打ち立てたプトレマイオス(結果的には誤っていたが、天体の運動を説明する理論を確立した)、医学者ガレノス、地球の大きさを見積もったことでも知られる万能の天才エラトステネス(詩人、哲学者、文献学者、数学者、天文学者、物理学者、地理学者、文芸評論家、文法学者、発明家)、そして誰もがその名を知る偉大なるアルキメデス、etc。
成し遂げられたことの多さにクラクラさせられる。本書を読めば、図書館を再建しようとの試みに、エールを送りたくなる。新たな知の殿堂が何を成し遂げられるか、今の段階では分からないが、後世に高く評価される礎となることを願いたい。
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先生、カエルが脱皮してその皮を食べています! (2010/04/17) 小林朋道 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
鳥取環境大学で生物を教える著者が、高校教員時代から現在に至るまでの発見を子供時代の思い出と共に語っているエッセイ。
タイトルにもなっているカエルが自分の脱皮した皮を食べてしまうところを目撃した話、浜辺で見られる動物たちの奇妙な生態、飼育することになったヤギが見せた驚異の行動、傷を負ったカラスを飼うことになった顛末等、生物の魅力を大いに語ってくれている。
本書を読めば、身近な動物のことですら、まだまだ分かっていないことが多いのだということと、その彼らの振る舞いが実に知恵を感じさせてくれる、ということ。蛇に睨まれたカエルや、捕食者に狙われた鳥の反撃方法なんて、弱肉強食しか教えない教科書とは全然違う楽しさに満ちている。
私もご幼少のミギリには大層動物が好きだった身として、生物は本当に面白いな、と思いながら読んだ。動物の生態を語りながらも専門に深入りしない見事な匙加減で、読み物としてとても面白いものになっている。
一方で、生物の謎をまとめて解き明かすというには随分距離があり、軽妙な文章を楽しむという趣が強い。生物の専門教育を受けていない人(これから進路を決めようという学生を含む)が、生物に興味を持つようになるにはとても良い本だと思う。
生物の本をもっと読みたい気にさせてくれた。尚、本書を読んで楽しかった方は、著者は同じ傾向の本を何冊か著しているようなので、楽しみはまだまだありそうですよ。
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