カレンダー
03 | 2010/04 | 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

Skywriter

Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


宣伝目的以外のあらゆるコメント、TBを歓迎します。

↓ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してください。


にほんブログ村 本ブログへ


kids goo弾かれサイトですので閲覧はご注意を。頭が悪いのが伝染する恐れがあります。
notforkids.jpg

FC2カウンター
最近の記事
Tree-Arcive
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
巡回先

にほんブログ村 本ブログへ



うちの子も元捨て犬です。今はすっかり我が家の一員。甘えるのは下手だけどとっても可愛い子です。

Skywriterさんの読書メーター

ブロとも申請フォーム
ブロとも一覧
ブログ内検索
RSSフィード
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 | --/--/--(--) --:-- | |

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

814冊目 半眼訥訥
半眼訥訥 (文春文庫)半眼訥訥 (文春文庫)
(2003/02)
高村 薫

商品詳細を見る


評価:☆☆☆


 深く掘り下げられた世界を書くことで定評のある、高村薫さんが新聞を始めとする多くの媒体で書いてきた文章を集めた本。評論もあれば、ルポもあれば、ジャーナリスティックなものもある。

 が、いずれも著者が得意とする長文にはなりえないためだろうか、いつもの雰囲気が感じられなかった。作品に表れるのは濃密な世界であったり、人々が苦しみながらも生きる姿であったりするので当然だろう。

 驚いたのは、かなり紋切り型だったり、無茶と感じられたりする文章が散見されたこと。例えば、子供が虐待死した痛ましいニュースを前に、子供は大事にされていないのではないか、と問題提起するところがある。

 しかし、乳幼児が親に殺されてしまうことは今の時代に特有なものではないし、日本でだけ見られるものではない。時代も場所も超越して、人類社会に普遍的に見られるものだ。だが、その一方で愛され大切に育てられる子供も大勢いる。悲惨な事件に至るのを社会が食い止められなかったことは一つの反省材料にはなり得ても、社会から根絶できるとは思わないほうが良いものだと思う。

 これら犯罪は、根絶されるべきものであったとしても、べき論では人々は動いていないからだ。

 ただ、ファンとしては、強烈な個性ではないとしてもしっかり印象に残るキャラクターがどうやって生まれてきたか、著者が街をどのように作り上げてきたのか、それを知ることができるのが嬉しかった。

 女性の影が薄い理由や、普通の家庭を営むキャラクターが少ない理由についての著者自身の言葉で、著者の描く世界の一端を、少し理解できたような気になった。

関連図書:
黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)
(1994/01)
高村 薫

商品詳細を見る


マークスの山(上) 講談社文庫マークスの山(上) 講談社文庫
(2003/01/25)
高村 薫

商品詳細を見る


マークスの山(下) 講談社文庫マークスの山(下) 講談社文庫
(2003/01/25)
高村 薫

商品詳細を見る

関連記事
スポンサーサイト
未分類 | 2010/04/29(木) 23:56 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

813冊目 夏のロケット
夏のロケット (文春文庫)夏のロケット (文春文庫)
(2002/05)
川端 裕人

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆☆


 新聞社の科学部の記者である主人公・高野は、過激派のアジトで発生した爆発事故の現場写真を見て愕然とする。どうやらミサイルが暴発したようなのだが、そのミサイルに使われている部品に見覚えがあったのである。

 彼らは高校時代、天文部を乗っ取ってロケット部にしてしまっていた過去があり、そこではなんとお手製ロケットを打ち上げるという暴挙と言うべきか壮挙というべきか、とにかくそういうことをやっていた。過激派の起こした事件の裏に、過去の仲間たちがいるに違いないと、主人公は確信を持つ。

 そして、やっぱり彼らは結束して企みを実行に移そうとしていたのである。ロケットを飛ばしてしまおう、と。

 って、成長してないじゃないか!という声が聞こえそうだが、そんなことは無い。彼らは、きちんと資金力を身につけ、技術を身につけ、知識を身につけ、そうしていながら夢を持ち続けていたのである。

 ロケットを飛ばすということで、その技術的な面が実に良く調べられている。そして驚くべきことに、その専門的な知識を易しく書いているので、「ああ、ロケットには色々な技術が使われているんだなあ」と感嘆しつつも読むのは難しくないという絶妙さ。

 加えて、恐らくは背景になる部分の取材が滅茶苦茶しっかりしている。技術もそうだし、主人公が行く先で見聞きするもの(それが何かは、読む人のために書かないでおきます)についてもそう。まず間違いなく想像で書いているのではなく、事実を書いているのだと思う。この拘りがリアリティを与えていると思われてならなかった。

 それに、なんと言ってもロケットへの情熱が感じられるのが良い。著者本人が宇宙開発に多大な興味を持ってきたのではないかと思わされる。読者までワクワクしてくるのが本当に凄い。

 少しでも興味を持たれた方には是非読むことをお勧めしたい。
続きを読む
関連記事
SF・ファンタジー | 2010/04/27(火) 23:43 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

812冊目 ネコはどうしてわがままか
ネコはどうしてわがままか (新潮文庫)ネコはどうしてわがままか (新潮文庫)
(2008/05/28)
日高 敏隆

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆


 生物学者である著者が、身近な生物の不思議を取り上げて雑誌に連載していたエッセイを纏めたもの。軽妙なエッセイは好評を博しており、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞したこともある。

 おまけに翻訳者としても活躍し、コンラート・ローレンツの『ソロモンの指輪 動物行動学入門』や『攻撃 悪の自然誌』、デズモンド・モリス『裸のサル 動物学的人間像』、リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』などの話題作に携わっているのだから驚かされる。

 こうした生物学に対する造詣の深さを感じさせつつも、難しいと思わせないエッセイを書いてきたことが著者の名を高めた原因だろう。本書に収められたどの話も生き物の魅力に溢れている。

 表題作、ネコはどうしてわがままかは勿論、ネコと言えば犬ということで、犬はなぜ人の言うことを聞くのかを説明したかと思えば、今の季節に見られるテントウムシがあんなかわいい姿をしているのは何故か、アメンボはどうやって水に浮いているか、といったように生物の不思議と魅力を縦横に語っている。

 短い文章の中にも必ず不思議と魅力が語られているので、楽しみながら生物の奥の深さが感じられる。また生物学への関心が掻き立てられてしまったので、その手の本を漁ることになると思う。

 軽くて気負わずに読めてなおかつ科学の面白さを感じさせてくれるのが、なんと言っても著者の最大の魅力だった。著者の本によって科学の世界を志す、あるいは魅力を感じるようになった人は多いのだろうなと思わされてならない。昨年(2009年)に亡くなられたのが惜しくてならない。
関連記事
エッセイ | 2010/04/25(日) 22:59 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

811冊目 葉桜の季節に君を想うということ
葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
(2007/05)
歌野 晶午

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆


 2003年のこのミス1位受賞作品。

 ミステリだが、犯人は最初から分かっている。霊感商法で多くの人を食い物にしている蓬莱倶楽部。そこに保険金を賭けられた老人が轢き逃げによる事故死を遂げる。故人は生前、この蓬莱倶楽部に5000万円ほど注ぎ込んでいた。

 もう、どう見ても真っ黒なのだが、轢き逃げということで捜査は満足に行われない(ここはちょっと無理がある)。

 老人の遺族が、業を煮やしたのか、自分に好意を抱く男に相談を持ちかけることで、物語は大きく動き出す。話を聞いた男は、元探偵の主人公に話を持ってくるのである。果たして主人公は蓬莱倶楽部の闇を払うことができるのか。

 実は、本書にはトリックが仕掛けられている。叙述トリックという奴だ。恐らく読む人の殆どが騙される。かく言う私も騙された一人である。が、騙されて悔しいという感じはない。恐らく、全てを分かってから思い返せば、トリックを示唆する点は少なくない。

 話が過去に飛ぶことが多いのだが、それが全てトリックを明かす上での伏線となっているので、種明かしをされたときの驚きはひとしおである。ラストまで一気に読んでしまった。このミス1位は頷ける。が、好き嫌いは分かれるのではないかと思うので、最初を読んで気に入らなかった方は読まないのが吉でしょう。
関連記事
推理小説 | 2010/04/23(金) 23:37 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

810冊目 「赤報隊」の正体―朝日新聞阪神支局襲撃事件
「赤報隊」の正体―朝日新聞阪神支局襲撃事件 (新潮文庫)「赤報隊」の正体―朝日新聞阪神支局襲撃事件 (新潮文庫)
(2005/04)
一橋 文哉

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆

 1987年5月3日、朝日新聞阪神支局に散弾銃を持った男が侵入、29歳の記者を射殺し、42歳の記者に重症を負わせる事件が発生した。事件後、赤報隊を名乗る犯人あるいは犯人グループがマスコミに犯行声明を送りつけた。

 その後、赤報隊による一連の事件・脅迫が相次いだものの、決定的な証拠は無く、犯人は逮捕されないまま時効を迎えている。

 肝心の犯人像であるが、朝日新聞を反日だと攻撃している点などから右派的な思想の持ち主が疑われたり、当時朝日新聞がキャンペーンを張ってその霊感商法を批判していた統一教会を想定する者が多い。いずれにしても、朝日新聞が標的となり、二人の死傷者はたまたま難に遭ったという立場である。

 従来の、この視点に真っ向から立ち向かっているのが本書。本書によれば、殺害された29歳の記者は、統一教会の取材に加えて、幾つかの事件についても調査を進めていた。日本の闇社会に深く結びつく、ある事件の。

 となると、ターゲットは朝日新聞だったとは言いきれなくなる。犯人は殺害された記者その人をターゲットにしていた可能性がある、と指摘する。実際、赤報隊が起こした他の事件と、阪神支局襲撃事件は随分と性格が違う。この事件だけ、犯人に明確な殺意が込められているのである。

 犯人の姿を見ようと読み進め、ふと気がつけば、80~90年代を覆った日本の闇の系譜を辿っていることに気付く。次々に大事件、政治家、右翼、政商などが顔を出し、事件は複雑怪奇な様相を呈してくる。そこから浮かび上がってきた人物へのインタビューが本書のクライマックスだろう。

 但し、あくまでも著者が犯人なのではないかと思う人物であって、その人物が犯行を告白したわけでもなければ、明確な証拠を握ったわけでもない。犯人を突き止めるという点では失敗に終わっていると評価せざるを得ない。著者の推測を受け入れられると思うか、思えないかだと思う。

 私は、しかし、著者の視点を小説としては面白いかもしれないが現実味としてはどうしても首肯できない気分に襲われてならなかった。事件記者ではなかった記者が、果たして消されなければならないだけの情報を得ていたのだろうかという点がやはり大きい。どちらかというと、闇社会が重大事件とどう関わってきたかについての解説の方に説得力を感じた。そうした意味で、本書の価値はあるのではないかと思う。
関連記事
ノンフィクション | 2010/04/21(水) 23:33 | Trackback:(0) | Comments:(2)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

808冊目 & 809冊目 シャングリラ病原体 上下
シャングリラ病原体〈上〉 (新潮文庫)シャングリラ病原体〈上〉 (新潮文庫)
(2003/02)
ブライアン フリーマントル

商品詳細を見る


シャングリラ病原体〈下〉 (新潮文庫)シャングリラ病原体〈下〉 (新潮文庫)
(2003/02)
ブライアン フリーマントル

商品詳細を見る


評価:☆☆


 南極のアメリカ観測基地で謎の疫病が発生した。メンバー全員が老衰死を遂げたのである。北極圏でも同様の事件が発生。致死率は98%。これはエボラ出血熱ザイール株の88%を上回る数字である。

 人類が致死率の極めて高い謎の病原体に襲われ、医学あるいは科学を総動員して対抗するというプロットは、マイクル・クライトンの代表作『アンドロメダ病原体』と同じだろう。余程インパクトがあったのか、『無限アセンブラ』というSFも同じような構成で(但し、脅威となるのは病原体ではない)見事な物語を構成していた。

 これらの両作品が優れていたのは、科学・医学面で無茶を感じさせないところだった。読者は安心して虚構の世界を楽しむことができた。

 本作品が残念なのはこれらが守られていない点にある。以下、白黒反転。

 病原体はマダニの殻によって誘導される酵素ということになっているが、このマダニがどうして南極のような寒冷地で、しかも救援に訪れただけのメンバー全員に感染できたのか分からない。ウイルスで人から人への感染があるとしなければ筋が通らない。

 また、感染から死までの時間が長くなっているとの記述があるが、酵素が誘導されるのであればこの効果は考えられない。

 当初はインフルエンザが疑われるわけだけれども、症状は明らかにインフルエンザではない。鯨が感染するインフルエンザだって?インフルエンザの特徴である発熱も見られず、ウイルス感染を示す免疫活性も無い。それなのにインフルエンザ説を持ち出す珍妙な科学者がいるわけが無い。寝言は寝てから言って欲しい。


 というわけで、残念な点が多すぎてしまった気がする。どう収拾つけるのかと思ったのだけれども・・・・・・

関連書籍:
アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))
(1976/10/19)
マイクル・クライトン浅倉 久志

商品詳細を見る


無限アセンブラ (ハヤカワ文庫SF)無限アセンブラ (ハヤカワ文庫SF)
(1995/11)
ケヴィン・J. アンダースンダグ ビースン

商品詳細を見る

関連記事
SF・ファンタジー | 2010/04/19(月) 23:27 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

807冊目 子供たちは森に消えた
子供たちは森に消えた (ハヤカワ文庫NF)子供たちは森に消えた (ハヤカワ文庫NF)
(2009/01/06)
ロバート・カレン

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆


 ソ連崩壊前夜の1980年代。まだ情報公開<グラスノスチ>が行われる前、即ち、政府による情報統制がまだ社会を覆っていた時代。

 ソ連の至る所に存在する、制度上は誰のものでもない森や林で、惨殺死体が次々と発見された。死体にはいずれもナイフによる執拗な刺し傷があり、幾つかの現場からは犯人のものと見られる精液が検出された。特徴的だったのは、眼窩に刻まれた多数の傷である。犯人は何らかの理由により、犠牲者の目を刳り貫こうとしていたようだった。

 犠牲になっていたのは、成人女性と、年端も行かない少年少女たち。性器が傷つけられ、抉り取られていることが多いのも犯行の特徴であり、証拠からは犯人あるいは犯人たちが連続殺人に及んでいることが明らかだった。

 これが西洋社会の事件であれば、実際に連続殺人として捜査が行われたことだろう。また、情報が公開され、多くの親が子供を守ったことだろう。

 しかし、事件が起こっていたのは1980年代のソ連だった。快楽殺人は資本主義という歪んだ社会に特有の問題とされ、連続殺人であることを認めない風潮すらあった。加えて、無謬性を要求される巨大な官僚組織は、幾つかの事件で単独犯と見做した容疑者を拷問の末に自白に追い込み、自白に基づいて処刑する事例まであった。

 殺人犯は勿論やっかいだが、捜査に当たる民警も民衆に信用されているとは言いがたい存在だったのである。情報を公開しないままの捜査で、民警が民衆の協力を得られなかったのも無理はない。

 本書の前半から中盤は、これらの困難を掻い潜って遂に犯人を逮捕するまでの民警の活動を追っている。不十分な科学捜査、遅々として進まない捜査の間にも次々と起こる殺人事件の数々には、本当に胸が悪くなる思いがした。特に犠牲者はまだ幼い少年少女たちであったことが一層後味を悪いものにさせる。

 終盤に至り、いよいよ読者は犯人の実像に迫っていくことになる。悲惨な家庭、独ソ戦によるPTSD、そして数百万の農民が餓死させられた、スターリンが現出させたウクライナ飢饉。そこには現代史の闇が立ち塞がっているのを見て、やはり愕然とさせられる。ソ連の崩壊と歩調を合わせるかのように進展した事件が、ソ連勃興期の闇に少なからぬ影響を与えられた犯人に引き起こされていたというのは、歴史の皮肉なのだろうか。

 ただ、本書では犯人の残忍で冷酷な性格が、暗い時代や閉鎖的な社会によって形作られたようにしているところについては、それは違うと思わされた。快楽殺人ならば宮崎勤事件や、アメリカの多くの事件(ジェフリー・ダーマーエド・ゲインなど)を挙げられる。その他の事件についても枚挙に暇が無い程だ。

 それに、ウクライナで地獄を見た人々、愛情の無い家庭で育った人々、閉鎖的で抑圧的な社会での生活を余儀なくされてきた人々の、その殆ど全員はこのような犯罪を犯さない善良な人々だった。一方で、健康で幸福な生活を送ってきた者でも異常な殺人を引き起こす。犯罪は社会的なものである面があるのは事実だが、社会に責任を押し付けすぎても行けないと思う。

 なお、ベストセラーになった『チャイルド44』は、この事件に題材を取っている。多くの犠牲者、殺人儀式といった犯人側の行動に加え、犯人以外の容疑者を死刑にして事件を解決したと思っていた警察組織、ウクライナ飢饉という暗黒時代など、往時のソ連社会を描き出すのに成功していると思う。本書に興味を持たれた方には『チャイルド44』もお勧めしたい。



関連書籍:
チャイルド44 上巻 (新潮文庫)チャイルド44 上巻 (新潮文庫)
(2008/08/28)
トム・ロブ スミス

商品詳細を見る


チャイルド44 下巻 (新潮文庫)チャイルド44 下巻 (新潮文庫)
(2008/08/28)
トム・ロブ スミス

商品詳細を見る

続きを読む
関連記事
ノンフィクション | 2010/04/13(火) 23:52 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

806冊目 墜落か生還か―緊急事態発生
墜落か生還か―緊急事態発生墜落か生還か―緊急事態発生
(2000/07)
スタンリー スチュワート

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆☆


 飛行機は、事故のたびにニュースになる。連日事故が起こりながら、ほぼニュースになることのない自動車事故とは好対照と言えるだろう。しかし、一方で飛行機は事故が発生すると、大勢の方が亡くなることになる。

 飛行機への恐怖心を募らせる要因として、乗客として飛行機に乗るのであれば、いざというとき(それ自体滅多にないのだけど)、完全に運命が他人にコントロールされることも挙げられるだろう。こちらに関しても、パイロットは非常時を想定しての訓練を受けていることを忘れるべきではない。

 しかし、それでも事故は避けられない。不幸にして墜落という運命を辿る場合もあるが、少なからぬ例で生還に成功している。本書は、重大な事故に遭遇しながらも生還に成功した航空事故と取り上げ、なぜ事故が発生したか、そしてどのように墜落が回避されたかを詳細に説明している。

 太平洋上で自分の飛行位置を喪失した小型機と救助に向かった人々の話、幾つものエラーが重なった結果として短い滑走路から離陸を始めた飛行機が照明と衝突しながらも辛くも生還した事例、火山灰によってエンジンが全て停止した事例など、全部で10章からなっている。

 中には御巣鷹山に墜落した日本航空123便と同様に舵が全く利かなくなり、エンジン推力だけでコントロールしながら見事に生還したアメリカン航空96便貨物ドア破損事故という事例もある。

 これらの事例において、冷静さを失わずに困難な操縦を成し遂げると言う驚嘆すべき対応が行われている。全て、手に汗を握らずにいられないものだ。彼らの遭遇した困難にハラハラし、着陸成功の時には心底ほっとする。パイロットたちの英断に、手を叩きたい思いを抑えながら読んだ。

 それにしても、事故についてのノンフィクションは、フィクションを圧倒すると感じられてならない。書かれているのは現実の人間が必死になって事故と戦う姿であり、助け合おうとする姿勢であり、傷つき死んでしまう場合もある物語だ。

 彼らの奮闘をただ称えるだけではなく、次の事故を起こさないために情報が活用されていくことを願って止まない。
関連記事
技術 | 2010/04/10(土) 23:48 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

805冊目 インカに眠る氷の少女
インカに眠る氷の少女インカに眠る氷の少女
(2007/01/31)
ヨハン・ラインハルト

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆


 スペイン人の征服者(コンキスタドール)によって滅ぼされた、インカ帝国。この高地に栄えた帝国は黄金文明に加え、人身御供という血生臭い儀式でも知られている。生贄に供されたのは、15歳以下の少年少女だった。子供たちは、標高6000メートルを越える高地で、生きたまま神に捧げられたのである。

 本書は、これらの少年少女たちの凍結ミイラ発見の物語である。

 そもそも、凍結ミイラの発見自体が容易なことではない。標高6000メートルを越えるということは、高山病や雪・風といった低温という、発掘困難な環境を意味する。加えて、発掘するための道具を引っ張り上げ、発掘品を持ち帰らなければならない。高地考古学は、歴史学の中でも最も過酷な学問分野である、と言っても過言は無いだろう。

 著者は1980年以降、20年以上もアンデスで研究を続けてきた人物。たまたま趣味で山登りをしていたときに、少女の凍結ミイラを発見する。火山の噴火により地表に現れたらしい。放置するわけには行かない。太陽熱で痛んでしまう可能性も有るし、盗掘者に見つかれば何処かへと姿を消し、二度と研究対象となることは無いであろう。

 そこから奮闘が始まる。まずは、凍れる少女を山から下ろすこと。その研究を進めるのと平行して、その他にも凍結ミイラが無いか探すこと。

 研究の模様が学問と冒険の融合にあるようで、読者としては楽しく読めるが、苦労が偲ばれてならない。次々と発見される貴重な遺物、凍結ミイラ。加えて、学者間の軋轢や主導権争いなどの問題も絡んでくる。それにより、人間ドラマにもなっているのが興味深い。

 一方で、研究によって明らかにされた成果は余り記されていない。まだまだ研究が進んでいない状況で書かれているためであるが、そこが少し残念であった。オーストリアとイタリアの国境付近で発見された男性の凍結ミイラについては、『5000年前の男―解明された凍結ミイラの謎』でその成果が詳しく記されていたので、落差が大きいように思われた。

 研究が進み、インカに光が当てられる日が来るのが楽しみになった。


関連書籍:
5000年前の男―解明された凍結ミイラの謎 (文春文庫)5000年前の男―解明された凍結ミイラの謎 (文春文庫)
(1998/01)
コンラート シュピンドラー

商品詳細を見る

関連記事
その他歴史 | 2010/04/07(水) 23:02 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

804冊目 ワインという物語―聖書、神話、文学をワインでよむ
ワインという物語―聖書、神話、文学をワインでよむ (文春新書)ワインという物語―聖書、神話、文学をワインでよむ (文春新書)
(2000/05)
大岡 玲

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆


 アルコール飲料は食事とともに進化してきた。世界中で地域独自のアルコール類があることからも、それは分かるだろう。数少ない例外はイスラム圏や、アメリカで一時禁酒法があったことくらいである。しかし、そもそもイスラム圏で飲酒が禁止されたのは飲酒の上での狼藉が酷かったためと言われるし、アメリカでも禁酒法時代、上流階級の人々はガンガン飲んでいた。それほど人類社会に密接した飲み物といえる。

 その中でも、取り分け広く愛されているのはビールとワインであろう。ビールは古代エジプトで労働の対価としてパンと共に支給されたことが知られている。一方、ワインといえば、ギリシアやローマの支配階級が飲んでいた。今でもフォーマルな場ではワインが飲まれるは、このときの影響と言う。

 そんなワインなので、神話や文学にも頻繁に顔を出すことになる。聖書、ギリシア神話、ローマ帝国、アーサー王、文学(本書で取り上げられているのは『カンタベリー物語』、『デカメロン』、『ドン・キホーテ』)の中で、ワインがどのように扱われているか、つまり、これらが成立した当時、社会にどのように受容されていたのかが記されている。

 本書を読めば読むほど、文化や文明を語るのにワインが欠かせないように思えてくる。ワインの種類や飲み方、共に楽しむ食事によって社会が見えるというのはなんとも面白い。

 また、章の間には、そこで取り上げたものに近いと思われる色々なワインを、著者たちが飲んで縦横に語るというコーナーがある。これがまた、どれもこれも飲みたくなるような話ばかりでとても困る。まったく、羨ましいぢゃないか。

 この通り、ワインを巡っての楽しい物語になっている。是非ワイングラスを片手に楽しんで見て欲しい。とりあえず、わたくしめは昨日ワインを買ってきましたです。


関連書籍:
世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史
(2007/05)
トム・スタンデージ

商品詳細を見る

関連記事
未分類 | 2010/04/05(月) 23:38 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ

803冊目 間違う力 オンリーワンの10か条
間違う力 オンリーワンの10か条 (Base Camp)間違う力 オンリーワンの10か条 (Base Camp)
(2010/03/17)
高野秀行

商品詳細を見る


評価:☆☆☆☆☆


 著者は、早稲田大学探検部を率いてアフリカの奥地へ怪獣ムベンベを探しに行ってしまったり、アマゾンの旅行ガイドを書くはずが旅行記になってしまったり、黄金の三角地帯へケシ栽培を見に行ったはずがしっかり大麻中毒になってしまったり、トルコに怪獣を探しに行ったり、と、ぶっとんだ過去を送ってきた。

 この経歴を見ただけで、もう普通の人が人生の教訓にするのは無茶だろう、という、実に妥当な結論に至ると思う。著者と親交のある編集者から言われたという言葉を引用する。

 「高野さんの本は、文章がどうのとか構成がどうのという以前に、『初手から間違っている』というのが特徴です。ただ、あまりに高野さんが真剣に間違った方向に進んでいくので、だんだん読者は何が正しいのか間違っているのかわからなくなり、読み終わったあとではちょっと世界が変わって見えるというのが醍醐味なんです」
(P.8~9)


 この分析、流石というべきだろう。私も、自身が常識人であるとは思わないのだけれども、それでも著者のズレっぷりはもう楽しくて楽しくて、ついつい手を出してしまうので。

 そんな著者が送る、オンリーワンになるためという十か条は以下の通り。

1.他人のやらないことは無意味でもやる
2.長期スパンで物事を考えない
3.合理的に奇跡を狙う
4.他人の非常識な言い分を聞く
5.身近にあるものを無理やりでも利用する
6.怪しい人にはついていく
7.過ぎたるは及ばざるよりずっといい
8.楽をするためには努力を惜しまない
9.奇襲に頼る
10.一流より二流を目指す


 なにやら見ただけでぎょっとするような項目が並んでいる。それでこそ高野さん。

 章のタイトルだけで驚くのはまだ早い。中を見れば、更に激しい驚きが待っている。普通の人には見えていなかった世界が厳然と存在することに驚くというか、世の中にはこんなヘンな人々が溢れているんだという妙な感慨に浸るか、真面目にだけ生きなくても世界は廻っていくんだなと思うか、兎に角、これまでと世界の見え方が違ってくるのは間違いないと思う。

 でも、本書を読んでオンリーワンになる方法が見つかるなんて思っちゃダメのダメダメです。吹っ切れているのは必須だと思われますから。


 余談。私が購入した本屋さんでは、この本を選りにも選って心理とかなんとかのコーナーに置いてました。全然違うと思います。あと、表紙、完全に間違っていると思います。タイトルとジャケットで買った人は相当驚くだろうなあ・・・・・・(笑)


関連書籍:

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)
(2003/01)
高野 秀行

商品詳細を見る


怪獣記怪獣記
(2007/07/18)
高野 秀行

商品詳細を見る


ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)ワセダ三畳青春記 (集英社文庫)
(2003/10)
高野 秀行

商品詳細を見る

関連記事
未分類 | 2010/04/03(土) 17:17 | Trackback:(0) | Comments:(0)

献本サイト レビュープラス

ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)
にほんブログ村 本ブログへ



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。