![]() | スパイの世界史 (文春文庫 う 18-2) (2007/07) 海野 弘 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
実に浩瀚にスパイのエピソードを集めている。もっとも、世界史とは銘打っているが、取り上げている話題のほとんど全ては第一次大戦以降のものである。国家が積極的に諜報機関を持ち、スパイを活用するようになったのがそれ以降であることを考えれば当然かもしれない。
マタ・ハリやゾルゲのように広く知られたスパイから、キム・フィルビー、エリー・コーエン、ローゼンバーグ夫妻といった、諜報の世界について語られる際には必ず顔を出す面子、果てはアラビアのロレンスのように名前は知られていてもスパイとしては知られていなかった人物まで広く浅くスパイたちの活躍が描かれる。
一次大戦の原因となったオーストリアのフェルディナント皇太子暗殺に潜む陰謀、二次大戦時のヨーロッパを中心にした苛烈な情報戦争、そして冷戦以降のCIAとKGBの争い。どのようなスパイがいて、どのような情報が敵国に伝えられていったか。それが世界史をどのように動かしていったか(あるいは動かさなかったか)が明らかにされている。
現代史とは、政治や経済や軍事といった表の動きを辿るだけではとても全貌をしることができないものだと改めて感じさせられる。隠れた情報戦争が持つ威力の大きさにはきちんとした評価を下しておかなければならないだろう。
しかし、情報の持つ威力の大きさを知ると同時に、情報を扱うことが極めて難しいことにも思いを馳せることになる。正確な情報を得ておきながら、正しい判断を下せなかった事例の何と多いことか。最後は、情報を受け取り、判断する人物の気まぐれや嗜好が、世界を動かしてきたというのもまた確かなのだろう。
参考文献の多さも特筆すべきものだろう。622〜638ページ目が参考文献に当てられている。スパイに興味がある方は、入門として本書を手に取り、参考文献に進んでいくのも良いかもしれない。
ただ、スパイ活動の中でも少なからぬ分量を占めるシギント(SIGnal INTelligence)についてはほとんど触れられていない。そこがやや残念なところか。そちらについては、7冊目で紹介した『すべては傍受されている』が詳しいので興味がある方はどうぞ。
ランキングに参加しています。面白いと思ったら押してくださいませ。
(ランキングサイトが立ち上がります。不快でしたら無視して下さい)




