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492冊目 中国古代の科学
中国古代の科学 (講談社学術文庫)中国古代の科学 (講談社学術文庫)
(2004/04)
藪内 清

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評価:☆☆☆☆


 現代科学がその起源を近代のキリスト教社会に辿ることができるというのはその通りだろう。しかし、世界が常に自然科学の法則に従ってきたことを考えれば、古代の世界に科学があってもおかしくは無い。そのうち特に有名なのはギリシア時代の数学だろう。ユークリッドの名は(苦手意識を持つ人を含め)広く知られている。詰まるところ、系統だった科学という営みは近代のものであろうが、科学的な探究心そのものは人類に備わった普遍的なものなのだろう。

 本書では文字通り近代以前、具体的には宋以前にに中国で発達した科学について系統立てて解説している。特長として、思想面にまで踏み込んで何故特定の分野の科学が発展し、また別の分野の科学は未発達だったのかを説明していることが挙げられる。

 特に人類社会が続く限り永遠の課題であろう、健康に絡む分野は中国でも発展を遂げた。とりわけ鍼灸という、世界で他に類例を見ない治療法は西洋医学とは別の切り口でも人体に大きなプラス効果を与えうることを示している。著者はこの点を指摘した上で、冷静に東洋医学が西洋医学に取って代わることは無いと喝破する。極めて冷静な視点を持っていると感じられて心強い。

 もう一つ、中国の科学で避けて通れないのは天文である。古代中国では地球が丸いという概念に、遂に辿り着くことは無かった。そのため、後には日食や月食という天文現象の事前把握に失敗することになる。しかし、その一方で、天は為政者の功罪に応じて怪異を起こすと信じられていたため、天文学上の異常事態の観察には大変に熱心だった。超新星や彗星、日食月食といった記録は現代の科学者たちすら利用するほどだという。

 漏刻と呼ばれる水時計や、コンパスの働きをした指南車(ただし、これは磁石を使ったものではなく本体の回転と反対向きに回ることで常に一定方向を指すようにしたカラクリのようだ)、更には地震が起こった際に方角を検知するための機械なども発明されていた。

 優れた発見としては他にも、紙や羅針盤、火薬といった世界に近代化をもたらしたものも挙げられる。現代史におけるアヘン戦争の大敗やその後の列強の圧力に屈していった姿から、近代化に失敗した後進国というイメージがあるかもしれない。しかしながら、古代においては西洋やイスラーム社会と比較しても決して引けをとらなかったのだ。

 ただ、科学というよりは技術に属する話題の方が多いように感じた。この二つ、分け難い点があるのも事実だろうけれども、科学と銘打ったからにはもうちょっと分けて欲しかった。それと、冒頭で中国文明が一貫して漢民族によって作られたとでも言うようなことが書いてあったがそれは違うと思う。異民族の支配の間にも文化は変容して行ったわけで、歴史上も現代も中国文明というものは単一民族が作り上げたものではないことに注意を払っても良いのではないか?

 残念な点もあるが古代中国の科学という、中々触れられない話題に光を当てている功は大きいと思う。古代史における科学、技術は一国の興亡を大きく左右してきたのだから、このような本は過去に迫るための視点を与えてくれるのは嬉しい。
中国史 | 2008/04/13(日) 22:12 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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