![]() | 七王妃物語 (1971/01) ニザーミー、黒柳 恒男 他 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
日本ブログ村から辿り着いた靄さんの靄靄にて紹介されていたのが面白そうで手に入れた本。期待に違わず面白い本でした。
タイトルは七王妃だが、主人公はササーン朝ペルシアの王、バハラーム5世。占いによって他国で育ったバハラームは、父の死後に王位を奪還する。エフタル(白フン族)の侵略を撃退し、狩猟を愛して有名を馳せた人物のようだ。
では本書はこの王を称えた詩なのかというと、違う。王妃達が紡ぎだす魅力的な話を楽しむ、という趣向である。千一夜物語において、事実上の主人公が次々に面白い話を語り継ぐシェラザードであるのと同じく、本書でも主人公を感嘆させる七人の王妃が語る物語こそが中核を占めている。
七人の王妃が語る物語は色恋が中心となっている。そもそも、バハラーム王からして各国の王女を描いた絵に惚れ込んで七人の王妃を娶ったくらいだから、王妃の語る物語だけではなく全体的に艶っぽい話なのだ。ところが決して決定的なことを書かないために、下品にはならずにいるところはお見事。その概略については靄さんが紹介なさっているので見てもらいたい。
個人的に気になったのは、このバハラーム王、善良な王と評されているのだけど、政務は投げ出して七人の王妃の元を曜日を決めて訪れて酒色に耽り、他にやる事と言えば狩猟ばかりと、なんともまあ羨ましい生活をしているのである。おまけに権力を私する悪逆な宰相まで任命してしまい、民は苦しみに耐えるということになっている。物語の常として、最後には勧善懲悪になるわけだけど、民衆にとっては堪らない主君なのでは無いかと思われてならない。それを考えても、やはり七人の王妃が語る物語こそが本書の魅力となっている。
ただ、本書は余りと言えば余りにも隠喩が多い。華麗といえば華麗なのかもしれないけれど、スムーズに読むことができないのは難点。訳者もこれには苦しんだようで、後書きで苦情を言っているのには笑った。流行やら詩人のスタイルやらはあるのだろうけど、もうちょっと分かりやすくても良いと思う。
聊斎志異や千一夜物語にしてもそうだけど、色欲というものがどれほど男にとっての動機付けになるか、改めて思わされてしまう。悪い意味ではなく。こういった、語り継がれてきた物語を読むたびに、そこに込められた知恵に驚くと同時に、人間は何時の世も同じようなものを求めてきたのだと思いを新たにする。
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