![]() | ロケット開発「失敗の条件」―技術と組織の未来像 (ベスト新書) (2001/06) 五代 富文、中野 不二男 他 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
失敗という言葉が悪い、という話で始まったのに驚いた。実に瑣末なことから説き起こす、と思ったのだ。しかし、読み終わった今では自分の不明を羞じている。失敗という、余りにも広い事象を含む言葉を安易に使うことで、事実が見えなくなっていることに気付かされたためだ。
例えばポカミス。設計どおりに組まれていれば問題ないはずのものが、単純なミスによって本来の機能が出ないならそれは失敗かもしれない。しかし、開発要素の強い技術によって生み出されたものが、一発で最善を得られなかったとしたらどうだろう。それすら失敗と言うのだろうか。
本書を読むまで、ロケットエンジンの難しさというものに思いを馳せたことが無かったことにも気付かされた。
通常のエンジンは、可能な限り軽く作って、いじめ試験を繰り返して弱いところを補強していくという。その結果、弱いところは徹底的に洗い出され、強いものへと変わっていく。使用後のエンジンが容易に手に入るからこそ可能な手段だ。
ところが、ロケットエンジンではそうは行かない。発射されてしまえば、成功しても失敗しても、使用後のエンジンを確認するのは至難の技。なので、一発で最善を、などとはとてもいえない。しかも、元々がギリギリの強度しか狙えないのだから、失敗率を織り込んで組み立てられるという。
この辺りのことを、正しく認識している人が居ないのが、日本の宇宙開発における不幸だろう。勿論、当事者は違う。設計に当たり、ロケットを組み立てる人々は分かっている。しかし、政治家も官僚も、そんな開発技術に伴う困難さを全く考慮に入れてこなかった。宇宙開発といった、コストが掛かるがメリットも大きい分野を率いるには実に頼りないと言わざるを得ない。
世界がその働きの恩恵を受けている気象衛星は、なんと予備機すら用意できなかったという。地方にある、無駄な道路の建設予定をちょっと削ればたちどころに捻出できる費用すら、官僚は削るのに血道を上げた。嘆かわしいとしか言い様が無い。
また、日本社会が失敗に対して寛容さを欠くことも指摘されている。この点に関しては私も同感。失敗が赦されないから、失敗をしていないことと事実が糊塗される。結局、もたらすのは不幸だけだ。敗走を転進と言い換えた戦時中から、社会はあまり進んでないのかもしれない。不幸な発見。
暗い話は多いけれども、それでもなんとか宇宙開発を進めてきた技術者達には本当に頭が下がる。彼らをちょっとでも援護できるように、開発背景などについても色々知っておきたいと思うようになった。
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