![]() | テロリストのパラソル (角川文庫 ふ 20-1) (2007/05) 藤原 伊織 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
なんと、史上初の直木賞と乱歩賞をダブル受賞した作品。
10月の土曜日、新宿中央公園で爆弾テロが発生する。現場にたまたま居合わせた、中年のアル中バーテンダー。彼は事件の報道で、爆弾テロの犠牲者の中に海外に渡って以後音沙汰の無かった親友の名を見出すことになる。東大で、全共闘として共に権力と闘った仲の。(正直、私としてはこの権力との戦いというのが理解できないのだが^^;)
白昼の公園での惨劇に加え、犠牲者に公安の課長が居ることから警察は素早い動きを見せる。ために、彼は困った立場に追いやられることになる。隠してきた過去、爆死した親友との過去が甦る。
また、過去は思わぬところからも姿を現す。昔の恋人の娘が、唐突に彼を訪ねてきたのだ。爆弾テロで母が死んだ、と。親友と、元恋人。所在すら知らなかった二人が爆弾テロで同時に殺されたのは偶然か、はたまた必然か。主人公は密かに事件の謎を追うことを決意する。
ヤクザからの接触、警察の目から逃れるためのホームレス暮らし。その果てに、主人公は何を見出すのか、という手に汗握る冒険譚。
ただ、設定に偶然の要素が多すぎるような気がしてならない。ストーリーを盛り上げるためなら一つ二つの偶然があっても別に構わないのだけど、多いと白ける。また、情報が小出しにされていて、展開が唐突に思われる点もマイナス要因。あと、文章がやや単調か。いくら日本語の語尾は限られるからと言って、”た”、”だった”ばかりで構成されると読んでいて疲れるのは否めない。更に、印象的なタイトルだけど、それが効果的に使われているわけではない。
総合的に見れば、面白くはあるけれども、乱歩賞の受賞時に全選考委員の絶賛を浴びたというのは納得がいかない。私もそんなに小説を読むわけではないので、他と比較ができないのだが、どうなんでしょ?
と、酷評しているようだが、確かに面白い点も多々ある。その最たるものは、人物造形の深さだろう。キャラクターを作るといえば突飛な設定をくっつけてしまう(例えばヅラを飛ばして悪人をやっつけるとか)ような安易な方法もありうる。しかし、それでは人間を書いたことにはならない。この作品では、どのキャラクターにも人生の長さに応じた過去があり、特長がある。だから、実際にある世界のことのようにして読むことができる。それは大きな魅力だ。
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