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456冊目 「狂い」の構造
「狂い」の構造 (扶桑社新書 19)「狂い」の構造 (扶桑社新書 19)
(2007/08/30)
春日 武彦/平山 夢明

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評価:☆☆☆☆☆


 本書は精神科医の春日武彦と作家の平山夢明が狂気について放談した、貴重な記録である。かなり毒が強いので、加害者の人権とか、人間の矯正の可能性なんてものを信じているヒトは決して読んではいけません。なにせ、精神科医として数多の患者を診た人がこんなことを言ってしまうのである。

平山 (略)いつも疑問に思うのは、そんなに精神医療とか、カウンセリング力ってのいうのは、人間の根本を激変させるほど強力なものなんだろうかと。
春日 いやあ、ない、ない。
平山 例えば『蜘蛛の糸』のカンダタのように異常犯罪者が心から悔い改めたりするんだろうかと思うんだけれど、そんなことはあるんですか?要は機能不全みたいなものでしょう?
春日 だから、俺なんか、人格障害のヤツなんかを扱ってても、治そうという気もないし、治るとも思ってないし。じゃあどうするかって、相手が年取るのを待つわけだから。その間にまあ、そんなに外さないでくれりゃいいやと思ってるんだけど。
(p.58)


 これを読んで、私は思わず笑ってしまったのだが、そういう人は文句なしに楽しめます。

 何が良いって、この突き放した感じ。異常を理解しようなんていう人がいるけど、親族を亡くしたことのない人が精神の大まかな動きは追うことができるとしても、決して親族を亡くした人の気持ちに辿り着けないように、異常者を理解することなんて不可能である。理解することが不可能であるというなら、矯正も不可能だということが近年の研究から明らかになっている。彼らは脳の障害を持っているに過ぎない。両足が無い人にサッカーをやれと言っても無茶なように、彼らに犯罪を犯すなといっても無茶である。

 このような客観的事実を受け入れてしまえば、今の法体系にはかなりの無理があることが分かる。宮崎勤、オウム、山口県光市母子殺害事件などで悉く心神喪失が争われたわけだけど、どれも無駄だ。彼らは決して更生も矯正もしない。本書でも取り上げられているが、幾人もの女性を強姦した挙句に絞殺していた小野悦男は人権派弁護士なる者に導かれて脱獄し、そこでまた女性を殺害している。彼らは違う精神を持った存在と認識するほうが理に叶っている。権力に服従するアイヒマンのような人は沢山居るだろう。私もその一員の可能性はあると思っている。だが、それと彼らとは根本的に異なる、ということを知って損はない。

 兎に角、ざっくばらんに新潟少女監禁事件や山口県光市母子殺害事件、ミートホープや雪印、果ては給食費を払わないアレな親まで、狂いがあると思うところには恐れることなく切り込んでいくので見ていて気持ちが良い。全てを受け入れるのではないとしても十分に楽しめると思う。

 最終章ではエド・ゲインやジェフリー・ダーマー、ヘンリー・リー・ルーカス、マリリン・マンソンといった実在の連続殺人犯についても好き勝手に語っている。異常の中でも最たるもの、殺人に至る病で仕上げるとはなんとも心憎い(?)仕儀ではないか。

 対談はしばしば各自が語りたいことをだらだらしゃべってしまってまとまりがなくなるものだが、そのようなことにはならない。二人共に興味を持つことを好きにしゃべっているはずなのに、肝胆相照らす仲の様に絶妙な対談に仕上がっていると思う。興味を持った方は是非手に取ってみてください。


 ただ、東海村臨界事故の話で、チェレンコフ光を肉眼で見た人がいないとか言っているのは間違い。それくらいなら私も見たことがある。

 なお、チェレンコフ光というのは、水中などで電子が水中における光速を超えたときに出る蒼い光のこと(相対性理論は”真空中の光の速度”を超えてはいけないと言っているので、”水中の光の速度”を超える分には問題ない)。あのどこまでも蒼い光には神秘的な美しさを感じた。きっとブラウン管なり液晶画面を通したらあの圧倒的な美は表現できないと思う。東海村で起こったのは、眼球の中の水分でチェレンコフ光が発生したのではないかということであり、肉眼で見たというのとはレベルが違う。

 気になったのでここだけ指摘。
医学・脳・精神・心理 | 2008/02/27(水) 23:15 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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