![]() | ナポレオンを創った女たち (集英社新書) (2001/10) 安達 正勝 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
コルシカ島の貧乏貴族の息子として生まれ、フランスの皇帝にまで登り詰めながら最後はエルバ島で毒殺されたナポレオン。
そのナポレオンの生涯を語る上で欠かせない女性が3人いる。一人は母、もう一人はナポレオンが恋焦がれたジョゼフィーヌ、最後の一人は再婚相手のマリー・ルイーズ。本書は3人の女性を通してナポレオンの生涯を眺めることで、その栄光と破滅を描こうとする意欲作である。
ナポレオンが大成するにあって、まずは母の影響が何よりも大きかったことがまず示される。次いで、ナポレオンの栄光の時代にあってジョゼフィーヌの存在がどれほどのものだったのかを解説し、没落の時期に当たるマリー・テレーズとの結婚生活にて本書の幕が降りることになる。
著者が更に踏み込むのは、ナポレオンの定めた女性関係の法律が、実は今も広く影響を与えていること、とりわけ日本でもそうであるということ。男は外で働き、女は家庭にあって家を守れ。そんな家父長的(って古いな)な考えがフランス革命の際に成立し、ナポレオン法典で完成したことは実に興味深い。
女性と社会との関わりという点では、本書は先に挙げた3人以外にも多くの女性を取り上げている。穏健派としてフランス革命に大きな影響を与えながら断頭の露と消えたロラン夫人や、ナポレオンの敵に回った手ごわい女性もいれば、反対にナポレオンに細やかな愛情を注いだ女性もいる。彼女らに焦点を当てることで異色のフランス史になっていて楽しめた。
ただ、新書でフランス革命という複雑な事象を扱った上にナポレオンと女性達の関わりを書くというのは不可能なわけで、この辺りの流れを大まかに知っていなければ楽しみは半減するだろう。そんなわけで136冊目で紹介した『情念戦争』と併せて読むとなお面白いと思う。
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![]() | 東ゴート興亡史―東西ローマのはざまにて(中公文庫BIBLIO) (2003/04/24) 松谷 健二 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
暗記が苦手な私にとって、社会科は鬼門だった。私が日本史ではなく世界史を選択したのは、なんと言うことは無い、日本史だと漢字まで覚えなければいけないという事態を避けるためだ。私が中国史で挫折に絶望にぶつかったのは言うまでもあるまい。
そんな世界史選択者である私が知るゴートの全ては、そんな名前を聞いたことがある、という程度。その国については時代も分からなければ場所も分からない。
マイナーだから仕方がないかもしれない。しかし、だからこそ読んでみようと思ったわけです。なにせ、知らないならあとは知ることばかり。重複なし。面白いではないか。
と、安易に手に取ったのだが、これがまた実に難しい本だった。なにが難しいって、人名を覚えられない。なぜ人名が覚えられないのか。それは、ゴートがどのような国だったのかをざっと見れば分かる。
地中海に覇を誇ったローマ帝国は東西に分かれるわけだが、その西の方を滅ぼしたのがフン族。フン族は、一説に匈奴の末裔とも、匈奴に追われて西方に移ってきた中央アジアの騎馬民族とも言われている。アッティラは結婚式の夜に鼻血が止まらずに死んだとの俗説で知られる。
アッティラの死後、フン族の覇権はたちどころに失われる。民族同士の抗争が始まり、結局フンの衣鉢を継いだのがゴート族だった。更にこのゴート族が東西に別れ、その東側はついにローマを制するに至る。
しかし、ローマが豊穣の地であることは他者の流入を呼び覚まさずには居られない。結局、100年も経たずしてゴートは東ローマに滅ぼされることになる。
ゴートの興亡の歴史は、抗争の歴史であったわけだ。次々と主役が入れ替わり、脇役が思わぬ活躍をする。躍動感には溢れているのだが、おかげで一つのストーリーとして追いかけるのが難しい。それはファンタジーとは異なる現実の難しさで仕方の無いことなのだろう。ただ、わずか200ページで世界を理解させ、登場人物の生を感じさせるのが困難、ということかもしれない。
前後の時代に興味がある、晋の七王の乱だってちっとも頭に入らない私にとっては難しすぎたか。
それでも滅多に口の端に上ることの無い東ゴートの歴史に触れることができるのは嬉しい。異民族の入り乱れた戦乱の時代について触れられる機会には感謝したい。ただ、もうちょっと文章が分かりやすかったら有難かった。
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というわけで、琵琶湖の畔へ強制労働に出かけているわけだけど、先日聞かれたんですよ。
先輩「Skywriterくん、帰りたい?」
私 「そりゃあもう」
先輩「君の上司が、来月いっぱいまで出張伸ばそうかって」
・・・当事者は素通りですかそうですか。
そんなわけで、我が32歳の誕生日を前に素敵なプレゼントの刑期延長を頂いてしまったようである。5月からは国外追放刑が待っているわけで、出来れば早く帰りたいものだ。
とか言いつつ、来月末になったら、3月中旬まで延長と(私をスルーで)宣告される悪寒がする。予言が当たりませぬように。
今まで通勤時間が読書時間でもあったわけだけれども、労働所では以前の通勤時間も労務時間に組み込まれている(が残業代は出ない)という酷い所業。というわけで、今年100冊読めるかはかなり疑問だったりする。
新幹線の中でがんがろう。
さて、昨日が私の誕生日だったわけですよ。32なんて、子供の頃にはとんでもない大人に見えていたのだけどいざなってみると子供だね。いや、ほんと。だからプレゼントください。
せっかくこちらに戻ってきたから、というわけで、我が父を呼んで食事をする。が、どうやら父は私の誕生日など綺麗さっぱり忘れていた模様。孫の時にはいそいそと大好物を買ってきていたのはなに?
何はともあれ、そこそこに頑張っていこう。
先輩「Skywriterくん、帰りたい?」
私 「そりゃあもう」
先輩「君の上司が、来月いっぱいまで出張伸ばそうかって」
・・・当事者は素通りですかそうですか。
そんなわけで、我が32歳の誕生日を前に素敵なプレゼントの刑期延長を頂いてしまったようである。5月からは国外追放刑が待っているわけで、出来れば早く帰りたいものだ。
とか言いつつ、来月末になったら、3月中旬まで延長と(私をスルーで)宣告される悪寒がする。予言が当たりませぬように。
今まで通勤時間が読書時間でもあったわけだけれども、労働所では以前の通勤時間も労務時間に組み込まれている(が残業代は出ない)という酷い所業。というわけで、今年100冊読めるかはかなり疑問だったりする。
新幹線の中でがんがろう。
さて、昨日が私の誕生日だったわけですよ。32なんて、子供の頃にはとんでもない大人に見えていたのだけどいざなってみると子供だね。いや、ほんと。だからプレゼントください。
せっかくこちらに戻ってきたから、というわけで、我が父を呼んで食事をする。が、どうやら父は私の誕生日など綺麗さっぱり忘れていた模様。孫の時にはいそいそと大好物を買ってきていたのはなに?
何はともあれ、そこそこに頑張っていこう。
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![]() | 竹内均の科学的人生論 (1999/06) 竹内 均 商品詳細を見る |
評価:☆☆
ご存知、東京大学を定年退職後に科学雑誌『ニュートン』を立ち上げ、その編集長として活躍していた。また、若者に科学への興味を持たせるための活動の一環としてテレビ番組に出演しては数式をほとんど使わずに物理を説明する等の、科学啓蒙活動に深く関わった偉大な人である。
経歴について詳しく知りたい方はwikipediaの竹内均の項を参照いただきたい。
本書は自分に厳しく他人に甘い、竹内さんの人生論をまとめたものだ。本書から垣間見ることの出来る、その仕事熱心さには改めて頭が下がる。たとえば、仕事の一つとして執筆があったわけだが、常に100程度はネタを持っておき、70が行き詰っても残り30の仕事が出来るので仕事が切れることは無い、などと述べている。
意志の強さと、科学への愛情が彼を支え続けたのだと思う。日本の科学教育の場から彼の姿がなくなってしまったのは大きな損失であろう。
また、彼が一貫して科学への楽天的な視点を保ち続けたことは見事なものだ。科学・技術を用いれば人類が直面する課題は解決できる、との信念を持つ人々がいることで多くの課題が実際に解決されてきたことを忘れてはならない。
私はある程度のところで不可知論者であるし、技術の課題を技術で埋める手法は早晩壁に当たるものと思っているのだが。
さて、本書は著者である竹内さんが科学に触れることになったきっかけから、雑誌ニュートンに関わるまでの中で、どのように生き、仕事をしてきたかを書いている。刺激を受けること大なのは否定できない。
が、読み勧めると違和感に当たる。
繰り返しが多すぎるのである。たとえば、先ほど挙げたネタを100もっておけばうんぬんという話。カウントしたわけじゃないので回数は覚えていないが、わずか一冊の中で辟易するくらい繰り返される。
エネルギーの話にしてもそうだし、その他の話題もまた然り。しかも、違う話を持ってきて最後の締めで”決め台詞”的に用いられるのではなく、全部同じインパクトでかかれているので、ちょっと読み進めると途端に飽きるのである。
ニュートンも一年程度でネタが循環して、新味がなくなってしまうのに近い、そんな不思議な錯覚を覚えた。
著者には申し訳ないが、やはり100の異なるネタを持つのは極めて困難で、著者にもそれは出来なかったと思わざるを得ない。実は本人が100のネタを持っていると思っていただけの話で、実は根っこにあるのは5くらいの話題しかないからこういうことになるのではないかな、と思う。
喩えて言えば、歴史上の人物について100人分書くとする。
ハンニバルもカエサルも曹操も朱元璋もサラディンも征服王ウィリアムもアタワルパもナポレオンもチャーチルも詳しく書こうと思ったら困難だ。でも、曹操に劉備に孫権に袁紹に、と言った類に三国志関連の人物ばかり100人書くなら難易度は遥かに下がる。でも、それって100人分のネタがあると胸を張って言えることじゃないよね。そう思ったわけです。
なので、章ごとに最初の一つあるいは二つ程度の段落を読んで、それで終わりにすればなかなか楽しめるのではないかと思った。全編がこうやって面白ければ文句がなかったので残念である。
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小人閑居して不善を成すという明言があるわけだが、ダメ人間が閑居してしまうと何をしてしまうかというと、やはりダメなことである。不善を成すだけの気概も能力もないのだ。
さてさて、実は年初から琵琶湖の畔にて重労働刑に処されている。2週間に1度、自宅に帰れるわけだけどこの週末は帰れなかったわけですよ。で、何をしていたのかと言えば両日とも出勤してたのだが、やはり普段よりは帰りが早い。てか、2200に会社を出たら早いという感性はどうかしてる。
帰っても、家族もいない身ではやることが無いわけで、だったら大量に持ち込んだ本を読むのも一手なのだけど疲れていたのでPCに取り込んだ映画をみることに。何を見たかと言うと、ダメ人間だからダメ映画。
ヅラで敵と戦う脅威の警察官の活躍を描いた恐るべき映画である。
色々な意味でやばすぎるネタが多くて、笑いをこらえるのに苦労してしまった。これ、ヅラのヒトが見たら怒るんじゃないかなぁ。主役を張るのはモト冬樹。ドクター中松など、ある意味豪華なキャストで演技としてはかなり下手ではあるが作品としては狙い通りの快(怪)作に仕上がっている。
なかでもモト冬樹が歌う主題歌が素敵過ぎる。
カラオケで歌えば人気者は間違いないだろう。ただし、メンバーにヅラのヒトが居れば、直ちに村八分になるか英雄になるかのどちらかだ。鶏口となるとも寧ろ牛後と成る無かれ、と信じるヒトには良いかもしれない。虎穴に入らずんば虎児を得ず、とも言うし。乾坤一擲に賭ける気概を持て!
なお、実行に移した結果、どのような不都合を蒙ったとしても責任は負いかねます。
さてさて、実は年初から琵琶湖の畔にて重労働刑に処されている。2週間に1度、自宅に帰れるわけだけどこの週末は帰れなかったわけですよ。で、何をしていたのかと言えば両日とも出勤してたのだが、やはり普段よりは帰りが早い。てか、2200に会社を出たら早いという感性はどうかしてる。
帰っても、家族もいない身ではやることが無いわけで、だったら大量に持ち込んだ本を読むのも一手なのだけど疲れていたのでPCに取り込んだ映画をみることに。何を見たかと言うと、ダメ人間だからダメ映画。
ヅラで敵と戦う脅威の警察官の活躍を描いた恐るべき映画である。
色々な意味でやばすぎるネタが多くて、笑いをこらえるのに苦労してしまった。これ、ヅラのヒトが見たら怒るんじゃないかなぁ。主役を張るのはモト冬樹。ドクター中松など、ある意味豪華なキャストで演技としてはかなり下手ではあるが作品としては狙い通りの快(怪)作に仕上がっている。
なかでもモト冬樹が歌う主題歌が素敵過ぎる。
カラオケで歌えば人気者は間違いないだろう。ただし、メンバーにヅラのヒトが居れば、直ちに村八分になるか英雄になるかのどちらかだ。鶏口となるとも寧ろ牛後と成る無かれ、と信じるヒトには良いかもしれない。虎穴に入らずんば虎児を得ず、とも言うし。乾坤一擲に賭ける気概を持て!
なお、実行に移した結果、どのような不都合を蒙ったとしても責任は負いかねます。
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![]() | 交通事故鑑定人―鑑定歴五〇年・駒沢幹也の事件ファイル (角川oneテーマ21) (2002/02) 柳原 三佳 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
まず、娘さんが事故で重度の障害を負った際の警察の対応を批判した元警察官・春田さんの言葉を引用したい。
「(略)被害者の知らないところで加害者側の言い分だけを元にしたずさんな警察調書が作られ、裁判官は証拠を見ようともせず自由な判断によって判決を下してしまう……、そんな今のシステムを変えなければ、根本的には何も変わりません。(略)」
(P.241)
いや、そんなことはないのではないか、警察は捜査をしてくれるし、裁判官は自由心象主義に基づいてきちんと裁判をやってくれるのではないか。そう思う人が居たとしたら、それは甘すぎる。残念なことに、本書ではその反対の事例が山のように紹介されているのだ。
例えば、飲酒轢き逃げに遭い、死亡した被害者が過失100%で保険金すら支払われないというケース。あるいは、事故後の健忘によって加害者側の言い分だけが認められ、記憶回復後にはもう話を聞いてもらえないというケース。遺族が、ただ最愛の家族の命が喪われた事故の真相を知りたいと切望しても、それに応えてはくれない警察組織。
そんな捜査権のない弱者の助けになり得るのが交通事故鑑定人である。本書は鑑定に50年携わった駒沢幹也さんの出会ったケースを紹介している。
駒沢さんは、事故は物理現象であり、人は嘘をつくが物は嘘をつけないと喝破する。実際の事故を元に、どのような動きをしたらどのような傷がつくかを詳述しているのでとても読み易く、すんなりと理解できる。理解できないのは、これほど明確な証拠を裁判官が取り上げないことすらあるということ。
噴飯ものの話として、事故後に病院で足を切り落とすことになったものが、事故の際に足が切られ、現場に落ちていたという判決文になっていたことが紹介されていた。自由心象主義は結構だが、そんなインチキすらしてしまうのであれば、裁判なんていらない。
また、本書では鑑定人が交通事故の遺族から不正に金銭を巻き上げる場合も紹介されている。信頼できる鑑定人に出会えるかどうか。そして裁判となったときに、自分の言い分を徹底して代弁してくれる弁護士にめぐり合えるかどうか。決して無視し得ない要素だろう。
最後に、駒沢さんがいざ事故に遭ってしまった場合に決して忘れてはならないこととして以下の三点を挙げているので紹介する。こんな知識が役に立たないことに越したことはないが、事故は選べない場合もあるから、いざという時には役に立つと思う。なにせ、被害者側にはこれだけが唯一の武器で、死人に口無しがまかり通っているようだから。
1.事故があったら、何はともあれカメラを持って現場に行き、これと思うものは何でも写す。
2.次に警察に行き、加害車両についても可能な限り写真を撮る。
傷があるところだけではなく、無いところも忘れずに。
3.衣類や持ち物も保存しておく。
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![]() | F(口でする)の性愛学 (2000/10) ティエリー ルゲー 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
タイトルどおり、フェラチオについての本である。とは言っても、大人しか読んではいけない類の本ではない。実際、読んでも性的な興奮を催すようなものではないのだ。
性については多くの先人が論じており、サディズムやマゾヒズムについても同じ。フェティシズムについてもそうではなかろうか。それだけ人間にとって性が大事なものである、ということだろう。
ところが、フェラチオとなると途端に様相が変わる。今やセックスシーンに欠かせないこの愛の手法は、まだまだ秘められたものであり続けているという不思議さを併せ持つのだ。
本書は、フェラチオが確認される最古の事例や、フェラチオを人々がどのように受け止めてきたか、文学ではどう扱われ、如何にして世界中に知られる行為となっていったか、等等、フェラチオに関しての知識の集大成とも言える。例えば、古代エジプト文明でフェラチオのシーンが描かれているとか、ローマ時代は能動的に吸わせることと受動的に吸われることを区別し、後者は疎んじられた、なんてなかなかに面白いではないか。
また、フェラチオが性交とは違う性格を帯びていることが、様々な人々の反応から明らかになる。それは恋人達の間では愛の行為となるが、売春のシーンでは手っ取り早く男の欲望を消滅させる手段となる。する側の意識がどのようなものかも分かるのは魅力の一つ。実際に体験したいとは思わないが。
フェラチオには、愛を感じる。それは全面的な受容を感じさせると共に、圧倒的な愉悦をも与えてくれる。それは、男が主体的な行為でもあれば、女が主体的とも言いうる。この不思議な魅力溢れる行為に、正面から光が当てられ、論じられるのは価値あることのように思う。
文章は決して下品にならず、扇情的ではないので、そのようなものを期待して本書を手に取ると失敗することになるのは注意しておく。残念なのは、フロイトをかなり取り上げていること。フロイトほどの性欲を持たない(つまり、ほとんど全ての)人にとっては、理解できない点がある。ただ、精神分析という名の最悪のペテンが蔓延している西洋社会の本では仕方がないことかもしれない。
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![]() | インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書) (2006/11) 手嶋 龍一、佐藤 優 他 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
インテリジェンス、即ち情報戦は国家の死命を制す。
日露戦争における明石元二郎大佐の謀略、独ソ戦開幕当時のドイツ軍の大攻勢も謀略戦に支えられたものだった。戦前の日本はその情報のほとんどを解読され、海軍軍縮会議で苦杯を舐め、やがては太平洋戦争の惨敗へと繋がった。
しかし、情報戦は同時に通常の世界からは隠されたものでもある。新聞を読み、ニュースを見るだけではその姿を垣間見ることすらできない。情報を広く集め、正しく判断できる者だけが情報戦の勝者となれる。
本書はジャーナリストと外務官僚として情報が集約される機関で活躍した二人の対談である。情報戦についてあるべき姿を思い描く二人が縦横に情報戦について語り合っている。
ある時には日本の情報網が捨てたものではないどころか、世界でも有数のものであることが示され、またある時には余りにも常識からかけ離れた組織運営がなされたことへ苦言が呈される。事件としては大韓航空機撃墜事件であったり、911であったり、ソ連時代の高官についての秘密情報だったりするわけだが、それらの機微に触れる情報を如何に手に入れ、用いるかが議論される。
恐らくは決して語られることのない深い背景と複雑な動きがあるのだろうが、それを理解しても一般人からは隠された秘密の世界で何が行われているかに触れられるのは知的好奇心をくすぐられる。
本書のように日本の情報機関の問題を情報戦の渦中に居る人々が炙り出す本が、ベストセラーとして読まれることにはとても価値があると思う。私にはとても情報戦に加われるような頭脳も無ければタフさもないが、せめてその存在価値を認めることはできるようでありたいと思った。
ただ、冒頭で互いを褒め合うような流れがあって、残念だった。特に佐藤優氏の方は鈴木宗雄との関係で毀誉褒貶が激しく、彼が有能な人物であることを示す必要があったのかもしれないがどうしても公開の場での馴れ合いに感じられてしまった。それが残念。
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![]() | ウソの歴史博物館 (文春文庫) (2006/07) アレックス バーザ 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆☆
文字通り、世間に流布したウソやペテンを集めた本。264冊目で紹介した『詐欺とペテンの大百科』と同じ趣向といえる。違うのはボリューム。なにせ、かなり厚いハードカバー(2段組)と文庫だ。ボリュームで比較する方が間違っている。
本書が『詐欺とペテンの大百科』と異なる点は、誰もが楽しもうと思って付かれたウソ、即ちエイプリル・フールも大きく取り上げている点や、より新しいウソについても集められている点だろう。
マーク・トゥウェインらが捏造した新聞記事、アビシニアの皇族を装った若者たちにドレッドノート戦艦(ド級の語源になった戦艦ですね)を案内したイギリス海軍、斑点のある四角い卵(どこからどう見てもサイコロ)斑点のある四角い卵(どこからどう見てもサイコロ)などを発見したとする『カワ漫遊記』の顛末、オーソン・ウェルズが読んだ『宇宙戦争』によるパニック、スイスでのスパゲッティ農家の収穫シーン、左利き用ハンバーガー発売などなど、これでもかとばかりにウソが並ぶ。
人々は活字になった情報をたやすく信じることが分かる。恐らく、そこに権威を感じてしまうため、友人から聞けば容易にウソと見破れる話でも真実であるかのように思われてしまうことが原因ではないだろうか。
本書でもそのパターンが実に多い。無影派とのタイトルで紹介されているのはこんな話だ。
キュビズムなどの抽象芸術を茶化した絵を、”無影派”(架空の流派)の創始者である”ロシアの画家パーヴェル・ジョルダノヴィチ”(架空の人物)という触れ込みで展覧会に出品した。説明を適当にでっち上げてそれらしく見せかけたところ、作品は賞賛されたという。
ロシアの画家を名乗ったのは、外国産の方が有難がられると思ったためとのことで、舶来の品を有難がる心情はどこも変わらないのかもしれない。無影派という架空の流派を使い、それも創始者と主張する。たったそれだけのことで、ナンセンスな絵が芸術に化ける。なんとも奇妙な話では無いか。
その他、ポール・マッカートニー死亡説だとか、ピルトダウン人といった有名な話が加わる。なお、日本からは藤村新一による旧石器の捏造事件が唯一のもの。新しい話だと、9.11にワールド・トレード・センターで撮られたとする写真がある。これについては、その後に出没したパロディ(WTCにマシュマロマンが迫る)の方が楽しい。
それにしても、次から次へとウソを思いつき他人を騙す方も騙す方だが、どう見ても嘘っぱちの話に騙される方も騙される方だ。騙された後で笑えるのであれば良いが、株の投資話では笑うに笑えない。せめて楽しめるウソは楽しもう。本書を読めば笑ってしまうこと間違いなし。電車の中で読んでしまった私が言うのだから間違いない。ただ、同じ轍を踏まれないことを願う。
なお、本書はMuseum of Hoaxes(英語)で紹介されていた話を書籍化したらしい。もし英語が得意で本書を気に入られたのなら更なる楽しみが待っているものと思う。文中にいくつかリンクを貼っておいたので是非どうぞ。
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![]() | 生き物たちの情報戦略―生存をかけた静かなる戦い (DOJIN選書 11) (2007/09/20) 針山 孝彦 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
あらゆる生物が自由に生きるには地球は狭すぎる。だから食べられるものと食べるものが居る。しかし、苦も無く食料が手に入るわけではない。なぜなら、食料とされる側も生きるためには捕食者から逃げ回らなければならないからだ。
食物連鎖が、現在の生物の多様性をもたらす原動力となった。食料を得ることが容易な生物はそうではない生物よりも、逃げるのが上手い生物は下手な生物より子孫を残したのだから当然だ。
そのため、生物は様々な手段で外界を認識しながら世界に適応している。著者は生物を取り巻く世界を環世界と定義し、なぜ環世界を見詰める必要があるのかを生物の歴史から辿っている。
初っ端に著者が訪ねるのは南極。このペンギン以外の生物とは無縁そうな地においても、息づいているものたちがいる。スプリングテールこそ、その求める生物だ。日本ではトビムシとして知られる、たかだか1,2mm程度の虫。そんな詰まらぬもの、と多くの人は思うだろう。しかし、ここにも生物の魅力が隠れている。
そもそも、どうしてスプリングテールは凍らないのだろうか。ペンギンは恒温動物で内部から熱を出すのに加え、防寒着たる羽毛で覆うことで凍らないようにしている。ところがスプリングテールは裸に近い格好で、おまけに変温動物なのだ。従ってスプリングテールの体温は南極の温度と等しい、マイナス数十度にまで下がるはず。
知ってのとおり、水は凍りになるときに体積が膨張する。もしスプリングテールの体内で氷の結晶が出来てしまえば、そのちっぽけな体は容易に破壊されてしまうはずなのだ。ではどうして彼らは生きていけるのか。
答えは本書に譲る。しかし、生物世界を覗き見ると、このような奇跡とも言えそうな適応を果たした種が多いことに感嘆する。生物たちの神秘の世界に、環世界との関わりという切り口で迫っている本書は、生物の多様性を知るのに格好の書と思う。
また、原始的な生物がエディアカラ生物群のような軟体動物を経て、カンブリア爆発へ辿り着いた流れについて、著者なりの見解を提示してくれているのも魅力だ。仮説に過ぎずとも、生物進化が猛烈に進む情景を描けるようにしてくれている功績は大きい。
更に、著者が生物を求めて彷徨うのは先述した南極からアフリカ、高山と実に広い上に通常の人なら行かないようなところが多い。それらの地での体験を面白おかしく書いているので、旅行記としての部分も楽しむことが出来た。
ただし、入門書というには言葉の説明がやや足りないこと、図版が少なく説明文から状況を理解するのに時間がかかる点が難点と言えば難点である。また、著者の社会的な関心が入り込んでしまっているのは明らかな欠点だろう。
曰く、「最近の人心の荒廃は、ヒトも生物であるという視点を忘れた生活様式、社会体制が進んだ結果と考えている」と。しかし、人心が荒廃したという証拠はあるのだろうか。凶悪犯罪で言うなら明らかに減少している。何をバロメーターにしているのかは不明だが、その手の三流エッセイを書きたいならこの手の本に紛れ込ませないで欲しい。著者は科学者なんだから、具体的な根拠を出してその数値の変化を追う、などの手法を取って欲しいものだ。
最後に腐してしまったが、そこ以外は面白く生物の多様な世界を改めて教えてくれたことには感謝している。なお、本書はわださんの山路を登りながら、こう考えた。で教えていただきました(紹介記事はこちら)。併せ、感謝いたします。
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![]() | 議論のルールブック (新潮新書) (2007/10) 岩田 宗之 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
議論はしばしば低レベルな個人攻撃に堕する。いや、その通りで私も過去の所業を思い出しては赤面する次第である。本書はそのような低レベルな議論に陥らないためには何が必要かを説く。
感情論とは何か、なぜ行けないのか。冷笑主義者に付き合うべきではないのはなぜか。正しいことと納得できることの差は何か。発言の責任とは何か。これらを問い直すことで、冷静で価値のある議論を行えないかと提言しているわけだ。
個々の提言内容自体は私も正しいと思う。しかし、本書が刊行されて、たとえベストセラーになったとしてもやはり議論は低レベルで個人攻撃に堕するのではないか、というのが私の抱いた疑問である。
実のところ、多くの人には冷静に議論する能力なんてないのじゃないか、というのがそもそも私の疑問なのだ(私も含めての話ですよ、勿論)。
まず議論には客観的な事実あるいは架空の存在について議論をするもの同士が共通の概念を有することが必要だ。なので、スロバキアとスロベニアの区別がつかないブッシュ大統領と東欧の情勢について議論をすることは完全な無駄になる。なぜなら共通の認識がないから。
問題はこの後だ。
ある事実もしくは仮定から論理的な正しさを保ったまま結論を導くことが出来るか、という難問が立ち塞がる。しかも、それは相手が正しさを理解し受け入れるようにしなければならない。
これは難問だと思わずにはいられない。そもそも、論理の背後には実は大変に非論理的なものが隠されている。それは論者の趣味であり、思考であり、政治上または宗教上の信条である。
例えばだが、神が存在する証拠は未だかつて得られたことがない。霊魂が存在することを示した確固たる事実も存在しない。宇宙人が地球にやってきて怪しげな金属片を脳に埋め込んでいるということが実証されたことはない。
それなのに、神を信じる人は沢山居るし、霊魂が存在することを信じる人も同じくらい居るし、宇宙人が自分の脳に金属チップを埋め込んだと訴える人も沢山居る。どれも同じくらいのレベルの思い込みであるわけだけど、これらの人々と議論が成立するか考えてみて欲しい。
思い込みや趣味が論理の背景にあるということは、それだけ相手の議論を受け入れる余地がなくなることを意味する。私だって共産主義が人々を幸福にするなんて言われたら、何バカなこと言ってるんだと一蹴するし。
ただ、そもそも冷静に礼儀を守りつつ議論をしたいと思っている方や、自分がどのような立場で議論に参加するべきかを考える方にはとても役に立つと思う。
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![]() | まるくすタン―学園の階級闘争 (A‐KIBA Books Lab) (2005/11) おおつ やすたか 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆☆
ぴこていこくの紹介記事で吹いた本。マルクス主義の歴史を百合(しかも学園もの)で理解しようという頭が腐りそうな企画である。
まるくすタンと言いながら、まるくすタンが出てくるのは本書の前半のみ。まるくすタンがぶち上げた「この学園の女子生徒の社会的活動は、その下部構造によって規定されてい」て下部構造を支配する学園の矛盾は解決されなければならないというテーゼ(平たく言えば女生徒の恋愛関係は下半身の事情によって規定されている)を実現に移すのはれーにんタンである。
ところが、歴史をパロった百合小説にしようとする余りにどこかストーリーがおかしくなっている。はっきり言って、前半でぶち上げた話と後半の展開が違いすぎるのである。まあ、それは実際のマルクスの主張をレーニンが必ずしも忠実に実行したわけではないことに符合させているのかもしれないが。
まるくすタンとそのパトロンのえんげるすタンの関係は、えんげるすタンが一方的にまるくすタンを慕いつつ、進展しない。その代わりまるくすタンは自慰にふけるわけなのだけど、それを「下部構造の矛盾を解決する」と表現するわけですよ。もうバカすぎてこういうの大好き。
後半パートの見所は、れーにんタンが余りに酷いところ。農業のテクノクラートを圧殺した点など、レーニンの所業はもっと知られて良いと思うので、この設定には納得する。その後のスターリン体制へのつながりもうっすらと書かれているので笑えるのだが、実際の歴史に思いを馳せると笑えなくなるので注意。
歴史とのつながりを無理に持ってきているので、運動部の活躍が生徒会の進退問題になるなど、変な設定もある。この辺り、歴史パロディ小説としての出来はあまりよくない。マルクス、エンゲルス、レーニン、トロツキー、スターリン、ケレンスキー、ツァーリの大体の動きを知っていなければ理解できないとは思う。
酷評しているようだが、ロシア革命までの簡単な流れと人物同士のつながりは分かるわけで、その点は評価したい。兎に角、「下部構造の矛盾を解決する」なんてバカな言い回しで笑える人は楽しめるのではなかろうか。
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