![]() | 誰か (文春文庫 み 17-6) (2007/12/06) 宮部 みゆき 商品詳細を見る |
評価:☆☆☆
夏の暑い最中、一つの事故があった。梶田という初老の男性が自転車に轢かれて死んだのだ。犯人は現場から逃走。
梶田には二人の娘がいた。結婚を直前に控え長女と、歳の離れた次女である。父が生きた証拠を書物にして示したいという二人の願いは、梶田が個人運転手として勤めた立志伝中の人物である今多コンツェルン会長を通して主人公の元に届く。妾腹ではあっても、愛娘の婿として迎えた男である。
といっても、主人公はその才覚を見込まれて今多家に入ったわけではない。いくつかの偶然から娘と知り合い、純粋に二人の付き合いで結婚を決めたのだ。なので、彼の役割は今多コンツェルンの社内報をまとめる部署である。要するに、会長の目の届くところに居ろということ、と把握している。
本を書くには編集が必要、というわけで主人公が駆りだされるわけだ。そんなわけで姉妹に会うと、どうも温度差があることに気付く。本の出版が犯人逮捕につなげられないかと意欲を燃やす妹と、どうやら出版には反対らしい姉。姉の方は、父の過去に影があることに怯えているようだが・・・
自転車事故で亡くなった梶田にどんな過去があったのか。その設定が無理に大きすぎず、小さすぎず、主人公の立場に相応なあたり、プロットは上手いと思う。その一方で、どうにも主人公の魅力というのが伝わってこないのがマイナスだろう。加えて周りの人もどうも紋切り型。思考の流れなどは丁寧に追いかけられているので説明は十分なのだけど、その手のことを目指すのなら叙述トリック物にして欲しかった。
設定の細かさは相変わらず凄いと思う。日常の些細なことまで書き込まれる辺り、作品世界についてかなり考え込まれているイメージがある。ただ、その作りこみの中で伏線として使われているあるネタが、露骨に回収状況を示していたのは如何なものかと思う。
宮部みゆきの小説は久々で楽しみにしていたのだが、ちょっと残念だった。個人的に彼女のベストは『レベル7(セブン)』か『火車』だと思う。この二作を越えることは出来ないのかな。
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