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429冊目 北朝鮮・中国はどれだけ恐いか
北朝鮮・中国はどれだけ恐いか (朝日新書 36)北朝鮮・中国はどれだけ恐いか (朝日新書 36)
(2007/03)
田岡 俊次

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評価:☆☆☆☆☆


 近隣の国というのは過去に攻めたり攻められたりした関係で、仲の悪いことが多い。ドイツとフランスが良く取り上げられるけれども、日本とその近隣国家だって負けてはいないだろう。日本が他国を嫌うのは故有ってのことという人も居るかもしれないが、なに、相手も同じことを思っているものだ。

 取り分け険悪なのが北朝鮮であることは明白で、核実験などを機に先制攻撃論まで飛び出したのは記憶に新しい。もっとも、先制攻撃論をぶち上げた人は他国を攻撃するより前に自分の政権を放り投げちゃったわけだけども。

 次に懸念されるのはやはり中国。軍拡はかねてから指摘されているし、尖閣諸島を巡ってのイザコザに面白くない思いをする人々は多いだろう。

 そういう自分自身もこの両国に加えて半島のもう一つの国を好ましからぬ存在(可能な限りオブラートに包んだ言い方)と思っている。好悪の念から言えばそうなるが、では現実的な脅威といえばどの程度あるのか。

 北の核はどうなっていて、中国の軍拡はどのレベルなのか。中台で紛争はあるのか。この辺りの専門的なことを、素人にも分かりやすく解説してくれている。日本を取り巻く環境が客観的にはどうなっているのかを知らなければ、軍事の基礎を知らなければ、
我々は現実に立ち向かうことは出来ない。このような本が貴重な示唆を与えてくれるのは間違いない。

 ミサイル防衛があってもなくても変わらない程度にしか役に立たないことは知っていたのだが、北の核に絡めて実は世界(もっと言えばアメリカ)が懸念しているのは日本の核武装化であるとは意外ではないか。

 他にも親日国である台湾に同情する人々が台湾独立論を唱えたりしているが、当の台湾人自身が独立を望んでいないことや中国も現状維持を認めていることを考えれば現実味が全く無いことが分かる。では中国が心変わりをして台湾占領を図ったらどうなるか。これについては、かなり丁寧に双方の戦力分析をした結果、台湾占領は現実味がないことが分かる。興味がある方は是非本書に当たって欲しい。

 これらの現実を踏まえた上で、著者は先制攻撃論や日本核武装論などの現実を見据えない論に対し、”タカ派というよりバカ派”と延べ、危うさを指摘している。これらがバカな論なのは、軍事的にありえないことだったり、政治的にそんなカードは絶対切れない(少なくとも太平洋戦争をもう一回やるくらいの覚悟が必要)ものだったりする。情勢を知れば、これらの論は幻想に過ぎない、というわけだ。当否が気になる方は是非読んでみて欲しい。



 なお、国民の命が護れるならSDIという高額な防衛兵器でも導入するべきだという意見もあろう。しかし、護れる現実性はほぼ完全にゼロであるなら前提が崩れる。また、仮に効果があるとしても、金と命を比べて命を取るのは間違いだろう。無限のカネは存在しないわけで、限られた資源を投入するならば投資対効果は考えなければならない。例えば、SDIの運営費が毎年1000億円なら良いかもしれないが、100兆円なら決して手を出してはいけない。ボーダーラインがこの金額の間にあるのは間違いないだろうけど、その辺りの議論もして欲しい。ちなみに私は効果がないから導入反対であるが。

 ”タカ派というより莫迦派”などと言われないためにも、最低限の軍事的センスを身につけるのは必要だろう。知っていれば、恐れるべきことを正しく恐れることができるようになる。得難いかもしれないが、重要な知識であると思う。
ノンフィクション | 2007/12/18(火) 23:53 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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