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395冊目 ファルージャ 栄光なき死闘―アメリカ軍兵士たちの20カ月
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評価:☆☆☆


 イラク戦争はどう考えても世紀の愚策だったとしか言い様がない。大義からして大量破壊兵器を隠し持っているというものからアルカイダと連携して世界にテロをばら撒いていると代わり、どちらも根も葉もないプロパガンダだったことが明らかになったら今度はイラクを民主化するためと二転三転するお粗末さだった。

 しかも、攻め込んだ(ということは勝利の)後の青写真を全く描かず、圧制者フセインを倒した解放軍として大歓迎されて民主政治が根付いていくものだ、との想定は甘すぎる。私を含め、民主主義の国に生まれ育った者の大多数は民主主義を最高とまでは行かないにしても一番マシな政治体制だと思っているだろうが、そうではない社会の人々が民主主義を待ち望んでいるなんて考えるのは早計に過ぎるのだ。

 民主主義という政治体制が成り立つ最低限のレベルとして、政府の行っていることを知らせる手段があること(具体的にはラジオや新聞による情報伝達網が存在すること)と、自分達で政府の行動をチェックし戴くに相応しい勢力かどうか判断することが必要だろう。

 しかし、イラクにそれが十分あったとは思えない。必要なものをすっとばしてしまえば、残るのは戦勝国に都合の良いことを押し付けられているという感慨だけだろう。

 本書を読めば、ファルージャにおける米軍への抵抗がどれほど一般人を巻き込んでの規模かがよく分かる。それは即ち、多くの人が米軍の支配に否定的感情を抱いている、ということだ。

 確かにモスクにおいて導師が反米感情を煽るような演説をしているのは事実だろう。少数だろうがはるばる外国から米軍と戦うためにやってきた人々がいることもまた事実だろう。しかし、ゲリラ戦というものは人々の広範な支持が無ければ存在し得ない。また、命を棄ててでも戦いに加わろうというのは軽い気持ちではできるものではない。一部の人が軽い気持ちで武力闘争に参加しているのは事実だろうが。

 それでも読んでいると海兵隊の勇敢さ、力強さには感銘を受けざるを得ない。その背景として米軍の兵士はひとりひとり名前で書かれているが、ファルージャの抵抗勢力は十把一絡げで”武装勢力”である。読者が海兵隊にのみシンパシーを感じてしまうのは避けられない。事件の報道があったとして、被害者の名前やプロフィールすら知らない状態と、詳細を知っている状態で事件への感じ方は全くことなるだろう。それと同じことだ。テロリストで名前が出るのはザルカウィとジョージ・ブッシュ他数人くらいのものだから。

 そして、フセインが同情の余地のないほど圧制者だったこと、武装勢力側が誘拐・惨殺などの残虐な手法を採ることもまた、政治的・精神的にアメリカを近しい存在として感じさせることになる。

 さて、本書の内容は、といえば場所と攻守を変えた『レイテ戦記』といえば分かりやすいだろうか。ファルージャの攻略戦を微に入り細を穿つように描ききっている。なぜファルージャで大規模な戦いが起こったのか、海兵隊員たちがどのように命懸けで戦ったのか、よく分かる。一将功成りて万骨枯るの世界だ。もっともどちらも戦意は高揚していたようだが。

 綺麗ごとではない戦争の姿がよく分かる。また、イラク人たちが戦争をどう思っているか、間接的に探ることも可能になっている。

 大義なきイラク戦も、済んでしまったからには元通りに戻すことなどできない。あとはアメリカがどこまで責任を持ってイラク人の多くが受け入れ可能なシステムを導入できるか、だ。アメリカ人の多くが、ではなくて。そんなことを考えさせられた。
ノンフィクション | 2007/10/21(日) 23:08 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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