![]() | 軍隊なき占領―戦後日本を操った謎の男 (講談社プラスアルファ文庫) ジョン・G. ロバーツ、グレン デイビス 他 (2003/03) 講談社 この商品の詳細を見る |
評価:☆☆☆
ハリー・カーンという人物をご存知だろうか。日本の戦後復興に少なからぬ影響を及ぼしたこの謎の人物は、しかしその影響力とは裏腹にほとんど知られていない。
知られざる人物がなぜ日本に大きな影響を与えたといえるのか。それは、日本の権力中枢は勿論、占領軍の中核にまで彼の活動が入り込んでいるからに他ならない。そして、重要な節目節目で必ず彼の姿が見え隠れしている、というのはとても興味深い。
しかしながら、政治の裏面を探る人が陥りがちな罠がある。陰謀論の世界である。一度この世界に迷い込むと、あらゆる偶然が陰謀の符牒にしか見えなくなる。厄介なのは一抹の真実が含まれている場合で、読者には鋭い真実の暴露なのか、はたまた陰謀論の迷妄の顕現なのか分からなくなってしまう。
残念なことに本書もその幣を免れていないように思う。CIAが自民党に資金を渡して冷戦へ日本を引きずり込んだことは事実だろう。そこに陰謀があったこともまた事実だろう。しかし、著者の主張する陰謀の範囲と事実の上での陰謀の範囲が違うように感じられてしまうのだ。
そのあたりが残念ではあるが、戦後の日本が辿った復興の道にアメリカの一部グループの意図が大きく働いていたことの指摘は大きいと思う。ハリー・カーンという知られざる人物に迫ることで、表面的な動きだけからは戦後日本の辿った道が窺い知れないことを明らかにしているわけで、その点で著者の狙いはかなりのところ達成されているように思う。
訳者の問題かもしれないのだが、安易に右翼といった扇情的な言葉を冠しすぎるきらいがある。安保闘争で岸は辞任に追いやられるが、その際にも大多数の国民が反対していたかのように書いているが、自民党の議席推移を見ると、この当時も国民の多数は自民党を支持していたことが明らかである。
当時の自民党の動きを評価するかしないかとは別に、事実は事実として認めなければならないだろう。この辺りの過激さが無ければもっと説得力を持ちえたのではないかと思うとちょっと残念である。
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