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386冊目 百年の誤読
百年の誤読 百年の誤読
岡野 宏文、豊崎 由美 他 (2004/10)
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評価:☆☆☆☆☆


 あのベストセラー、読んでみたけどちっとも面白くない。ひょっとして自分の読解力が足りないのかしらん。名著と名高いあの本も理解できない。自分は読み手として間違っているのだろうか。

 だが、著者達はひるまない。どんなに売れた本でも、どんな文豪が書いた本でも、名著の誉れ高い本でも、駄本は駄本と言い切ってしまう。おまけに岡野さんと豊崎さんの二人の著者が二人とも並大抵の読書家ではないので、その鋭い舌鋒が冴え渡っている。余りの快刀乱麻ぶりについ笑ってしまうので人前で読むのはお勧めできないくらい。

 取り上げるのは1900年〜2004年までのベストセラーと話題の本。具体的には、徳富蘆花の『不如帰』から『世界の中心で、愛を叫ぶ』まで。私の周りの読書人で誰一人として褒めた人のいない『世界の中心で、愛を叫ぶ』はこんな感じで評されている。

豊崎 はっきりいって話すことないんです(略)
岡野 中身もほぼパクリ。村上春樹の『ノルウェイの森』でしょ、これ全部。


 まあ、この本に読む価値が全くないのは周知の事実だから良いとして、森鴎外の『渋江抽斎』は「なんでまた、自分にとって興味のない人の人生にこれほど詳しくならなきゃなんないんだって」と言い、志賀直哉の『城の崎にて』では「これってほんとうに巧いの?」と疑問を呈する。同じく小林多喜二の『蟹工船』も「幼稚な表現が多いなあ」とばっさり。渡部昇一『知的生活の方法』や曽野綾子『誰のために愛するか』は、是非本書を読んで確かめてください。

 怒りを感じるような本にはちゃんとそう評価を下す。『金持ち父さん 貧乏父さん』の胡散臭さを「あるのは、「俺は金儲けがうまい。お金に対するインテリジェンスが世間のやつらとは違うんだぜ」って自慢話のオンパレードだけでしょ」と喝破する。ビジネス書全般に感じるマイナスオーラを的確に表現していて笑った。『チーズはどこへ消えた?』にも同様に怒りをぶつける。二谷友里恵『愛される理由』は「許せねえ。言ってみろ「許される理由」を」と岡野さんが言えば「全編これムカつく本」と豊崎さんが応える。同じ項で「ユーモアというものが、いかに知性に支えられているかがよくわかる」との主張には無条件で賛成。

 もちろん、腐すだけではない。絶賛されているのは宮沢賢治。言い尽くされていることではあるがその擬音は絶品と賛辞を惜しまない。また、さくらももこ『もものかんづめ』には「ゾッとするぐらい巧い」と言い、褒め言葉しか出てこない。

 やはり良い本は良いし、ダメな本はダメ。残念なことに大衆にも分かるようなレベルの本はダメな本であることが多くって、他にもっとまともな本を知っている人にとっては駄本であることが多い、というような雰囲気がある。その幾許かは真実だろう。

 私も『愛される理由』だの『金持ち父さん 貧乏父さん』といった類の本に時間を割くほど暇があるわけじゃないと思うわけで、ダメな本をダメと教えてくれるこのような試みは心強いと思う。読みたいと思わされた本もいくつもあるし。愛は毒を内包するものだから、これくらい毒がある書評が面白いのは当然なのかもしれない。
未分類 | 2007/10/02(火) 23:14 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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