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Skywriter

Author:Skywriter
あまり一般受けしない本ばかりが好きと言う難儀な管理人です。
お勧めした本を面白いと思ってもらえると最高です。

BK1書評の鉄人31号。
鉄人


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400冊目 宇宙が残した最後の謎
宇宙が残した最後の謎 宇宙が残した最後の謎
南山 宏 (2001/11)
廣済堂出版
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評価:☆☆☆☆


 この宇宙論チックなタイトルに騙されちゃあいけません。れっきとしたオカルト本です。それを分かって読むにはとても楽しい本なのは間違いがなかったりするのだけど、それはちょっと前に流行ったオカルトネタを網羅しているから。

 実に勉強熱心に、東西のオカルトに首を突っ込んではそれを紹介してくれているわけで、信じずに読むなら世界中に変わった人がいるのであるなぁということを教えてくれる貴重な書ともなりうるのだ。

 上記の通り大変な魅力に溢れた本書の目次を見てみよう。

20世紀最大の謎が解けた!!
最新『UFOタイムスペースシップ』仮説

インド・ラーマ超文明と太古核戦争ミステリー

地球と宇宙を結ぶ謎の幾何学パターン



 UFOの不思議な行動は、UFOをタイムスペースシップと仮定すると全て解ける!というのはスゴイ着眼点に違いない。どれほどスゴイかと言うと、今までの謎が全部解けてしまうくらいスゴイのである。多分、解けないのはUFOに遭遇する人はなぜ悉く絵が下手なのかということくらいだろう。

 でも、タイムスペースシップなんて誰も見たことないのに、それを持ち出したら全てが解ける、というのはちょっとアレなんじゃないかなあ。

 次もスゴイ。といっても、これはオカルト観察好きには知られた説なのだけど、ラーマーヤナとかマハーバーラタには古代の核戦争の模様が描かれている!な、なんだってー!!という代物。

 空を翔るヴィマーナ、一帯を焼き尽くす余りの威力に神々すら恐れたという超兵器。見え隠れするジェームズ・チャーチワードの影。俺たちは、なにもかも、遅すぎたんだということを悟らされてしまう。

 問題は、該当する古代の文明がレンガ造りの文明しか持ってないってことなんだよね。たとえば、指数対数微分積分はできるのに一桁の足し算ができない文明が荒唐無稽なように、核兵器を作り、制御するには大変な文明の発展が必要。ところが、そのようなものは一切発見されていない。金属の集積や精錬も見られず、制御に必要な計器類についてもまた同様なのである。それなのに、太古の文献には核兵器と思ってもそんなにすごく外れるわけじゃない記述があるから太古の時代に核兵器があったとはできない。

 地球と宇宙を結ぶ幾何学模様というのはストーンヘンジを含む周辺の遺跡が一つの直線状に乗るとか、ミステリー・サークル(出た!)やらキャトルミューティレーション(出た!!)やらが出現する地点が地球物理的に明らかになるという章。

 これはもう大変な騒ぎで、これが本当ならスピリチュアルな占い師に我が家も地脈が悪くないか見てもらわねばなるまい。もしかしたらそれで私の頭が悪い説明が付くかもしれない。なので、私が頭の悪いことを言っても私のせいではありません。地脈が悪いんです。あるいは宇宙人が私を攫って脳をいじってしまったんです。なんて書くと本当に頭の悪いヒトみたいで大分アレだ。


 さて、この章において日本の古代文明を記したというカタカムナ文献を著者は擁護する。この一般に知られていない文献を世に知らしめたのは楢崎皐月(ならさき・こうげつ)なるこれまた一般に知られていない人物。wikipediaによると、円と直線からなる文字を5年がかりで解読したというのだが、これは不可解に過ぎる。というより、確実に不可能だ。

 一度喪われた文字の解読は極めて困難で、何人もの専門家が取り組んでも解読の端緒すら掴めないものばかりなのである。ロンゴロンゴは未だに解読されていない。

 いや、ヒエログリフはどうしたとの突込みがあるかもしれない。そこで『ロゼッタストーン解読』から天才・シャンポリオンがいかにして解読を成し遂げたか、核心部を引こう。

 シャンポリオンの偉業を生んだ最後の要因は、たくさんの資料を利用できたことだった。(略)
 (略)そこ(パリ;引用者注)にはナポレオンの遠征によってエジプトから持ち帰られたばかりの、まだ手つかずの興味ある資料が大量にあり、また、図書館にはナポレオン軍がヨーロッパ中から略奪した貴重な書物や手稿があふれていた。


 これらを利用できたからこそシャンポリオンは解読にたどり着くことが可能だった。これに加え、ロゼッタストーンという解読に絶大な力を与えた遺物の存在を忘れてはならない。そこには既知の文字とヒエログリフとが、同じ文章で載っているという奇跡があった。

 これほどの僥倖を得ても、1807年には手をつけていた解読作業の報告がなされたのは1822年だった。想像しうる限りの幸運と、天才的なセンス、先人たちの業績が結びついても10年以上を要するとんでもない作業こそ、言語の復活に必要なことである。従って、たかだが数年で未知の文字で書かれた文献を翻訳したなどという戯言に付き合うのは時間の無駄である。

 そのようなものの一つがこの『カタカムナ』であり、ムー大陸の存在を記した古文書である。そもそもムーを主張したチャーチワードは、該当する古文書すら示していない。最も、チャーチワードの場合、元イギリス陸軍大佐を名乗っていはいたがイギリス陸軍にそのような者が存在しなかったことが明らかになっているわけで、まずは自分の身分から示すべきかも知れない。


 とにかく、こんなノリでオカルトネタがごった煮にされていて胃もたれする程なので、寝る前にクスリと笑うために使うというのが正しい読み方。用量、用法をお確かめの上、オカルトを外から眺めるのが好きな方の助言を仰いだ上でご覧ください。

 個人的には楽しかったけど知っているネタが多すぎたのが残念。なんでそんなの知ってるんだという突っ込みは無しの方向で。



 ちなみにこれにて目標とする1000冊から見て4割達成。この手の本を交えてこそ無秩序なブログだと思っていただけると嬉しい。
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SF・ファンタジー | 2007/10/30(火) 23:28 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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399冊目 カメレオンは大海を渡る
カメレオンは大海を渡る―サイエンス・コラム110 (ハヤカワ文庫NF) カメレオンは大海を渡る―サイエンス・コラム110 (ハヤカワ文庫NF)
橋元 淳一郎 (2003/06)
早川書房
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評価:☆☆☆


 カメレオンの生態を知っている人はタイトルを見てぎょっとしたのではないだろうか。というのは、カメレオンは決して海を渡らないからだ。

 ちなみに私は知らなかったので何も思わなかった。

 私のことはさておき、なぜこんなタイトルが付いたのか。実は、マダガスカル原産のカメレオンがアフリカに渡ったのは、マダガスカルとアフリカが分離した後のことということが明らかになった。どうやってカメレオンが海を越えて繁殖地を見つけ出したのか、明らかになっていない。宇宙の果てだとか太古の昔だとかではなく、身近に不思議がいくらでも転がっているものである。

 本書は『ネイチャー』と『サイエンス』から興味深い話題を選び出したコラム集である。男女の美しさへの反応、ゾウとライオンの社会の違い、チョコホリックな脳の話などなど、科学に興味を持たない人でも楽しめそうな話題が盛りだくさんである。

 分野としてもバランスが取れていて、人類史や古生物学、宇宙論から素粒子物理学や惑星科学などから万遍なく選ばれているので、本書を読めば最近の科学でどんなことが研究されているか、雰囲気を感じられるのではないか。

 個人的に面白かったのはクジラに最も近縁な動物は、なんとカバとブタだという話。クジラは賢いから食べちゃダメなどとほざく人は、そのすぐ従兄弟のブタには何も言わないのだから、自分の見た印象によって殺して良い動物といけない動物を他人にも強制する野蛮人と言われても已むを得まい。科学は偏見を打ち破るのである。


 ただ、深く突っ込んだ話題を扱うにはコラム集というありかたは圧倒的に力不足である。なので、興味を持った分野については他にあたらないとダメだろう。
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その他科学 | 2007/10/27(土) 22:13 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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398冊目 チャター―全世界盗聴網が監視するテロと日常
チャター―全世界盗聴網が監視するテロと日常 チャター―全世界盗聴網が監視するテロと日常
パトリック・ラーデン キーフ (2005/11)
日本放送出版協会
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評価:☆☆☆☆


 ジョージ・オーウェルの『1984年』を読んだときには戦慄したものだ。ビッグブラザーによって何もかもが盗聴された世界。そこでは政府はその情報を使って徹底的に人々を管理しているのである。

 オーウェルが描いたディストピア社会をもたらす盗聴社会は、まず彼の想定通り共産主義国において猛威を振るった。しかし、最も完璧に近い形で盗聴社会をもたらしたのは皮肉なことに民主主義国家においてだった。

 アメリカにおける国家安全保障局(NSA)を中核とするエシュロン・システムはそれこそ世界中の情報を盗聴していると思って間違いはない。ジェイムズ・バムフォードの『すべては傍受されている―米国国家安全保障局の正体』にはあらゆる情報へ貪欲に触手を伸ばすNSAについて詳述されていた。

 本書は、諜報機関としてのNSAとエシュロン・システムに対し、人々のプライバシーは保たれているのかを縦軸に、期待されている役割を果たしているのかを横軸に、現代の諜報組織の姿をあぶりだしている。

 プライバシーについては各自で考える必要があることだろう。本書では、プライバシー擁護派の意見を述べることでとても参考になると思う。

 しかし、ここでは著者が指摘するとおり、あなたや私の電話やメールの内容が全てエシュロンで盗聴されているからといっても、実のところ誰もそんなものに興味を示したりはしないという事実を述べておくに留める。

 諜報機関が役割を果たせているどうかはそれでは済まない問題だ。なぜなら、我々の税金が適正に使われているのかという問題が一点。そしてもう一点は、我々の安全や平和が保てるのか、という問題だ。

 なんといっても、我々はつい最近、NSAをはじめとする諜報機関の大失敗を二つ、目の当たりにしてきた。それは911の同時多発テロを防げなかったことであり、イラクに大量破壊兵器が存在する確かな証拠があるとしてアメリカがイラク戦に踏み切ったことである。

 911では、後知恵の見地に立てばテロを示す数多の前触れがNSAに集められていたことが分かっている。しかし、膨大な情報量の中から差し迫った危機に気付き、対応することは果たして可能なのか。また、イラク開戦では間違いのない証拠とされたものがお粗末なでっち上げだったことが判明している。

 どの情報が重要で、どの情報を急いで解析しなければならないのか。困難さは増す一方だ。多くの興味深い話題を交えながら、現代のスパイの実像と限界を明らかにしている。とても興味深い一冊。


 なお、情報戦に興味があるのなら、この分野における必須技能である暗号について、サイモン・シン『暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで』を強くお勧めしたい。
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ノンフィクション | 2007/10/26(金) 23:25 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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397冊目 クレオパトラ 謎の海底宮殿
クレオパトラ 謎の海底宮殿 クレオパトラ 謎の海底宮殿
BS‐i(TBS系)海底遺跡取材班、鈴木 まどか 他 (2003/11)
講談社
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評価:☆☆☆


 テレビで放映された番組をまとめた本。

 アレクサンダー大王の部将プトレマイオスが、大王死後にエジプトで打ち立てた王朝の最後の女王がクレオパトラである。プトレマイオス朝で続けられた近親婚に従い、弟と結婚した彼女は、支配権を巡って失脚する。

 その彼女が頼ったのがユリウス・カエサル。どんなに世界史に疎い人でもこの二人の名を聞いたことはあるだろう。

 カエサルとの間に息子を儲けた彼女はカエサルの力もあってエジプトでの権力を取り戻すのだが、カエサル暗殺とそれに続くローマの政変に否応無く巻き込まれ、やがて自殺を余儀なくされてしまう。

 そのクレオパトラの死体はどのように扱われたのか。これが謎なのだ。というのは、歴代王朝の仕来り通りならばミイラがつくられたはずだが、ローマ側がそれを見過ごしたとも思えないというのだ。

 本書が扱っている少なからずはこの部分で、仮説をいくつか紹介していたのが興味深かった。そして、この謎に迫るきっかけとなったのがアレクサンドリア沖に沈んだ海底遺跡である。

 アレクサンドリアは極めて繁栄していた都市であり、沖合いに沈んだ遺跡もかなりの規模であるという。その構造から、宮殿があったと推測されていて、一部ではクレオパトラの霊廟との説も唱えられているとのことだ。そしてこの海底都市を探るのが、本書の元になった番組で取り上げられていた話題のようだ。



 残念なことに、テレビ番組を本にすると余り良い出来にはならない。本書もその例に漏れず、テレビ特有の繰り返し表現、映像に主題を置いた話題運びがされているので情報量としては多くはないのが残念。また、挿入されている図版はテレビ画面をキャプチャーしたのかと思われるほど粗いもので、いくらなんでももっとマシなものがあるだろうと思わされた。

 それでも建築学的な立場から遺跡の全体像を推測するというような試みはなかなかに面白かったし、復元予想図にある整然とした町並みには近代都市を彷彿とさせられた。広く浅くクレオパトラについて知るには良いのかもしれない。
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その他歴史 | 2007/10/24(水) 23:03 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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396冊目 記憶は嘘をつく
記憶は嘘をつく 記憶は嘘をつく
ジョン コートル (1997/07)
講談社
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評価:☆☆☆☆


 過去が無ければ、人は人ではない。少なくとも、社会的には。

 我々の生活の大部分は過去の記憶の延長線上にあると言っても過言はないだろう。中には忘れ去りたい記憶もあるだろうし、思い出すたびに微笑をくれる大切で懐かしい記憶もあるだろうし、辛く哀しい記憶もあるに違いない。

 その記憶は本当に過去のどこかの時点で起こった事実そのものなのだろうか。その問いに、その通りだ、と答えた研究がある。脳を電極で刺激すると、鮮やかな記憶が甦ったという実験を聞いたことがある人も少なくなかろう。

 しかしながら、記憶の研究によると、答えは否である。記憶は自分の都合の良いように変化し、ある記憶は抹消され、別の記憶は架空のものであるというのが事実なのだというのだ。

 我々の大切な記憶が、実は自分の想像(あるいは希望)の産物とはなんとも面白い話だ。これについてはロスタフ達による一連の研究に詳しいので興味がある方は参照すると良いと思う。

 本書はそんな記憶の全体像に迫ろうとする意欲作である。記憶があるときには創造され、また別の時には変形されることが多くの実例から明らかにされている。

 ある人物は、子供時代の思い出に曽祖父が出てくるのだが、曽祖父は自分が生まれる以前に亡くなっていたという。また別の人物は、子供の頃に虐待にあったのが妹だと思っているが妹は自分こそ虐待にあっていたと記憶している。

 記憶が曖昧なのが惜しまれる、という方もいるかもしれない。しかし、本書でも紹介されている、抜群の記憶力の持ち主が辿った人生を眺めるとそうもいえない。

 その人物にとっては、遥か過去もつい先ほどのことも、同じように記憶されているというのだ。たとえば親族を喪った哀しい記憶は、多くの人にとって時間が癒してくれるものだが、その人物にはその恵みは訪れない。彼は、最後には抜群の記憶力を見世物にして生きる以外の道を持てなかった、というのだ。

 結局、忘れるということも大事なことなのだ。とすると、きっと記憶を現在の自分の状況に合わせて書き換えることも重要なことなのだろう。そこまでは迫っていないのだが、記憶の個人的な側面と社会的な側面を分けて論じるなど読み応えのある話題が多い。記憶とは何か、という魅力の多い分野を上手く紹介していると思う。
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医学・脳・精神・心理 | 2007/10/23(火) 23:48 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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395冊目 ファルージャ 栄光なき死闘―アメリカ軍兵士たちの20カ月
ファルージャ 栄光なき死闘―アメリカ軍兵士たちの20カ月 ファルージャ 栄光なき死闘―アメリカ軍兵士たちの20カ月
ビング ウェスト (2006/01)
早川書房
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評価:☆☆☆


 イラク戦争はどう考えても世紀の愚策だったとしか言い様がない。大義からして大量破壊兵器を隠し持っているというものからアルカイダと連携して世界にテロをばら撒いていると代わり、どちらも根も葉もないプロパガンダだったことが明らかになったら今度はイラクを民主化するためと二転三転するお粗末さだった。

 しかも、攻め込んだ(ということは勝利の)後の青写真を全く描かず、圧制者フセインを倒した解放軍として大歓迎されて民主政治が根付いていくものだ、との想定は甘すぎる。私を含め、民主主義の国に生まれ育った者の大多数は民主主義を最高とまでは行かないにしても一番マシな政治体制だと思っているだろうが、そうではない社会の人々が民主主義を待ち望んでいるなんて考えるのは早計に過ぎるのだ。

 民主主義という政治体制が成り立つ最低限のレベルとして、政府の行っていることを知らせる手段があること(具体的にはラジオや新聞による情報伝達網が存在すること)と、自分達で政府の行動をチェックし戴くに相応しい勢力かどうか判断することが必要だろう。

 しかし、イラクにそれが十分あったとは思えない。必要なものをすっとばしてしまえば、残るのは戦勝国に都合の良いことを押し付けられているという感慨だけだろう。

 本書を読めば、ファルージャにおける米軍への抵抗がどれほど一般人を巻き込んでの規模かがよく分かる。それは即ち、多くの人が米軍の支配に否定的感情を抱いている、ということだ。

 確かにモスクにおいて導師が反米感情を煽るような演説をしているのは事実だろう。少数だろうがはるばる外国から米軍と戦うためにやってきた人々がいることもまた事実だろう。しかし、ゲリラ戦というものは人々の広範な支持が無ければ存在し得ない。また、命を棄ててでも戦いに加わろうというのは軽い気持ちではできるものではない。一部の人が軽い気持ちで武力闘争に参加しているのは事実だろうが。

 それでも読んでいると海兵隊の勇敢さ、力強さには感銘を受けざるを得ない。その背景として米軍の兵士はひとりひとり名前で書かれているが、ファルージャの抵抗勢力は十把一絡げで”武装勢力”である。読者が海兵隊にのみシンパシーを感じてしまうのは避けられない。事件の報道があったとして、被害者の名前やプロフィールすら知らない状態と、詳細を知っている状態で事件への感じ方は全くことなるだろう。それと同じことだ。テロリストで名前が出るのはザルカウィとジョージ・ブッシュ他数人くらいのものだから。

 そして、フセインが同情の余地のないほど圧制者だったこと、武装勢力側が誘拐・惨殺などの残虐な手法を採ることもまた、政治的・精神的にアメリカを近しい存在として感じさせることになる。

 さて、本書の内容は、といえば場所と攻守を変えた『レイテ戦記』といえば分かりやすいだろうか。ファルージャの攻略戦を微に入り細を穿つように描ききっている。なぜファルージャで大規模な戦いが起こったのか、海兵隊員たちがどのように命懸けで戦ったのか、よく分かる。一将功成りて万骨枯るの世界だ。もっともどちらも戦意は高揚していたようだが。

 綺麗ごとではない戦争の姿がよく分かる。また、イラク人たちが戦争をどう思っているか、間接的に探ることも可能になっている。

 大義なきイラク戦も、済んでしまったからには元通りに戻すことなどできない。あとはアメリカがどこまで責任を持ってイラク人の多くが受け入れ可能なシステムを導入できるか、だ。アメリカ人の多くが、ではなくて。そんなことを考えさせられた。
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ノンフィクション | 2007/10/21(日) 23:08 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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394冊目 軍隊なき占領―戦後日本を操った謎の男
軍隊なき占領―戦後日本を操った謎の男 (講談社プラスアルファ文庫) 軍隊なき占領―戦後日本を操った謎の男 (講談社プラスアルファ文庫)
ジョン・G. ロバーツ、グレン デイビス 他 (2003/03)
講談社
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評価:☆☆☆


 ハリー・カーンという人物をご存知だろうか。日本の戦後復興に少なからぬ影響を及ぼしたこの謎の人物は、しかしその影響力とは裏腹にほとんど知られていない。

 知られざる人物がなぜ日本に大きな影響を与えたといえるのか。それは、日本の権力中枢は勿論、占領軍の中核にまで彼の活動が入り込んでいるからに他ならない。そして、重要な節目節目で必ず彼の姿が見え隠れしている、というのはとても興味深い。

 しかしながら、政治の裏面を探る人が陥りがちな罠がある。陰謀論の世界である。一度この世界に迷い込むと、あらゆる偶然が陰謀の符牒にしか見えなくなる。厄介なのは一抹の真実が含まれている場合で、読者には鋭い真実の暴露なのか、はたまた陰謀論の迷妄の顕現なのか分からなくなってしまう。

 残念なことに本書もその幣を免れていないように思う。CIAが自民党に資金を渡して冷戦へ日本を引きずり込んだことは事実だろう。そこに陰謀があったこともまた事実だろう。しかし、著者の主張する陰謀の範囲と事実の上での陰謀の範囲が違うように感じられてしまうのだ。

 そのあたりが残念ではあるが、戦後の日本が辿った復興の道にアメリカの一部グループの意図が大きく働いていたことの指摘は大きいと思う。ハリー・カーンという知られざる人物に迫ることで、表面的な動きだけからは戦後日本の辿った道が窺い知れないことを明らかにしているわけで、その点で著者の狙いはかなりのところ達成されているように思う。

 訳者の問題かもしれないのだが、安易に右翼といった扇情的な言葉を冠しすぎるきらいがある。安保闘争で岸は辞任に追いやられるが、その際にも大多数の国民が反対していたかのように書いているが、自民党の議席推移を見ると、この当時も国民の多数は自民党を支持していたことが明らかである。

 当時の自民党の動きを評価するかしないかとは別に、事実は事実として認めなければならないだろう。この辺りの過激さが無ければもっと説得力を持ちえたのではないかと思うとちょっと残念である。
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太平洋戦争・二次大戦・現代史 | 2007/10/19(金) 23:52 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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393冊目 ハワイ王朝最後の女王
ハワイ王朝最後の女王 (文春新書) ハワイ王朝最後の女王 (文春新書)
猿谷 要 (2003/01)
文藝春秋
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評価:☆☆☆☆


 本書はハワイの通史として書かれた本ではない。誰もが知るであろう、『アロハ・オエ』の作者で、カメハメハの開いたハワイ王朝の終焉を見定める運命を担わされた最後の女王リリウオカラーニの数奇な一生を追った小説仕立ての歴史書である。

 王の直系に生まれたわけではないリリウオカラーニは、はわいで屈託のない生活を送っていた。しかし、短命の王が続いたことからカメハメハの直系は絶え、紆余曲折を経てリリウオカラーニが初の女王として立つことになる。ハワイ人の誰からも愛されることになる女王の誕生だった。

 しかし、状況は、彼女が島国の優しい王として生を終えることを許さなかった。

 彼女が王となる前から、列強の魔の手がハワイまで延びてきていたのだ。フランス、イギリス、そしてアメリカ。特に西部開拓を終了させ、国内からフロンティアを無くしたアメリカは、西に広がる太平洋の覇権を狙うようになる。かの有名な、マハンの唱えるシーパワーの時代になっていたのだ。

 ハワイに住むようになっていたアメリカ白人たちはマハンの海軍論に力を得、アメリカのハワイ吸収を望むようになる。そのためには王家は邪魔物でしかない。そこで、民主化革命を経て共和政府がアメリカへの合併を決めるという二段構えの策が練られていった。

 民主化革命と言えば聞こえは良い。しかし、事実上外国人にしか選挙権がない中で、選挙によって民主制に移行、やがてアメリカに吸収されることになる。

 噴飯物なことに、市民権すら持たない外国人まで投票できたのにハワイ人は投票できなかった。多くのハワイ人は王政の廃止など望んでいなかったというのに。どこに民主主義があるというのか。どこに正義があるというのか。

 通史ではないとはいえ、リリウオカラーニの生涯は弱小のハワイ王国が辿らざるを得なかった過酷な歴史と被っているので、王朝史のかなりの部分を知ることができるのは大きい。ハワイと日本の意外な関係など、興味深いことも多いのではなかろうか。

 特に、ハワイ王家が日本の皇族との姻戚関係を結ぼうとしたことなどは、もし歴史の歯車がちょっとずれて姻戚関係が成っていれば、太平洋の歴史が大きく変わっていた可能性まである。征服者が、アメリカ人ではなく日本人になっただけという可能性もあるが。帝国主義の時代に小国が辿った運命を活写した、読み応えある一冊だった。
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その他歴史 | 2007/10/17(水) 23:47 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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392冊目 ソロモンと奇妙な患者(クランケ)たち
ソロモンと奇妙な患者(クランケ)たち ソロモンと奇妙な患者(クランケ)たち
野村 潤一郎 (2000/09)
筑摩書房
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評価:☆☆☆☆☆


 ほとんどの獣医は犬猫しか扱わない。実際、動物病院に犬猫が冠してあるところの何と多いことか。暫く前までなら、それでなんとかなったかもしれない。ペットと言えば犬、猫、それにせいぜい兎くらいだったのだから。

 しかし、現在ではそれでは間に合わない。フェレットのような愛玩動物は簡単に手に入るようになっているし、哺乳類の枠を超えて爬虫類、魚類、両生類、昆虫、節足動物を飼う人も増えてきた。私の友人もイグアナを飼っている。個人的には、イグアナがあのいかつい顔で植物食なのは納得いかないのだが。

 ではいとしの蛇や鰐や蜥蜴が怪我をしたり病気になってしまったらどうするのか。まさか蜥蜴と犬を同じような治療をするわけにもいくまい。

 動物達の医療砂漠に敢然と立ち向かっているのが著者。といっても、著者の場合、使命感だの正義感だのが背景にあるわけではない。広く生物一般へ抱いている愛情の故である。

 というと胡散臭く感じるだろうが、それは誤解だ。なにせ、著者はただ単に動物が好きで動物の傍にいられる職業を選んだ結果として獣医になった変り種。時間とカネは悉くペットにつぎ込む熱心さである。自ら怪物館と呼ぶ自宅には常時100匹以上のペットがいるというのだ。著者が(ついでに私も)最高のペットと信じる犬を筆頭に、猫や蝙蝠、スカンクのような哺乳類、大型熱帯魚、蜥蜴、蛇、亀と実に様々。人間から進化した犬人間だと主張する始末である。

 著者の周りには、同好の士が集まってくるというので、その話の濃いこと。夜中に山まで虫取りに行ったり(山の中では飲食、喫煙、はては大声まで禁止という)、得体の知れない事件に出くわしたり、深夜に公園で犬を離していて警官に喧嘩を売られたりと事件は続く。

 この辺りの話は実に面白い。そして、随所に織り込まれるのが動物の都合の良い飼育をきちんとやっているのかという問いかけ。著者は働き始めた頃、毎日おかずが納豆だけで、それでも犬の食事は手を抜かなかったという。動物の命を預かる以上、こちらも対等に相手のために命やカネを削るのは当たり前だと言い切るのだ。

 これはなかなかできることではない。爬虫類のためには、環境をできるだけ野生状態に近づけるためにカネをはたき、触れ合いは求めない。それで良しとする覚悟がなければ飼うべきではない。確かにその通りだけど、愛情が湧けば触れ合いたくなるのも人情だろう。だからこそ人間の覚悟が必要かもしれないのだが。

 実のところ、著者のマッチョな生き方は苦手だったりする。しばしば暑苦しく感じられて仕方のないところもある。それでも、著者に飼われた動物は決して棄てられたり殺されたりはしないと確信できてしまう。ハチャメチャさと相俟って、読み物としてはとても楽しい一冊だった。
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未分類 | 2007/10/16(火) 23:47 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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391冊目 怪獣記
怪獣記 怪獣記
高野 秀行 (2007/07/18)
講談社
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評価:☆☆☆☆☆


 いやー、面白い。これが素直な感想である。それが感想とはどうかしていると思われるかもしれないが、それ以外に形容しようがないのだから仕方がないのだ。嘘だと思うなら読んでみてください。

 なにが面白いのか。そもそも、いい歳して「怪獣(未確認動物=UMA)を探すのが本業」というのがどうかしている。しかも怪獣を求めて世界中彷徨ってしまうのもスケールが大きい。無双の怪獣好きなのだが、「メジャーなUMAは騒がれているのに比例して目撃を狙う人が多いだろうから」という理由でマイナーな怪獣に狙いを絞るという、かなりおかしいやり方をしているように思われてしまう。

 だが、本書を凡百の怪獣好きと隔てているのは、懐疑的な視点だ。著者は無条件にあらゆる怪獣を信じているわけではない。好きだからこそ懐疑的にならざるを得ないという信念の人でもあるのだ。だから、文章からは怪獣への愛が深く刻まれている。

 さて、今回の狙いはトルコの怪獣ジャナワール。CNN等の主要なメディアで流された暇ネタを見て偽者と確信しながら、その確信を証明するためにわざわざトルコまで旅に出てしまう。その意気たるやよし。

 トルコではジャナワールなんていないよと笑われ、新聞ネタになりながら取材の旅を続ける一行は、事実は小説よりも奇なり、を地で行く珍道中を繰り広げる。この辺りの筆は実に軽妙で、爆笑してしまった件もあるほどだ。怪獣は措いて旅行記として読んでも面白いのではないか。

 CNNで取り上げられたネタは偽者か。はたまたジャナワールは存在するのか。亀をお供に積載重量55kgまでの子供用ボートに乗り込んで勇躍、湖に漕ぎ出した著者は何に巡り会ったのか。なぜ亀がお供なのかは本書で確認してください。立ち読みはしないことを勧めます。笑っちゃうから。

 懐疑的な姿勢の裏にある怪獣へのこだわりが生んだ名作だと思う。私も不思議な現象は愛している。オカルト的な説明がしばしば犯す、論理の無視が許せないだけで。でも、著者の徹底っぷりは私とは深さが違う。愛はもちろんのこと、自分で確認しようとするその姿勢においても。

 怪獣への愛なんてちょっとどうかしている、そう思う人もいるかもしれない。それが正しい判断なのかもしれない。でも、もしそう思わないなら、楽しめること請け合いである。気になってしまった人は、是非自分の目でトルコの怪獣を求めた旅の行方を確認して欲しい。
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ノンフィクション | 2007/10/14(日) 23:49 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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いろいろあった
 まず宣伝。

 FC2ブログ使っていて、小説以外の本を好む人向けにコミュニティ作りました。名づけて「歴史・科学・ノンフィクションが好きな読書人の集まるコミュ」。センスのない名前なのは仕様です。参加する物好きなひといるのかなぁ。

 なお、本コミュニティは面白そうな本を教えてもらおうという私の下心にのみ基づいて作成されたものです。



 さて、先日愛犬の散歩ついでに買い物に行ったのですよ。嫁の人がアンマンを食べたいというので、、私の買い物分をレジに出して、
 「これと、あとアンマンください」
 と告げたところ、怪訝そうな顔で
 「キャスターマイルドで?
 ……どこをどう聞いたらそうなる。


 さてさて、地球に優しいリサイクル精神で、ここに載せている書評もどきをbk1にも投稿しているわけですが、それが巡り巡ってマイコミフレッシャーズ内のコラム「ビーケーワンが教える本の本音」で取り上げられました。

 こうやって取り上げてもらえると評価されているようで素直に嬉しい。で、読んでみて自分の悪文っぷりに撃沈。文章は冷静になって読んじゃいけないね。夜に書いたラブレターを翌朝読んでみて闇から闇に葬り去る人の気持ちが分かった気がする。


 さてさてさて、私がしばしば覗きに行くところに、二次元至上主義!(リンク先にはアダルトコンテンツ(二次元限定)がありますのでご注意ください)というサイトがあるのですよ。なにやら女性が一斉に引く音が聞こえそうですが、少年犯罪が起こるたびに下らない評論もどきをする人々への手厳しい批判が大好きで。

 でですね、そこにkids gooに弾かれたサイト用のバナーがあるわけです。冗談でやってみたところ……

 このとーりっ!!


 私も仲間に入れてもらおう。。。







 そりゃあ俺の本棚には『ジュスティーヌあるいは美徳の不幸』や『O嬢の物語』もあれば『カザノヴァ回想録』もあるさ。その他、タイトル書いたら怪しまれるような本だってあるよ。で、読んだらUPしようと思ってるさ。上記のはもう読んだ本ばかりなのでここにレビューされる可能性はないけど。

 でも、今のところその手の本は紹介してないんだけどなぁ。



 うーん、総合的に考えて不健全とされるのは分からないでもないのだが、一体どれが当てはまっているのかよく分からん。。。orz
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雑記 | 2007/10/13(土) 22:18 | Trackback:(1) | Comments:(2)

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390冊目 貨幣の中国古代史
貨幣の中国古代史 (朝日選書) 貨幣の中国古代史 (朝日選書)
山田 勝芳 (2000/09)
朝日新聞社
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評価:☆☆☆☆


 本書はタイトルどおり、古代から唐までの貨幣の変遷を解き明かしている。と聞くと、専門書っぽく、さぞ退屈なものだろうと思われるかもしれない。しかし、貨幣という人々の生活の中心に存在するものから歴史を覗く事で、英雄史観とはまた異なる歴史との接し方ができるようになるのではないかと思うのである。

 古代、まだ中華世界が黄河流域の狭い地域に留まっていた時代には、南方からの子安貝の貝殻が珍重され、やがて貨幣と化していったことが、後に貝殻を模した銅銭が出土することから明らかにされる。さらに、それが秦や漢で用いられることになる五銖銭へ発展していくのだがその間の金備蓄量の変動とそれがもたらした社会への影響が語られることで、歴史的事実の裏にあった意外な事実が明らかになる。

 特に三国志好きの私にとっては、董卓による洛陽破壊と、その前後の貴金属流出がもたらした影響の大きさは大変に興味深かった。経済的な発展は国家の盛衰に多大な影響を与えるということを改めて教えてくれたように思う。

 とにかく意外な観点から面白い歴史の本と感じさせられた。魏晋南北朝時代を経て、隋、唐の統一王朝における貨幣経済がどのようなものだったかということから、日本の富本銭まで話題が広がっているので、日本史に興味がある方も楽しめるのではないか。

 個人的には、中国土産の刀銭、台湾土産の王莽銭、随分前に手に入れた寛永通宝が、手元にある分だけ身近に感じられて楽しかった。誰もが欲しがる金から見た歴史に興味を持たせてくれた一冊。
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中国史 | 2007/10/11(木) 22:24 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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389冊目 二十歳の原点
二十歳の原点 二十歳の原点
高野 悦子 (2000)
新潮社
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評価:☆☆☆


 1969年、僅か二十歳で自ら命を絶った高野悦子が死の直前まで綴っていた日記は、出版されるやベストセラーになったという。評者は当時まだ生まれていなかったのでそのあたりの状況は知らないのだが。

 本書は立命館大学の学生として、当時多くの学生を魅了してしまった学生運動との関わり、異性との触れ合いなどを赤裸々に綴っている。本書が多くの人々の共感を得たからには、そこには何かがあるのではないか。

 そう思って手に取ったのではあるが、なんとも青臭い思いの羅列に少々食傷気味である。

 というのは(ここに来る人の殆どが二十歳の頃をそこそこ前に過ぎ去ってきたという前提で言うが)、ご存知の通り二十歳の頃、学生であればなおさら、なんて自分では何もできないのに、自我だけはやたらと肥大しているものだからである。

 加えて、金がないのに暇はあるから本当の友情とは何かとか、人生の意味とは、とか、そういう意味のない問いに嵌ってしまいがちである。学生運動が盛んだった時代というのは、要するに世間知らずで頭でっかちな学生がなんとはなしにのめりこんでいき、集団が持つ過激化のエネルギーによって暴れる学生を大量に生み出した流れだろう。

 従って、高野悦子が日記に戦いだの弾圧だのといっても、我々にはリアリティが全くない。左派的な運動の裏にはソ連や中国のような共産国家が理想としてあったという厳しい現実を知るならば、そこには戸惑いしか生まれない。

 高野らが国が弾圧しているとか、自由がないといって求めた共産主義国家こそが、人類史上最も過酷な人民支配と搾取を行っていたのだから。

 圧制だ、弾圧だ、帝国主義だなんて勇ましい非難も、民主主義国家だから唱える分には自由にさせてもらえていたのだ。実際、圧制国家であれば高野の日記が出版されることはありえない。ソルジェニーツィンの『収容所群島』がソ連では出版されなかったように。

 ただ、そういった時代の空気をそぎ落とせば、自分の容姿に汲々として他人の目を気にしながらも、音楽や読書(およそ私の趣味とはかけ離れているが)を好み、タバコや酒を愛した一人の学生の姿が浮かび上がる。不安を抱え、所詮人は孤独だと思いつめ、恋に破れた一人の女性が、自殺へたどり着いてしまったのは一つの悲劇には間違いないだろう。残念なことに、よくあるパターンに過ぎないのかもしれないけれど。

 そんなわけで、個人的には青臭さを感じつつもその青臭さで自分の痛かりし頃を思い出してそこそこ楽しめた。二十歳って、こんなにガキだったんだな。



 それにしても、タバコが抵抗の印で自己表現とは痛いなあ。。。悪いが、わが子にはファッションでしか自分を語れない程度の人物にはなって欲しくない。ファッションなんて、所詮は他人が作ったものだ。内面から溢れる魅力を持つこと。それが魅力的な人への道だと思う。残念ながら私には欠落しているのだが。
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未分類 | 2007/10/09(火) 20:39 | Trackback:(0) | Comments:(2)

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388冊目 生きているユダ―ゾルゲ事件 その戦後への証言
生きているユダ―ゾルゲ事件 その戦後への証言 生きているユダ―ゾルゲ事件 その戦後への証言
尾崎 秀樹 (2003/04)
角川書店
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評価:☆☆☆


 1941年10月、戦時下の日本で大規模なスパイ網が摘発された。ドイツ人ジャーナリストとして入国していたリヒャルト・ゾルゲが、実はソ連のために働くスパイだったことが判明した。

 ゾルゲがソ連に流した情報はかなり正確だった。それもそのはず、ゾルゲの協力者の一人が政府の中枢に居た人物だったのだから。その人物こそ尾崎秀実(ほつみ)。

 「爾後国民党政府を対手とせず」などと宣言することで泥沼と化した中国戦線から講和によって手を引くチャンスを潰してしまった戦時中一大無責任男、近衛文麿の信任厚かったのが尾崎であった。そのため、ゾルゲは常に重要度の高い情報を極めて効率的に集めることができていたのだ。

 個人的に、政権放り投げ四天王といえば平沼騏一郎、近衛文麿、細川護煕に加えて安部前首相だと思っているのだけど、他に案はあるでせうか。栄誉ある四天王のうち、二人までもが最近だったのは嘆かわしいことである。

 さて、国を揺るがしたゾルゲ事件は、首魁であるゾルゲと、尾崎が死刑となって幕を閉じた。なお、ゾルゲに関しては生きてソ連に帰っても粛清された可能性が極めて高いといわれる。スターリンがゾルゲの情報を無視して独ソ戦はありえないと判断したため、開戦直後にソ連は押されに押されたわけだが、共産国家において指導部の間違いを知る人物が生き残れるわけがないのだ。

 著者は処刑された尾崎の異母弟である。その立場から秀実の獄中手記を読み返し、秀実は単なる売国奴などではなく、真の世界平和を求めていたのではないか、という立場から、ゾルゲ事件の謎である、誰がゾルゲ機関を権力に売ったのかを追う。

 このあたりの理屈は私から見たら噴飯物なので、どうにも感情移入ができなくて困る。そもそも、ナチスとソ連がポーランドを仲良く半分こ(勿論ポーランドの主権は無視)したのに、ナチスが唾棄すべきファシズムでソ連が平和の使者、というのはおかしくないのか。

 私は人種差別主義者ではないので、”たった600万人”のユダヤ人を虐殺したナチスが非難され、”2000万人も”殺戮したソ連が褒められるのは大いなる矛盾を感じる。600万人の殺害が悪なら2000万人だと巨悪である。国籍や民族など関係なく、国内であろうと国外であろうと数多の人々を殺害するようなことが正義のわけがないのだ。

 それはともかく、著者は秀実の思想を追う中で共産党にシンパシーを感じるようになる。そして、当初は入党を拒んでいたのだが、いつしか党員となっていく。この辺りの心の動きは、戦後の環境を知らない身には真に迫りはしない。ただ納得するしかないのだろう。

 共産党内でゾルゲ事件の真相を解き明かそうとする著者らの試みは、しかし凄まじい妨害に遭う。なぜソ連のために祖国を裏切ることまでした秀実やゾルゲの真実を、共産党が隠そうとするのか。そこには、秀実を裏切ったユダの姿が見え隠れしていた。

 熾烈な党内闘争(共産党にとっては戦前からのお家芸である)も絡み、真相追求は果たせそうと思うとまた遠ざかる。そんな中で朝鮮戦争が勃発するなど、戦後の

 朝鮮戦争については、南朝鮮が北へ侵略しただとか、金日成を褒め称えるだとか、共産主義の独裁者にばかり都合の良い解釈を採っていて、かなり萎えるのは否めない。ついでに、アメリカから核技術を盗み出してソ連に売り渡したとされ、処刑されたローゼンバーグ夫妻についてもでっちあげとするが、残念ながらローゼンバーグがスパイだったことはソ連で公開された情報によって明らかになっている。皮肉なのは、ソ連に核技術に関する主要な情報をもたらしたのは他のスパイだったということだろうか。

 それでも、共産党の内膜、党内の権力中枢に近い人物に不利なことをしようとすればたちどころに圧力が加えられ、病人から職業も住むところも奪ってしまう卑劣なやり口が明らかになるのは貴重な証言ではなかろうか。しかも、失脚前は偉大な指導者だったはずの人物も、一度失脚すれば昔からずっと誤っていたことにされてしまう恐ろしさ。オーウェルが『一九八四年』で予言した、共産主義的な圧制国家で歴史を書き換える組織(書き換えられた歴史が”正しい”歴史になる)がフル稼働している様子が、実に正鵠を射ていたことを理解できるだろう。そんなわけで、著者の主張を鵜呑みにしないのであればなかなか面白い本ではなかろうか。
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太平洋戦争・二次大戦・現代史 | 2007/10/07(日) 23:34 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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387冊目 マサチューセッツ工科大学
マサチューセッツ工科大学 マサチューセッツ工科大学
フレッド ハプグッド (1998/09)
新潮社
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評価:☆☆☆


 マサチューセッツ工科大学、略してMIT。そこには世界中から天才が集まるという。20世紀の生んだ数少ない大天才の一人、ファインマンも在籍したこの学校の威力を思い知るには、たとえばアマゾンなどで”MIT”をキーワードに検索してみると良い。ちょっと見ただけでも経済学、統計力学、ロボット、量子物理学、人工知能などのいかめしい文字が並ぶ。もっとも、油断していると『 UFO誘拐事件の真相―MITからの報告
UFO誘拐事件の真相―MITからの報告』なんてゲテモノもひっかかってくるのだけど。

 そして、一般の見解とは正反対なことに、天才が集まるところというのは一筋縄ではいかない、個性豊かな人々が集まるところでもある。その伝で行けば、MITはきっと変人だらけだ。そして、どうやら実際にそうらしい。

 本書はMITが誰からも大した期待を抱かれなずにささやかな誕生を遂げてから、その名が畏敬の念を込めて呼ばれるようになるまでの短い歴史を大雑把に追った後で、このテクノロジーの楽園で一般人の興味を引くどのようなことが行われてきたかに当たっている。

 その過程で出てくるのは、テクノロジーは壁にぶつかりながら正解を探る営みであるという事実である。たとえば義手や義足。義手より義足の方が作るのが簡単そうに思ってしまうが、あにはからんや、そうではないという。足の複雑な動きを改めて解説されると、生物が自然に行っていることがどれほど驚きに満ちているか分かろうというものだ。

 その他、電車のラインを組む中でできる複雑なリレー装置や、迷路を脱出する方法を”学ぶ”ロボットマウス、ナノテクノロジーなど、著者が面白いと思ったのであろう品々にMITがどう取り組んできたか、当のエンジニアのインタビューを交えて記している。

 日常で当たり前に使う機械を見ていると気がつかない、テクノロジーの世界の面白さの一端を覗かせてくれる本だと思う。
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ノンフィクション | 2007/10/04(木) 23:59 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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386冊目 百年の誤読
百年の誤読 百年の誤読
岡野 宏文、豊崎 由美 他 (2004/10)
ぴあ
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評価:☆☆☆☆☆


 あのベストセラー、読んでみたけどちっとも面白くない。ひょっとして自分の読解力が足りないのかしらん。名著と名高いあの本も理解できない。自分は読み手として間違っているのだろうか。

 だが、著者達はひるまない。どんなに売れた本でも、どんな文豪が書いた本でも、名著の誉れ高い本でも、駄本は駄本と言い切ってしまう。おまけに岡野さんと豊崎さんの二人の著者が二人とも並大抵の読書家ではないので、その鋭い舌鋒が冴え渡っている。余りの快刀乱麻ぶりについ笑ってしまうので人前で読むのはお勧めできないくらい。

 取り上げるのは1900年~2004年までのベストセラーと話題の本。具体的には、徳富蘆花の『不如帰』から『世界の中心で、愛を叫ぶ』まで。私の周りの読書人で誰一人として褒めた人のいない『世界の中心で、愛を叫ぶ』はこんな感じで評されている。

豊崎 はっきりいって話すことないんです(略)
岡野 中身もほぼパクリ。村上春樹の『ノルウェイの森』でしょ、これ全部。


 まあ、この本に読む価値が全くないのは周知の事実だから良いとして、森鴎外の『渋江抽斎』は「なんでまた、自分にとって興味のない人の人生にこれほど詳しくならなきゃなんないんだって」と言い、志賀直哉の『城の崎にて』では「これってほんとうに巧いの?」と疑問を呈する。同じく小林多喜二の『蟹工船』も「幼稚な表現が多いなあ」とばっさり。渡部昇一『知的生活の方法』や曽野綾子『誰のために愛するか』は、是非本書を読んで確かめてください。

 怒りを感じるような本にはちゃんとそう評価を下す。『金持ち父さん 貧乏父さん』の胡散臭さを「あるのは、「俺は金儲けがうまい。お金に対するインテリジェンスが世間のやつらとは違うんだぜ」って自慢話のオンパレードだけでしょ」と喝破する。ビジネス書全般に感じるマイナスオーラを的確に表現していて笑った。『チーズはどこへ消えた?』にも同様に怒りをぶつける。二谷友里恵『愛される理由』は「許せねえ。言ってみろ「許される理由」を」と岡野さんが言えば「全編これムカつく本」と豊崎さんが応える。同じ項で「ユーモアというものが、いかに知性に支えられているかがよくわかる」との主張には無条件で賛成。

 もちろん、腐すだけではない。絶賛されているのは宮沢賢治。言い尽くされていることではあるがその擬音は絶品と賛辞を惜しまない。また、さくらももこ『もものかんづめ』には「ゾッとするぐらい巧い」と言い、褒め言葉しか出てこない。

 やはり良い本は良いし、ダメな本はダメ。残念なことに大衆にも分かるようなレベルの本はダメな本であることが多くって、他にもっとまともな本を知っている人にとっては駄本であることが多い、というような雰囲気がある。その幾許かは真実だろう。

 私も『愛される理由』だの『金持ち父さん 貧乏父さん』といった類の本に時間を割くほど暇があるわけじゃないと思うわけで、ダメな本をダメと教えてくれるこのような試みは心強いと思う。読みたいと思わされた本もいくつもあるし。愛は毒を内包するものだから、これくらい毒がある書評が面白いのは当然なのかもしれない。
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未分類 | 2007/10/02(火) 23:14 | Trackback:(0) | Comments:(0)

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