![]() | 他諺の空似 ことわざ人類学 米原 万里 (2006/08/24) 光文社 この商品の詳細を見る |
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諺とは大変に便利なものである。時に説教臭くはあっても、大事な教訓を教えてくれるのは間違いない。苦しいときにあっては禍福はあざなえる縄の如しと教え、戦争が起これば一将功成りて万骨枯ると言う。石の上にも三年とも言えば果報は寝て待てとも言う。どちらが好きかと聞かれたら問われるまでもなく寝て待つほうだけど。
驚くほどのことではないだろうが、類似した諺が、世界中にある。所詮、どこにいても人間は人間。同じように喜怒哀楽を感じるから、同じ喜び、悲しみや諦念を諺にしてきた。その諺を渉猟するのだけでも楽しいのに、エッセイの名手、米原さんがそれをネタに筆を縦横に振るっている。
数多の諺と共に語られるのは、恥知らずにも相手を非難する理由をでっちあげて戦争に邁進したブッシュ政権や、その忠実な下僕であった日本政府であり、イラク人質事件で全く何もしない政府や人質バッシングに血道をあげた人々である(欧米が批判するや否やバッシングがトーンダウンしたお粗末さにはぞっとしたものだが)。
文章から米原さんの怒りが透けて見える。その結果としてペンが滑りすぎてしまい、化学兵器や生物兵器を最初に使ったのがアメリカであるというような誤り(工業を利用しての化学兵器使用であれば一次大戦時のドイツが嚆矢だろうし、生物兵器であれば日本軍が中国で使用している)があるのが残念であるのだが。
往々にして、アメリカを批判する人はそれにももとる行動を採るロシアや中国を批判しないという大層ご立派なことをなさるものだが、米原さんはロシアにもその矛先を緩めない。常に弱者を見詰める視線には強さと優しさが同居しているように見える。
ラディカルに過ぎるとの意見は正しいのではあろうが、強いものを常に離れたところから冷静に眺め、舌鋒鋭く批判する人がいるのは大切なことと思う。しかもユーモラスなので困難なく読めるのが大きな魅力だ。その点でも、彼女が亡くなってしまったのが惜しまれる。
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